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これがスマホでハクスラだ。「ラストイデア」に20年を注いだハクスラ沼の住人と,それを支えるプロデューサーたち
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印刷2019/04/27 12:00

インタビュー

これがスマホでハクスラだ。「ラストイデア」に20年を注いだハクスラ沼の住人と,それを支えるプロデューサーたち

 ガチャなしのハック&スラッシュを喧伝している,スクウェア・エニックスの新作「ラストイデア(LAST IDEA)」iOS / Android)だが,こんなスマホゲームの定石から外れた作品を手がけたのは,一体どのような人たちなのだろう?

 今回は配信直前のこと,プロデューサーの大槻林太郎氏白井慎一氏,本作の原案を持ち込んだディレクターの野久保公朗氏にインタビューをしてきた。これは挑戦と苦労,期待と不安のなかで突き進んできた,3人の男たちの話である。

左から大槻林太郎氏野久保公朗氏
画像(001)これがスマホでハクスラだ。「ラストイデア」に20年を注いだハクスラ沼の住人と,それを支えるプロデューサーたち

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 スクウェア・エニックスの新作スマホゲーム「ラストイデア(LAST IDEA)」が今春に配信される。今回はトレジャーハンティングRPGを謳う本作を先んじて触れてみたのだが,どうやらこのゲームは“王道の皮を被ったゴリゴリの悪魔(ハクスラ)”のようである。

[2019/03/22 00:00]
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[2019/04/26 12:00]

「ラストイデア」公式サイト

「ラストイデア」ダウンロードページ

「ラストイデア」ダウンロードページ



「お手軽に遊べるガチガチのハック&スラッシュ」


4Gamer:
 今日の最後にですね,「俺にとってのハクスラ」をお聞きしますので,皆さん考えといていただけますか。エモーショナルな感じのやつを。

大槻林太郎氏(以下,大槻氏):
 エモーショナル?

白井慎一氏(以下,白井氏):
 エモく?

野久保公朗氏(以下,野久保氏):
 エモくってなんだ。

4Gamer:
 それが問われるわけですね。それではインタビューをはじめていきますが,まずはそれぞれ自己紹介をお願いします。

野久保氏:
 ディレクターの野久保です。僕は元々プログラマーでして,弊社のコンシューマゲームやスマホゲームでプログラムを担当してきたのですが,その間にラストイデアのアイデアが生まれて,企画書やモックを作ったりしてきて,今に至ります。なので,今回がディレクター初挑戦となります。大槻や白井には毎日叱られながら頑張っています。

大槻氏:
 まあまあ。僕は弊社では「デッドマンズ・クルス」の運営などを担当していましたが,MMORPGに長く携わっていた経験もあって,プロデュースと開発,そして運営が主な業務です。本作ではプロデューサーとして,野久保が持ち込んできた企画案をもとに,2人で立ち上げてきました。

4Gamer:
 となると,2人はある種の共同体みたいな。

大槻氏:
 そうですね。そんな感じです。

画像(002)これがスマホでハクスラだ。「ラストイデア」に20年を注いだハクスラ沼の住人と,それを支えるプロデューサーたち

白井氏:
 僕も役職はプロデューサーなんですが,弊社にジョインしたのが2018年6月くらいだったので,開発初期のことはあまり知らず,2人とも仕上げ段階からの付き合いです。

大槻氏:
 今回は僕と白井の連名(プロデューサー)なんですよ。

白井氏:
 まあ,プロデューサーという名の雑用ですけどね。

大槻氏:
 それ言ったら,プロデューサーなんてみんなの雑用ですよ。

野久保氏:
 俺だってもはや,みんなのサンドバッグだよ。

4Gamer:
 「美しい支え合い」とか書いときますね。さて,本作はトレジャーハンティングRPGを謳っておりますが,つまり,どんなゲームでしょう。

大槻氏:
 はい。本作は“スマコマ”(スマートフォンならではの直感的な操作でアクションを行うことができるシステム)を使って,無数の敵を倒しながら,トレジャーハントで一喜一憂し,主人公たちの大冒険を追ってもらい,その先で自分だけのキャラクタービルドを追求してもらうゲームです……が,4Gamerの読者さん向けに一言でまとめると「スマホでお手軽に遊べるガチガチのハック&スラッシュ」です。

白井氏:
 楽しみの中心はビルドでして,王道のハクスラ作品のキャラクタービルドのように,成長の多様性を確保しました。本作では10種類以上のスキルツリーのなかから,自由に3つのツリーを組み合わせてもらうという,挑戦的な仕様を採用しています。最新装備がないとついていけないゲームでもなく,人それぞれの速度で理想に向かってもらいます。

4Gamer:
 目玉のスマコマは,どのような発想から生まれたんでしょう。

野久保氏:
 スマホゲームはバーチャルパッドの存在によって,アクション性が高められてきました。ですが,僕は昔からピンとこなかったんです。「体感として弱い」と思っていて。

4Gamer:
 うーん,体感というと?

