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印刷2019/07/07 22:00

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「Ryzen 9 3900X」「Ryzen 7 3700X」レビュー。期待のZen 2は競合に迫るゲーム性能を有し,マルチコア性能では圧倒する

 2019年7月7日19:00,多くのゲーマーが注目しているであろうAMDの新型CPUである第3世代Ryzenこと,「Ryzen Desktop 3000」(以下,Ryzen 3000)シリーズが発売となった。

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 2018年に登場した現行の第2世代Ryzenは,第1世代の「Zen」アーキテクチャを最適化したうえで,自動クロックアップ機能「Precision Boost」に大幅な改良を加えた「Precision Boost 2」を導入する「Zen+」アーキテクチャとして,性能の向上を図った製品だった。

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 それに対して今回登場した第3世代Ryzenは,アーキテクチャに大きな改良を加えた「Zen2」アーキテクチャを採用する製品だ。Ryzenが登場して以来,初の大規模アップデートと言ってもいいだろう。
 4Gamerでは第3世代Ryzenの最上位モデルである12コア24スレッド対応の「Ryzen 9 3900X」(以下,R9 3900X)と,8コア16スレッド対応「Ryzen 7 3700X(以下,R7 3700X)の評価用機材を入手できたので,その性能をざっくりと検証していきたい。


第3世代Ryzenのラインナップは6種類


 第3世代Ryzenに関しては4Gamerでも何度か取り上げている(関連記事関連記事2)。そこで本稿では,性能検証を眺めるに当たって押さえておきたいポイントに絞って,簡単に第3世代Ryzenについての説明を加えておきたい。
 まず製品ラインナップだが,第3世代Ryzenは以下の6製品がラインナップされている。ただ,このうち最上位モデルの「Ryzen 9 3950X」だけは,2019年9月発売予定となっており,国内価格が確定していないため,北米市場におけるメーカー想定売価を記載している。

  • Ryzen 9 3950X:16コア32スレッド対応,定格クロック3.5GHz,最大クロック4.7GHz,L2キャッシュ容量8MB,共有L3キャッシュ容量64MB,デュアルチャネルDDR4-3200メモリコントローラ統合,TDP 105W,749ドル(税別,約8万900円)
  • Ryzen 9 3900X:12コア24スレッド対応,定格クロック3.8GHz,最大クロック4.6GHz,L2キャッシュ容量6MB,共有L3キャッシュ容量64MB,デュアルチャネルDDR4-3200メモリコントローラ統合,TDP 105W,5万9800円(税込6万4584円)
  • Ryzen 7 3800X:8コア16スレッド対応,定格クロック3.9GHz,最大クロック4.5GHz,L2キャッシュ容量4MB,共有L3キャッシュ容量32MB,デュアルチャネルDDR4-3200メモリコントローラ統合,TDP 105W,4万6980円(税込5万738円)
  • Ryzen 7 3700X:8コア16スレッド対応,定格クロック3.6GHz,最大クロック4.4GHz,L2キャッシュ容量4MB,共有L3キャッシュ容量32MB,デュアルチャネルDDR4-3200メモリコントローラ統合,TDP 65W,3万9800円(税込4万2984円)
  • Ryzen 5 3600X:6コア12スレッド対応,定格クロック3.8GHz,最大クロック4.4GHz,L2キャッシュ容量3MB,共有L3キャッシュ容量32MB,デュアルチャネルDDR4-3200メモリコントローラ統合,TDP 95W,2万9800円(税込3万2184円)
  • Ryzen 5 3600:6コア12スレッド対応,定格クロック3.6GHz,最大クロック4.2GHz,L2キャッシュ容量3MB,共有L3キャッシュ容量32MB,デュアルチャネルDDR4-3200メモリコントローラ統合,TDP 65W,2万3980円(税込2万5898円)

 第3世代Ryzenには,多数の新基軸が盛り込まれているのだが,最大の特徴は,既報のとおり,CPUとI/Oのシリコンダイが分かれていることだろう。第3世代Ryzenのヒートスプレッダを外した内部には,新たに採用した7nmプロセスで製造する「CPU Complex Die」(以下,CCD)と,12nmプロセスで製造する「I/O Die」(以下,I/Oダイ)という2種類のシリコンダイを実装しているのだ。

第3世代Ryzenのパッケージ内には,スライドのように大小2種類のシリコンダイが載っている。小さいほうの2つがCPUコアである「CCD」で,大きいほうがI/Oダイだ
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 1基のCCDには,2基の「CPU Complex」(以下,CCX)とCCXあたり容量16MBの共有L3キャッシュが組み込まれている。CCXの構成は,第1および第2世代Ryzenから変わっておらず,4基のCPUコアとL1キャッシュ,L2キャッシュおよび共有L3キャッシュから成る。つまり,1基のCCDで最大8コアのCPUが構成できるわけだ。
 というわけで,第3世代Ryzenの8コアおよび6コアモデルは,CCD 1基とI/Oダイ1基で,16コアおよび12コアモデルは,CCD 2基とI/Oダイ1基という構成となっている。
 ちなみに,CCDとI/Oダイの間を結ぶインタフェースに,AMD独自の「Infinity Fabric」を用いる点は従来製品と変わらない。

16コアおよび12コアモデルのCCDとI/Oダイ(※スライドでは「cIOD」と表記)の構成を示したスライド。8コア以下のモデルは,CCDが1つとなる。CCDとI/Oダイとの間はInfinity Fabricで結ぶ
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 このように,複数のシリコンダイを1つのパッケージに収容する技術をMulti-Chip Module(MCM)と呼ぶのだが,その製造には,かなりのコストがかかると言われる。あえてコストがかかるMCMをAMDが採用したのは,Ryzenの製造を担当する半導体製造事業者のTSMCが有する7nmプロセスでは,CPUパッケージの外部とやり取りするI/O機能――メモリコントローラやPCI Express(以下PCIe)コントローラなど――を設計するのが難しいという理由によるそうだ。
 AMDによると,7nmプロセスで製造するCCDは,トランジスタ数が約3億9000万で,ダイサイズは74mm2。一方,I/Oダイは12nmプロセスで,トランジスタ数は約2億900万,ダイサイズは125mm2とのこと。どちらもかなりコンパクトと言っていい。


Infinity Fabricとメモリコントローラ,メモリのクロックが分離された


 Ryzenを使用するうえでポイントになるのが,Infinity Fabricの動作クロックとメモリクロックの関係だ。第1および第2世代RyzenではInfinity Fabricの動作クロックとメモリクロック,そしてメモリコントローラの動作クロックは同期していた。そのため,メモリクロックを上げるとInfinity Fabricのクロックも上がり,トータルでCPUの性能向上が見込める仕組みだったわけだ。
 第3世代Ryzenも,これと似た仕組みではあるが,少し変わった点もある。AMDによると,DDR4-3600設定までは,Infinity Fabricとメモリコントローラ,メモリのクロックが1:1:1で同期するそうだ。しかし,DDR4-3600を超えるメモリクロックを設定すると,自動的にメモリコントローラとメモリのクロック比は1:2に切り替わり,Infinity Fabricのクロックは1800MHzで固定されるという。

