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「MAZARIA」や企業向けソリューションなど,VR/AR/MR/XRの最新事情が取り上げられた「黒川塾 七十二(72)」聴講レポート
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印刷2019/07/13 16:47

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「MAZARIA」や企業向けソリューションなど,VR/AR/MR/XRの最新事情が取り上げられた「黒川塾 七十二(72)」聴講レポート

 トークイベント「エンタテインメントの未来を考える会 黒川塾 七十二(72)」が,2019年7月11日に東京都内で開催された。このイベントは,メディアコンテンツ研究家の黒川文雄氏が,ゲストを招いて,ゲームを含むエンターテイメントのあるべき姿をポジティブに考えるというものである。

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 アプリ/ゲーム業界向け開発&運営ソリューション総合イベント「Game Tools & Middleware Forum 2019」(GTMF 2019) との共同開催となった今回のテーマは,「VR/AR/MR/XR 2019年の展望を語る」。会場では,ゲストにソニー・インタラクティブエンタテインメント ワールドワイド・スタジオ プレジデント 吉田修平氏,バンダイナムコアミューズメント プロダクトビジネスカンパニー クリエイティブフェロー 小山順一朗氏(コヤ所長),よむネコ CSO 新 清士氏,ポケット・クエリーズ 代表取締役 佐々木宣彦氏,同取締役 鈴木保夫氏,エクシヴィ 代表取締役社長 近藤“GOROman”義仁氏らを招いて,VRを初めとする仮想現実や拡張現実にまつわるトークが交わされた。

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黒川文雄氏
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吉田修平氏

 トークの最初の話題は,PS VRを取り巻く状況にいて。吉田氏によると,PS VRは2019年3月に累計420万台を実売したとのことで,PS4ユーザーのおよそ5%が購入したことになり,価格などを考慮すると相当にいい成果だという。

 その一方では,デベロッパが優れたVRコンテンツを作り,それが売れてさらにいいものが作れるという好循環のエコシステムを作るべく,さらに普及台数を増やしていかなければならないとも考えているそうだ。
 また以前から指摘されているとおり,VR体験をどうやって伝えていくかについても,引き続き悩んでいるとのこと。現在ヒット作とされるVRコンテンツは,口コミで評判になり,長く売れ続けているのが実情だと吉田氏は語った。

 続いて,7月12日に東京・池袋にオープンしたばかりのエンターテイメント施設「MAZARIA」の話題に。この施設ではVRコンテンツなどのアクティビティを楽しめるが,VRを前面には出さず,“アニメとゲームに入る場所”と謳っている。企画開発を手がける小山氏によると,グループインタビューを行い,独自の分析をした結果,VRを前面に打ち出してしまうと,多くの人は「ゲームセンターの進化版」「最新のゲームは自分と縁がない」などと捉えてしまい,「存在は知っているし,興味がないわけではないけれど,行かない」という状況になることが判明したそうだ。

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小山順一朗氏
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佐々木宣彦氏

 一方そうした人達でも,テーマパークであれば親しい人と一緒に楽しめるので行きたいと考えることが多いという。そこで「MAZARIA」では,アニメやゲームの世界に入り込み,キャラクターと一緒に遊べる場所をコンセプトに据えたとのこと。

 具体的には,最初に「MAZARIA」の世界観とストーリーを来場者に刷り込み,共感・没入させることで,「MAZARIA」そのものを好きにさせる。これをやらないと,来場者は新たなアクティビティがないとリピートしてくれなくなるそうだ。

 また「MAZARIA」の巨大スクリーンに流れる映像には,さまざまなアニメやゲームのキャラクターなどが登場するのだが,すべて8bitで描かれている。これは最新のグラフィックスを使うと,上記のとおり「自分には関係ない」と思われてしまうこと,そしてパチンコ屋のデジタルサイネージのようになってしまうことが理由だ。

 「MAZARIA」に導入された新作VRコンテンツ「アスレチックVR PACMAN CHALLENGE」は,Oculus Questを用いることにより,ケーブルレスでバーチャルな迷路を歩き回れることをセールスポイントとしており,プレイ中は実際にしゃがんだり,クッキーを掴んだりと身体を動かすことから“アスレチック”と銘打ったという。
 小山氏によると,普段は運動をしない人も,こうしてゲームにして目的を持たせると積極的に身体を動かすようになるとのことで,「ゲームの不健康なイメージが変わるのでは」と話していた。

