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[GDC 2015]ゲーム作りは自分を信じて楽しむもの――「ダンガンロンパ」シリーズを手がけた小高和剛氏の講演直前インタビューを掲載
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印刷2015/03/06 17:44

インタビュー

[GDC 2015]ゲーム作りは自分を信じて楽しむもの――「ダンガンロンパ」シリーズを手がけた小高和剛氏の講演直前インタビューを掲載

スパイク・チュンソフトの小高和剛氏
画像集 No.001のサムネイル画像 / [GDC 2015]ゲーム作りは自分を信じて楽しむもの――「ダンガンロンパ」シリーズを手がけた小高和剛氏の講演直前インタビューを掲載
 スパイク・チュンソフトの小高和剛氏が,北米時間の2015年3月5日に,Game Developers Conference 2015(以下,GDC 2015)で「My Ordinary Process for Crafting Extra-Ordinary Stories」(日本のサブカルチャーでうけるキャラクターとシナリオの作り方)と題した講演を行った。
 小高氏といえば,ダンガンロンパシリーズの企画・シナリオ,「絶対絶望少女 ダンガンロンパ Another Episode」(PS Vita)の総監督・シナリオを手がけたことで知られている。
 今回4Gamerでは,講演を控えた小高氏に事前インタビューする機会を得たので,その内容をお届けしよう。

「絶対絶望少女 ダンガンロンパ Another Episode」公式サイト

「ダンガンロンパ1・2 Reload」公式サイト



4Gamer:
 本日はよろしくお願いします。今回のGDC 2015における小高さんの講演は,運営側からオファーがあって実現したものなのでしょうか。

小高和剛氏(以下,小高氏):
 はい。実は飛行機が苦手なので,ちょっと迷ったんですが(笑)。せっかく依頼していただいたわけですし,周りからも「出るだけでもいい経験になるよ」とアドバイスもあったので。

4Gamer:
 小高さんは,今回のGDC 2015でセッションをもうご覧になりましたか?

小高氏:
 あまり時間が取れなくて,まだ2つ3つくらいしか見ていないんですが,CEDECなどと同じ流れで,こちらでもスマートフォンゲームの勢いがあるんだなという印象を受けました。

4Gamer:
 今回の講演は,「キャラクターとシナリオの作り方」に関する内容になるとのことですが,日本と海外の作品で,物語やキャラクターの作り方に違いを感じることはありますか?

小高氏:
 いえ,ほとんどないですね。どちらで作られようが,面白いものは面白いです。ただ,日本と海外ではプレイヤーの絶対数が違いますから,海外の開発者のほうが冒険しやすいとは思います。
 例えば,「ホラーファンは一握りしかいない」というのは,日本と海外どちらでも言えることだと思いますが,同じ一握りの割合でも,実際の母数は海外のほうがはるかに多いですから,ホラーゲームでも勝負できると。
 ダンガンロンパも同じような感じで,海外でプレイしているのは一握りの方だと思うんですが,絶対数が多いので,盛り上がっているように感じられるんだと思います。

4Gamer:
 ダンガンロンパファンの反応も,日本と海外で違いはないんですか。

小高氏:
 ええ,海外でもだいたい同じところを面白いと思ってもらえているようです。

「ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生」
画像集 No.006のサムネイル画像 / [GDC 2015]ゲーム作りは自分を信じて楽しむもの――「ダンガンロンパ」シリーズを手がけた小高和剛氏の講演直前インタビューを掲載


キャラクターはリアルをあまり汲み取らず「エンターテイメントとしての人間」を作る


4Gamer:
 では,キャラクターについての話を聞かせてください。ダンガンロンパシリーズに登場するキャラクター達は皆,個性的で「尖っている」という印象を受けるのですが,それはどのような意図から生まれたものなのでしょうか。

小高氏:
 あまりリアルなところを汲み取らないで,「エンターテイメントとしての人間」というものを作ろうとしています。それだからこそ,物語の醍醐味を出せるかなと。

4Gamer:
 リアルなところを汲み取らない,という部分をもう少し詳しく教えてもらえますか。

画像集 No.005のサムネイル画像 / [GDC 2015]ゲーム作りは自分を信じて楽しむもの――「ダンガンロンパ」シリーズを手がけた小高和剛氏の講演直前インタビューを掲載
小高氏:
 ダンガンロンパでは,「総合的なリアルさ」は目指していないんです。キャラクターの感情面で,「こんなときにはこうするだろう」といったようなリアルさは守らなくてはいけないですけど,総合的に見れば「こんな奴はいないよ」と言われるようなキャラクターを目指しています。
 そもそも,「超高校級の何々」なんてコピーがつくような人物ですからね(笑)。