Infinity Fabricの改良点に関する説明スライド。Infinity Fabricのクロックは,メモリコントローラやメモリのクロックと分離された
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 要は,DDR4-3600を超える設定を使った場合にInfinity Fabricのクロックは上がらなくなるので,Infinity Fabricの帯域幅拡大による性能向上は見込めないことになる。また,メモリコントローラとメモリのクロック比が1:2に切り替わることで,メモリのアクセス時に生じるレイテンシも,やや大きくなるという。
 つまり,第3世代Ryzenにおけるメモリのクロックは,DDR4-3600設定までがベストバランスということになりそうだ。ちなみに,マザーボードによってはInfinity Fabricとメモリコントローラ,メモリのクロック比を変える設定もできるようだが,DDR4-3600を超えるメモリクロックで1:1:1を維持するのはかなり難しいだろう。

 なお,前出のように第3世代Ryzenは,公式には最大でDDR4-3200までをサポートするが,これまた第2世代Ryzenまでと同様に,メモリモジュールの構成によってサポートするメモリクロックが変わる。シングルおよびデュアルランクのモジュールを4枚で構成した場合は最大DDR4-2997までとなり,シングルおよびデュアルランクの2枚で構成した場合のみ,DDR4-3200まで対応となる点には注意してほしい。


アーキテクチャの変更により,IPCは前世代で15%向上


 アーキテクチャの刷新に話を戻そう。まず肝心のCPUコアには,多数の改良が加えられている。
 詳しくは下のスライドのとおりだが,おおまかに説明しておくと,整数演算においては「AGU」(Address Generation Unit)が,ZenおよびZen+アーキテクチャの2基から,3基に増加したのがポイントだ。同時に,命令デコーダやスケジューラ,分岐予測ユニットにも多数の改良が加えられている。

CPUコアに加えられた改良を列挙したスライド。AGUの追加,分岐予測の改良,ロードストアユニットの改良など多岐にわたる
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 一方,浮動小数点演算は,Zen+アーキテクチャにおける128bit幅の演算ユニット2基から,256bit幅の演算ユニット2基に強化された。Zen+アーキテクチャの場合,AVX2命令セットにおける256bit演算は,2回に分けて実行する必要があったが,第3世代Ryzenでは1回で実行できることになり,スループットが最大2倍になったわけだ。

 キャッシュシステムも大きな改良が加えられた。L1キャッシュは,従来どおり命令32KB,データ32KBに分かれたハーバードアーキテクチャ型だが,L1データキャッシュの帯域幅が,Zen+アーキテクチャ比で2倍になっている。
 L2キャッシュ容量は,CPUコア当たり512KBと従来どおり。一方,共有L3キャッシュ容量は,CCXあたり16MBとZen+アーキテクチャの8MBから倍増した。
 AMDは,この倍増した共有L3キャッシュを含む第3世代Ryzenのキャッシュシステムに,「Game Cache」という名称を付けている。AMDによれば,倍増したキャッシュはゲームのレイテンシ低減に大きな効果があり,フレームレートを大きく向上できるのだそうだ。

L1およびL2キャッシュの容量は前世代と変わらないが,L1データキャッシュの帯域幅は2倍になった。また,共有L3キャッシュ容量は,CCXあたり16MBと前世代の2倍になった
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 これらの改良により第3世代Ryzenは,第2世代Ryzenに対して15%以上のIPC(Instructions Per Clock,クロックあたりの命令実行数)向上を果たしたとAMDは主張している。

 なお,自動クロックアップ機能は,第2世代Ryzenで採用された「Precision Boost 2」のまま変更はない。CPUが消費する電流や,CPUが許容できる発熱にかけられたリミッターを解除して性能を引き上げる「Precision Boost Overdrive」も引き続きサポートしている。


I/O周りのトピックはPCIe Gen.4対応


 一方のI/O周りでは,西川善司氏によるレポート記事にあるとおり,PCIe Gen.4に対応したことがトピックとなる。
 PCIe Gen.4は現行のPCIe Gen.3と比べて2倍の帯域幅を持ち,グラフィックスやPCIe接続型SSDの性能を引き上げることが期待できる。もっとも,いまのところPCIe Gen.4をサポートしている製品は多くない――GPUでは「Radeon RX 5700」シリーズだけ――ので,いますぐ必要というゲーマーは少ないだろう。

 第3世代Ryzenは,第2世代Ryzenから引き続いてSocket AM4プラットフォームに対応しているが,PCIe Gen.4をフルに利用できるチップセットは,第3世代Ryzenと同時リリースの「AMD X570」(以下,X570)チップセットを搭載するマザーボードだけである。
 X570は,CPUとのインタフェースがPCIe Gen.4に切り替わり,チップセット側のUSBやSerial ATAインタフェースを含むペリフェラルの性能向上も期待できる。

第3世代RyzenとX570チップセットによるプラットフォームのブロック図。CPUとチップセット間のダウンリンクがPCIe Gen.4になり,インタフェースのスペックをフルに活かせる構成になっている
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 なお,第3世代Ryzenは基本的に,「AMD A320」チップセットを除いた既存のSocket AM4対応マザーボードで利用できるものの,それにはUEFIのアップデートが必要だ。
 具体的には,第3世代Ryzenに対応するAMD製のファームウェア「AGESA 1.0.0.2」以降を含むUEFIをマザーボードメーカーが提供しているマザーボードなら,第3世代Ryzenを利用可能である。マザーボードメーカーによっては,6月中に第3世代Ryzen対応UEFIの提供を始めているので,既存のマザーボードで第3世代Ryzenを利用しようと考えている人は,メーカーのサポートページなどを調べてみるといいだろう。

 ただ,X570搭載マザーボードでは,第1世代Ryzen(※Ryzen 7/5/3 1000番台)と,第1世代Ryzen Desktop Processors with Radeon Vega Graphics(※Ryzen 5/3 2000番台の末尾G,およびAthlon GEシリーズ)のサポートが打ち切られていることは注意すべきであろう。X570搭載マザーボードでこれら古い世代のCPUを使うのはレアケースと思うが,覚えておくといいかもしれない。


第3世代Ryzenの上位モデルは新しい製品ボックスを採用


左がR9 3900X,右がR7 3700Xの製品ボックス
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 特徴の説明に続いては,第3世代Ryzenの製品ボックスとCPUパッケージを見ていこう。冒頭でも述べたとおり,4Gamerで入手したのは12コア24スレッド対応のR9 3900Xと,8コア16スレッド対応のR7 3700Xの2製品だ。

 R7 3700Xの製品ボックスは第2世代Ryzenまでとほぼ変わらず,CPU本体は黒い小さな箱に,AMD純正クーラーである「Wraith Prism RGB」クーラーとセットで収められている。
 一方,R9 3900Xの製品ボックスは,従来とはまったく異なるもので,箱の上側を引き上げると,内箱の天井部分にCPUを入れた樹脂製パッケージが出てくるというものだ。箱自体は紙製だが,従来製品や下位モデルよりも上質で,高級感がある。CPUが取り出しやすくなったのも好印象だ。

