独ベルリン市で開催中の家電見本市「
IFA 2017」に合わせて,Acerは新しいゲーマー向けPCを発表した。
その概要は
2017年8月31日の記事でお伝えしたとおりで,4Gamerでは別途,ド派手なフルタワーPCである
「Predator Orion 9000」の写真レポートもお届けしているが,さらに,薄型のゲーマー向けノートPC「
Predator Triton 700」と,ゲーマー向けを謳う2-in-1「
Nitro 5 Spin」をじっくり見ることができたので,本稿でまとめてお伝えしてみたい。
Predator Triton 700
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GeForce GTX 1080搭載で18.9mmの厚みを実現したPredator Triton 700
Predator Triton 700は,2017年4月,Acerが米国ニューヨーク市で
独自イベントを開催したとき発表された製品だ。
最大の特徴は,NVIDIAの「
Max-Q Design」(以下,Max-Q)デザインに対応することで,GPUとしてノートPC向け「GeForce GTX 1080」を採用しながら,
厚さ約18.9mmという薄さを実現した点にある。公称重量が2.4kgなので,日本では非モバイルという扱いだろうが,北米市場では“ギリギリモバイル”と言えるレベルかもしれない。
組み合わせるCPUは4コア8スレッド対応CPUの「Core i7-7700HQ」。液晶パネルはNVIDIA独自のディスプレイ同期技術「G-SYNC」に対応する,15.6インチサイズ,解像度1920
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1080ドットモデルとなる。
天板を閉じた状態。厚みは有線LAN用のRJ-45端子よりわずかに厚い程度だ
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8月31日の記事でもお伝えしているとおり,本体奥側に半透明のパネルを搭載し,そこから空冷ファンを覗けるというのが,Predator Triton 700の持つ外観上の大きな特徴となっている。
GPUとCPUを冷却するための空冷ファンを2基内蔵し,側面や底面から吸気して背面に排気するというエアフローの構造は,ゲーマー向けノートPCとしてはよくあるタイプだが,ファンにLEDが付いており,動作中にその光が目立つというのは,少なくとも筆者は初めて見た。
左側の空冷ファンが透けて見える構造を採用。発光色をカスタマイズ可能なLEDイルミネーションまで付いている。GPU負荷が低い状態ではファンの回転が自動的に停止して騒音の発生を抑制する仕組みも採用している
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裏返して見ると,奥側左右に2基の空冷ファンを備えているのが分かる
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ちなみに,Predator Triton 700が採用する空冷ファンには,「Aero Blade 3D Fan」という名前が付いている。非常に複雑な形状の金属製ファンブレードを採用しており,このファン形状によって,一般的なプラスチック製の空冷ファンと比べて空気の流量を35%増やせる,Acerはアピールしていた。
Aero Blade 3D FanのイメージCG(左)。ファンブレードの根元部分は,大きく立ち上がったうえに湾曲しているという,非常に複雑な形状をしている。この形状により,より多くの空気を吸排気できるそうだ(右)
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厚みに制限のある筐体で,奥側に冷却機構を採用したことで,キーボードは本体の手前側に来る,かなり珍しい配置となっている。そのため,いわゆるラップトップユースで本体を安定的に保持するのは極めて難しい。現実的には「使うときは机上に置いて」ということになるだろう。
ところで,本体にタッチパッドがないことに気付いたかもしれないが,実のところタッチパッドは,半透明のパネル部分にある。正直,お世辞にも使いやすいとは言えないが,そもそも机上で,ゲーマー向けマウスを接続して使う前提なら,タッチパッドはどこでもいいということなのだろう。これはこれでアリだとは思う。
空冷ファンの右側にある赤枠部分がタッチパッド。シングルタップで左クリック,2本指によるダブルタップで右クリックになる仕組みで,およそ使い勝手を考慮したものとは思えなかった。ゲーマー向けノートPCだからこそできる割り切りだ
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ちなみにキーボード部分は,一部のキーを省略して10キーを詰め込んだ,15〜17インチ級の安価なノートPCでよく見かけるレイアウトになっている。キーはパンタグラフ式メンブレン仕様で,打鍵感もしっかりしたものなのだが,この配列は人を選びそうだ。