4Gamer:
 第1作で言えば,「超高校級の野球選手」が赤髪でピアスをいくつも付けていたり,「超高校級のギャンブラー」がロリータファッションだったりしたのも,“総合的なリアルさ”を目指していないから生まれたと。

小高氏:
 「ギャンブラーっぽいギャンブラー」だと,そこで終わってしまうんですよね。「ギャンブラーだけど何々」という要素を探して,ピンと来るものを採用するという感じです。 プレイヤーに「なぜ?」と考える余地が出てくるので,キャラクターのギャップは重要なんですよ。
 ただ,それを逆手にとった作り方もあります。「まさかあいつがあんなことを……」っていう展開です。そのあたりは掛け合わせが重要ということですね。

4Gamer:
 確かに,外見と内面が一致しないキャラクターがいる一方で,大和田紋土みたいに「超高校級の暴走族」でイメージする典型的な容姿をしているキャラクターもいますね。

小高氏:
 同じような狙いで,設定のすべてをあえて書かない場合もあります。例えば,十神白夜は,家がものすごい金持ちという設定ですけど,実際どれくらいの金持ちなのかまでは書いていないんです。そこはプレイヤーに想像してもらいたいなと。

4Gamer:
 確かに,設定に想像や妄想をふくらませる余地があると嬉しいプレイヤーもいますよね。

小高氏:
 例えば小説なら,それぞれの展開をもっとしっかり掘り下げるほうがいいと思いますし,クリエイター個人としても,いろいろと細かく書きたいところがあります。ただ,すべてを書いてしまうと,物語がもっさりするんですよ。
 ダンガンロンパの場合,ビジュアルノベルではないので,テキストが入るスペースは限られていますし,スピード感が必要なところもあります。ですので,入れたい展開をすべて入れて,それぞれのボリュームに差をつけるというやり方にしました。ゲームなので,「浅い」と言われるのが分かっていても,そこはあえて流すと。

4Gamer:
 ダンガンロンパの主人公「苗木 誠」の誕生日に,Twitterで「これまたキャラがコントロールできなくなって勝手に走ったのは初めてでした。」とツイートしていましたよね。
 物語を書いている方が,キャラクターが作り手の意思を離れて勝手に動き出すと表現することをよく聞きますが,小高さんの場合,どういう感じだったのかをぜひ教えてください。

※小高氏の関連Tweet(1/2/3/4

小高氏:
 苗木 誠は最初,ほかの強烈なキャラクターとの比較対象になる「マッチ棒」として,等身大の高校生を考えていたんです。でも,キャラクターデザインが上がってきたり,声優が緒方恵美さんに決まったりするなかで,書いているうちに存在感が大きくなっていって,マッチ棒どころじゃなくなってきたんです。

4Gamer:
 当初の構想とは,まったく方向性が異なってきたと。

小高氏:
 「こいつだったらこうするよな」「こいつならここでこう成長するな」という考えがどんどん出てきて物語が進んでいく,といったことは,普通のキャラクターでも起きることなんですが,それはあくまで,「自分が作ったキャラクターとして」なんですよ。
 苗木 誠の場合は,最初の地点が見えないほどいろいろ足されて,もう「こいつならだったらこうする」に自分の意思を入れられないくらいだったので,もう1人の人間みたいに感じられたんです。

4Gamer:
 それくらいキャラが立ってくると,「いいキャラクター」になるんですか。

小高氏:
 いえ,キャラクターが悪い方向に走ってしまう場合もあるので,そうとも限らないんです。
 ゲームの場合は,ちょっとおかしくなっても序盤からいじることができますが,例えば週刊連載の少年漫画だと,作品を速いペースで出していきますから,“暴走”に気づいたときにはもう戻れない,というケースもあるようですね。

スーパーダンガンロンパ2 さよなら絶望学園
画像集 No.008のサムネイル画像 / [GDC 2015]ゲーム作りは自分を信じて楽しむもの――「ダンガンロンパ」シリーズを手がけた小高和剛氏の講演直前インタビューを掲載


多少流れに無理があっても「書きたい部分だけで構成されている」物語が理想


4Gamer:
 以前のインタビューで,ダンガンロンパは「面白さの切り貼り」で作った作品だいう話をうかがいましたが,そのような手法は,ダンガンロンパに限らず,小高さんの作品全体に通じているものなのでしょうか。

小高氏:
 そうですね。最初に自分が面白いと思うものを箇条書きにして,切り貼りしていくという感じで作っています。

4Gamer:
 全体の流れを最初に考えないんですか?