R9 3900Xの製品ボックスから上蓋を取り去った状態(左)。内箱の四方には,各国語でコピーが印刷してあるのだが,言語によって意味は異なるようだ。右はCPUが入っている樹脂パッケージで,従来と変わらない
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R9 3900Xに付属のWraith Prism RGBクーラー。既存製品に付属するものと同じである
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 付属するCPUクーラーは,両製品とも同じWraith Prism RGBクーラーで,第2世代Ryzenの上位モデルに付いていたものと同じものである。

 同じSocket AM4対応だけに,CPUの見た目は従来製品とほぼ変わらない。R9 3900Xは,ヒートスプレッダの下に3枚の,R7 3700Xは2枚のシリコンダイを実装しているのだが,少なくとも外から見る限り,違いはまったくないと言っていいだろう。強いて言えば,切り欠きを示すマークが少し小さくなったかな程度である。

R9 3900X(左)とR7 3700X(左)のCPUパッケージ。型番以外,第2世代Ryzenとの違いは見あたらない
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第3世代Ryzenの実力を発揮させるにはWindows 10 May 2019 Updateが必要


 それでは実際のテストに移ることにしよう。第3世代Ryzenのテストには,AMDの提供によるレビュワー用キットを利用した。
 テストするCPUは,R9 3900XとR7 3700Xの2製品で,比較対象として第2世代Ryzenから8コア16スレッド対応の「Ryzen 7 2700X」(以下,R7 2700X)と,Intelの8コア16スレッド対応CPUである「Core i9-9900K」(以下,i9-9900K),そしてHEDT(High-End Desktop)向けCPUとして,R9 3900Xと同じ12コア24スレッド対応の「Ryzen Threadripper 2920X」(以下,TR 2920X)の3製品を用意した。この5製品で条件を揃えてテストを実行して,第3世代Ryzenの性能を検証しようというわけだ。

R9 3900X(左)とR7 3700X(右)で確認したCPU-Zの表示
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 ちなみに,AMDは,R9 3900Xの競合としてi9-9900Kを,またR7 3700Xの競合として「Core i7-9700K」をそれぞれ挙げている。一方,TR 2920Xはターゲットとする市場が異なるCPUなので,直接の競合というわけではない。ただ,前世代のZen+アーキテクチャを採用しつつ,R9 3900Xと同じ12コアということで参考までに加えた次第だ。
 テストに使用した5製品の主なスペックを表1にまとめておいた。

※1 第3世代Ryzenにおけるシリコンダイの数
※2 メモリスロット数および利用するメモリモジュール数によって制限あり
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テストに使用したX570搭載マザーボードのX570 Taichi
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 第3世代RyzenおよびR7 2700Xで使用したマザーボードはASRock製の「X570 Taichi」である。X570搭載のハイエンド市場向けマザーボードだ。
 ちなみに,テストに用いたX570 Taichiに限らず,X570搭載マザーボードでは,チップセットに空冷ファン付きヒートシンクを備える製品が多いようだ(関連記事関連記事2)。PCIe Gen.4対応のために発熱が大きいのだろう。
 X570 Taichiの場合,ヒートシンクに薄型ファンを埋め込んだ形になっているが,マザーボードをむき出しで使っていると,割と耳につく高音寄りの騒音が出る。といってもPCケース内に収納して使うのなら,それほど気にならないレベルだろう。

F4-3600C16D-16GTRG
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 メモリモジュールは,レビュワー用キットに付属していたG.Skill International製「F4-3600C16D-16GTRG」(DDR4-3600対応,8GB×2枚組)を使用した。先にも触れたとおり,第3世代Ryzenにおけるメモリの動作クロックはDDR4-3600がベストバランスで,それに合わせたメモリをAMDが用意してきたわけだ。
 なお,AMDは評価キットを使うレビュワーに対して,同メモリモジュールにおけるXMP Profileをメモリ設定に使うよう指示しているので,UEFI側のメモリ設定はDDR4-3600,アクセスタイミングは「16-16-16-36」で使うことになる。ただ,事前に予想していたのだが,この設定だとR7 2700Xはハングアップしてしまうので,R7 2700Xのみ,やむをえずDDR4-3200の16-16-16-36の設定でテストした。

 余談気味だが,レビュワー向けキットにはGIGA-BYTE TECHNOLOGY製のPCIe接続型M.2 SSD「AORUS NVMe Gen4 SSD」の2TBモデルも付属していた。このSSDを使えば,PCIe Gen.4の評価も可能なのだが,今回はCPU性能のテストに的を絞るために,あえてPCIe Gen.3対応の既存SSDを使用している。PCIe Gen.4の評価は,また別の機会に行いたい。

 今回はもう1つ重要な点として,テストにWindows 10 May 2019 Update(Version 1903,以下 May 2019 Update)を使用していることも挙げておく必要があるだろう。May 2019 Updateは,まだ安定していないところがあるので,本来はテストに使いたくないのだが,第3世代Ryzenの性能をフルに発揮させるには必要であるとAMDが主張しているのだ。

 理由は2つある。1つは,May 2019 UpdateにはRyzen系に対応する新しいスケジューラが組み込まれているためだ。Windows 10の標準的なスケジューラは,スレッドを時分割で空いている任意のCPUに割り当てて実行する。しかし,Ryzen系では同じスレッドが異なるCCXや異なるCCD上のCPUに切り替わると,そのたびに,キャッシュに保存した命令やデータが,CCX間やCCD間を移動するハメになる。
 Infinity Fabricは,広帯域幅で低レイテンシなインターコネクトであるというが,スケジューラが頻繁にスレッドを異なるCCXやCCD間に割り当て替えてしまうと,そのたびにキャッシュデータの転送が発生して性能を大きく落とす結果になる。
 そこでMay 2019 Updateでは,Ryzen系のように特殊なトポロジーを持つCPUに対して,スレッドを同じグループ,つまり同じCCXのCPUコアに固定する新しいスケジューラが組み込まれている。これにより,CCXやCCD間をまたぐ切り替えが頻繁には起こらなくなり,性能が向上するというわけだ。
 この新しいスケジューラをAMDは,「Topology Awareness」と呼んでおり,これは第3世代Ryzenだけでなく,第1および第2世代RyzenやRyzen Threadripper系でも有効に機能するはずである。

 もう1つの理由は,第3世代Ryzenが対応する「UEFI CPPC2」(Collaborative Processor Performance Control 2)にOS側が対応するのは,May 2019 Updateからであるためだ。UEFI CPPCとは,電力と性能のバランスをとるためにOS側からCPUクロックを制御するUEFI内の機能のこと。UEFI CPPC2は,その第2世代である。
 AMDによると,このUEFI CPPC2対応によって,第3世代RyzenではCPUクロックの遷移が20倍も高速になるそうだ。ただ,UEFI CPPC2対応は第3世代Ryzenからなので,第2世代以前のRyzenには影響がない。