野久保氏:
 操作時のリアクションの弱さですね。いかにタップで派手な演出が出ても,操作に負荷がなさすぎてイマイチでした。そんなとき,スマホ的な操作のスワイプやピンチイン,そこに僕が大好きなハクスラの技が融合したら,もっと上の体験になるんじゃないかと思い,勢いのままに資料を用意して,プレゼンしていたら,大槻が協力してくれたんです。

4Gamer:
 なるほど。バーチャルパッドによる移動や攻撃は,手軽さと最適化を踏まえてか,操作自体に負荷がないのが一般的ですもんね。そして平坦になりがちな部分を操作量ではなく,操作方法で調節すると。本作の操作がせわしないけど楽しい理由が分かりました。

野久保氏:
 ハクスラは必殺技をガンガン発動するのが楽しいので,回避よりも攻撃重視のシステムにしているのも特徴です。

大槻氏:
 入力時に「本当に直感的で気持ちいいか」は,設計面も技術面もフィードバックをもとに,細かに調整してきましたね。

4Gamer:
 それでは「ハクスラを知らない人」にとってはどうでしょう。この名称には“複雑”の意味も付いてきがちですが。

野久保氏:
 ハクスラの扱いについては,プロジェクトの最初から現在まで「野久保の考えるものは難しすぎる」と言われ続けてきたので,その度に調整してきました。

大槻氏:
 彼が最初に持ってきた原案は今よりももっとコアな,「PC向けハクスラをスマホゲームにしました」みたいな内容だったので,市場の状況を踏まえると,そのままで出すのは厳しいとひと目で分かりました。なので「ガワは王道に寄せよう」「スキルの種類を減らそう」「縦画面にしよう」「スキルツリーにキャッチーなキャラを」と,徐々にスマホナイズしていったんです。

4Gamer:
 当初は「このスキルにはサブスキルがあって,その効果はあっちのスキルにも反映されて」などと,たまらない感じの複雑怪奇さがあったんでしょうね。

大槻氏:
 おっしゃるとおりです。それを「この子が可愛いからこっちでいい」くらいの気軽さで選べるよう,コアな魅力も削らないようにと,間口を広げる努力を重ねてきたんです。

野久保氏:
 誰にでも楽しめるコアさを追求する。それがラストイデアの理念でした。

4Gamer:
 そうなると「4人協力プレイ」を取り入れるのも,時勢的に必須でしたか。

野久保氏:
 必須でした。導入に踏み切ったのは開発途中のことでしたが。ハクスラの体験には「こんなすごいビルドがあるのか」「こんな強いスキルがあるのか」など,ほかの人のプレイから驚きを得る仕組みが求められますから。

画像(003)これがスマホでハクスラだ。「ラストイデア」に20年を注いだハクスラ沼の住人と,それを支えるプロデューサーたち
大槻氏:
 自分だけのビルドに閉じこもると,シングルプレイ的な体験になってしまいますからね。ほかの人の戦い方がいい刺激になるように,マルチプレイの搭載を決めました。

4Gamer:
 ホーム画面でも,ほかのプレイヤーのビルドがすべて見られますしね。眺めているだけで暇つぶしできてしまいそうです。

大槻氏:
 プレイヤー情報を閉ざさないようにしようって考えは,開発初期からずっと守ってきたこだわりなんです。いろんな人のビルドを参考や目標にするのも楽しみとしてください。

4Gamer:
 フレンドリーだなと思ったのが,スキルなどの振り直しです。こういうのは貴重なリソースに依存することも多いので,手軽にパパッと振り直せるのは本当に楽でいいですね。

野久保氏:
 昔は「スキルポイントを振り直せないから,1たりとも振り間違えられない」みたいな,強迫観念を与えられる楽しさもありましたが,今のご時世ではさすがにストレスをかけすぎてしまいます。ただし,振り直し時のゴールド必要量は徐々に上がっていくので,中盤あたりからはそれほど気軽ではないかもです。

白井氏:
 スキルツリー自体のリセットになると,そもそも手軽じゃないですしね。

4Gamer:
 そういえば,スキルツリーのリセットに必要な「転生の宝玉」は,どれくらい価値があるアイテムなのでしょう。

白井氏:
 数は絞ります。リセット自体,どちらかというと遊びこんでからの選択肢としているので。当面は「ビルド1」「ビルド2」など,5つのビルド切り替え枠を利用して,いろいろ試してもらうことを推奨しています。

野久保氏:
 振り直しが難しすぎるわけではないんですが,ここを簡単にし過ぎると「ビルドを作り上げる」ことへの楽しさや緊張感が薄まるので,バランスのためにですね。

白井氏:
 長期的なゲームサイクルとしても,「序盤は1ビルド」「中盤から複数ビルド」「終盤にリセットして最適解を目指す」といった想定です。

4Gamer:
 そのなかだとゲーム序盤の流れは印象的でした。チュートリアル的なのに「スキルLVを上げたい」「あの機能をアンロックしたい」の原動力に突き動かされ,そこに物語やキャラクターの魅力も自然と溶かし込まれている,みたいな。当たり前の構造かもしれませんが,ゲーム体験としての導入が優れているのか,とにかく先に行きたくなりました。

大槻氏:
 そう言っていただけると,すごく嬉しいです。詰め込み型のチュートリアルにはどうしてもしたくなかったので,それぞれの段階がうまく機能しているのならなによりです。

野久保氏:
 ハクスラには,いろいろな意味で“難しいゲーム”という印象がありますから,新しいものは物語の進行に合わせて,丁寧にひとつずつオープンしていく。それでいてダレさせないように快感も与えていく。そういう設計を目指してのことです。

