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[GDC 2014]主人公が見えないのに,どうやってゲームにすればいいのか。「rain」の開発にまつわるレクチャーの模様をレポート
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印刷2014/03/21 20:16

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[GDC 2014]主人公が見えないのに,どうやってゲームにすればいいのか。「rain」の開発にまつわるレクチャーの模様をレポート


 サンフランシスコで開催中のGame Developers Conference 2014で,現地時間の3月20日,「Come Rain or Shine: rain Postmortem」と題されたレクチャーが行われた。これは,ソニー・コンピュータエンタテインメントジャパンアジア(以下,SCEJA)が2013年10月に発売したアクションアドベンチャー「rain」の開発経緯を語るというもので,GDCではおなじみのPostmortemレクチャーの一つだ。
 スピーカーは,SCE Japanスタジオで「rain」のプロデューサーを務めた鈴田 健氏と,同じくディレクターを務めた池田佑基氏だ。

写真左が「rain」のプロデューサー鈴田 健氏。右が池田佑基氏

 主人公の姿が見えないというユニークな設定の「rain」は,発売後,ゲーム関連のさまざまな賞を受けたりノミネートされたりした作品だが,開発途中で数多くの紆余曲折があり,制作には2年9か月もかかっている。冒頭,「ここでは,会社でも話さないようなことをお伝えしたい」と池田氏は述べた。

rain rain

 「rain」の企画はもともと「PlayStation C.A.M.P!」から生まれたもので,のちにアクワイアと共同開発となった。ちなみに「PlayStation C.A.M.P!」とは,経験の有無に関わらず,高い感性を持ったゲームクリエイターを発掘/支援するという,SCEJAが主催するプログラムで,これまで「TOKYO JUNGLE」や「100万トンのバラバラ」など,これまで市場になかったような作品を生み出してきたという。
 この「rain」も,ほかの作品にはない驚きをプレイヤーに与えるものにしようと,ゲームの要素を世界観や操作性だけでなく,かなりコアな部分,例えばコントローラとプレイヤーの関係といったレベルまで分解して考えたという。

rain rain
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 そんな中で生まれたのが,「見えない主人公」だった。見えないものを操作するのは,これまでのゲームに対する強いアンチテーゼになるのではないかと思ったのだ。コンセプトが決まったので,続いてこれを実際のゲームに仕上げるわけだが,選択肢としては「アクションパズル」と「アクションアドベンチャー」の2つがあったと池田氏は述べた。
 面クリア型のパズルと世界観を楽しむアドベンチャー,どちらにも魅力があるので簡単には決められない。そこで池田氏らは,「見えない」という言葉にさまざまなキーワードを掛け合わせて面白さを探っていったのだが,見えないことがゲームにとっていかに致命的であるのか,このあたりへ来てようやく気がついたという。

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 主人公が見えない横スクロールアクション,主人公が見えないレースゲーム,主人公が見えないTPSなど,いずれもおよそゲームになりそうもない。筆者的には,FPSなんかいいんじゃない,と思ったが,それはともかく,池田氏らは見えない主人公を見えるようにするための方法を考えたと語る。
 その過程で不意に思いついたのが,雨だ。雨粒は当たったところで跳ね返り,キャラクターの姿を浮かび上がらせる。ゲームの仕掛けとしては文句がない。とはいえ,ここで,せっかくだから雨についてじっくり考えてみることにした。

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 ――雨は平等に地上に降り注ぎ,雨音と共に静寂をもたらす。
 ゲームの仕掛けとして考えた雨だが,同時に世界観を大きく膨らませる,感情的な要素であることに気がついた。そこで雨を中心に,夜,孤独,少年,誰もいない街というキーワードを連想し,ここで池田氏らは,夜の街に浮かび上がる透明な少年のファンタジーを作ることに決めたという。ジャンルは,アクションアドベンチャーになった。

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 次は,プロトタイプの制作だ。背景は少し前のヨーロッパの小さな街,10歳の少年少女,得体の知れない怪物など,方向性が決まったことで背景やグラフィックスはスムーズに決まっていった。透明なことを強調するために,そのほかの要素はあえて普遍的なものを選んだという。
 プロトタイプをもとに,ゲームのコンセプトを紹介するムービーを作成したが,その段階では,2Dの絵を3Dモデルに貼り付けるという手法が採られていた。手描き感を出したかったのだが,その方法では修正が容易でないうえに,すべてのマップを手で描かなければいけなくなるため,現実的な判断として通常の3Dモデルに移行した。

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 ただ,池田氏はリアルタイムに生成される影があまり気に入らなかったので,焼き込みの影を使ったという。レンダリングは主に,雨に濡れた場所の反射表現で用い,フォトリアルとは違う,独自の質感を追求した。
 これに合わせて,雨を表現するために必要なギミックや,姿を現したり消したりするのに必要なオブジェクトなどのゲームメカニズムについても試行錯誤を重ね,いろいろなアイデアを出した。ユーザーインタフェースなど,いろいろな可能性を試し,次第にステルスアクションベースのゲームシステムになっていった。

 そんなとき,ゲームの様相を一変させてしまうような事件が起きる。それが,2011年3月11日に発生した東日本大震災だ。連日,目を覆いたくなるような報道が続く中で,池田氏らは自分達の作るゲームの無力さを強く感じたという。雨の中で少年が怪物に追われ,逃げ回るようなゲームを誰がやりたがるというのか。悲しい結末が誰かを傷つけるようなことがあったら,どうすればいいのかと,制作はそこで止まってしまったそうだ。