May 2019 UpdateにおけるRyzen向け最適化を説明するスライド。スレッドを特定のCCXに固定するTopology Awarenessスケジューラ(左)と,効率的なクロック遷移を実現するUEFI CPPC2対応(右)がポイントだ。第3世代Ryzenの性能を生かすには,この2つが必須になる
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 AMDはレビュワー向けに,UEFI CPPC2対応を含むWindows 10用のチップセットドライバ「AMD Chipset Driver Version 1.07.07.0725」を配布している。同じバージョンのドライバソフトが,エンドユーザーにも配布されるかは不明だが,これをイントールすると,Windowsの電源オプションにあった「AMD Ryzen Balanced」に加えて,省電力寄りの設定である「AMD Ryzen Power Saver」と,高性能寄りの設定である「AMD Ryzen High Performance」が加わる。

AMD Chipset Driver Version 1.07.07.0725をMay 2019 Updateにインストールすると,電源プランに2つの項目が追加された
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 3つの設定は,Ryzenに最適化した電力設定であるそうで,Ryzen系では「AMD Ryzen High Performance」の設定でベンチマークを実行した。一方,i9-9900Kは従来どおり「高性能」の設定でベンチマークを実行する。

 特記事項の最後になるが,今回はAMDから,IntelのCoreプロセッサを比較対象にする場合,「明示的にTDP 95Wの設定を行うように」と念押しされた。詳しくはi9-9900Kの再検証記事を参照してほしいが,Coreプロセッサはデフォルトで,公式のTDPを超える設定になっている可能性があるのだ。
 AMDは,Coreプロセッサを比較対象に用いる場合,

  • PL1=95,PL2=118,Tau(Turbo Time Parameter)=8

に設定せよと指示している。そのため,本稿で扱うi9-9900Kでは,この設定を用いたことを明記しておく。一方で,Coreプロセッサの設定に縛りをかける以上,今回は第3世代RyzenのPrecision Boost Overdriveを使ったテストは見合わせることにした。
 それ以外のテスト機材や設定については,表2を参照してほしい。

そのまま掲載すると縦に大きくなりすぎるため,簡略版を掲載しました。表をクリックすると完全版を表示します
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テストの様子
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 なお,表2には記していないが,CPUクーラーにはCorsair製の簡易液冷クーラー「Hydro Series H150i PRO RGB」(以下,H150i PRO)を使用した。ポンプおよびファンの回転は最大値で固定している。AMDによると,第3世代RyzenもPrecision Boost 2の影響で,冷却システムによって性能が変わるとのことなので,4Gamerのレビュー用機材ではもっとも冷却性能が良さそうなものを選択した次第だ。
 ただ,H150i PROはSocket TR4に対応できないので,Socket TR4では性能的に似通ったENERMAX Technology製の液冷ユニット「LIQTECH TR4」を使用している。

 実行するテストは4Gamerベンチマークレギュレーション22.1から,「3DMark」(Version 2.9.6631),「Far Cry 5」,「PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS」(以下,PUBG),「Fortnite」,「Middle-earth: Shadow of War」(以下,Shadow of War)を選択。
 また,ベンチマークレギュレーション23.0世代を先取りする形で,今回は「ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマーク」の代わりに「ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマーク」(以下,FFXIV漆黒のヴィランズ ベンチ)を実行した。
 実ゲームの解像度は,CPU性能の違いが出やすい2560×1440ドット,1920×1080ドット,1600×1200ドットの3パターンとし,グラフィックス設定はレギュレーションの高負荷寄りの設定を用いる。FFXIV漆黒のヴィランズ ベンチでは「最高位品質」プリセットを用いてテストした。
 さらに,ゲーム性能のテストとして「OBS Studio」(Version 23.2.1,以下 OBS)を用いて,プレイ動画の録画テストも行っている。

 それに加えて,ゲーム以外の一般的なPC利用における快適さを調べるために,以下のテストを実行した。

  • PCMark 10(Version 2.0.2115)
  • ffmpeg(Nightly Build Version 20181007-0a41a8b)
  • CINEBENCH R20(Release 20.060)
  • DxO PhotoLab 2(Version 2.3.0 Build 2389)
  • 7-Zip(Version 1900)

 それでは,ゲーム関連のテストから順に見ていくことにしよう。


3DMarkでは競合を上回る性能を見せる第3世代Ryzen


 まずは「3DMark」の結果から見ていこう。グラフ1はDirectX 11テストである「Fire Strike」の総合スコアをまとめたものだ。
 Fire Strikeの総合スコアは,グラフックス性能が反映される比率が高いので,同じグラフィックスボードで比較したグラフだとほぼ横並びに見えるものだが,R9 3900XとR7 3700Xは,比較対象に対して有意な差を付けている点に注目してほしい。

 R9 3900Xのスコアは,前世代のR7 2700X比で,Fire Strike Ultraが約103%,同Extremeで約104%,Fire Strike“無印”で約110%となった。描画負荷が低いほどCPU性能の差が出やすいので,R9 3900Xが有利という結果は理にかなっている。
 i9-9900K比でも,R9 3900Xのスコアは順に約102%,約102%,約105%と有意に上回った。競合製品を上回るスコアを見せたことは評価できるだろう。TR 2920X比では101〜111%程度となり,他の比較対象の結果から見ても妥当な差と言えそうだ。

 むしろ驚くのは,R7 3700Xの結果だろう。前世代のR7 2700比で103〜110%程度,i9-9900K比で102〜106%程度,TR 2920X比でも101〜112%程度と,いずれも上回っているのだ。AMDの定義によるR7 3700Xの競合はi7-9700Kだが,それよりも上位であるi9-9900Kのスコアを上回ったことは,ちょっとしたトピックと言っていい。

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 グラフ2はFire StrikeのGPUテストである「Graphics test」のスコアを抜き出したものだ。このスコアはGPU性能が支配的になるので,総合スコア以上に横ならびの結果になるのは必然だ。
 ただ,i9-9900K比で見た場合,R9 3900Xのスコアは98〜102%程度,R7 3700Xのスコアは101〜102%程度と,R9 3900XのFire Strike無印を除いて,いずれも上回ったことは注目に値する。というのも,第2世代Ryzenはi9-9900K比で98〜100%程度と,わずかに下回るスコアとなったからだ。

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 Fire Strikeから,CPUベースの物理シミュレーションによってCPU性能を測る「Physics test」の結果を抜き出したものがグラフ3である。
 R9 3900Xのスコアは,R7 2700X比で138〜139%程度,i9-9900K比で119〜120%程度,TR 2920X比でも117〜123%程度と,いずれも大きく上回った。8コアのR7 2700Xやi9-9900Kはともかく,同じ12コアのTR 2920Xを上回っていることは注目に値する。
 それ以上に健闘しているのがR7 3700Xで,R7 2700X比では116〜117%程度,i9-9900K比では100〜102%程度,TR 2920X比でも99〜104%程度というスコアを叩き出した。R7 3700Xは1ランク上の競合であるi9-9900Kと同等以上のCPU性能を持つわけだ。