 実際に体験したという近藤氏と新氏,吉田氏らは「アスレチックVR PACMAN CHALLENGE」を称賛。とくに新氏は「Oculus Questを採用したことにより開放感が得られた」「VR体験を1段階引き上げた」と絶賛した。また吉田氏も「広いVR空間を歩き回れるのは楽しい」と感想を述べていた。

 小山氏は今後の「MAZARIA」について,「一口にアニメが好き,ゲームが好きといっても,その度合いは人それぞれ。例えば『千と千尋の神隠し』だけが好きという人もいれば,『ゼビウス』の時代からゲームが好きという人もいる。その好きの度合いに関係なく,いろんな人が楽しめる場所にしていきたい」と意気込みを語った。


 次の話題は,ポケット・クエリーズの企業向けソリューションについて。ポケット・クエリーズでは,現実空間にデジタルデータを重ねて確認できるMRのメリットを活かし,発電所や工場などの現場業務をサポートしたり,作業の高度化を狙ったりするソリューションを手がけているが,課題となるのは安全対策についての費用対効果だという。つまり,安全対策を施すにはそれなりの投資が必要だが,その効果は実際に事故などが起きてみないと分からない,言わば目に見えない部分だからである。

 ほかにも,屋外で使う場合に雨が降っていたらどうするかといった,想像していなかった課題を解決しなければならないケースもあるという。
 また報道などを通じてMRの認知度は高まっているが,ソリューションを導入するまでに時間をかける企業もある。中には2年近く検証してから本格導入する企業もあるそうで,普及にはまだまだ時間がかかるというのが佐々木氏の見解だ。

会場では,ポケット・クエリーズの企業向けソリューションを取り上げた報道も紹介された
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 鈴木氏は,かつて日本マイクロソフトでMicrosoft HoloLensに携わっていた人物だが,MRについてはウェアラブルデバイスが眼鏡やコンタクトレンズレベルにならないと浸透しないと考えているという。現状のMRでも見えないものを見る,その場で必要な情報を得るといったことは可能だが,映画やアニメで描かれるような状況になるのはもう少し先だろうとの見解を示した。


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鈴木保夫氏
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新 清士氏

 また現在Microsoftが開発中のHoloLens 2は,センシングが進化しており,タッチやドラッグだけでなく,手で掴んだり押したり,両手を使ってピンチイン・ピンチアウトができるようになっているとのこと。技術が発展していくにつれ,より精細になっていくと期待されているそうだ。

 話題は,よむネコが開発したVRゲーム「ソード・オブ・ガルガンチュア」に移行。本作は4人同時マルチプレイが可能な剣戟アクションゲームだが,開発には3年以上の時間をかけている。新氏によると,そもそも剣戟の当たり判定を作ることが難しいうえ,世界中のどこでプレイしても遅延を感じないようにすることが大変だったという。
 さらに,ほかのVRデバイスよりスペック面で劣るOculus Questに対応させたことも,時間がかかった理由の1つだ。


 「ソード・オブ・ガルガンチュア」では,吉田氏の発言にあった「体験や面白さをどう伝えるか」という部分にも最初から取り組んでおり,MR撮影機能「LIV」を使ってプレイヤーがゲーム内で遊んでいるかのような映像を作成できるようになっている。
 これらの映像を使ってプロモーションを行った結果,「まるで『ソードアート・オンライン』のようだ」という反響を得られたという。
 実際,本作は「ソードアート・オンライン」のようなMMORPGを作るという大きな目標のもと,まずは4人マルチプレイの剣戟アクションを作ろうと企画されたとのことだ。

「ソード・オブ・ガルガンチュア」のプレイ動画も披露された
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近藤義仁氏
 また先日2019年版ロードマップも公開されたが,それとは別に対戦機能の開発にも着手しているそうだ(実装時期は未定)。このような新機能の開発やブラッシュアップは,Discordなどを通じて得られたプレイヤーのフィードバックをベースにしているという。
 そうしたプレイヤーとのやり取りは,積極的に行っており,先日はランキングで理論値に近いスコアをたたき出したプレイヤーと直接会ったのだとか。そのプレイヤーは筋骨隆々で,そもそも身体能力の高い人物で,精度の高い動きで流れるようにスコアを重ねていたそうだ。
 新氏は今後の本作について,「ゆくゆくはインストールベースの大きいPS VRに展開したいが,そこに行くまでにブラッシュアップして,評価を高めておきたい」と話していた。