白井氏:
 最初からできることが多すぎると混乱しますし。プレイヤーさんには徐々に学習してもらい,ひととおり覚えてもらったころに1ビルドを完成してもらう。そんなスピード感で楽しんでいただくイメージです。スマホゲームとしては難度も高めで,ボスも「どうやって,どんなビルドで倒すか」を考えてもらいたいので,それまでに思考できるようになってもらえるといいですね。

大槻氏:
 あと,ハクスラ好きの人は「クリアするまでがチュートリアルでしょ?」みたいな考えを持っているかと思います。野久保なんか,まさにそういうタイプで。

野久保氏:
 難度を上げてからが本番ですね。

大槻氏:
 でも,それって知らない人には意味が分かりません。僕としても物語を追いながら,トレハンで喜んで,少しずつ強くなっていくゲームが好きなので,スクウェア・エニックスらしいRPG体験を守るためにも「クリアするまでずっと本番」はずっと心がけています。


「みなさんの善意で成り立っています!」


4Gamer:
 クエストは普通に挑戦する以外にも,指定回数を選べる「周回機能」,一瞬でクエストクリアになる「即時終了」も存在します。後者の即時終了に関しては,使用するためのチケットはどれくらい配布されるのでしょう。

白井氏:
 配布数は絞ります。イベント報酬として配布とかにします。時間がないときこそ利用してほしい機能ですが,恒常化するとゲーム体験が崩れてしまうので,「手に入ったらラッキー」くらいに見ておいてください。前提の利用条件である「該当クエストのSランククリア」も,それほど容易なことではありませんし。

4Gamer:
 第1章は適当にやっていてもSクリアは簡単ですが,第2章からは難度がいきなり上がって,火力や操作で補わないとSクリアを逃しますしね。なら行きつく先はどうでしょう。終盤やエンドコンテンツの領域で,プレイヤーはどのようにプレイしていくのか。

画像(009)これがスマホでハクスラだ。「ラストイデア」に20年を注いだハクスラ沼の住人と,それを支えるプロデューサーたち
野久保氏:
 基本は従来型のハクスラと同様,「ビルドの追求」と「難度変更の挑戦」とを周回してしてもらう形です。そうしたくなるような魔力も込めています。

大槻氏:
 それとマルチプレイですね。序盤は火力重視でどうとでもなりますが,中盤以降は装備品の耐性を合わせる必要が出てきます。ローンチ時点でも「これどうやって倒すんだよ」な凶悪ボスを終盤に置いていたりと,協力プレイ必須の攻略要素も提供していきます。

白井氏:
 1人プレイなら,タワー型コンテンツ「試練の塔」を目標にするのもいいですね。塔の種類や上層は随時開放していきますが,「専用ビルドじゃないと無理だろ」と思わせるような作りも用意しているので,ビルドのDPSチェックはもちろん,ソロを極めたい人にはとくにオススメです。

4Gamer:
 それでは装備収集についてはどうでしょう。誰しも「☆5(レジェンド)で固めたい」となるはずですが,☆5って結構ポロっと出てきますよね。このあたりのドロップ方針などは。

白井氏:
 ポロっと出ていいんです。まずは種類を把握してほしいので,序盤から☆5がポロっと出てくるようにしています。そのうえで考慮すべきは「装備LV」と「プロパティ」です。装備LVは低難度クエストだとLV5,高難度クエストだとLV30といったように数値が上下します。装備LVは鍛冶屋で上げることもできますが,低LVなほど負担がかかるわけです。

4Gamer:
 そこにプロパティも絡んでくる。

白井氏:
 はい。プロパティの効果は「確定枠とランダム枠」に分かれていて,それぞれの効果値も含めて抽選で決定されます。「こっちは高LVだけど,そっちはプロパティがいい」などと,ビルド時に悩ましくなってもらいたいです。武具はドロップ以外にも,プレイヤー間のオークションで手に入れられるので,理想のビルドのために利用してみてください。

大槻氏:
 なかにはプロパティ全枠ランダムな特殊アイテムもありますし,高難度限定のドロップ武具もありますが,最も大切なのは「俺もこのビルドを目指したい!」と思ってもらうことです。だから,再現性が乏しくならない程度の制限としてきました。

4Gamer:
 プロパティの効果や効果値には,「難度ナイトメアじゃないとこの値は出ない」といった制限はないんでしょうか。

野久保氏:
 ないです。最初のクエストで,神がかったプロパティの武具の入手もあり得ます。

大槻氏:
 人によっては,最初に手に入れたものが最後まで使いきれる可能性もありますね。

4Gamer:
 序盤も終盤も,すべてはハクスラの運次第。いいですね,常に可能性がある感じが。

白井氏:
 「低難度を周回してドロップ」だと装備LVで苦労する。「高難度でドロップを厳選」だとLV上げは楽だが,試行回数で苦労する。さらにプロパティの当たり外れ,そのときのビルド次第の効果など,プレイ状況に応じて悩ましくなってください(笑)。

4Gamer:
 私も「全死霊スキルLV+1」の効果が手放せなかったですしね。ちなみに,スキルLVはポイントのみだと最大LV20ですが,プロパティ込みだといくつまで上げられるのでしょう。

野久保氏:
 最大でLV25です。LV20以降はダメージUPなど,パラメータ面だけへの影響です。

大槻氏:
 そのぶん,消費MPも増えますけど。

4Gamer:
 消費MPって,気づくといつの間にかきつくなってくるんですよね。

大槻氏:
 中盤あたりから「威力を取るか」「手数を取るか」が,より明確になっていきますね。本作ではLV上昇に伴い,通常攻撃でもMPを消費するようになりますので。このあたりも開発中に議論し続けた部分でした。

4Gamer:
 通常攻撃もなんですか。気づきませんでした。でも負担が大きすぎるのでは?