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 ところで,ここまで注目してこなかったR9 3900XとR7 3700Xの差を見ておくと,R9 3900XのスコアはR7 3700Xに対して,118〜119%程度となっている。R9 3900XはR7 3700Xと比べてコア数は1.5倍もあり,動作クロックも高いことを考えると,R7 3700Xに対する性能の伸びはあまり高くない。
 あえて触れてこなかったが,R9 3900Xで懸念されるのは,2チャンネルのメモリバスに対してCPUコアが12基もあるというバランスの悪さだ。12基のコア全体に高負荷がかかった場合,メモリバスがボトルネックになる可能性がある。改良を加えたうえで大容量化したキャッシュが,メモリバスの問題をある程度は緩和するだろうが,ボトルネックを根本的に解決することはできない。
 R7 3700Xに対してR9 3900Xのスコアが120%弱に留まるのは,メモリバスがボトルネックになっている可能性がありそうだ。ただ,断言するにはさらに細かなテストが必要になる。

 グラフ4は,GPUとCPUへ同時に負荷をかけたときの性能を見る「Combined test」の結果を抜き出したものだ。
 R9 3900Xのスコアは,R7 2700X比で102〜117%程度,i9-9900K比で100〜112%程度,TR 2920X比率で99〜127%程度となった。注目したいのは,描画負荷が低いFire Strikeで比較対象を大幅に上回っている点で,R9 3900XのCPU性能が,比較対象よりも相対的に高いと判断できるだろう。
 さらに優秀なのがR7 3700Xだ。R7 2700X比で102〜130%程度,i9-9900K比で100〜125%程度,TR 2920X比で100〜142%程度といずれも上回っており,ここでもFire Strike無印で他を圧倒している。つまりR7 3700Xはとても優秀という結果だ。

 実のところ,R9 3900XはR7 3700Xに対して,Fire Strikeでは約90%のスコアしか得られていない。描画負荷が低いFire Strikeはフレームレートが高いので,フレームレートが低い場合よりもメモリアクセスが頻発することになる。12コアに対して2チャンネルというメモリ構成におけるバランスの悪さが,R9 3900Xのスコアの足を引っ張ったのではと推測している。
 CPUとGPUの両方に負荷をかけるCombined testの傾向は,実ゲームに比較的近いので,ここがR9 3900Xに対する若干の懸念材料になりそうだ。

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 続いては,3DMarkのDirectX 12テストである「Time Spy」の結果を見ていこう。
 グラフ5は,Time Spyの総合スコアをまとめたものだ。R9 3900Xのスコアは,R7 2700X比で111〜115%程度,i9-9900K比で104〜108%程度,TR 2920X比で104〜106%程度となった。解像度が低いTime Spyのほうが,いずれも差が大きいというのもポイントだ。
 一方,R7 3700Xは,R7 2700X比で107〜108%程度,i9-9900K比で100〜101%程度,TR 2920X比で98〜103%程度となった。1ランク上の競合になるi9-9900Kと肩を並べているわけで,素晴らしい結果と評していいだろう。

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 Time SpyにおけるGPUテスト「Graphics test」のスコアを抜き出したのがグラフ6となる。
 GPU性能が支配的になるGraphics testは,おおむね横並びだ。それでも傾向は総合スコアに似ていて,R9 3900XはR7 2700Xに対して103〜104%程度,i9-9900K比で約102%,TR2920とはほぼ同等と,競合に対して有意に高いスコアを残した。また,R7 3700XもR7 2700Xに対し約103%,i9-9900K比で約102%,TR 2920Xとはほぼ同等と,1ランク上の競合に対して有意に高いスコアを記録している。

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 グラフ7は,Time Spyにおける「CPU test」のスコアを抜き出したものだ。
 R9 3900XのスコアはR7 2700X比で144〜182%程度,i9-9900K比で110〜141%程度,TR 2920X比では127〜135%程度と,極めて高いスコアを残した。AMDが競合に設定しているi9-9900Kを圧倒するスコアと言えよう。
 R7 3700XはR7 2700X比で120〜125%程度と妥当だが,i9-9900K比だと92〜97%程度と,ここで初めてi9-9900Kを下回るスコアに沈んでいる。とはいえ,i9-9900Kは1ランク上のCPUに対する競合なので,納得のいくスコアではある。TR 2920X比は87〜113%程度となった。

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 以上をざっくりとまとめるなら,第3世代Ryzenは素晴らしい,ということになる。とくに素晴らしいのがR7 3700Xだろう。重要なので繰り返すが,1ランク上の競合製品であるi9-9900Kと同等以上のスコアを大半のテストで叩き出したのだ。少なくとも,3DMarkにおける価格対性能比では,R7 3700Xが競合を圧倒している。
 一方,R9 3900Xは,現時点でのRyzen 3000シリーズ最上位モデルにふさわしく,競合であるi9-9900Kを無難に圧倒してみせた。R7 3700Xに対するスコアの伸びが低いこと,そしてメモリバスがボトルネックになりそうな片鱗が見えるのは懸念材料だが,競合に対しては十分すぎる性能を見せているとまとめていいだろう。


実ゲームでも前世代を上回る第3世代Ryzen

対i9-9900Kでもいい勝負を演じる


 3DMarkの結果を踏まえたうえで,実ゲームにおける性能をチェックしていく。
 まずは「Far Cry 5」のスコアをまとめたグラフ8〜10から見ていこう。

 R9 3900Xの平均フレームレートは,R7 2700X比で119〜121%程度とまずまずだが,i9-9900K比では86〜94%程度と届かず,3DMarkでの優秀さからすると残念な結果と言える。TR 2920X比では116〜120%程度となっている。
 一方,R7 3700Xの平均フレームレートは,R7 2700X比では117〜121%程度と順当なものだ。しかし,i9-9900K比だと88〜92%程度で,やはり一歩及ばずという結果だ。TR 2920X比は116〜119%程度と上回っている。

 実ゲームでは最適化などの問題も出てくるので,3DMarkのようにはいかないということかもしれない。ポジティブに見れば,第2世代Ryzenに比べて,ざっくり2割程度フレームレートが向上しており,i9-9900Kに肉薄したと言えるだろう
 なお,R9 3900XとR7 3700Xの平均フレームレートや最小フレームレートはおおむね同等だが,1600×900ドットでは,ややR7 3700Xのほうが高いフレームレートを記録した。ここではメモリバスのボトルネックが表面化したのかもしれない。

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 グラフ11〜グラフ13は,PUBGの結果をまとめたものだ。
 かなり荒れたグラフになったが,R9 3900Xの平均フレームレートはR7 2700X比で122〜137%程度と,大きく伸びた。一方,i9-9900K比は91〜108%程度で,TR 2920X比は136〜138%程度だった。悩ましいのは,高解像度におけるR9 3900Xのフレームレートが,比較対象より高いという点だ。低解像度ほどCPU性能が表面化しやすく,高解像度ではGPUのスループットで頭打ちになるのが一般的なベンチマーク結果のパターンだが,ここではそうなっていないのだ。原因として明言できるものではないが,第3世代Ryzenで改善されたキャッシュが効いているのかもしれない。

