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“体感ゲーム”から“体験の共有”へ。日本ではなじみの薄い,欧米アーケードゲームのデザイン,店舗形態,文化変遷の30年をひもとく[CEDEC 2026]
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印刷2026/07/30 15:11

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“体感ゲーム”から“体験の共有”へ。日本ではなじみの薄い,欧米アーケードゲームのデザイン,店舗形態,文化変遷の30年をひもとく[CEDEC 2026]

 2026年7月22日から24日に開催されたCEDEC 2026の3日目,「欧米アーケード1995-2025:家庭用との差別化とプレイヤー層拡大が導いた30年のデザイン変化」と題したセッションが行われた。

 講演者はかつてセガに在籍し,現在はSega Amusements Internationalでプロデューサー業務に携わる小笠原 慎一氏。セガ在籍時代から現在まで,30年にわたってアーケードゲームを手がけているクリエイターだ。

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 同氏が長く携わってきた,国内ではあまりなじみのない,欧米におけるアーケードゲーム市場について,1995年から現在までの歴史軸とデザインなどにおける変遷を,自身の経験を踏まえて解説した。


欧米アーケードゲームの基礎知識


 欧米のアーケード市場は日本とは大きく異なっていて,アーケードゲームの多くが,「ファミリー・エンターテインメント・センター(FEC)」と呼ばれる複合娯楽施設に設置されている。ボウリングやゴーカート,ミニゴルフ,レーザータグ(赤外線シューティング),レストランなどが併設され,その一角にアーケードエリアがあるという構成だ。

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 FECに訪れる客層のモチベーションは“特定のゲームを遊びたいから行く”のではなく,“仲間やファミリーで総合的に楽しむ”こと。単独のプレイヤーはほぼおらず,家族や友人とのレジャーを構成する一要素として存在している。

 そうしたロケーションに設置されるアーケードゲーム機は,日本には存在しない「チケットリデンプションゲーム」が6〜7割を占めている。ゲームを遊んで獲得したスコアに応じて「チケット」が排出され,そのポイントに応じて景品交換所で景品と交換する仕組みだ。
 日本では法律の関係で一般的ではないが,欧米や一部のアジア地域ではアーケードにおける重要な仕組みとして定着している。

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時代ごとに見る欧米アーケード30年


 欧米アーケードの基礎知識を踏まえ,小笠原氏がゲーム開発に従事した1995年から現在までの30年を振り返った。

■【1995年〜1999年】体験価値の拡大と「黄金時代」

 小笠原氏がゲーム業界に入った1995年から2000年代にかけては,アーケードゲームが体験価値を拡大し一般化した時代だ。大型モニターや可動筐体,リアルな3DCG,専用コントローラなど家庭用ゲームでは味わえない体験型のゲームが台頭。「ジョイポリス」「ナンジャタウン」「Sega World」「GameWorks」など,大規模な屋内型エンターテインメント施設も誕生した。

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 さらに日本特有の「プリント倶楽部」や大型プライズゲーム機の登場によって,女性やファミリーなど幅広い客層を取り込むことに成功する。小笠原氏は「この頃の日本のロケーションは世界最強だった」と振り返った。

■【2000年〜2004年】日米で大きく分岐した「客層拡大」のアプローチ

 2000年代に入ると,日本と欧米のアーケード市場は新規客層獲得のための施策が大きく変わり,それが分岐点になったという。

 日本では新規ユーザーを呼び込むため,新ジャンルの創出とともに,目的意識の高いコミュニティを作り,付加価値を提供するアプローチを行った。その象徴タイトルとして挙げられたのが,セガの「DERBY OWNERS CLUB(ダービーオーナーズクラブ)」(1999年)だ。
 競走馬の育成データを保存するICカードをアーケードゲームで初めて導入,長期間にわたってプレイできる仕組みを確立し,“競馬ファン”という新たな客層を呼び込むことに成功している。

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 一方この頃の欧米は日本とは逆の発想で,“今店舗に来ている人たちに,もっとたくさんゲームを遊んでもらおう”というアプローチが主流に。
 その起点となったのが,レストランやスポーツバーとアーケードを融合した「Dave & Buster's(D&B)」である。ゲームに限らない幅広い娯楽が楽しめることで,客はファミリーで訪れ,大人は食事やスポーツ観戦,子どもはゲームを遊ぶといった,FECの原点となる“滞在型ロケーション”が確立される。

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 これによりアーケードゲームは飲食やスポーツ観戦などと同等の大衆娯楽となり,遊ぶこと自体よりもソーシャル(社交)的な要素が強まって,ゲーム内容も“幅広いユーザーが短時間で何度も楽しむ”内容へと変化していく。

■【2005年〜2009年】家庭用ゲームの進化に対する“アトラクション型”へのシフト

 2000年代の後半は「家庭用ゲームとアーケードゲームの差別化が本格的に始まった時期」だと小笠原氏は独自に分析している。

 任天堂の「Wii」(2006年)によって,アーケードゲームの強みであった“身体を動かして遊ぶ体験”が家庭でも楽しめるようになった。さらにはハードウェア性能の向上や家庭用大型テレビの進化によって,自宅でもハイクオリティな映像でのゲームが遊べるようになった。