各キーにはLEDイルミネーションが組み込んであり(上),プリインストールのソフトウェアで発光色や発光パターンをカスタマイズできる(下)
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なお,側面のレイアウトは下に写真で示したとおり。薄型ノートPCの割には充実しているのだが,電源ボタンの位置は,正直どうにかならなかったのかと思う。
本体の左側面には,USB Type-Aポートが2つと,3.5mmミニピンのヘッドフォン出力,およびマイク入力を備えている
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右側面には,Thunderbolt 3対応のUSB Type-Cポート,USB Type-Aポート,RJ-45の有線LANポートが並んでいる。電源ボタンはとても“誤爆”しやすそう
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本体奥側は,左右に大きな排気孔があり,それに挟まれる形でDisplayPort出力とHDMI出力,電源コネクタが並ぶ
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GPUとCPUが強力なうえ,メインメモリ容量は32GB,内蔵ストレージはPCI Express接続で容量256GBのM.2 SSDを2枚,RAID 0構成で搭載するといった具合に,スペックはかなり高い。そのため,Predator Triton 700の北米市場における価格は
2999ドル(税別)と,さすがにお高めだ。
Acerによれば,国内展開の可能性があるそうなので,実現されているスペックと,そこかしこに見えるデザイン上の妥協とを天秤にかけたうえで,「アリ」だと判断したのであれば,いまから予算の準備を始めたほうがいいだろう。
●Predator Triton 700の主なスペック
- CPU:Core i7-7700HQ(4C8T,定格2.8GHz,最大3.8GHz,共有L3キャッシュ容量6MB)
- チップセット:未公開
- メインメモリ:PC4-19200 DDR4 SDRAM 16GB×2
- グラフィックス:Max-Q対応GeForce GTX 1080(グラフィックスメモリ容量8GB)
- ストレージ:SSD(PCIe M.2接続,RAID 0,容量256GB×2)
- パネル:15.6インチIPS液晶,解像度1920×1080ドット,G-SYNC対応,ノングレア(非光沢)
- 無線LAN:IEEE 802.11ac
- 有線LAN:1000BASE-T
- 外部インタフェース:DisplayPort×1,HDMI×1,Thunderbolt 3×1,USB 3.0 Type-A×3,ヘッドフォン出力,マイク入力
- スピーカー:ステレオスピーカー搭載
- マイク:搭載
- カメラ:搭載(※有効画素数未公開)
- バッテリー容量:4670mAh
- ACアダプター:付属(定格出力230W)
- 公称サイズ:397.37(W)×266.7(D)×18.9(H)mm
- 重量:約2.4kg
- OS:64bit版Windows 10 Home
GeForce GTX 1050搭載のゲーマー向け2-in-1となるNitro 5 Spin
続いては,Predatorの名を冠していないゲーマー向け2-in-1のNitro 5 Spinである。北米市場では2017年10月発売予定で,メーカー想定売価は
999ドル(税別)。現在のところ,国内展開については明らかになっていない。
Nitro 5 Spin
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こちらが事実上の姉妹機であるSpin 5
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さて,Nitro 5 Spinは,いわゆるコンバーチブルタイプの2-in-1である。同製品と同じタイミングでAcerは,ノートPC向け「GeForce GTX 1050」を採用した一般PCユーザー向けコンバーチブル2-in-1「
Spin 5」も発表しているのだが,Nitro 5 Spinは事実上,「Spin 5をベースに,黒と赤を基調色してゲーマー向けPC風に仕立てたバリエーションモデル」ということになるだろう。
搭載する液晶パネルは15.6インチのタッチ対応,グレア(光沢)対応で,解像度は1920
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1080ドット。CPUには4コア8スレッドCPUの「Core i7-8550U」か,「Core i5-8250U」を搭載するという。メインメモリ容量は8GBまたは16GBで,内蔵ストレージは容量256GBか512GBのPCI Express接続SSDか,容量1TBまたは2TBのSerial ATA 6Gbps接続HDDとなっている。
ちなみに重量は2.2kgと,さすがに重い。タブレットPC的に使える局面は限られるだろう。