 一方,R7 3700Xの平均フレームレートはR7 2700X比で124〜137%程度,i9-9900K比は92〜107%程度,TR 2920X比で138〜139%程度となった。こちらも高解像度で高い平均フレームレートを出しており,第3世代Ryzenで同じ傾向が出るということは,偶然ではないだろう。

 もう1点,気になるのは,1600×900ドットと1920×1080ドットでは,R7 3700XのほうがR9 3900Xよりも高い平均フレームレートを出している点だ。これもやはり,メモリバスがボトルネックになったのではないだろうか。
 すべての解像度をまとめてみると,PUBGに関してはR9 3900Xは競合並みで,R7 3700Xは1ランク上の競合と肩を並べる優れた結果を残したと言えよう

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 グラフ14〜16は,Shadow of Warの結果をまとめたものだ。
 R9 3900Xの平均フレームレートは,R7 2700X比で106〜115%程度,i9-9900K比だと92〜97%程度,TR 2920X比では109〜104%程度となった。i9-9900Kには一歩及ばずといったところだが,R7 2700Xに対しては,しっかりフレームレートを伸ばしている。また,低解像度ほど伸びが大きいことから,CPU性能が前世代比で明確に向上していることを示した。

 一方のR7 3700Xの平均フレームレートはR7 2700X比で107〜120%程度,i9-9900K比は95〜99%程度,TR 2920X比で106〜113%程度となった。i9-9900Kには一歩及ばずといったところか。
 Shadow of Warの場合も,Intel製CPUに対する最適化が影響していると思える結果と言えよう。R9 3900XのフレームレートがR7 3700Xより少し低いのも気になるところで,メモリバスのボトルネックが影響しているのかもしれない。

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 次は,Fortniteの平均フレームレートおよび最小フレームレートをまとめたグラフ17〜19を見ていこう。
 R9 3900Xの平均フレームレートはR7 2700X比で103〜106%程度,i9-9900K比で95〜99%程度,TR 2920X比では102〜107%程度となった。i9-9900Kには届かなかったが差は小さく,ほぼ肩を並べたくらいの理解でいいだろう。
 一方,R7 3700Xの平均フレームレートは,R7 2700X比で103〜108%程度,i9-9900K比で97〜100%程度,TR 2920X比で102〜109%程度だ。こちらはi9-9900Kとおおむね肩を並べたと言っていい。

 グラフから分かるように,ここでも低解像度だと,R9 3900XよりR7 3700Xのほうがややフレームレートが高い。最小フレームレートもR9 3900XよりR7 3700Xのほうがやや高く,やはりメモリバスのボトルネックが表面化しているのかなと思える結果だ。

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 レギュレーション23世代を先取りする形で加えたFF XIV漆黒のヴィランズ ベンチにおける総合スコアをまとめたのがグラフ20だ。

 R9 3900Xのスコアは,対R7 2700X比で117〜120%程度,i9-9900K比が92〜93%程度,TR 2920X比で117〜120%程度となった。一方,R7 3700Xのスコアは,対R7 2700X比で119〜122%程度,i9-9900K比が94〜95%程度,TR 2920X比は119〜123%程度である。
 4Gamerでは,FF XIVの歴代ベンチにおいては,Intel製CPUが有利な傾向があると繰り返してきた。第3世代Ryzenでも,その構図は覆せなかったという結果だ。ただ,第2世代Ryzenに比べると,1〜2割のスコア向上を果たしているので,Intelに肉薄してきたことは大いに評価すべきであろう。

 FF XIV漆黒のヴィランズ ベンチでも,低解像度になるほど,R7 3700Xのスコアが有意にR9 3900Xより高くなる。ここでも,R9 3900Xにおけるメモリのボトルネックが表面化したと見るべきかもしれない。

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 グラフ21〜23は,FF XIV漆黒のヴィランズ ベンチの平均および最小フレームレートをまとめたものだ。平均フレームレートの傾向は,おおむね総合スコアに一致すると言っていい。
 軽く注目しておきたいのが,いずれの解像度でも第3世代Ryzenは,前世代に対して最小フレームレートが2割以上も向上したことだ。描画負荷が高まる局面で,CPU性能の高さや改良されたキャッシュが底力を発揮していると捉えることもできるだろう。

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 以上,今回は5タイトルに絞ってゲーム性能を見てきたが,第3世代Ryzenの性能はi9-9900Kを凌駕するほどではないものの,かなり近づいたという評価になろうかと思う。もはやゲーム性能を理由に第3世代Ryzenを敬遠する必要はないくらいの性能を発揮している。
 また,ゲームだけに着目するなら,R7 3700Xの価格対性能比は非常に高く,R9 3900Xを積極的に選ぶ理由はあまりないとも言えそうだ。R9 3900Xは,R7 3700Xと比べてわずかではあるものの,フレームレートが低めに出る傾向がある。原因は,やはりCPUコア数とメモリバスのアンバランスさがボトルネックになっているのではないか考えられるが,断言するためには,今後もテストが必要だろう。


OBSを使ったゲーム録画ではR9 3900Xが他を圧倒


 続いては,OBSを使ったゲーム録画のテストを見ていきたい。
 ここでは,録画対象タイトルとして「Overwatch」を用意して,解像度2560×1440ドットとは1920×1080ドットで,プレイしながらバックグラウンドでCPUによるエンコードを行うというものだ。

 テストにあたって,OBSの録画設定は,以下に示したスクリーンショットのとおり。エンコーダとして「x264」を使い,「fast」プリセットに「animation」チューニングを加えたうえで,12MbpsのVBRで出力するという,リアルタイムエンコードとしては相当に重い高負荷設定である。

今回のテストにおけるOBSの録画設定
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 まずは1920×1080ドットの結果から見ていこう。動画ではR9 3900X,R7 3700X,R7 2700X,i9-9900K,TR 2920Xの順で並べて再エンコードしている。

 動画を通して見ると,いずれのCPUでも実用的なフレームレートでエンコードできているように見えるが,R7 2700Xは他のCPUよりもややカクつきがあり,また左上に拡大表示しているフレームレートの落ち込みが大きめであるのが見て取れる。一方,同じ8コアのR7 3700Xは,R7 2700Xよりも明らかにスムーズで,フレームレートの落ち込みも小さいことが分かるだろう。少なくともR7 3700Xは,i9-9900Kと同等の録画品質を実現しており,第3世代Ryzenで性能が向上した証と言える。


 CPUによる明確な違いが出たのは,2560×1440ドットの結果だ。この解像度では,さすがに8コア勢は全滅で,まったく実用にならない。R7 3700Xは,R7 2700Xよりもマシではあるが,それでも実用的でないという点に変わりはなかろう。

 一方,12コアのR9 3900XとTR 2920Xを細かく比較すると,R9 3900Xのほうがややカクつきは少ないレベルでエンコードできていることが分かる。実を言うと,同じ12コアでもTR 2920Xに比べてメモリバス帯域幅で劣るR9 3900Xのほうが,このテストはやや不利ではないかと予想していたので,予想を覆す結果だったというのが本音である。


