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SteelSeriesはどこへ向かっているのか。最近の製品デザインと新製品について製造部門の偉い人に直接に聞いてみた
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印刷2012/04/13 00:00

インタビュー

SteelSeriesはどこへ向かっているのか。最近の製品デザインと新製品について製造部門の偉い人に直接に聞いてみた

SteelSeries Sensei
SteelSeries
 オーソドックスな形状やシンプルな機能などで,どちらかというと質実剛健な雰囲気のゲーマー向け製品を展開してきたSteelSeries。過去には,「LEDで光らせるデバイスは作らない」と断言し,「スペック自慢などバカげている」と中指を立てていたが,最近は「SteelSeries Sensei」(以下,Sensei)を投入したり,モバイル方面やコラボ製品に注力したりと,何か方向性が変わってきているように感じている人はいるのではないだろうか。

 Senseiがなぜあのようなデザインになったかは,マーケティング部門のトップであるKim Rom(キム・ロム)氏に行ったメールインタビューでお伝えできたと思うが,あれから約4か月。今回は,SteelSeriesで製造部門を統括するArnie Grever(アニー・グレヴァー)氏の来日に合わせ,インタビューする機会が得られた。今後の方向性や,最近発売されたSteelSeries製品について聞いてきたので,その内容をお届けしたい。


4Gamer:
 本日はよろしくお願いします。
 まずは製品個別の話ではなく,SteelSeriesの最近の動きについてお聞きします。正直に述べて,いかなる理由があるにせよ,Senseiのデザインや,「Diablo III」「Simraceway」といったタイトルとのコラボを連発している様子からは,「Razerの後追い」というイメージを強く受けています。これらは,Razerを意識したものなのでしょうか。

Arnie Grever氏(以下,Arnie氏):
Arnie Grever氏(Vice President, Products, SteelSeries)。SteelSeriesは現在,ヨーロッパ地域を見る本社と,南北アメリカ大陸地域を担当するSteelSeries North America,そしてアジア地域および中国の製造工場を受け持つSteelSeries Asiaが軸となっているが,Arnie氏はSteelSeries Asiaに籍のある人物だ
 いえ,むしろそう思われていることに驚きです。
 例えば「Ikari」(SteelSeries Ikari)の形にしても,Senseiに採用されているフィーチャーにしても,すべて私達が会社内で考えてきたものですし,私たちはたくさんの優秀なスタッフやプロゲーマー,チームなどに耳を傾けて製品を開発しています。もちろん,他社の製品を見ていないわけではありませんが,私たちは自分たちのコンテンツを作り出しているだけです。
 コラボ製品にしても,Blizzard EntertainmentやValve,NCsoftといった優秀なデベロッパから一緒に製品を作ろうとオファーをいただけているのは,我々の製品に対する真摯な取り組みが評価されているのだと思っています。

4Gamer:
 なるほど……。ただ,結果的に似てきているという印象を受けているのは,我々だけではないと思うのです。
 「マウスは光らせない」と豪語していたメーカーが,気がつくとステアリングだけのコントローラを発売していたり,モバイル向けのゲームパッドを発表していたり。カジュアルさ,スタイリッシュさを打ち出していくような方向性がRazerと被るというか,どちらかというとRazerが半歩か一歩先を進んでいた気さえします。
 なぜ今このタイミングで,SteelSeriesがそういった方向を向いているのでしょうか?

Arnie氏:
 SteelSeriesは2001年に製品開発をスタートして以来,ずっと「プロゲーマーのサポート」をコンセプトに製品を展開してきました。しかし,会社の規模やゲーム市場が大きくなるにつれ,カジュアルゲーマーからの要望が非常に多くなってきたのです。
 そこで,我々が何を提供できるかを検討した結果,ニーズに応えるために,例えばLEDイルミネーションの実装に踏み切ろう,ということになりました。ただ,だからといって今までのやり方を変えているわけではありません。プロゲーマーと共同で開発を行い,さらに最高のテクノロジーを取り入れていくという,昔ながらのSteelSeries製品の在り方は何も変わっていないのです。
 ただ,それをカジュアルゲーマーの目にも留まるように提供していこうというわけですね。

4Gamer:
 おっしゃることは理解できますが,最後の部分には少し疑問が残ります。
 たとえば,「Siberia v2」(SteelSeries Siberia v2)でカラーバリエーションを増やしたり,プロチームや有名タイトルとのコラボレーションをしたりといった方向で,カジュアル層へアピールしていくというのは分かります。
 ただ,Senseiには機能面がカジュアル寄りに作られているモデルしか存在せず,コアゲーマー向け仕様のモデルはありませんよね。