大槻氏:
 意図としては「通常攻撃特化ビルド」も可能にしたかったからです。

4Gamer:
 ああ,それなら納得です。しかし,最大の議題はやはり,「このスキルの組み合わせはヤバい」などの調整だったと思います。選べるスキルツリーは10種類以上。それを3つ組み合わせられて,スキルや武具の選択も絡んでくる。四苦八苦が目に見えるようです。

白井氏:
 もうひたすら試行錯誤でしたよ(笑)。

野久保氏:
 ひたすら試すほかなかったですよね(笑)。

白井氏:
 ゲーム内のDPS表示を目安に,ダメージは逐一確認しましたよね。よくあったのは「遠距離が強すぎ」になって,それを整えたら「近距離が楽すぎ」になっちゃってと,もはや振り子状態ですよ。組み合わせの問題だから,どれかを直せばOKという話でもなくて。

4Gamer:
 新たなスキルツリーを投じたら,組み合わせも累乗で増えそうですね。

大槻氏:
 おっしゃるとおりです。ローンチまでに精一杯チェックしていきますが,配信後はときにハプニングな組み合わせが生まれるかもしれません。ただ,そういうのも含めてプレイヤーの皆さんに「神ビルドできた!」と楽しんでもらう,そう思ってもらえる空間を一緒に作り上げていく,そんな運営スタイルを目指していきたいと思っています。

画像(004)これがスマホでハクスラだ。「ラストイデア」に20年を注いだハクスラ沼の住人と,それを支えるプロデューサーたち

4Gamer:
 期待しています。続いてはここまで触れてきませんでしたが,本作で最も興味深い「ガチャなし」について,一言いただけますか。

大槻氏:
 考え方はシンプルです。ガチャがあるとそもそも,先ほど話していたような武具のトレハンの楽しみが成立しません。ガチャは最初から入れないと決めていましたし,「ガチャを入れるならこの企画は立ち上げない」とも宣言していました。ゲームシステムとビジネスモデルは分けては考えられないものですから。

白井氏:
 もちろん,瞬間的な高揚を生む装置として,ガチャは非常に優れていると思います。ただ,ガチャが存在すると本作のトレハンは活きないので,相容れないんですよ。

4Gamer:
 快感装置としてのガチャの魅力をしっかり理解したうえで,搭載しないことを決めていると。ただの逆張りじゃない。その想いを伝えるのは大事だと思っていました。

大槻氏:
 その機会をいただいて,ありがとうございます。僕も白井もこれまでガチャゲームをいくつも作ってきて,それらの面白さというのはきちんと理解しているつもりですので。そのうえで,本作はガチャの収益に頼らず,強い装備を販売するPay to Winにもしないと誓っていました。

白井氏:
 前向きに考えれば,世界的にあまり例のないマネタイズを採用したことで,当たっても外れても市場的には興味深い,という見地はありますね。それと発表から先,巷で「ガチャがなくて収益は大丈夫なの?」と心配されているのを知っています。これまで大槻と野久保が各所で何度も聞かれてきたのも知っています。だからこそ言いたいんですよね。

4Gamer:
 どうぞどうぞ。

白井氏:
 「みなさんの善意で成り立っています! なのでこの意欲作『ラストイデア』をどうぞよろしくお願いします」って(笑)。


「ハクスラとスタミナも本来なら相性が悪い」


画像(005)これがスマホでハクスラだ。「ラストイデア」に20年を注いだハクスラ沼の住人と,それを支えるプロデューサーたち
大槻氏:
 もうほんと,白井の言うとおりです(笑)。4Gamerさんも応援してください。この心意気を買ってください。

4Gamer:
 いや,実にいいですね。とても心に響く一声でした(笑)。

白井氏:
 収益性でいったら,めちゃめちゃ心配です。でも大変だからといって,過剰に収益を得ようとしては本末転倒ですので,ゲームとしての品質を追求しながら,体験に納得いくお金を投じていただく,それらが破綻しないポイントを探ってきました。薄く広くとはよく言いますが,それを方針ではなく,システム上で実現している例は多くはないので。

4Gamer:
 その結晶であるアプリ内課金は,一定期間の定額サービス(サブスクリプション)を中心にするとのことで。具体的な内容を教えてもらえますか。

白井氏:
 代表となるのは,スタミナの上限値と回復速度(月額1550円),経験値とゴールドの獲得量(各月額980円)を上昇させるものです。いずれも通常50%UPですが,アドオンで計100%UPにできるものもあります。

4Gamer:
 実際に遊んでいると,ピンときます。スタミナはすぐ欲しくなる気がしてきました。

白井氏:
 それと最初のアップデートで実装する「VIPシステム」もあります。こちらはゲームプレイに役立つアイテム,VIP専用アイテムの購入権,特別なログインボーナス,オートバトルの速度1.5倍化,オークションの出品枠増加などを提供する複合サービスを想定しています。