 ゲームにおける性能評価では,ゲームだけに着目するならR7 3700Xの価格対性能比は圧倒的に高いと述べたが,録画テストの結果を見る限り,ゲーム配信やゲーム録画,あるいは録画データの編集といったところも含めて考えるのであれば,R9 3900Xを選ぶべきと言える。録画に関しては,HEDT並の性能を発揮できるからだ。


非ゲーム用途の性能も優秀な第3世代Ryzen


 非ゲーム用途におけるテスト結果もまとめていこう。まずはUL製の総合ベンチマーク「PCMark 10」からだ。
 今回はCPUの性能テストなので,すべてのテストを実行する「PCMark 10 Extended」を選択したうえで,OpenCLアクセラレーションとGPUビデオアクセラレーションを無効化してテストを実行した。カスタム実行となるため,総合スコアは得られず,テストグループ単位のスコアとなることをお断りしておく。

 グラフ24に結果をまとめてみた。まっ先に注目したいのは,アプリケーションの起動と終了や,Webブラウジング,ビデオ会議と言った一般的なPCオペレーションの快適さを見る「Essentials」で,R7 3700Xとi9-9900Kがおおむね横並びに近いスコアとなっている点だ。i9-9900Kのほうが少し上だが,その差は極めて小さい。
 これまでは,PCMark 10におけるEssentialsテストグループでは,Ryzen系がいいスコアを残せなかったのだが,R7 3700Xは,それを見事に跳ね返した結果だ。PCオペレーションにおけるR7 3700Xの快適さは,i9-9900Kに引けを取らないと言えよう。

 一方で気になるのは,R9 3900XのEssentialsにおけるスコアが,R7 2700Xにも及ばないことである。個別の結果を確認すると,「Video Conferencing」(ビデオ会議)がとくに振るわなかった。Video Conferencingテストは,複数のビデオストリーミング再生を実行したうえで,エンコードも行うという高負荷なものだ。OBS Studioのテスト結果からすると,R9 3900Xのほうが好結果となりそうに思えるが,24スレッドも同時に実行できるわりに,メモリチャンネルが2チャンネルしかないR9 3900Xには少し厳しかったのかもしれない。

 オフィスアプリケーションの快適さを見る「Productivity」では,i9-9900Kがトップで次点がR7 3700X,続いてR9 3900Xとなった。ただ,i9-9900KとR7 3700X,R9 3900Xのスコア差は小さく,おおむね同等の快適さが得られるという理解でいいと思う。
 ビデオや静止画の編集,POV Rayを使った3Dレンダリングなどを行う「Digital Content Creation」では,12コアのR9 3900Xがトップに立った。ここはマルチコアが効くテストだけに当然だろう。次点はi9-9900Kで,続いてR7 3700Xという結果だ。
 最後の「Gaming」は,Fire Strikeをウインドウモードで実行するテストであるため,スコアはおおむね前出のFire Strikeと同じ傾向となった。

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 続いては,ffmpegを用いたCPUによる動画のトランスコードテストだ。ここでは,FFXIV紅蓮のリベレーターでゲームをプレイした「7分25秒,ビットレート437Mbps,解像度1920×1080ドット,Motion JPEG形式」の録画データをソースとして用意した。
 そして,ソースの映像を「libx264」エンコーダによりH.264形式に変換するのに要した時間と,「libx265」エンコーダでH.265/HEVC形式に変換するのに要した時間を,それぞれスコアとして採用する。
 使用したバッチファイルは以下のとおり。いつものようにslowプリセットにanimationチューニングを加え,可能な限り画質の劣化を抑えた変換を行う。

del avc.mp4
del hevc.mp4
powershell -c measure-command {.\ffmpeg -i Diademe.avi -c:v libx264 -preset slow -tune animation -crf 18 -threads 0 avc.mp4} >MPEG4_score.txt
powershell -c measure-command {.\ffmpeg -i Diademe.avi -c:v libx265 -preset slow -crf 20 hevc.mp4} >HEVC_score.txt

 結果はグラフ25にまとめたとおり。H.264のエンコードでトップに立ったのは12コアのR9 3900Xで,次点となった同じ12コアのTR 2920Xに比べて,約118秒(2分弱)も速くエンコードを終えている。R7 3700Xも優秀で,同じ8コアのi9-9900Kよりも約61秒,R7 2700Xより207秒も速くエンコードを終えた。

 それ以上に驚くのは,H.265のエンコード結果だろう。R9 3900Xがトップなのは順当として,なんと次点はR7 3700Xだ。同じ8コアのR7 2700Xのわずか約73%の時間でエンコードを終えており,結果としてi9-9900Kよりも約152秒も速くエンコードを終えることができた。これまで8コアのCPUでは,libx265を使ったH.265のエンコードでi9-9900Kが優秀だったのだが,R7 3700Xがそれを有意に覆した形だ。
 libx265はAVX2を使っているので,最大スループットが2倍になった第3世代Ryzenの浮動小数点演算ユニットが効果を発揮したに違いない。

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 続いては,「DxO PhotoLab 2」を使ったRAW現像の所要時間を見ておこう。ここでは,ニコン製デジタルカメラ「D810」を用いて撮影した,解像度7360×4912ドットのRAWファイル60枚に対して,ベンチマーク用のプリセットを適用し,JPEGファイルとして出力し終えるまでの時間を計測し,スコアとして採用する。

 グラフ26に結果をまとめてみた。トップはR9 3900Xで,わずか1033秒でRAW現像を終えてしまった。これは,同じ12コアのTR 2920Xより267秒,i9-9900Kよりも424秒も速い。
 次点はR7 3700Xで,i9-9900Kより133秒も速くRAW現像を終えた。8コアCPUとしては極めて優秀と言っていい。

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 マルチスレッド性能がスコアに大きな影響を与える3Dレンダリングベンチマーク「CINEBENCH R20」の結果をまとめたのがグラフ27だ。なお,CINEBENCHはWindowsストアアプリ化したため,過去のバージョンとは直接スコアを比較できなくなっている点に注意してほしい。

 トップはR9 3900Xで,次点がTR 2920X,その次がR7 3700Xという妥当な順位となった。R9 3900Xの結果は,R7 2700X比で約180%,i9-9900K比で約163%と,12コアCPUらしい高スコアを叩き出している。R7 3700Xも優秀で,R7 2700X比で約123%,i9-9900K比で約111%と,比較対象をそれぞれ上回った。

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 余談だが,AMDは社内でのテスト結果として,R9 3900XはCINEBENCH R20で7000超のスコアを出したと主張している。しかし筆者は,どう頑張っても7000を超えるスコアを出せなかった。使用しているレビュー機材はAMD提供のものなので,冷却システムが異なるからかもしれない。