Arnie氏:
 そこは,Senseiや「Kana」(SteelSeries Kana),「Kinzu v2」(SteelSeries Kinzu v2)といったラインナップの中からユーザーの皆さんが選択していただけるよう,タイプの異なる製品をリリースしていますので。

4Gamer:
 それらはそれぞれサイズが異なりますよね。Ikariのときは,「同じボディを採用しつつ,多機能モデルとコアゲーマー向けモデル」がありました。当時目新しかったレーザーセンサーを搭載する「Ikari Laser」で多機能&高付加価値方面に振る一方で,光学式センサーを搭載した「Ikari Optical」では,余計な機能を用意せず,コア向けの仕様になっていました。あれは本当に素晴らしいアイデアだったと思うのですが,なぜ最初に支持されたアイデアを最近の製品でも採用しないのでしょうか。

付加機能をそぎ落とし,シンプルな仕様にしてきたSteelSeries Sensei[Raw]
SteelSeries
Arnie氏:
 もちろん,そういった要望があるのは把握していますし,我々も可能な限り用意したいと思っています。ただSenseiであれば,「Sensei[Raw]」(SteelSeries Sensei[Raw])がそれにお答えする製品になると思いますので,ご期待ください。

4Gamer:
 ああ,確かに,レーザー/光学というセンサーの区別から離れれば,Sensei[Raw]はそうかもしれませんね。個人的には光学センサー搭載のSenseiを見てみたかったりしますが(笑)。
 ところで,Arnieさんは製造部門を統括しているとのことですので,厳しい指摘をさせてください。「Xai」(SteelSeries Xai)はメインボタンのチャタリングが発生しやすかったり,Kinzuはセンサー性能に問題があったり,そしてSenseiは発売時点で設定用ソフトウェアの完成度が低かったりと,マウス製品の品質管理があまりうまくいっていない印象を受けています。最近では「Kana」(SteelSeries Kana)で,初回出荷版のマウスソールが本来ならテフロン加工済みのものになるところが,プラスチックになるというトラブルもありましたよね。

Arnie氏:
 品質管理は私が統括しているため,製品に問題があると聞くと非常に悲しい気持ちになります。もちろん,我々もそれを良しとしているわけではありませんし,問題が起こらないように注力しています。
 しかし,100ある問題に取りかかって98までは直せますが,残りの2はどうしても出てきてしまうのです。その2に可能な限り迅速に対応しなければならない,というのが我々の今置かれた状況となります。

4Gamer:
 2というのは小さすぎるとも思いますが(笑),ともあれ,問題が発覚した場合,どういったプロセスで修正を行っているのでしょう。

Arnie氏:
 具体的には,アメリカ,ヨーロッパ,アジアで不良品として返ってきた製品すべてをテストした後,そのフィードバックを開発のトップとベンダーへ渡し,問題を修正していく流れになります。

4Gamer:
 不良品とまではいかなくても,製品の状態が良いとは言いがたいケースも見られます。私はSteelSeriesの製品をよく購入しますが,箱を開けるとホコリが入っていたり,ボディに小さな傷やクラックがある場合があり,「新品なのになぜホコリや傷が?」と気になってしまいます。

Arnie氏:
 そうだとすれば,申し訳なく思います。生産を行っている工場へは,品質管理のスタッフが足を運び,清潔な環境が整っているかをチェックするようにしていて,常に改善し続けてもらうよう心がけてはいるのですが……。

4Gamer:
 製品の箱を開ける瞬間の喜びが台無しになっては誰も幸せにならないので,ぜひ一層の努力をお願いします。
 厳しい指摘といえばもう1つ,こちらはArnieさんにお話することではないかもしれませんが,どうしても考えなければならないのが価格の問題です。日本国内で購入できる製品は,英語版公式サイトでの直販価格と比べて高いのではないかと,不満の声が上がっています。この点について考えをお聞かせください。

川田洋志氏:
川田洋志氏(SteelSeries)。日本におけるSteeelSeriesの立ち上げに尽力した人物だ。“Hiro”としても有名。今回のインタビューでは通訳として同席してもらっている
 これは私が回答します。ご指摘の点については,我々も重々承知しているのですが,製品は10個や20個といった単位で仕入れているのではなく,何千個単位で一括して仕入れていますし,3月に発売するものは3月に発注しているわけではなく,数か月前から発注をかけているのです。
 また,変動する為替が想定レート内に収まるかも分からず,出荷にかかるコストもまちまちです。企業としては,こういったリスクを取引先が負うことがないよう,頻繁に価格を上下させるというわけにはいかない,ということはご理解いただければと思います。タイミングを見計らって,あとから価格を改定することは,もちろんあり得ますが。