 しかし,復興が進んで行くのを見たり,「PlayStation C.A.M.P!」のリーダーからの励ましもあったりして,池田氏らは次第に考えを変えていく。ゲームはときに,人を傷つけたり嫌な思いをさせたりしてしまうほどの力を持ったエンターテイメントだ。そうであるなら,プレイする人にどう感じてほしいかをもう一度考えて,デザインをやり直してみようと思えるようになったという。

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 というわけで,「rain」のゲームデザインはここで大きく変更される。これまでのキーワードには,孤独や寂しさといった負の要素が多かったが,好奇心や勇気など,ポジティブな要素が強められた。雨の降りしきる街には恐怖が広がっていたが,それに新たなものを加えて,怖いことは怖いが,ちょっと住んでみたくなるような街へと作り変えられた。
 それを実現するため,暗いだけではない夜を作るライティングや,画面全体をぼんやりさせるポストエフェクト,絵本のように空中にダイアログが浮かぶインタフェースなどが採用された。テーマとしては新たに「月の光」が選ばれ,オープニングやエンディングに登場する水彩画もこのあたりで入れられたという。

 ちなみに,演出面では当時池田氏が娘さんに読んで聞かせていた絵本の影響が大きいそうだ。ライティングではまた,ピンクや黄緑色など特殊な色の光源を使って,黒く潰れない影を作るようにしている。

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 このようにして再始動した「rain」だったが,マップの制作にあたって,リアリティとゲームギミックの食い違いに悩んだという。マップデザインでは,「ここでこういうサイズのオブジェクトが必要」という要請がグラフィックスデザイナーに出され,デザイナーは,例えば小さなオブジェクトであれば木箱,大きなものなら車といった具合に,実際のオブジェクトを置いていくことになる。しかし,現実の街を見ると木箱の置かれたコーナーなどはほとんどなく,リアリティは失われていく。

 池田氏らは,ここで自分達がゲームシステムを優先しすぎたことに気づき,リアリティを持った町並みへの変更を決断した。しかし,そのために泣く泣くあきらめたギミックもあり,失われてしまった面白い仕掛けもあるという。

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 さて,それまでは内部でのテストプレイが行われていただけの「rain」だったが,ついに一般のテスターによるテストプレイの日を迎えることになった。あれこれと工夫を重ね,それなりの手応えを感じていた開発チームだったが,実際のテスターの評価はさんざんだった。

 ここで,テスターのプレイを収録したビデオが公開されたが,それを見ると,プレイヤーどこへ行っていいのか,何をしていいのかも分からないうちに死んでしまうということが頻発している。「こんなゲームは全然ダメだ」という評価もあったそうだ。テスターの意見を聞いたり,ビデオを繰り返し見たりして検討した結果,そういった問題のほとんどがカメラワークに起因していることに気づいたという。

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 「rain」のカメラは固定式で,プレイヤーがある位置に来ると自動的に切り替わるようになっている。透明で,ただでさえ自分のキャラクターを見失いやすいのに,カメラが切り替わった瞬間に主人公が透明だと,何も分からなくなってしまう。

 この問題については,そういうことが起きる場所を一つ一つ洗い出して,修正を加えていった。合わせて,行く場所が分からないという問題については,行く先が感じられるようなカメラアングルに変更し,また,引いた画面では,主人公を見失っても危険にならないように敵の配置を工夫したりなど,問題点を次々に直していった。
 結局,ゲーム内に設置された約200のカメラをすべて手動で修正するという途方もない作業になってしまい,その点は大きな反省点だと池田氏は述べた。

 モーション,グラフィックス,マップ,ローカライズなど,さまざまな最終調整が行われて,ついに「rain」はリリースされた。バグフィックスを除く最終調整はすべて,パフォーマンス維持/向上のために行われており,メモリをギリギリに使った「rain」では,カメラ位置をちょっと変えただけで,パフォーマンスに大きく影響するという。開発中に,PlayStation 4が発表され,メインメモリが8GBもあると聞いて,とてもうらやましく思ったそうだ。

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 最後に池田氏と鈴田氏は,次回へ向けて,今回のプロジェクトの反省点を述べた。まずは,チャレンジ性の欠如。個性的なゲームであるだけに,分かりやすさや遊びやすさを追求した結果,とくにコアゲーマーから「やりがいがない」という指摘をもらったという。2週目に増える要素もあるのだが,難度が変わらないので周回を重ねる必要性が見いだせないという。とはいえ,周回のボーナスを作るのは,マンパワーの問題から無理だったという。

 次に指摘されたのは,ゲームの世界に共感できないというもの。ゲームの題材が万人に受けるものではなかったためか,このゲームの言いたいことはよく分かるという人もいれば,全然分からないという人もいる。これについては,日本だけでなく海外でもテストを行い,広い価値観を導入できればよかったかもしれないとのことだ。

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 以上で,レクチャー「Come Rain or Shine: rain Postmortem」は終了した。「既存のゲームのアンチテーゼ」「これまでになかった作品にする」という高い志で作られた「rain」だったが,ゲームの開発はやはり一筋縄ではいかないもののようだ。限られたスタッフと予算内で試行錯誤を繰り返し,ようやく形になったことがよく分かる内容だといえるだろう。興味のある人は,プレイしてほしい。

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