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DXRベースのレイトレーシングテスト「Port Royal」が「3DMark」に加わる
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印刷2019/01/09 21:09

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DXRベースのレイトレーシングテスト「Port Royal」が「3DMark」に加わる

画像集 No.001のサムネイル画像 / DXRベースのレイトレーシングテスト「Port Royal」が「3DMark」に加わる
 フィンランド時間2019年1月8日,ULのベンチマーク部門であるUL Benchmarksは,3Dベンチマーク「3DMark」の最新バージョンとなる「2.7.6283」を公開した。2018年12月にアナウンスされたとおり,このバージョンにはDirectX Raytracing(以下,DXR)向けの新しいテストとなる「Port Royal」が追加となっている。

 4Gamerではすでにお伝えしているが,あらためて触れておくと,Port Royalは有償のAdvanced EditionまたはProfessional Editionのユーザーが実行できるテストだ。ただし,既存のAdvanced EditionユーザーはPort Royalを実行するためのアップグレードを2.99ドルで購入する必要がある。一方,2019年1月8日以降は,これまでと同じ29.99ドルでPort Royal込みのAdvanced Editionを購入できるようになっている。4GamerではUL公式ミラーとして2.7.6283の配信を開始しているので,必要な人はダウンロードしてもらえればと思う。

 Port Royalは業界初のDXR向けパフォーマンステストだ。今後,DXR対応のゲームタイトルが増える可能性は高く,それだけにPort Royalは要注目のベンチマークといえる。
 本稿ではそんなPort Royalとはどのようなテストなのか,概要をまとめてみたい。

画像集 No.009のサムネイル画像 / DXRベースのレイトレーシングテスト「Port Royal」が「3DMark」に加わる 画像集 No.010のサムネイル画像 / DXRベースのレイトレーシングテスト「Port Royal」が「3DMark」に加わる
画像集 No.008のサムネイル画像 / DXRベースのレイトレーシングテスト「Port Royal」が「3DMark」に加わる


DXR対応のGPUとOctober 2018 Update以降のWindowsが必須となるPort Royal


 4Gamerの読者ならほとんど説明不要だとは思うが,簡単におさらいしておくとDXRは,Windows 10 October Updateで追加となった「レイトレーシングを用いたハイブリッドレンダリングをDirectX 12からサポートするAPIセット」だ(関連リンク)。

 従来型の3Dグラフィックスは,ポリゴンの頂点からなる3D空間の情報が,カメラ位置から見てどのような2D画像になるのかを,ポリゴンの色と明るさをもとに描画する方法が使われている。ラスタライズとも呼ばれる方法で,単純なアルゴリズムを用いて高速に3Dの情報を2D画像に変換できる。その代わりに,影や物体の映り込みといった「現実世界には普遍的にある映像」を再現することは難しく,それっぽい画像を得るためにさまざまな手法が考案されてきた。

 一方,レイトレーシングは日本語だと光線追跡法と呼ばれており,カメラ位置から描画するピクセルごとに光線(レイ)を飛ばして3D空間の物体にどう当たり,どう跳ね返るのかを計算してカメラ位置の2D画像を得る。レイトレーシングならばリアルな影や反射,環境光の描写などが可能だが,計算量が極めて大きくなるので1枚の画像を得るのに時間がかかる難点があった。

 DXRではラスタライズをベースにしつつ,影や反射にレイトレーシングを援用する3Dグラフィックス描画をサポートしている。「ハイブリッドレンダリング」と呼ばれるのは,ラスタライズとレイトレーシングを併用するためだ。すべてをレイトレーシングで描くわけではないので,計算量を抑えることができるものの,それでもラスタライズに比べると計算負荷は非常に高くなる。

 そのためOctober 2018 Updateで追加された第1世代のDXRは,GPUのハードウェア支援によるレイトレーシングを前提とした設計になっている。つまりDXRを利用するためにはDXRのアクセラレーションに対応したGPUが必須だ。