※4月2日のタイミングで,PlayStation 3対応の「Siberia v2」やXbox 360対応の「Spectrum 5xb」などが価格改定されている。

4Gamer:
 そういえば,先ほど少し話題に上がった家庭用ゲーム機向けデバイスの調子はいかがでしょう。現状はSiberia v2をPS3やXbox 360に対応させていますが,今後は家庭用ゲーム機市場でシェアを広げていこうと考えているのでしょうか?

Arnie氏:
 家庭用ゲーム機向けの製品はいい調子ですよ。現在は4種類のヘッドセットを販売していますが,世界的にメディアの方々から高い評価をいただいています。今後の計画はまだお話できませんが,家庭用ゲーム機向け,それとモバイル向け製品のカテゴリーは,これから拡大していく予定です。

4Gamer:
 日本の場合,ニンテンドー3DSやPlayStation Vitaといった携帯ゲーム機が広く普及していますが,携帯ゲーム機に向けたアクセサリーなどを出す予定はないのでしょうか。

Arnie氏:
 今のところ考えていません。携帯ゲーム機向けのアクセサリーは,私達の作る製品のコンセプトと少し違ってきてしまいますから。


スマートフォン用ゲームパッドで

新たなプラットフォームに一石を投じる


4Gamer:
 製品個別のお話もいただければと思います。まずは,今年の初めに発表されて,まだ発売されていないモバイル向け製品についてですが,「Ion」(アイオン,SteelSeries Ion wireless controller)はどういったプレイスタイルを想定されたゲームパッドなのでしょう。「PCおよびモバイル向け」と謳われていますが,Bluetoothによるワイヤレス接続での利用を想定しているのですか。

SteelSeries Ion wireless controller
SteelSeries

Arnie氏:
 BluetoothとUSBの両方をサポートしています。PCでの利用も可能ですが,おそらく90%ぐらいはモバイルデバイスとBluetooth接続されるのではないかと考えています。USBは,飛行機内など,無線通信が問題になるシーンで使われるというイメージですね。

4Gamer:
 ターゲットとなるユーザー層はどのあたりを想定していますか。

Arnie氏:
 AndroidやiPhoneをプラットフォームにしたモバイルゲームの市場は,まだスタートしたばかりで,今はカジュアル向けのゲームが乱立していますよね。
 しかしいずれ,コアゲーマー向けのタイトルも発売されるでしょう。そうなったとき,モバイル端末上でタッチ操作をするのに我慢できないゲーマーは出てくるはずで,そのとき,Ionが使われることになると考えています。

4Gamer:
 コアなゲーマー向けに作っているというわけですね。ただ,Bluetooth接続では,無線特有の若干のラグが発生してしまうでしょうから,コア層向けというコンセプトとは矛盾しませんか。

Arnie氏:
 Bluetooth接続での利用ということで心配する人は少なくないと思うのですが,実際に我々が現在テストを行っている感触だと,ラグが問題でゲームプレイに支障をきたすとは思えないレベルになっています。製品版は,今の状態よりも改善されたものをお見せできるでしょうから,おそらく問題ないでしょう。
 もちろん,「それでもラグが気になる」という場合には,USB接続という選択肢があります。

4Gamer:
 もう1つ気になるのが,コアゲーマーへ売り込むのであれば,携帯ゲーム機が競合製品になるのではないかということです。海外市場はともかく,少なくとも日本人の場合はコアなゲームを遊ぶとなると,ニンテンドー3DSやPlayStation Vita,PSPなどを利用するケースが多いように思われます。Ionを日本でも展開するなら,どのように製品をアピールすべきだとお考えですか。

Arnie氏:
 もちろん,ポータブルゲーム機で遊ぶ人もいるでしょう。ですが,スマートフォンやタブレット上でゲームを遊びたいという人も大勢いるはずです。そのうえで,携帯ゲーム機ではなく,モバイル端末+ゲームパッドでプレイするという新しいスタイルを打ち出せるのが,Ionだと思っています。