小高氏:
 物語上に書きたくない部分がある,というのが嫌なんですよ。例えば,流れの中に「A」という自分の書きたい展開があるとして,そこにたどりつくまでの「A」以外の部分を書くのがつらいというか。
 書きたい部分だけで構成されているのが理想なので,多少流れに無理があっても自分が気に入ったものを入れていますね。

4Gamer:
 少し話は逸れますが,小高さんが物語を作るうえで,影響を受けた作品があれば聞かせてください。

小高氏:
 影響はいろいろなものから受けていますが,強いて挙げるならメフィスト賞の受賞作品ですね。ミステリーの文学賞の中でも,従来の枠にとらわれない「何でもあり」というところには影響を受けていると思います。

※講談社の小説雑誌「メフィスト」から生まれた新人賞(公式サイト)。内容制限は「読んで面白いこと」のみで,書き下ろし未発表のエンターテイメント作品(ミステリー,ファンタジー,SF,伝奇など)が選考対象とされている。

4Gamer:
 そう言われてみると,ダンガンロンパも「何でもありのミステリー」と言えますね。

小高氏:
 王道的な作品は「逆転裁判」をはじめいくつもありますし,同じ王道でやっても勝ち目はないですから,邪道でいこうと(笑)。

4Gamer:
 素人目線だと,何でもありだと収集がつかなくなることもありそうな気がするのですが,実際のところはどうでしょうか。

小高氏:
 何でもありとは言いつつも,基準のようなものはあって,それは「自分が好きかどうか」なんです。自分が面白いと感じたら,ちょっとぐらい無理があっても入れてしまいますから。
 ウケを狙いにいって,外してしまったらそれこそ最悪なので,結局のところは自分を信じるしかないということですね。

4Gamer:
 「ダンガンロンパ」で言うと,無理があっても入れたものにはどんなものがありましたか。

小高氏:
 殺人鬼です。「殺人鬼なんかがいたら,すぐに全員殺しちゃうだろう」「殺人鬼が犯人でも,被害者でも,生存者でもおかしい」などと,いろいろと意見が出てきたんですが,どうしても入れたかったので。
 ああいう形で最終的には生き残るというところも,プレイヤーの意表をつけたんじゃないかと思います。

4Gamer:
 やはり,プレイヤーの意表をつくことを常に意識しているんですか。

小高氏:
 ええ。シナリオを書くときは主観的ですが,一度書いたものを見直すときはプレイヤー目線になって,「ちょっとここは驚きが少ないかな」などと感じたら修正しますね。

4Gamer:
 書き手と読み手の切り替えというか,両方の視点を持つことが求められるんですね。

小高氏:
 それはライターに必要な資質じゃないかと思っています。一部の天才のような人達は,一度書いたものでほぼ完成ということもあるみたいですが,それ以外の人は何度も推敲を繰り返すことになると思うので。

絶対絶望少女 ダンガンロンパ Another Episode
画像集 No.007のサムネイル画像 / [GDC 2015]ゲーム作りは自分を信じて楽しむもの――「ダンガンロンパ」シリーズを手がけた小高和剛氏の講演直前インタビューを掲載


ダンガンロンパなら,普通に続編を作るよりプレイヤーを驚かせるような展開をしたい


4Gamer:
 小高さんにとって,ゲーム作りは面白いものですか。

小高氏:
 自分が楽しんで,プレイヤーの方も楽しんでくれるのがベストだと思っています。楽しいほうに持っていかないと,やっている意味がないですから。
 ダンガンロンパも,もともとは自分達が作りたいものを作って,それが受け入れられてヒットしたわけですから,いきなりビジネスライクになっても失礼だろうと。

4Gamer:
 残念ですが,そろそろ時間となってしまったので,最後に読者に向けてメッセージをお願いします。

小高氏:
 ダンガンロンパシリーズなら,普通に続編を作るというよりは,やはりプレイヤーを驚かせるような展開をしたいと思っています。「何が起こるのか」という楽しみ方をしてほしいですね。僕達は驚いてもらえるように,楽しんで作ります。
 ほかに替えのきかない,独特なゲームだと思っていますので,まだ未体験の人はぜひ触ってみてほしいですし,ファンの方は変わらずにお願いします。

4Gamer:
 小高さんの今後のご活躍にも期待しています。本日はありがとうございました。

「絶対絶望少女 ダンガンロンパ Another Episode」公式サイト

「ダンガンロンパ1・2 Reload」公式サイト


GDC公式Webサイト

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