 そんなDXRのパフォーマンスをテストする3DMarkのPort Royalもまた,実行するにはDXRのアクセラレーションに対応したGPUが必要だ。2019年1月の時点では,NVIDIAのTuringアーキテクチャを採用するGeForce RTX 20シリーズかQuadro RTXシリーズ,あるいはNVIDIA TITANシリーズのTuringアーキテクチャ採用モデルである「NVIDIA TITAN RTX」かVoltaアーキテクチャ採用モデルである「NVIDIA TITAN V」のいずれかが必須となる。筆者が試した限り,GeForce GTX 10シリーズやRadeon RX Vegaシリーズ搭載環境だと実行できなかった。

画像集 No.007のサムネイル画像 / DXRベースのレイトレーシングテスト「Port Royal」が「3DMark」に加わる

 そのほか動作に必須の条件は下にまとめたとおり。GPUはマルチGPU構成に対応しているとのことなので,対応グラフィックスカードによるマルチGPU構成ではより高いスコアが得られるはずだ。

  • OS:64bit版Windows 10+October 2018 Update(Version 1809)
  • CPU:デュアルコア以上,動作クロック1.8GHz以上,SSSE3命令セット対応必須
  • メインメモリ容量:4GB以上
  • グラフィックスメモリ容量:6GB以上
  • ストレージ空き容量:0.8GB以上(※従来の3DMarkがインストールされている場合)

 これらUL公式の最小構成に加えて,筆者が試した限りでは2560×1440ドット以上の解像度を持つディスプレイがないとPort Royalの総合スコアを得ることができなかった。これまで3DMarkのFireStrikeやTime Spy,Night Raidといったテストは,PCに接続されているディスプレイ解像度に左右されずに実行することができたが,Port Royalはそうではないようなのだ。

 Port Royalの総合スコアは2560×1440ドットのレンダリング時のパフォーマンスを前提としているため,2560×1440ドット以上の解像度に対応するディスプレイを接続しておかないと実行できずに総合スコアを得られない。2560×1440ドット未満の解像度のディスプレイでも,レンダリング解像度を変更したカスタム設定で実行はできるものの,カスタムの設定では総合スコアが出ない仕組みになっている。

 なお,UL公式のテクニカルドキュメントにはディスプレイの解像度に制限されるという記述がないので,Port Royalがディスプレイ解像度に依存しているように振る舞うのは現時点におけるNVIDIA製グラフィックスドライバが抱える制限――今回は「GeForce 417.35 Driver」と「GeForce Hotfix Driver Version 417.58」で試した――によるものという可能性もある。なので将来にわたってそうなのかは不明だが,現時点ではディスプレイ解像度も要件の一つになるようなので注意してほしい。


Graphics testのみで構成されるシンプルなPort Royal


「BENCHIMARKS」に「Port Royal」が追加されている。▲マークが表示されているが,これは「ハードウェア互換性がない」(Your hardware may not be conpatible)という警告の一部。今回のテストには「GeForce RTX 2080 Ti」搭載グラフィックスカードを使ったのでもちろん互換性があり,実際にPort Royalの実行もできるのだが,どういうわけかこの警告が消えなかった。まだバグがあるのかもしれない
画像集 No.002のサムネイル画像 / DXRベースのレイトレーシングテスト「Port Royal」が「3DMark」に加わる
 Port Royalは16世紀ごろカリブの海賊が拠点にしていた都市として有名だ。栄華を極めたPort Royalだったが,街の絶頂期に地震で街の半分ほどが海に沈んだことも手伝って伝説となり,小説や映画の題材になることも多い。

 そんな海賊都市の名前を関したPort Royalのテストでは,宇宙の海賊都市をイメージした宇宙港の様子を描く3Dグラフィックスによるショートアニメーションが使われている。

 デモとテスト本体が用意されているのは3DMarkのほかのベンチマークと同じだが,Port Royalのテスト本体にはCPU性能を測るテストがなく,グラフィックス性能を測る「Graphics test」のみという構成が特徴となっている。Graphics testも1本だけで,しかも「Fire Strike」のように「Graphics test 1」「Graphics test 2」と分かれていないので,実にシンプルだ。
 ULのテクニカルドキュメントによると,Port Royalのグラフィクスエンジンでは「CPUの論理コア数分のスレッド」を使ってGPUにコマンドを発行しているため,CPUが十分な性能を持たない場合,CPUがボトルネックとなってスコアに影響を与えることがあるという。つまりCPUが高速でコア数が多いほどスコアが伸びやすいわけだが,しかしCPU性能そのものを測るテストは含まないというわけである。