ディスプレイを360度回転させたタブレット状態。写真左側に見える手で,なんとなくサイズ感が分かるのではないかと思うが,タブレットとしては,かなりデカくて重い
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ただ,ディスプレイ部分を任意の角度にできるノートPCと考えると,意外に便利な使い方も可能だ。たとえば,Nitro 5 Spinに外付けのキーボードやマウスをつないで使う場合,本体のキーボード部分を邪魔にならない位置に“どかせる”ので,ディスプレイ部分が手前に来て,見やすくなったりする。
キーボード部分を下にしたフォトスタンド風のスタイル(左)。右はヒンジ部を上にして,キーボード部分を後ろ側にしたテント風のスタイルだ。どちらもディスプレイ部分がユーザーの近くに来るので,外付けキーボードと組み合わせて使うのに便利と言える
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2-in-1ということで,天板や底面は平らで,すっきりしたデザインだ。ちょっと皮脂汚れが目立つのが気になるものの,税別アンダー1000ドルの2-in-1ということを考えれば,外観はまずまずではなかろうか。
こちらは天板。赤いヒンジ部分がアクセントになっている
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本体部分の底面。単体GPUを搭載することもあり,ファンは2基用意している
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キーボード部分は,Predator Triton 700とほぼ同じ配列の10キー付きキーボードとなっていた。キーキャップの側面が赤色で塗られているので,見た目はけっこう派手だ。ただ,Predator Triton 700のようなパンタグラフ式メンブレンではなく,ごく普通のメンブレンタイプだった。
Nitro 5 Spinのキーボード。[W/A/S/D]キーが目立つように赤く縁取ってあった
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キーボード面の奥側(左)や手前側左右(右)には,小さなゴム脚がついている。これはフォトスタンドやタブレット形態で,キーボードを下にして置いても誤操作しないようにするための工夫だ
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側面部のインタフェースは下に示したとおり。電源ボタンとUSB Type-Aポートの距離が近すぎるのはやや気になるが,少なくとも充実しているとは言えるだろう。
本体左側面。フルサイズのHDMI出力×1,USB Type-C×1(バージョン未公開),USB 3.0 Type-A×1を備える
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本体右側面。左から,音量調整ボタン,3.5mmミニピンヘッドセット端子,SDカードスロット,USB Type-Aポート(バージョン未公開),電源スイッチが並ぶ
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背面側は大きな排気孔があるだけだ
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Predatorシリーズではなく,搭載するGPUもGeForce GTX 1050ということで,全ゲーマーのニーズに応えるものではないだろうが,カジュアルに3Dゲームをプレイできる2-in-1という存在自体がレアなので,相応のニーズは喚起するだろう。国内発売に期待したい。
●Nitro 5 Spinの主なスペック
- CPU:Core i5-8250U(4C8T,定格1.6GHz,最大3.4GHz,共有L3キャッシュ容量6MB),
Core i7-8550U(4C8T,定格1.8GHz,最大4GHz,共有L3キャッシュ容量8MB)
- チップセット:未公開
- メインメモリ:DDR4 SDRAM 8GB,16GB
- グラフィックス:GeForce GTX 1050(グラフィックスメモリ容量4GB)
- ストレージ:SSD(PCIe M.2接続,容量256GB,512GB)またはHDD(Serial ATA 6Gbps接続,容量1TB,2TB)
- パネル:15.6インチIPS液晶 解像度1920×1080ドット,タッチ対応,グレア(光沢)
- 無線LAN:IEEE 802.11ac
- 有線LAN:なし
- 外部インタフェース:HDMI×1,USB Type-C×1(バージョン未公開),USB 3.0 Type-A×2,USB Type-A×1(バージョン未公開),ヘッドセット端子
- スピーカー:搭載
- マイク:搭載
- カメラ:搭載(※有効画素数未公開)
- バッテリー容量:未公開
- ACアダプター:付属(※定格出力仕様未公開)
- 公称サイズ:381.5(W)×258.1(D)×17.9(H)mm
- 重量:約2.2kg
- OS:64bit版Windows 10 Homeまたは64bit版Windows 10 Pro