4Gamer:
 オークション画面にあった「VIPなら〜」の欄は,それを指していたんですね。

白井氏:
 ええ,全体的にゲーム体験を向上させる方針のメニューです。

4Gamer:
 スタミナの価値の高さ,20という上限値が生む悩ましさは,しっかり練られていると感じていました。LVに伴いスタミナも引き上がるゲームだと,その価値は最前線の位置によって変動しますが,本作では序盤でも終盤でも,高価値で不変のままといいますか。

※配信後の「スタミナの調整を含む、今後の方針についてお知らせ」などで,デフォルトの上限値が「30」になると発表された

白井氏:
 もちろん,ゲームを進めていったり,高難度クエストだったりすると,消費量はどんどん増えていきます。ですが先にお話ししたとおり,低難度クエストにも高難度クエストにも良さはありますので,スタミナの価値はいつまでも薄まりません。

4Gamer:
 スタミナは「100ジェム(=100円)」で気軽に回復できますが,スタミナブーストのほうがお得なんでしょうか。

大槻氏:
 スタミナブーストを適用すると上限値が50%上昇し,回復速度も50%上昇します。そのうえで100ジェムのスタミナ回復にも「そのときのスタミナ上限値」が適用されるので,プレイスタイルによっては断然お得に遊べますね。

白井氏:
 パッと見で1550円は高く感じるかもしれませんが,そこに価値があると思ってもらうためのゲームデザインなので,まずは遊んでみてから考慮してくれればそれで十分です。

野久保氏:
 そもそも「ハクスラとガチャ」と同様に,「ハクスラとスタミナ」も本来なら相性が悪いんです。でも,時間も忘れて延々と遊び続けられるのも,僕は考えものだなと思っています。これは収益構造と同じくらい,大事に考えなければいけない部分です。だって延々とゲームばかりしていると,僕みたいになっちゃいますから。

大槻氏:
 そこもあとで話したいですよね(笑)。

白井氏:
 それとオークションがある本作でスタミナをなくすと,市場が破壊される危険性がありました。BOTに走られてしまえば,強力な武具が底値でばら撒かれる,あるいはRMTに利用されるなど,どちらにせよプレイヤーさんのモチベーションを低下させてしまうので。これも理由のひとつとして,オークションには専用通貨を用意しています。

画像(006)これがスマホでハクスラだ。「ラストイデア」に20年を注いだハクスラ沼の住人と,それを支えるプロデューサーたち

4Gamer:
 リスクヘッジも兼ねていると。話題に挙げられた「オークション」に関しても,いろいろと失敗例はありますしね……(参考の一例)。

野久保氏:
 どういう形にするかは別としても,ハクスラではプレイヤー間のトレード機能は必須なんです。プレイヤーは“理想のビルド”のために,ゲームを続けて,資産を集めて,ビルドを追求していきますが,それを短縮する手段のひとつとして非常に優れているので。

4Gamer:
 確かにあるとないとでは,試行時間がだいぶ変わりそうです。

野久保氏:
 トレードやオークションについてはよく,大きな失敗例も挙げられていますが,世界で成功しているハクスラタイトルには,いずれもトレード機能が存在しています。システム自体が有益なのは誰もが知ってのとおりなので,それをどのような仕組みで取り入れるのかだけが課題なだけなんです。

※編注:世界で成功しているハクスラタイトル「Diablo II」「Path of Exile」「Grim Dawn」など

白井氏:
 売買に用いる専用通貨「エメット」は時短活用で稼ぐこともできますが,ゲームプレイでのみ獲得できるリソースとしてます。遊べば遊ぶほど貯まっていきますし,自分には使い道がない有用そうなアイテムを出品して稼ぎ,そのエメットで目当ての武器を落札したりと,活用法は人それぞれです。

4Gamer:
 オークションの利用時には,手数料がかかるんですよね。

白井氏:
 落札時に(エメットの)手数料をいただきます。出品時はどうするべきかは検討中ですが,気軽に利用してほしいので,ローンチ時にはなくなっていると思います。

野久保氏:
 あとから入ってきたプレイヤーさんが参入できる余地もなくなるので,一定の均衡を保つために手数料は必要でした。


「なんとなく見る聞くでも理解できる物語」


4Gamer:
 話を変えて,物語についてはどうしょう。コンセプトや世界観の方向性などです。

大槻氏:
 まず,本作は野久保のハクスラの概念が原点にあったので,システム寄りの出発点から「どんな世界観なら合うだろう」を考えて,シンプルに合致する“トレジャーハンターの主人公”を用意し,周囲の仲間たち,スキルツリーのアイコンである「イデア」,彼らと繰り広げていく王道のサクセスストーリーを肉付けしつつ,まとめていきました。

4Gamer:
 物語は王道とのことですが,意外性もあったりするんですか。

大槻氏:
 どんでん返しは仕掛けていきます。物語のプロットはあらかじめエンディングまで考えていて,シナリオ担当の手塚さん(手塚一郎氏)とも毎週のように議論してきました。ローンチ時点では第5章までプレイできますが,そこでも「まさかこんな展開に」と思ってもらえるよう,頑張りました。

野久保氏:
 ハクスラに馴染みがない人でも「RPGってこういうものだよね」と,まずは物語から入ってもらえるといいですよね。

大槻氏:
 目に入りやすいアニメやイベントスチルにもこだわりましたしね。イラストはすべて,イラストレーターのがおうさんに書いてもらっています。

野久保氏:
 可愛い女の子からおじさんまで,幅広く描ける人を探しました。

4Gamer:
 そのおかげの「湊あくあ」さんもありますし。

大槻氏:
 ほんと,湊さんの件は結果的に大変ありがたかったです!


