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“闇の森”の先にある北極星を目指して。Blizzard中興の祖,Rob Pardo氏が経験した呪いと挫折,そして辿り着いた境地を語る[GDC 2026]
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印刷2026/03/13 20:45

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“闇の森”の先にある北極星を目指して。Blizzard中興の祖,Rob Pardo氏が経験した呪いと挫折,そして辿り着いた境地を語る[GDC 2026]

現在はBonfire Studiosを率いて「Arkheron」を開発中のRob Pardo氏。1997年にBlizzard Entertainmentに入社して以降,数々の名作で陣頭指揮を執った,同社の心臓部であった
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 サンフランシスコで開催中の「GDC Festival of Gaming 2026」で,久々にRob Pardo(ロブ・パードゥ)氏が壇上に立った。
 かつてBlizzard Entertainmentのプレジデントとして,「World of Warcraft」「StarCraft」「Hearthstone」といった,文字どおりゲーム史を塗り替えたタイトル群の開発を指揮したベテランの開発者である。2010年のGDCで彼が語った「ゲームデザインの方程式」は,いまなお多くの開発者の指針であり続けている。

 2014年にBlizzardを離れたあと,Pardo氏はBonfire Studiosを設立。現在はMOBA的な要素を取り入れたバトルロイヤルゲーム「Arkheron」を開発中で,すでにプレイテストも行われている。長らく公の場での発言を控えてきた彼だが,今回,実に15年ぶりにGDCのステージへと戻り,「ずっと残るゲームを作るための旅路」(An Odyssey in Building Games That Last)と題した基調講演を行った。

 しかしその内容は,成功したベテラン開発者による勝ち誇ったメソッドなどではなかった。むしろ彼は,自身のキャリアにおける「史上最大の失敗」をあえてさらけ出しながら,創造という営みがいかに不条理で泥臭いものかを語ったのだ。それは一種の自戒であり,同時に次回作への希望を示したメッセージだったのである。

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 「World of Warcraft」や「StarCraft II」など,話題に事欠くことのないBlizzard Entertainmentは,自らの失敗を糧に成功を掴んできた。そう語るのは,いまや同社の顔役になりつつあるエグゼクティブ副社長,Rob Pardo(ロブ・パードゥ)氏だ。このPardo氏が,Game Developers Conference 2010でレクチャーを行い,Blizzard Entertainmentの掲げる「デザイン・スタンダード十一か条」を提示したので,それらをまとめておこう。

[2010/03/12 21:02]


「フォーエバーゲーム」という甘美な毒薬


 Pardo氏がまず切り出したのは,昨今の業界を席巻している「ライブサービス」「フォーエバーゲーム」という言葉に対する警戒感だ。
 フォーエバーゲームとは,とくに今回のGDCで聞かれるようになったコンセプトだ。これは「Roblox」や「Fortnite」「League of Legends」「Dota 2」,そして「World of Warcraft」(以下,WoW)といった,10年以上にわたって運営が続き安定した価値を生み出す一方で,ゲーム市場における一極集中の要因にもなっている,ごく一部のタイトル群を指す言葉である。

 投資家やパブリッシャーは,一度ヒットすれば数十年単位で収益を生み続けるWoWのようなビジネスを夢見ている。Pardo氏は,「WoWの没入感と,『あつまれ どうぶつの森』のコミュニケーション要素を組み合わせれば最強のゲームができる」といった,パワーポイント上の安易な足し算が,今日もどこかの会議室で行われているだろうと皮肉る。
 そして,「優れたゲームは完成してしまえば直感的でシンプルに見える。しかし,そこに至るまでの無数の試行錯誤や,チームが拠り所としてきた“北極星”(指針)は,完成品の中には見えない形で埋もれているのだ」とも語っている。

 例えば,「あつまれ どうぶつの森」を単なるコミュニケーションツールと定義するのは容易だが,その手触りを他者が再現するのは至難の業だろう。Pardo氏によれば,2026年で22周年を迎えるWoWですら,当初は4〜5年運営が続けば大成功だと考えられていたという。つまり,最初から「フォーエバーなゲーム」を設計できた者など,一人もいはしないのだ。

かつてのGDCで,「あつまれ どうぶつの森」がプレイヤー同士のコミュニケーションを意識して開発されていたという話を聞いて,感銘を受けたというPardo氏。しかし,そのエッセンスを復元するのは無理だったそうだ
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「Project Titan」の灰の中から生まれたもの


 セッションのハイライトは,Pardo氏が自らの「最大級の挫折」として挙げた「Project Titan」についての回想だろう。
 Blizzard Entertainmentが「World of Warcraft」を超える次世代MMORPGとして総力を挙げて取り組んでいたこのプロジェクトは,数年の歳月と天文学的な予算を費やした末,この世に出ることなく2014年に中止された。Pardo氏はその責任を取り,同年にBlizzardを去ることとなる。

 Pardo氏はこのプロジェクトについて,自分が「犯し得るすべての間違いを犯した」と告白する。
 ゲームの核心が固まる前に技術開発を急ぎすぎ,あらゆる方面にイノベーションを求めた結果,プロジェクトは収拾がつかなくなってしまった。さらに,面白さのループが見つかる前の段階で,開発チーム「Team 4」を100人以上の規模へと急拡大させてしまったという。
 そして何より,すでに経営陣の一角として多忙を極める立場にありながら,ゲームディレクターというフルタイムの役割を兼任しようとした自らの野心と愚かさを,今回のトークセッションで彼は包み隠さず語った。

