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「Shape of Dreams」はMOBAとローグライクの融合を試みた協力アクションで,2024年9月にSteamでリリース。運も味方し,リリースから3か月で100万本を販売した。インディー業界にいる人,あるいはこれから目指す人に向けたケーススタディである。
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インディーは何に集中すべきか。シム氏は,ゲームの主要素を3つに整理する。ビジュアルは人を強く惹きつける「フック」であり集客手段,感性的な要素はIPに力と寿命を与え,ゲームプレイは来た人を本能的な楽しさでつなぎとめる根源的要素だ。「私たちはエンジニア2人で,絵を描ける人もいなかった。だからゲームプレイにしか集中できなかった」。
その判断の前提にあるのがSteam市場の特性だ。バナー広告のような従来型マーケティングは効きにくく,ユーザーはスクリーンショットや好きなYouTuberの配信を見て買う。資金力が勝つ市場ではなく,プラットフォーム内の露出(アルゴリズムの恩恵)が決定的だ。
ストアページ公開・デモ公開・正式リリースのたびにSteamは一定期間ゲームを上位露出し,そのパフォーマンスが良ければ露出を延ばす。とくにデモは,プレイヤー数が多く,集まるのが速く,リテンションが高いほど有利になる。「2025年2月のSteam Next Festでは,上位10本のうち8本がオンライン協力プレイのゲームだった」とシム氏。協力プレイは口コミと連鎖的な流入に強く,高い同時接続を維持しやすい。そこで彼らはデモを主要なマーケティング手段かつアイデア検証手段として活用することを決めた。
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2年9か月の開発期間中,彼らはデモを約70回更新し続けた。パッケージゲームでありながら,貴重な約1か月の開発期間をデータ収集ツールの導入に充てた。技術スタックはUnity Gaming Servicesによる主要イベントのアナリティクスと,中央サーバーを持たないためのセーブデータ収集(OSSのSupabaseを活用)。
最初の事例は操作方法だ。MOBA風にQWERでスキル・右クリックで移動という操作だったが,FGT(IndieBoostLabを利用,約60人)で「WASDはどこへ行った」という声が殺到。FGT中に急いでWASD操作とRPG風操作を追加し,使用率の指標も同時に収集した。結果,半数以上が一気にWASDへ乗り換え,RPG操作はほとんど使われなかった。
RPG操作は「声の大きな少数派」の意見だったと判断して保守コストの観点からサポート終了,WASDは必須と判断。この判断でユーザーの流入経路が2倍以上に広がったという。
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次は難易度。「難しすぎる」という声が多かったが,無料デモゆえ既存ファネル外のユーザーが流入した可能性もある。そこで死亡率を算出すると,最初の「激動の森」で45%,「溶岩地帯」で50%が死亡していた。本来1面はユーザーをやさしく定着させる場のはずが,初心者を切り捨てていたのだ。
森の死亡原因1位は雑魚のクモの遠距離攻撃で,弾速が速く発生前ディレイが短すぎた。これをナーフすると死亡率は正常化した。溶岩地帯の1位は1秒後に爆発する攻撃で,同時プレイ人数でグルーピングすると4人プレイ時の死亡率が70%に跳ね上がっていた。
プレイヤーが多いほど難易度が上がるアルゴリズムで物理的な回避スペースが消えていたためで,溶岩エレメンタルの出現数やスキル範囲を調整した。「ユーザーフィードバックだけでは分からなかった原因を,指標分析で把握できた」とシム氏。
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3つ目はアップグレードツリー(メタプログレッション)。「結局みんな同じビルドしか使わない」という声に対し,使用率の低いものをバフしていった。ただし星のアンロックにはレベル要件やキャラ人気の偏りがあり,単純な使用率では弱さを判断できない。
そこで,直近1か月以内にプレイしプレイ時間5時間以上のコアユーザーのセーブデータだけを抽出し,Pythonでアンロック数・使用率を集計,Excelで可視化して,ヒーローごとに使用率下位を抽出してバフ・リワークした。
これら3例を通じてシム氏が伝えたのは,ユーザーフィードバックとデータは相互補完的だ,ということ。フィードバックは「理由は分からないが不快だ」という直感的感情から問題を認識する出発点になり,データはそれを検証し,解決策や事後判断の客観的根拠になる。「データがないと,声の大きな少数派にゲームが振り回され,誤った判断をしやすい」。フィードバックの入手先としては,FGT,ブース(口を出さず苦戦を見る),デモやSteam・itch.io,知人(“話半分”くらいで聞く),自前コミュニティを挙げた。
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一方でシム氏は,この手法が万能でない点も率直に語った。サンプルサイズが確保でき,プレイ時間が積み重なるジャンルが有利で,リニアでストーリー重視のゲームには不利。無料デモをライブ運営するにはリソースがかかり,コンテンツを出しすぎると正式版の購入意欲が弱まる(デモだけで30〜50時間遊ぶ人が続出した)。
さらにデモ・プロローグ・ブース版・内部版など複数ブランチの管理オーバーヘッドも大きく,一度はデモに正式版コンテンツが紛れ込み朝4時まで緊急修正したこともあったという。
まとめとしてシム氏は,「『Shape of Dreams』はデモを開発の原動力として活用し,マーケティングにもゲーム改善にも使い,非常にアジャイルに反復した。デモでライブサービスのような運用までしていた」と総括。「PCインディーでもアナリティクスは入れる価値がある。ただしジャンル特性やチームの実力を総合的に考慮してほしい」と結んだ。
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Q&Aでは,2年もフィードバックが続いた理由を問われ「フィードバック期間を延ばそうとしたというより,CCU・リテンション・プレイ時間が伸びる設計に注力した結果,母数が多く長期間得られた」と回答。企画と開発の対立については「“不快だ”という指摘はたいてい正しいが,“だからこう直すべき”という具体的解決策の9割は外れる。システムを深く理解する企画担当が悩み,問題提起だけをユーザーにしてもらうイメージ」とした。
パブリッシャ(NEOWIZ)の支援については,QQ・WeChat・Heyboxなど別コミュニティを使う中国ユーザー(プレイヤーの2〜3割)のフィードバック収集で大きく助けられたと説明。ローグライクなのに協力プレイを初期から想定した理由は「自分が協力ゲーム好きだったことに加え,口コミマーケティングと,キャラ同士がぶつかり合って物語が生まれるダイナミズムというビジネス上の利点」。厳しいフィードバックへのメンタル対処(中国ユーザーの罵倒で逆に鍛えられた),ボツにした企画(大きな一枚マップ→複数マップへ3か月かけて修正),デモ更新とSteam Next Fest戦略(新コンテンツは出さず限定コスメでFOMOを作り既存ファンを呼び戻す),1面の死亡率目標を10〜20%に置いた根拠(愛するRisk of Rain 2を基準に想像)など,実践的な質疑が続いた。




















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