 家庭用ゲームに対するアーケードゲームの優位性が大きく縮まったことを懸念した欧米アーケード市場は,より体験性を重視した大型アトラクションへと舵を切っていく。その救世主となったのがBay Tekの「Big Bass Wheel」(2008年)だ。

 全高約3mにも及ぶ巨大な筐体の中央には大きなホイールがあり,遊び方は“手元のレバーを下げてホイールを回す”というごく単純なもの。筐体の大きさによるインパクト,極めて低く設定され誰にでも遊べるスキル性,30秒ほどで終わる高回転率などが特徴だ。「この頃のあらゆるビデオゲームがこのBig Bass Wheelにインカム(売上)で勝てなかった」と小笠原氏が力説するほどのヒット作となり,各社もこれに追従。新型のリデンプション機がFECの中心的存在となっていく。

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 また,この時期にはセガの「OutRun 2 SP」(2004年),ナムコの「マリオカート アーケードグランプリ」(2005年)などの登場で,欧米では男性向けのイメージが強かったレースゲームを女性や子どもも楽しめるようになった。
 小笠原氏自身が開発に携わったセガの「Let's Go JUNGLE!」も,ガンシューティングをファミリー向けに再設計したものだ。

■【2010年〜2014年】リデンプション機の進化と,モバイルIPの台頭

 この頃からは,リデンプション機にビデオゲームを融合した「ビデオ・リデンプション機」も登場した。プレイ時間が短く,映像の性能などを求める必要がなくなり,参入の敷居が下がったことで,韓国,オーストラリア,カナダ,中国などのメーカーも頭角を現していく。

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 また,この時期におけるタイトルの傾向として,“スマートフォン向け人気タイトルのアーケード化”というものがあり,「Temple Run」「Fruit Ninja」「Flappy Bird」などが大型筐体のアーケードゲームとして登場している。

 日本式ゲームセンターの代表格である「ラウンドワン」が2010年にアメリカへ進出したことも,市場拡大を象徴する出来事として紹介した。

■【2015年〜2019年】「強力IP」と「大型筐体」による差別化

 FECの市場拡大による類似製品が増えてきたことで,タイトルごとの差別化が急務となり,次の一手となったのが強力IPとのコラボレーションだ。Raw Thrillsの「Jurassic Park Arcade」(2015年),「Halo: Fireteam Raven」(2018年)といった著名なIPを活用することで,よりカジュアルな層を取り込み,IPの内容に合わせた新しいルールやゲームシステムへの挑戦も可能となった。

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 また商業用VRが出てきたのもこの頃だ。LAI Gamesの「Virtual Rabbids: The Big Ride」(2017年)は,非インタラクティブ型のライドアトラクションにVRを組み合わせたもので,ゲーム的な要素がないぶん安全性が高く,専用スタッフの配置が不要というVR機器における運営の課題もクリアしている。

■【2020年〜2025年】コロナ禍を越えた“ソーシャルの再発見”と東西の接続

 2020年には新型コロナウイルス(COVID-19)による世界的なパンデミックが発生した。アメリカやヨーロッパでは隔離政策としてロックダウンも実施され,アーケードゲーム業界は大きな打撃を受ける。

 その経験を経て,多くの人が直接会って同じ空間と体験を共有するソーシャルの重要性が再認識され,新たな施設形態が確立された。
 このときに生まれた“ソーシャルゲーミング施設”は,ファミリー向けのFECとは異なり,ダーツやゴルフ,レースシム,クレー射撃など特定のテーマ性を強め,大人のグループが体験を共有することを価値としている。

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 またUnityやUnreal Engineなどの普及により,新規メーカーが続々と参入した。中国メーカーは価格や開発スピードで大きな存在感を示し,現在ではオリジナルIPも手掛けるようになった。
 そして日本のメーカーもプライズや音楽ゲームなどを武器に海外展開を加速し,「今後再び欧米と日本のアーケード文化が近づいていくのではないか」と小笠原氏は予想している。

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「ソーシャル(社交)」がキーワードとなる,これからの欧米アーケード市場


 これからの欧米アーケードの未来において重要なキーワードは「ソーシャル」だと小笠原氏は語る。「集まって,体験して,交流して,共有することは家庭用ゲームにはできない」と強調し,コロナ禍によって限界が見えたオンラインでは代替できない価値が改めて認識されたのだという。

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 さらには遊ぶ本人だけではない,周囲の観客をも巻き込む空間全体で楽しめるゲームが増えていくと予想。ランキングシステムは個人のハイスコア競争ではなく,複数タイトルを横断する実績やグループスコアなど,仲間内で盛り上がれる内容へと進化していく可能性を示唆した。

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 小笠原氏は「これからのアーケードゲーム機は,人や空間,IPをつなぐ体験型メディアへと変わっていく」と予測し,講演を締めくくった。

 筆者も比較的長い間ゲーム業界でライターや記者としての仕事をしていながら,ほとんど認識することがなかった近年の欧米のアーケード事情。とくに小笠原氏が近い未来に予測する“欧米と日本のアーケード文化の再接近”には強く興味を引かれた。これからの10〜20年で,国内外のアーケード業界に一体どのような変化が起きていくのか,その動向には注目していきたい。

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