「Project Titan」の逸話は筆者も聞き及んでいたが,このアートワークを初めて見た。Pardo氏によると,サイバーパンクシューティングを柱にしたMMORPGになる予定だったらしい
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 しかし,この惨憺たる失敗の果てに,一つの奇跡が生まれる。プロジェクト中止後,残された少数のメンバーは,瓦礫の中から「Project Titanで何が機能していたのか」を必死に探し出したのだ。それは,特定のクラス(ヒーロー)同士が激突する戦場の面白さだった。この核となる要素を抽出し,まったく新しい世界観で再構築した作品こそが,後の「Overwatch」である。

 その発表時,筆者もBlizzard Entertainmentを取材したものだが,Pardo氏の後を継いだJeff Kaplan氏ら主要メンバーが感無量の様子だったのも,こうした内情があったからだろう。このエピソードは,ゲーム開発における失敗が単なる損失ではなく,クリエイティブな営みにおける不可避のプロセスであることを示す好例と言える。

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[2016/04/11 11:01]


ヒットを予見する「魔法の瞬間」


 そんなPardo氏だが,開発中に「このゲームはヒットする」と確信する瞬間があるという。
 それは,データが右肩上がりになったときでも,パブリッシャが太鼓判を押したときでもない。開発チームが「作ること」よりも「プレイすること」に夢中になり,昼休みになっても席を立たず,勝手にプレイテストを延長し始めたときである。

「開発者が自分たちのゲームに恋をする。これこそが最も重要なマイルストーンだ。未完成の開発ビルドであっても,世の中にあるどの完成された名作よりも面白いと感じ,自分たちの手で毎日それを改良できることに喜びを覚える。この熱狂こそが,最終的にプレイヤーを動かす唯一のエネルギーになる」

 Pardo氏のこの言葉には,面白いゲームが生まれる“魔法の瞬間”が凝縮されている。
 逆に言えば,Pardo氏が中止を決断した「Project Titan」には,最後までこの瞬間が訪れなかったということだ。
 作り手が愛せないものを,受け手が愛してくれるはずがない。この極めてナイーブで,かつ残酷なまでに本質的な真理こそが,彼が30年のキャリアで学んだ最大の教訓なのだろう。

成功を確信する瞬間は,開発者自身がプレイを止められなくなる瞬間が訪れたときだとPardo氏は語った
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Bonfire Studiosでチームという「種」を育てる


 現在,Rob Pardo氏が率いるBonfire Studiosでは,こうした反省を踏まえ,「チームが一丸となることから始める」というユニークな開発体制が取られている。
 彼らはまずゲームの企画書を書くのではなく,チーム全員が「種(Seeds)」を持ち寄ることからスタートするという。それは数枚の絵であったり,一曲の音楽であったりと形はさまざまだが,そこから全員で議論と投票を重ね,徐々に「苗(Saplings)」へと育てていくのである。

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 投資家に対しても,「どんなゲームを作るか」ではなく,「どんなチームで,どんな会社を目指すのか」というミッションへの投資を求めたそうだ。ゲームのビジョンは開発の過程で必ず変わるが,優れたチームという根幹さえ揺らがなければ,何度でも立ち上がれるからである。

 現在開発中の「Arkheron」も,当初のビジョンから大きく姿を変えている。元々は「ダンジョン・ロワイヤル」という協力と裏切りを軸にしたコンセプトだったが,プロトタイピングを繰り返す中で,操作感やカメラの視点は何度も作り直された。
 Pardo氏が目指したのは「垂直スライス」を整えることではなく,「最小限の愛されるゲーム(Minimum Lovable Game)」を作ることだ。一回の戦闘,一つのアクションが理屈抜きに愛せるレベルに達するまで,彼らは内側から外側へと執拗に磨き上げたという。

ゲーム制作の基本はチームを育てていくこと。それがPardo氏が培った哲学だ
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北極星は「闇の森」の先にこそある


 Pardo氏は,開発の中盤に必ず訪れる絶望的なフェーズを,J・R・R・トールキンの著作に登場する「闇の森(Mirkwood)」になぞらえながら,出口が見えず,これまでの努力がすべて無駄に思える暗闇と表現した。
 だが氏によれば,それこそが「創造的な発見のプロセス」そのものであり,ゲーム開発が決して直線的な道のりではないことの証左であるという。

「嵐があり,見当違いの方向転換があり,予期せぬ障害が立ちはだかる。それはまさにオデッセイ(旅路)だ。だがチームが団結し,自問自答することをやめなければ,必ず出口は見つかる。それは入ってきたときとは違う道かもしれない。だが辿り着いた場所には,当初の想像をはるかに超える何かが待っている」

 Pardo氏はセッションの最後に,現在開発している「Arkheron」のプレイテストが,Bonfire Studiosのオフィスで「予定時間を大幅に過ぎても続けられている」ことを,少し照れくさそうに告白した。
 巨大な企業の重圧から解放されたPardo氏は今,再び,自分たちの作ったゲームに恋をしているようだ。

装備したアイテムによるキャラクタービルドが特徴の「Arkheron」。最近は頻繁にプレイテストが行われており,正式リリースにも期待がかかる
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 AIが開発者会議のメイントピックとなり,効率や指標が優先される現代のゲームシーンにおいて,Pardo氏の言葉は古い理想論のように聞こえるかもしれない。しかし,彼が歩んできた数々の「遭難」と「帰還」の歴史を思えば,その理想論こそが,我々が愛してやまない「ゲーム」へのときめきを存続させるための,唯一の北極星なのかもしれない。そう感じさせられたセッションだった。

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