 さらに話題は,近藤氏が現在興味を抱いていることにもおよんだ。近藤氏によると,ドローンのメーカー・DJIが開発したプログラミング教育用ロボット「RoboMaster S1」に夢中とのこと。「RoboMaster S1」のカメラとVRデバイスを連動させ,PCから操作すればFPSをプレイしているかのような感覚で楽しめるそうで,「そのまま遠隔操作で出社したい」「これで遊んだ子ども達が,将来プログラミングやVRに取り組むと思うとすごいものができるのでは」と話していた。


 トークの最後の話題は,仮想現実や拡張現実の今後について。新氏はOculus Questに大きな可能性を感じており,今後のVRデバイスはスタンドアローン型に移行するだろうとする。その根拠の1つは,新氏の高校1年生になる娘さんが,Oculus QuestのVRコンテンツに夢中だからである。先日は,その娘さんと,21歳になるPCゲーマーの息子さんが,VRチャットをしていたそうだ。新氏は「VRデバイスの違和感を取っ払うことができれば,スッと広がる余地がある」と話していた。

 小山氏は,「VR ZONE」の取り組みの中でVRをいかにして広めるかに苦労したとし,「VRは,ほかの技術と融合することにより,何かの市場を代替する存在だと捉えるべきなんじゃないかという考えに至った」と発言。つまりVRには,デジタルカメラが普及するきっかけを作ったカシオのQV-10が,その後の写真フィルム市場を大きく変えたようなことを起こす可能性があるのではないかというわけである。

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会場では,Oculusの創業者であるパルマー・ラッキー氏の半生を書いたブレイク・J・ハリス氏の著書「The History of the Future: Oculus, Facebook, and the Revolution That Swept Virtual Reality」も紹介された。近藤氏と吉田氏によると,赤裸々な資料も掲載されており,非常に面白いとのこと
 吉田氏は,PS VRやOculus RiftなどのVRデバイスが出てからこれまで,ユーザーの不満が技術の進展によって着実に解消されてきたが,そのスピードは想定以上であり,今後も多くの企業が投資する限りは同様だろうと展望を語った。
 またVRに関わるデベロッパは全体的には減っている一方,2本3本と作を重ねているデベロッパのVRコンテンツのクオリティは確実に上がっていることや,VRが普及するためには多くのユーザーが毎日使うことが必須であり,インストールベースが拡大している現状は期待できることなどにも言及していた。

 近藤氏は,映画「レディ・プレイヤー1」を観直して,「これはOculus Questじゃないか」との感想を抱いたとのこと。実際,夫がOculus Questを買ったら,妻が独占してしまい,結局もう1つ買うことになったというケースもあるそうで,「VRがブレイクスルーする第1歩まで来ているのではないか」と語った。
 また先日,Oculusに日本のアニメなどが好きな人材が入社したそうで,今後Oculus Storeに日本のコンテンツが増える機会も増えるのではないかとも話していた。

 佐々木氏は,トレーニングや教育に関するVR/MRコンテンツの問い合わせが急増しているとし,「この1〜2年はVRの話題が少なくなっているが,企業からのアプローチが増えているので,むしろこれからが本番と言える」と展望を語った。
 その一方で,企業向けのVR/MRコンテンツを手がけるデベロッパも増えており,作り手としては価格競争という課題も生まれているという。

 鈴木氏は,VRやMRに対する熱量が桁違いに違う人材が市場を開拓しないと,さらなるブレイクスルーは起きないのではないかとの見解を示した。とくにこの1〜2年は技術やデバイスが進化し,やりたいアイデアも増えている半面,人々に届いている体験価値は鈍化しているように感じるそうだ。そこで鈴木氏自身も含め,今VRやMRに取り組んでいる人材が,より市場開拓に注力していかなければならないと考えていると話していた。

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