4Gamer:
 私がキャラクターについて「いいな」と思ったのは,主人公の仲間もそうですし,イデアたちもスポット出演で終わるのではなく,それぞれがゲーム内で役割を与えられているところでした。人格や物語とは別に,なくてはならない存在だと強く感じられるので。

大槻氏:
 全体的に,物語とキャラクターとゲームデザインの融合は意識しています。ヒロインの「ルクレシア」以外も,「シャロン」はショップで,「ラ=メルザ」はクエスト案内で,「ドルゴス」は鍛冶屋でと,それぞれの存在感を高めるための配置を考えました。

白井氏:
 スキルツリーのイデアも同じですね。物語でもシステムでも親近感が湧くようにと。

4Gamer:
 イデアについては「イデア追加=ストーリー追加」と思っていますが,ストーリーのみの追加もあるんですか。

白井氏:
 それはあります。イデアを毎回追加していてはスキルツリーが複雑になりすぎるので,タイミングは慎重に計ります。

4Gamer:
 なるほど。それと,物語にアニメーションを導入した意図はなんでしょう。

白井氏:
 一番見やすいからですよね。

大槻氏:
 システムがコアだという自覚はありますし,いくら物語から入ってもらうと言っても,文章だけでは引きが弱いので。

白井氏:
 それにアニメとかボイスとかを用意しないと,このゲームはビルド追求に傾倒していきますから。この考え自体は悪くないとしても,「重厚な文章を読まずとも,なんとなく見る聞くでも理解できる物語」のために導入しているんです。

4Gamer:
 納得です。バトル中のかけ合いも賑々しいですしね。ただのかけ声じゃなくて,物語進行の補助になっているのが好印象です。

大槻氏:
 声優陣を含めて,こだわりました。

4Gamer:
 ただ,画面右上に会話ウィンド出ていると,画面右上の操作がしづらいので,あまり右上に難所を用意しないでいただけると助かります。

野久保氏:
 ああー,それはあるかもしれないです(笑)。

大槻氏:
 ストーリークエストだけの仕様なので,当面は勘弁していただけると(笑)。

4Gamer:
 ビジュアルの対としてはBGMもなかなかのものに。ポケモンやスマブラの景山将太さん,オーケストラにJAGMOと,揃えましたねぇ。

大槻氏:
 BGMはオーケストラの生演奏を収録させていただきましたが,おかげで各地を転々と冒険していくさまざまな情景といいますか,世界の厚みを表現できるようになりました。個人的に,BGMはゲーム体験を最も強く演出してくれる「一番強い効果音」だと思うので。

4Gamer:
 一番強い効果音。いいフレーズですね。そういえばあらためてになりますが,ラストイデアってどんな経緯でプロジェクトがスタートしたんでしょう?

大槻氏:
 いやもう,そこはぜひとも深掘りしてほしいところで。

野久保氏:
 これは僕の話になるんですが,はじまりはたぶん,20年前とかなんです。

4Gamer:
 20年前ですか。穏やかじゃない年数です。


「3人にとってハクスラとは――」


野久保氏:
 当時,僕は大学生だったんですが,友人たちに「すげーゲームがあるから!」と誘われたのが「Diablo II」でした。それにドハマりして,人生を踏み外しました。

4Gamer:
 誘った人たちは?

野久保氏:
 みんな,どこかのタイミングで満足しました。僕だけが,延々と遊び続けていたんです。就職活動に全敗して,当たり前のようにニートになって,それから“1日28時間Diablo生活”みたいな勢いで,2年くらいずーっと引きこもってやってました。そのうち「ああ,俺の人生ゴミだなあ」と落ち込む一方で,ゲームをとことんやり尽くした経験は,ゲーム業界で活かせるんじゃないかと思いはじめたんです。

4Gamer:
 私個人は共感できるとは言えませんが,弊社も元々PCゲームを成り立ちとしている媒体でして,上の世代の方々からよく「Diabloの特集記事を読んでゲームライターを目指した」「Diablo IIのやりすぎで会社から人生初の電報が届いた」といった逸話を聞きます。

野久保氏:
 親近感ありますねえ(笑)。そういう衝撃がある革新的なゲームだったんですよ。当時は「マジかー……!」って電気が走りましたもん。それで,とにかくこのゲーム経験をなにかに役立てるには,ゲーム業界しかないと思っていました。そこから約20年も経ってしまいましたが,今こうしてラストイデアを生み出せて,ようやく形になったわけです。

画像(007)これがスマホでハクスラだ。「ラストイデア」に20年を注いだハクスラ沼の住人と,それを支えるプロデューサーたち

大槻氏:
 こういうハクスラにドハマりした人たちって,今でも世界中に数多くいると思います。実際,ここ数年だけ見ても,我々と同じように「スマホで本格ハクスラ」の企画を準備したクリエイターは数えきれないほどいたはずです。ただ,野久保が最初に出してきた原案のように,コアなハクスラをそのままスマホで,という内容では厳しいものがあり。

