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主人公は,ジュン(Jun)という漫画家だ。自分の描いた漫画に取り込まれ,そこから抜け出すには,過去と向き合いながら物語を書き終えるしかない。漫画はそれをジュンに強いてくる。この漫画は,ただの舞台ではなく,主人公に要求を突きつけてくる相手として置かれている。ジャンルは物語主体のホラーで,リュベルト氏は心理ホラーと説明していた。
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チームが最初に決めたのは,漫画に近い2Dのビジュアルと3Dのゲームプレイを両方成立させることだったという。実際の画面では,本の見開きが正面に置かれ,コマの中でキャラクターが動く。
コマは漫画の絵として描かれているのに,そこに立った主人公は奥へも手前へも移動できる。紙の上を歩いているようでいて,同時に立体の空間を歩いてもいる。この二重性を,リュベルト氏は漫画の内側に入る感覚と表現していた。
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ページによっては,漫画の絵が完全に消える場所もある。白い線だけで空間が描かれ,そこを歩くことになる区画があった。
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もう1つの軸が,ナビゲーションモードと呼ばれる状態への切り替えである。ここに入ると本そのものを操作できるようになり,ページを左右にめくって漫画を読み返せる。ゲームパッドならY,キーボードならFでナビゲーションモードに入り,モード中はRTとLT,またはAとDでページをめくれる。
ページを戻ると,ジュンがまだ描いていない場所があることが分かる。空白のまま残された見開きや,線だけの下描きが,読み返しの途中に現れる。
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描き直すといっても,会場で見せてもらった範囲での操作は,未完成の下描きにペンを入れて絵を確定させることだった。そしてそれにはインクが必要だ。
序盤,主人公は下描きのままのスケッチの前で足を止める。触れば描き足せそうなのに,インクがないので手が出せない。そこでいったん探索に出て,インクの湧いている場所を探し,吸い取ってから戻る。
スケッチにインクを流し込むと絵が確定し,通れなかった道が開通する。吸い取る,運ぶ,流し込む,という一連の流れがパズルの基本になっている。
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描き直しの影響は,そのページだけで終わらない。前のページに手を入れると,先のページに載る出来事が変わる。物語はページとページの間で枝分かれしていく。実演でも,同じ地点から左へ進んだときと,ページを戻して描き直してから進んだときとで,行き着く先が違っていた。
主人公は死ぬこともある。背後から伸びてきた影に押されて穴に落ちる場面を見せてもらった。ただし死んでも過去のページへ戻って描き直せるので,取り返しはつく。描き直しという仕組みが,そのままやり直しの理屈にもなっている。
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そのうえ,漫画そのものが主人公の敵に回る。物語を勝手に書き換えられることを漫画は歓迎しておらず,ジュンにモンスターを差し向けてくるのだという。
窓の向こうを何かが通り過ぎる場面があり,会場で動いていたビルドの終盤では,通路の奥から現れた生き物に追いかけられた。逃げ切れずに捕まると別の場所へ連れていかれ,そこがこのビルドの終着点になっていた。
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会場で動いていたのは,バーティカルスライスと呼ばれるビルドだ。作品全体のうち短い一区切りだけを,完成形と同じ密度まで作り込んだもので,ゲームとしては未完成である。作ったのは,フランス・アングレームにあるゲーム開発の高等教育機関Cnam-Enjminに通う修士2年の学生10人だ。学校の卒業制作として立ち上がった企画だという。
リュベルト氏の担当範囲には,プロシージャルアニメーションも入っている。歩いているときに壁へ手をつく動きがそれで,実演の途中でわざわざ見せてくれた。あらかじめ作った動きを再生するのではなく,壁との位置関係からその場で手の動きを計算する作りだ。
音にも人手が割かれている。リュベルト氏はサウンドデザイナーの仕事ぶりを高く評価しており,探索中に道を外れた先で鳴る不穏なノイズを例に挙げていた。字幕の付いた台詞にはすべて音声が当たっていて,声の担当者には学生制作ながら報酬を払って依頼したという。
チームは,このまま「Yūrei」を完成まで持っていきたいと考えている。ただし,学校の課題として作り終えたところから先へ進める資金がない。BIC2026に来た目的の1つが,出資してくれる相手を探すことだった。
想定しているのはプレイ時間1〜2時間の作品で,パズルの場面を増やしてゲームプレイを厚くしつつ,今の心理ホラーの空気は保ちたいという。資金のめどが立ってから完成までにかかる期間は,半年から1年ほどと見積もっている。
日本語版はまだ計画にないという。ただ,日本語の翻訳者と声の担当者を立てたい気持ちはあり,フランス語,英語,日本語で出せる形を望んでいるとのことだ。会場のビルドは英語で,itch.ioではPC向け版が無料で公開されている。



















![画像ギャラリー No.001のサムネイル画像 / 漫画に取り込まれた漫画家を操作するホラーゲーム「Yūrei」。前のページに戻って描き直せば,その先の道が変わる[BIC2026]](/games/033/G103350/20260816014/TN/001.jpg)
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