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印刷2021/07/12 16:00

業界動向

Access Accepted第691回:アジア人差別とゲーム業界

画像集#006のサムネイル/Access Accepted第691回:アジア人差別とゲーム業界

 FCバルセロナのフランス人選手による,日本人への差別発言が大きな問題となっているが,アメリカでも2021年に入ってからアジア系に対する差別やヘイトクライムがクローズアップされている状況だ。アジア人の開発者やユーザーも多いゲーム産業だが,こうした差別に対してどのように取り組んでいくべきなのだろうか。


欧米で噴出するアジア人差別とヘイトクライム


 2021年に入ってからアメリカでは著名人を中心に,SNSで「#StopAsianHate」関連リンク)というアジア系に対するヘイトクライムへの抗議運動が巻き起こっている。
 人種差別問題で言えば,2020年にBlack Live Matter運動が起こり,ゲーム業界もこれに応じて,少なからぬ影響を与えたことは本連載の第649回「「Black Lives Matter」運動。アメリカの深刻な人種問題とゲーム業界」で紹介したとおりだ。

 アジア系に対する差別がクローズアップされ始めたのは,2021年3月に発生した,ジョージア州アトランタで起きた韓国系マッサージ店での銃撃事件あたりからだと思うが,2019年と比較して,2020年のアメリカにおけるアジア系に対する犯罪発生率が50%増加していることもその要因となっている。

AAPI公式サイト(関連リンク)より。一口に「アジア人」と言っても人種は異なる様々な文化の集合体だ。カリフォルニアでのヘイトクライムの抗議活動で1つの大きな勢力になっている活動では,太平洋地域の人口を含めてAAPI(Asian Americans & Pacific Islanders)を使っている
画像集#002のサムネイル/Access Accepted第691回:アジア人差別とゲーム業界

 筆者の住むサンフランシスコで,人口に対するアジア系の割合は34.9%,つまり3人に1人はアジア系という街だ。それでも最近ではアジア系の人に対する犯罪が目立ち,ここ数か月だけでも,突然殴りつけられたり,ナイフで刺されたりという事件が報道されている。その多くが通りがかりの老人たちというのはいたたまれない。加害者には白人もいれば黒人やヒスパニック系もいるし,同じアジア系と思しき人の名前もニュースで見かける。
 当然,日本人もその対象になっており,ロサンゼルス近辺ではリトルトーキョーの寺院が放火されたり,日本人が経営するレストランに爆破予告が行われるなどの事件が発生している。

 日本でも,7月に入って,サッカーの名門FCバルセロナに所属するフランス人のウスマン・デンベレ選手アントワーヌ・グリーズマン選手の二人が,2019年夏に日本に遠征した際,滞在していたホテルのスタッフに対して差別表現を使っていた自撮りビデオが流出し,大きな問題になっている。
 その内容は容姿や言語を侮辱するもので,本人たちは「そんなつもりはなかった」と釈明しているものの,ほとんどの人が“明らかな差別発言”と認識するものだった。

 本件についてはFCバルセロナのメインスポンサーである楽天グループが7月6日に,「同クラブに対し、正式に抗議するとともに、本件に関する見解を求めてまいります」と発表。FCバルセロナは7月8日になってようやく謝罪を表明した。
 また,グリーズマン選手は「遊戯王」コンテンツの公式アンバサダーだったが,KONAMIは7月7日に契約を解除している(関連記事)。

この6月に,「遊戯王」のアンバサダーとして就任したばかりのグリーズマン氏だが,今回の問題を受けて解任されることになった。こうした言動が問題視されるようになった背景には,COVID-19を機に増加するアジア人に対するヘイトクライムや,これまで差別を黙認することが多かったアジア人が声を上げ始めたことがあるようだ
画像集#003のサムネイル/Access Accepted第691回:アジア人差別とゲーム業界

 こうしたアジア系の人に対するヘイトクライムの大きな理由とされるのが,中国が発生源とされるCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)によるダメージであるとよく言われるが,実のところヘイトクライムそのものは昨日今日始まったものではない。
 VentureBeatに寄稿する,アメリカのゲーム業界では良く知られたジャーナリストのディーン・タカハシ(Dean Takahashi)氏は,日系三世だ。自らの両親と祖父母が第2次世界大戦中に,日系人に対する強制収容所に送られたという。
 そんな彼が「The DeanBeat: #StopAsianHate by making us more visible」関連リンク)というコラムで自身の意見を発信している。