4Gamer:
 ですが,本作はそこで止まりませんでした。

大槻氏:
 スマホで本格ハクスラ。そこまでなら市場を知らない企画者と見て,私も協力しませんでしたが,野久保はそこに「スマホならではのバーチャルパッドよりも強く体感させられる操作方法」,つまりスマコマの概念も用意してきました。そのとき,この考えをしっかりと持っているのならば「いけるかな」と思ったんです。

4Gamer:
 ゲームの既存の魅力と,スマホの未知の魅力を,セットで用意していた。そこがターニングポイントになったんですね。

大槻氏:
 そうです。

野久保氏:
 まあ,それから企画始動までも苦労と困難が続きましたけど。

4Gamer:
 良し悪しは語らずとも,当てれば当たるガチャ全盛期だったでしょうしね……。

大槻氏:
 でも,なんだかんだで「ウチの会社だから挑戦できた」という感謝はあります。

白井氏:
 普通はここまで踏み込ませてくれないはずだしね。

大槻氏:
 いろいろなタイトルを抱えているからこそ,「こういうのもあっていいだろう」と判断してもらえたはずなので。

4Gamer:
 そういえば,開発チームには野久保さんのように濃厚なハクスラ勢はいるんでしょうか。

野久保氏:
 経験者はいますが,僕のように人生をハクスラで踏み外した,みたいな人はいませんでした。

大槻氏:
 特定のゲームを1000時間やり込んだ人たちはいるので,ゲーマーとしての意識は確かです。しかし,従来型のスマホゲームの開発経験はあっても,本作のように道を外れた意欲作となるとピンとこなかったようで,当初はよく戸惑っていました。マネタイズ面の「これで本当に収益出るんですか?」の議論も,何度あったか分からないくらいです。

野久保氏:
 だから,ここまで付いてきてくれたこと自体,本当に感謝しかありませんよ。

4Gamer:
 そういう紆余曲折もありつつ,意識を共有してきたんですね。

大槻氏:
 そうですね。僕にも野久保ほどコアな経験はありませんが,彼が語るハクスラの魅力には最初から共感できたので。野久保の原案を核に,僕らがガワを用意し,システムを練っていけば,新しいスマホゲームになると確信していました。あとは挑戦あるのみだと。

4Gamer:
 現状想定しているプレイヤー層はどうですか。

大槻氏:
 言わずもがなですが,コアなハクスラ経験者を想定していました。そういう人たちは少し遊ぶだけで,おそらくこのゲームの真意を理解してくれると思っています。ですが,ネット上の反響を見ている感じ,ハクスラをやったことのない層の人たちからの「面白そうです」「新鮮です」という声のほうが,やや強い印象ですね。

白井氏:
 あくまで印象ですが,野久保のようなコアプレイヤーさんのなかには「PCじゃないと嫌」「本格的だけどシステムを絞ってるから嫌」といった反応があってしかるべきだったので,評価は割れる前提で考えていたところがあります。なので,ハクスラ未経験の皆さんに興味を持ってもらえたのは非常に喜ばしいです。

4Gamer:
 根底の魅力さえ伝わるのなら,ハクスラ未経験者にもそりゃ届くはずです。「そういうゲームをやったことがあるか,ないか」の違いでしかないでしょうから。難しそうに見える濃い部分も,ちゃんと綺麗なガワで覆い隠しているのがロジカルですし。

大槻氏:
 それですね。前回書いてくださったラストイデアに対する表現は,僕らのプロデュース方針をズバリ言い当ててくれていて,すごく嬉しかったんですよ。

野久保氏:
 僕らも「するめ味のするめじゃ売れないから,ポテチの袋にするめを入れて売ろう」って話し合っていましたしね。

4Gamer:
 余談ですが,ウチの編集部には最近「Switchでハクスラにドハマりした女性陣」が存在するくらいですので,予想外のターゲットはまだまだいそうですよ。

白井氏:
 ほんとですか! それは期待しますね(笑)。

4Gamer:
 しかし,いくら綺麗なガワを全力で用意したとしても,新規IPであることのプレッシャーは避けられないんじゃないでしょうか。

白井氏:
 ないと言えば,嘘になります。

大槻氏:
 公式Twitterも想像以上のフォロワーさんに支持してもらえて,大変嬉しく思っていますが,すべてははじまってみないと分からない。それが今の心境ですかね。

4Gamer:
 個人的な寸評ですが,本作はゲーム内容が素晴らしい反面,「そういう気分だった」と回されるガチャがないため,スマホゲームらしい瞬発的な利益を生むことができません。キャラクターにも有料要素がないです。だから,面白さを担保しないといけない。ほかのゲームだって同じですが,本作は運営型ゲームとして,より誤魔化しが効きません。率直に言って「面白くなければ売り上げは出ない」の真っ向勝負ですが,自信のほどは。

画像(008)これがスマホでハクスラだ。「ラストイデア」に20年を注いだハクスラ沼の住人と,それを支えるプロデューサーたち
野久保氏:
 あります。

白井氏:
 言いますねえ。僕は全然ないんですけど。

野久保氏:
 ちょっと(笑)!