 さて,非ゲームアプリケーションによるテストの最後は,マルチスレッドに最適化したファイルの圧縮/展開ツールの「7-Zip」だ。
 7-Zipの「7-Zip File Manager」にはベンチマーク機能があるので,今回は7-Zip File Managerから「ツール」→「ベンチマーク」を開き,いったん[停止]ボタンを押してから「辞書サイズ」を「64MB」に設定。その後,[再開]ボタンをクリックして3分間連続実行し,その時点での総合評価をスコアとして採用することにした。

 結果はグラフ28にまとめたとおり。ここでもトップはR9 3900Xで,次点がTR 2920X,3番手はR7 3700Xという順位だった。
 R9 3900Xのスコアは,R7 2700X比で約174%,i9-9900K比で約149%。R7 3700Xは,R7 2700X比で約129%,i9-9900K比で約111%となっている。CINEBENCH R20と似た傾向で,AVX2の整数演算を使っていることが第3世代Ryzenの優秀なスコアにつながっているのかもしれない。

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 非ゲーム用途における性能を見てきたわけだが,R9 3900Xは,多数のCPUコアを稼動させるエンコードやレンダリング,圧縮解凍,RAW現像といったあらゆるテストで,12コアCPUらしい性能を持つことがわかった。HEDT向けであるTR 2920Xを上回る性能を見せる点は特筆すべきだろう。コア数の多いCPUを求めるPCユーザーにとって,魅力的な製品が出てきたというところだろうか。

 R9 3900X以上に感心させられたのが,R7 3700Xだ。PCMark 10でもi9-9900Kと遜色ないスコアを記録し,エンコードやRAW現像といった多数のCPUコアを駆使する用途では,軒並みi9-9900Kを上回る性能を見せた。AMDは,R7 3700Xの競合をi7-9700Kに設定しているが,これは少々謙遜しすぎで,i9-9900Kが競合と言われても納得するくらいだ。性能だけを見ると,i9-9900Kはもはや存在意義を失ったとまで言えるかもしれない。


R7 3700Xの性能対消費電力性能は秀逸


 最後に消費電力を確認しておこう。
 4Gamerでは,ベンチマークレギュレーション20世代以降で,EPS12Vの電流を測り,12を掛けて電力に換算する方法を採用している。この方法なら,CPU単体のおおよその消費電力が推測できるからだ。
 ただ,電気代という現実的な運用コストに関わるシステム全体の消費電力も目安として知りたい読者は多いと考え,システム全体の最大消費電力も併せて掲載している。

 グラフ29は,各テストにおけるEPS12Vの最大値と,無操作時にディスプレイ出力が無効化されないよう設定したうえで,OSの起動後30分放置した時点(以下,アイドル時)のスコアをまとめたものだ。

 12コアのR9 3900Xは,ピーク時の消費電力が相応に高く,最大値は3DMark時の157Wだった。同じ12コアのTR 2920Xでは,180W近いピーク消費電力を記録したので,それよりは低いものの,相応に消費電力は高いと言える。
 一方,R7 3700Xはおとなしめで,DxO Photolab2によるRAW現像時の約94Wが最大だった。R7 3700XのTDPは65Wなので,最大値が約94Wであれば納得と言ったところか。同じ8コアのi9-9900Kは,最大で120Wを超えているので,それに比べると相当扱いやすい。
 なお,アイドル時の消費電力は,R9 3900Xが約38W,R7 3700Xが約21Wだった。アイドル時に10Wを切るi9-9900Kに比べると,有意に高いのが残念だ。ファームウェアの改善で,もう少し下げられそうな気はするが。

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 続いてグラフ30は,CPU単体の消費電力における中央値をまとめたものだ。「CPUでアプリケーションを実行したときの典型的な消費電力」と考えてもらっていいだろう。
 R9 3900Xでは,RAW現像時の約143Wが最大値となった。とはいえ,8コアのR7 2700XはRAW現像時に146Wというそれ以上の値を記録している。高いといえば高い中央値だが,R9 3900Xの発熱面における使い勝手は,R7 2700Xと大差ないと言えそうだ。

 一方,R7 3700Xはかなり優秀で,RAW現像やトランスコードなどCPUに負荷をかける処理でも,86W台前半に収まっている。全般的に,i9-9900Kよりも低めの値を記録しているので,かなり扱いやすいCPUと言えよう。65Wという公称TDPは,伊達ではないようだ。

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 消費電力の最後に掲載するグラフ31は,ログの取得が可能なワットチェッカー「Watts up? PRO」を用いて,各テスト実行時点におけるシステムの最大消費電力をまとめたものである
 今回はGeForce GTX 2080 Tiという消費電力モンスターなGPUを使っていることもあり,システムの消費電力ではGPUが支配的だ。ただ,そんな中でもR7 3700Xの消費電力は目を引き,i9-9900Kよりも大半のテストで有意に低いピーク消費電力を記録した。

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 以上の結果をまとめると,R9 3900Xは12コアCPUだけあって,消費電力も大きい。ただ,R7 2700Xと大差ないレベルであり,AMDの歴代8コアCPU並みの消費電力に収めていると言えよう。
 一方,R7 3700Xは,公称TDP 65Wを謳うだけのことはあり,i9-9900Kよりも最大消費電力は低めである。消費電力あたりの性能は,とても優秀と言っていいレベルだろう。アイドル時の消費電力が高いのは,玉に瑕といったところだろうか。


ゲーマーにおすすめできるのはR7 3700X。クリエイターならR9 3900Xもあり


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 というわけで,注目の第3世代Ryzen製品を見てきたわけだが,印象に残ったCPUは,やはりR7 3700Xの方だろう。ゲーム性能でi9-9900Kを上回ることはないものの,肩を並べる程度の性能を有している。そのうえで,非ゲーム用途では多くのワークロードでi9-9900Kを上回る性能を持つ。そのうえ,i9-9900Kよりも消費電力は低めだ。
 しかも,R7 3700Xのメーカー想定売価は税込4万3000円前後と,本稿執筆時点におけるi9-9900Kの実勢価格より1万6000円ほど安価である。これといって悪いところが見当たらないCPUであり,ゲーマーなら迷わずR7 3700Xを購入しても損はないだろう。

 一方のR9 3900Xは,少なくともゲームだけを目当てに買うのに適した製品ではない。ただ,CPU負荷が高いエンコードやRAW現像といった処理では,12コアCPUらしい性能を見せた。メーカー想定売価も税込6万5000円で,i9-9900Kと比べて+6000円から同程度の範囲なので,コア数が多いほど有利な処理を日常的に行っているPCユーザーにとっては魅力的だ。
 プレイした動画を同じPCで編集している配信系ゲーマーには,R7 3700Xよりもお勧めできる。

 気になるのは,12基のCPUコアに対してメモリバスが2チャンネルというバランスの悪さが,ゲームでも垣間見える点だろうか。R9 3900Xでは,大きく足を引っ張るというほどの傾向は見えなかったが,よりアンバランスが極端になる16コア版のRyzen R9 3950Xでどうなるのか,少し興味のあるところだ。

AMDのRyzen製品情報ページ

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    Ryzen(Zen 2)

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