 日系アメリカ人の多くがすでに帰化していたり,アメリカの国民として忠誠を誓っていたにも関わらず,日本との戦争が始まるとアメリカの中枢からそれほど反対意見が上がることもなく,収容所の設営が決定し,11万人もの人が強制的に住居を追われた。それは「アジア系は(アメリカにおける)“マイノリティ”の中でさえ重視されないくらい少なかったから」であるとタカハシ氏は語っている。
 それ以前にも,黒人系アメリカ人同様,アメリカの鉄道開発などへの労働力として働いていた中国系移民を,1882年には反中国法(Chinese Exclusion Act)を制定して排斥し,20世紀に入って日系移民の勤労が脅威としてみなされると,1913年にはカリフォルニアでは日系人と土地を売買できない排日土地法(California Alien Land Law)が可決されるなど,差別の歴史は数世紀にわたっている。


アジア人がメインにならないエンターテイメント


 日本と中国,韓国が一緒くたにされて攻撃されるあたりも含め,かなりの根深さを感じるこのアジア人差別問題だが,ことゲーム業界に焦点を当ててみると,決してアジア人が軽視されているわけではない。ゲーム業界におけるアジア人の就業率は非常に高く,宮本 茂氏小島秀夫氏をはじめとして,人種に関わらずゲームデベロッパやファンたちに称えられている人も多い。
 実際,今回の問題に対しても「#StopAsianHate」のハッシュタグを用いてバンダイナムコエンターテインメント,カプコン,ソニー・インタラクティブエンタテインメント,マイクロソフト,スクウェア・エニックス,Bethesda Softworks,Devolver Digital,Electronic Arts,Insomniac Games,Ubisoftといったパブリッシャが声明を発表している。

「Apex Legends」では,#StopAsianHateをサポートするバッジがリリースされた
画像集#004のサムネイル/Access Accepted第691回:アジア人差別とゲーム業界

 こういう状況をそのまま正直に見ると,ゲーム業界は差別の話とは割と縁遠く見える……が,タカハシ氏は前述のコラムで最新の国勢調査ではアジア系アメリカ人の人口比率が5.9%になった現代においても,アメリカのカルチャーの中でその存在にスポットライトが当てられてはいないと語る。

 昨今,アメリカ産のゲームではプレイヤーキャラクターをプレイヤーの好みで設定できるカスタマイズ機能を持つゲームが増え,「オーバーウォッチ」「Apex Legends」「Mortal Kombat」のような複数のキャラクターを選択してプレイするオンラインゲームや格闘ゲームなどでは,アジア系キャラクターの存在感はそれなりにある。
 しかし,「Ghost of Tsushima」のように日本や他のアジア地域の歴史や文化をテーマにしているのでもなければ,アジア系キャラクターをメインキャラクターとしてプレイできるゲームは非常に少ない。
 これを「アジア人は、自分に似たキャラクター以外で遊びたいという願望がある」と片付けてしまうこともできるが,アメリカにはアジア系のデベロッパも多いにもかかわらず,アメリカ文化を象徴するためにアジア系キャラクターを採用しないことには,何か理由があるのかもしれない。

アジアに関するテーマでなく,アジア系がゲームの主人公になるケースは数少ない。左から,スクウェア・エニックスがリリース予定の「Life is Strange: True Color」,そして過去に発売済みのBethesda Softworksの「Prey」と,Electronic Artsの「ミラーズ・エッジ」
画像集#005のサムネイル/Access Accepted第691回:アジア人差別とゲーム業界

 南カリフォルニア大学が2007年から2014年までの8年間で,2011年度を除いた年間興行収入TOP100に選ばれた700作の映画に登場した,セリフのある3万845人の登場人物の人種を調査したところ(関連リンク),白人は73.1%と非常に高いものの,アジア人は5.3%とアメリカの人口比と同等になっている。白人が高く,ヒスパニックが4.9%と人口比(18%)に対して非常に少ないという印象だ。

 もう一つ,参考になりそうな事例を挙げておくと,まだ紙が主流だった時代にどこかで読んで印象に残っている筆者の記憶で,アメリカのファッション誌ではマイノリティのモデルを表紙にすると,その月は売れ行きが芳しくないという傾向があったらしい。こうしたデータがゲームにおいても存在するのかもしれないが,出版社からすれば売れないものを起用しないというのは,差別ではなく経営的な判断ではある。

 人口比にピッタリ合わせた人種をキャラクターに用意することも,人種によって売れる売れないを判断して採用することもナンセンスである。そもそもゲーム作品の多くが西洋の世界観に基づいたものであるので,登場させづらいというのもあるだろう。それでも,ほかのエンターテイメントに比べてゲームにおけるアジア系人種の“存在感”が薄く感じられる理由は何なのか。マイノリティに対する問題がアメリカほど極端ではない日本でも,こういう事件をきっかけにしてあらためて考えてみる必要はあるだろう。

著者紹介:奥谷海人
 4Gamer海外特派員。サンフランシスコ在住のゲームジャーナリストで,本連載「奥谷海人のAccess Accepted」は,2004年の開始以来,4Gamerで最も長く続く連載記事。欧米ゲーム業界に知り合いも多く,またゲームイベントの取材などを通じて,欧米ゲーム業界の“今”をウォッチし続けている。
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