白井氏:
 それでも,純粋なゲーム作りをしてますよね。

4Gamer:
 純粋なゲーム作り。

白井氏:
 スタミナの話題のときに,野久保が「延々とゲームしてると僕みたいになっちゃうよ」と言っていましたが,これって収益と同じくらい,本当に大事に考えておくべきなんです。例えば,本作のマルチプレイはゲスト参加だと,1日3回までスタミナ消費なしで遊べます。これ自体はお得に遊べる要素ですが,なぜ回数制限があるのかというと,枷がなかったら延々と遊んでしまう人が出てくるはずだからです。

4Gamer:
 それが健全ではないと。

白井氏:
 のめり込んでもらえるのは非常に嬉しいですが,健全ではないです。それに海外の事例でよく聞きますが,ゲームのやりすぎで倒れてしまう人っているじゃないですか? そういうのはとても悲しいですし,ひいてはこの業界に負のイメージにもつながります。ゲームはエンターテインメントである以上,そうさせることを望んではいけないはずです。楽しいゲームの行きつく先が,身体の衰弱だなんて,あまりに寂しいじゃないですか。

野久保氏:
 心も体も健康的にゲームを遊ぶ。本当に大事です。

白井氏:
 スタミナなんて,今では当たり前の仕組みですし,回復速度上昇を商品として用意している立場ですが,「回復時間中はゲームやらないでいいんじゃないかな」の気持ちは理念として込めています。理想に至るまで時間はかかるゲームですが,寝ないでやり続けることが正義なゲームデザインには,決してしていません。

野久保氏:
 僕もゲームを散々遊んできましたが,過去を振り返ってみると「時間が正義のゲームはやっぱ辛い」という結論になります。「1日28時間やれば最強だよ!」なんておどけてみても,僕みたいにやり込む人は多いわけありません。だから,便利とか収益とかの前に“時間がなくてもそれなりに遊び続けられること”を尊重したかったんです。

4Gamer:
 単なる機能説明とは違い,「ハクスラ民が語る時短の必要性」は重みが違いますね。

野久保氏:
 そうですよ。ほんと時間だけで解決するようなゲームになると,その人の人生を削っちゃうんですよ。お手軽に遊べるゲームデザインの裏で,僕が皆さんに伝えたいことは,「みんなはこんなおじさんになるなよ!」ってメッセージですから。

白井氏:
 もちろん,行き過ぎた時短もよくないです。せっかくのゲーム体験が薄味になり,一瞬の快感を与える装置になってしまい,ガチャと同じプロセスになりますから。その間にあるその人だけのドラマは,ここまで語ってきたように十分用意しています。「どうせこういうゲームでしょ?」の先入観を捨てて遊んでみてください。期待は裏切らないので。

野久保氏:
 時間の話で言うと,ハクスラは「どんな感じのビルドにしよう」を考える時間も楽しいんですよね。僕も仕事中にビルドシミュレーターを弄って,家に帰ったらビルド組んで,といった生活をよくしていましたし。

白井氏:
 公式ではあまり見ないアプローチですが,我々が公式サイトに「ビルドシミュレーター」(5月中旬に公開予定)を用意するのも,そういう楽しみを提供するためですからね。

4Gamer:
 ハクスラはある程度進めると「クエストに出る」と「ビルドを考える」の時間が5:5になりがちですもんね。

野久保氏:
 ぶっちゃけ,僕はビルドを妄想しているときのほうが好きです(笑)。「このビルドを世界で初めて見つけたのはワイや」みたいな気持ちになれたら最高です。

4Gamer:
 じゃあ,今後は出てくるかもしれませんね。そういう時の人が現れて,「(愛称)ビルド」と名付けられたりして。

大槻氏:
 それを期待しています。野久保にも想像つかなかったビルドを誰かが見つけて,「どやっ!」ってしてくれるのを。

4Gamer:
 そういうのにすぐ影響されたいので,私も待ちましょう。さてと,先ほどの会議室を時間オーバーで追い出されてからの連戦でしたが,そろそろ最初に聞いておりました,「俺にとってのハクスラ」の答えを聞かせていただきましょうか。まずは白井さんから。

白井氏:
 正直に言いますよ? 僕はこれまでの人生で,ハクスラへの強い想いなんて持ってこなかったんです。だからハクスラってなんですかと聞かれたら,「この2人の夢を叶えるモノ(=ハクスラ)」だと思っています。

大槻氏:
 ちょっと! マジでエモいじゃないですか!

4Gamer:
 普通にカッコいい。

白井氏:
 ガチでエモいの考えちゃいました。

大槻氏:
 ええ……僕はシンプルなんですが,少しずつ成長して,トレハンを繰り返して,「狙っていたアイテムが出てきたときの興奮」。それが僕にとってのハクスラですかね。ハクスラというゲームジャンルでやるからこそ,こんなに嬉しい体験になるんだというのを,ラストイデアでも実現したつもりです。この気持ちを皆さんに届けられたらと思っています。

野久保氏:
 僕はなんだろう? 思い出せないです。今になって振り返ると,人生の一番どん底でやっていたのがハクスラで,あのときの一歩が20年越しで形になって,感慨深いような,よく分からないような,そういう気持ちが強いです。

大槻氏:
 そこまでいくともう人生じゃない?

野久保氏:
 「ハクスラは人生」。そうかも(笑)。ちなみに,僕はお嫁さんも絶賛募集中ですので,僕の人生もよろしくお願いします。

4Gamer:
 人生のビルドもトレハン次第ですからねぇ……。

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