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IGDA日本が主催するシリアスゲームサミットは,教育,医療,企業研修,社会課題など,さまざまな分野の課題解決に活用される「シリアスゲーム」をテーマにしたイベントだ。
初日の本セッションに登壇したのは,一般社団法人Dr.GAMES代表理事で,総合診療専門医・家庭医療専門医の近藤慶太氏。学生時代には慶應大の謎解きイベント制作団体「K-dush2」を立ち上げ,リアル脱出ゲームや謎解きイベントの制作にも関わってきた人物である。
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現在はDr.GAMESで「医療×ゲームで人々を健康に」を掲げ,今回のセッションでは「ゲームプレイヤーの健康への介入」「ゲームによる疾病への介入」「ゲームを用いた医療への介入」という3つの軸でDr.GAMESの活動が紹介された。
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1つめの「ゲームプレイヤーの健康への介入」で語られたのが,eスポーツプレイヤーへの支援だ。
近藤氏は,eスポーツプレイヤーの腰痛や首の痛み,腕の痛みといった体の不調は,フィジカルスポーツの選手と同じくアスリートの問題として向き合うものだと説明。eスポーツをスポーツ医学の文脈で捉え,スポーツドクター,精神科医,眼科医,理学療法士らによる連携の必要性も語った。
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Dr.GAMESではスポーツドクターと理学療法士が共同で開発した「ゲーマーズエクササイズ」を公開し,また高校生eスポーツ大会「STAGE:0」や自治体事業への協力など,啓発だけでなく実際の現場での支援も進めている。
続いて語られたのは「ゲームによる疾病への介入」――ゲーム障害 / ゲーム依存症によってゲームとの付き合い方に悩む人たちへのアプローチだった。
象徴的だったのが,「ゲームの終わらせかたガイド」の取り組みだ。
近藤氏は,ゲームを一方的に悪者として扱うのではなく,使用者本人,家族,教職員それぞれに応じた支援が必要だと話す。時間を決めて無理に取り上げるのではなく,その状況やタイトルにあった“うまい終わりかた”を見つけ,積み重ねていくことを重視したもので,親子の会話のきっかけにもしてほしいという。
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筆者も小学生の子どもがいるので,この話はかなり身近なものだった。
子どものころからゲームに触れてきたぶん,「このバトルが終わるまでね」「このイベントでキリがよくなるよね」というゲームの区切りが分かるが,ゲームに親しんできていない保護者にとってはその見極め自体が難しいはず。そうした考え方を共有していくこと自体,大事なのだと感じさせられた。
実際,オンライン相談や外来診療,学校向け出張授業も含め,ゲーム文化を理解したうえで現実的な付き合い方を提案しているそうだ。
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「ゲームを用いた医療への介入」の話では,ゲームを用いて医療を届ける取り組みが語られた。
香川のゲームイベントでは,白内障や緑内障の見え方を再現する体験用メガネを装着してゲームをプレイしてもらう展示を行った。説明だけでは伝わりにくい症状も,実際に“体験してみる”ことでぐっと身近になる。ゲームを医療の入口として使う,分かりやすい実例といえそうだ。
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さらに近藤氏は,自身の大きな武器でもある“謎解き”にも触れている。
知識がなくても参加しやすく,子どもから大人まで一緒に楽しめて,協力や役割分担も自然に生まれる。そうした特徴から,謎解きは医療教育とも相性がいい。
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その実践例として紹介されたのが,HPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチン啓発のために制作した謎解きコンテンツである。
近藤氏は,若年層に届けるべき医療情報としてHPVワクチンを取り上げ,謎解きを用いた啓発を実施。女子大学生を対象に,謎解きのみを体験した群,講義を受けた群,何もしない群を比較した研究も行ったという。
結果としては謎解きよりも,講義を受けた群のほうが知識の定着や実際の接種行動という面で高い成績を示した。
ただ近藤氏はそこをネガティブには捉えていない。むしろ,謎解きは楽しく参加できる優れた手法ではあっても,それだけで行動変容を起こせる万能の魔法“ではない”という現実が見えたことに意味があると語る。
医療者による説明や講義と組み合わせることで,ゲームはより大きな力を発揮する。そうした冷静なスタンスもまた,今回の講演の大きなポイントだった。
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講演全体を通して感じられたのは,近藤氏がゲームを過大評価していないことだ。
ゲームには,人を惹きつけ,学びや気づきを生み出す力がある。一方で,適した使い方や届く範囲には限界もある。その両方を見据えたうえで,ゲームの“いいところ”を医療へどうつないでいくかを考える。近藤氏の話からは,そんな姿勢が一貫して伝わってきた。
eスポーツプレイヤーの身体を守ること。ゲームとの付き合い方に悩む家庭や学校を支えること。そして医療をもっと身近なものとして届けていくこと。Dr.GAMESの活動は,医療とゲームのあいだにある距離を,ひとつずつ現実的なやり方で縮めているように見えた。
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