 なお,テスト方法は従来同様だ。3DMarkの「ベンチマーク」画面から「Port Royal」を選び,[Run]ボタンをクリックするだけとなっている。

Port Royalに切り替えたところ。ここで[Run]をクリックすると実行できる。「Include demo」のスイッチをオフにすればデモをパスすることができるのも従来と同じだ
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 「Custom run」タブを選択すると設定を変えて実行できるのも従来からある3DMarkのテストと変わっていない。

「Custom run」タブを選択したところ。「Rendering quality」欄にある「Resolution」プルダウンメニューで表示解像度を切り替えることができるのが3DMarkのほかのテストとの違いだ
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 また,「Reflection mode」を「Traditional」または「Disabled」に切り替え,「Disable RT Shadows」をオンにするとレイトレーシングを使用しない描画に切り替わるとのことだが,だからといって,ここをオンにしても,DXR非対応のGPUで実行できるようになるわけではなかった。

 そのほか,Depth of Field(被写界深度),Light Shafts(光の柱の描写),Decals(デカールテクスチャ),Transparents(透過),Bloom(ブルーム効果)をそれぞれ無効化して実行することができる。

 「Max reflection sample count」は説明がないので推測だが,反射を表現するためのレイのサンプル数ではないかと思われる。この設定はGPUのハードウェアに依存しているようで,「GeForce RTX 2080 Ti」搭載グラフィックスカードを差した今回のテスト環境だと,スライダーを動かすことができなかった。

 「Image quality tools」タブはレンダリング結果を静止画として出力して画質を見るツールだ。前述のとおり,現在ではNVIDIA製GPUの一部しかDXRをサポートしていないので,画質の違いをテストする必要性はあまりなさそうだが,AMDやIntelのGPUがDXRをサポートするようになれば,レンダリング結果としての画質がGPUごとに異なるといったことが起こりえる。そういうときのための機能だろう。

「Image quality tools」タブは画質の違いを見るツール。いまのところDXRはハードウェアに大きく依存するので,「GPUが異なると画質が違う」といったことも起こりえる
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スコアの計算は単純明快


 Port Royalのデモ画像を見てもらえば分かると思うが,鏡面に光る宇宙船への映り込みやシャープな影や光の描写に「レイトレっぽさ」を感じることができるだろう。


 Port Royalエンジンによる映り込みの表現は,反射光のレイトレーシングと反射結果のフィルタリングを組み合わせて実現しているとのこと。鏡面反射のような完全な反射画像が必要なサーフェスや鏡面に関してはフルシェーディングを行ってスクリーン内にないオブジェクトを含めた完全な反射映像を得ているそうだ。

 影の描画には,光源の方向にレイを飛ばす,いわゆるシャドウレイと呼ばれる技法を用いているという。シャドウレイによるシェーダでシャドウテクスチャを出力して正確な影の表現を行うと行った感じのようだ。これらの計算の一部はDirectX 12の非同期コンピュートが用いられているそうである。

 アンチエイリアシングにはTemporal Anti-Aliasing(TAA)が用いられており,またポストエフェクトでは被写界深度やブルーム効果が付加されている。

Port Royalのレンダリングパス
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 なお,Port RoyalエンジンではNVIDIA独自のレイトレーシング拡張である「NVIDIA RTX」や,深層学習ベースのアンチエイリアシング技術「DLSS」は採用していないと,ULは明言している。NVIDIAはこれらを用いることでDXR+TAAよりも高い画質と高いフレームレートを得られるとアピールしているが,その恩恵はPort Royalでは得られないわけだ。

 さて,そのPort Royalのスコア計算法だが,これまた実にシンプルだ。Port RoyalではGraphics testのGraphics scoreがそのまま総合スコアとなり,Graphics scoreは平均フレームレートに定数214をかけた値になっている。

Overall Port Royal score = Port Royal Graphics score
Port Royal Graphics score = 平均フレームレート×214

 というわけで,現状では実行可能な環境がかなり絞られるテストだが,ULは「2019年には多数のGPUがDXRに対応する」と書いている。今年中にはAMD製を含めた多彩なGPUが,DXRの性能を競うようになるかもしれない。その暁には活躍するテストになるだろう。

4Gamerによる3DMarkの公式ミラーページ

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