4Gamer:
 日本のゲーマーは,長く家庭用ゲーム機に慣れ親しんできたので,操作性について非常にシビアな見方をしています。例えば十字キーの使い勝手やボタンの押し心地,アナログスティックの反応など,どこかに欠点があれば,「このゲームパッドは使いにくい」という評価を下されかねません。そのあたり,何か対策というか,アイデアはあるのでしょうか。

Arnie氏:
 もちろん計画はあります。これからモックアップを繰り返し作っていき,日本のゲーマーを含む選ばれたユーザーの中から,フィードバックを集める予定です。
 今のところ,CES(2012 International CES)で得たフィードバックでは,「これこそAndroidに必要なものだ!」という意見をいただいており,TIME誌でも「CESで発表された7つのゲームアイデア」のうちの1つに選ばれるなど,強い手応えを感じています。

4Gamer:
 しかし,現状のAndroid用ゲームタイトルは,ほとんどがゲームパッドで動きません。動いたように見える場合でも,特定の操作ができないといったケースが多かったりします。結局のところ,GoogleがAPIを用意して「動きます」と言っているだけで,それ以上でもそれ以下でもない状況だと思うのです。
 そこを打破しない限り,SteelSeriesがどれだけ良い製品を作ったとしても,ユーザーは増えないのではないかと思います。この点についてはいかがでしょうか。

Arnie氏:
 それは「卵が先か鶏が先か」という話でしかありません。私たちは良いゲームが出てくるのを待っており,デベロッパ側は良いゲームパッドが出てくるのを待っています。そのお互いが平行して走っている状況を打破するため,「やろうぜ!」と私達が投じる一石がIonなのです。

4Gamer:
 たとえばですが,NVIDIAやQualcommは,自分達でゲームのマーケットを用意し,ゲームパッドの対応リストを作っています。そういったSoCのメーカーと最適化を図っていくというのはいかがでしょうか。

Arnie氏:
 実は,いま実際にNVIDIAなどとそれを行っている真っ最中です。NVIDIA以外にも,多くのモバイルゲームパブリッシャさんへ「ここからスタートしよう」とお話を持って行っているところです。
 OS側ではAndroid 3.1以降だけでなく,それ以前のバージョンへのサポートも広げていく予定です。

4Gamer:
 ところで,発売はいつ頃で,価格はどの程度になるのでしょう。

Arnie氏:
 それは残念ながらまだお話できません。ただ,Ionは社内でも優先度の高いプロジェクトになっており,可能な限り早く発売したいと思っています。

4Gamer:
 モバイル向けといえば,Ionと同時に「Flux」(SteelSeries Flux)も発表されていました。SteelSeriesからは,ほかにもモバイル向けヘッドセット「Siberia In-Ear」が発売されていますが,そこはどのように棲み分けていくつもりですか。

SteelSeries Flux
SteelSeries

Arnie氏:
 Siberia In-Earはインイヤータイプ,Fluxはオーバーヘッドタイプになりますので,そこは好みで差別化できるのではないかと思います。

 Fluxの特徴として,ケーブルを使った数珠つなぎが可能なこともアピールさせてください。電車の中で,カップルが左右のイヤフォンを分けあって音楽を聞いているのを見たことがあるかと思いますが,Fluxを使えば片方ずつ分け合うことなく,ヘッドセットを利用できます。

4Gamer:
 うーん,カップルの場合なら,むしろ分け合って聞きたいんじゃないかという気もしますが(笑)。
 ちなみに価格はいくらくらいになる予定ですか。

Arnie氏:
 99ユーロぐらいになるかと思います。多彩なバリエーションのプレート――おそらくエンクロージャ部のデザインを変更できるもの――や,イヤークッションも発売する予定です。
 また,直販サイトでは,ひととおりのパーツがすべて含まれているモデルと,イヤークッションやケーブルが付属しない“素の”モデルの2種類を発売します。

4Gamer:
 後者は気に入ったデザインのカスタマイズパーツを一緒に購入して使うモデル,という感じですか?

Arnie氏:
 そうです。自分の好みに合わせたカスタマイズができるように,プレートやケーブルを個別購入できるようにします。今後は,「Call of Duty」や「バイオハザード」などとコラボしたプレートなども用意できればと思っています。

4Gamer:
 他社製品の話になりますが,ASTRO Gamingのヘッドセットは,Fluxで言うプレートの部分を有料で好きな画像に変更してもらえます。Fluxでもそういったことはできるのでしょうか? 実現すれば,日本なら“痛ヘッドセット”ができるかもしれませんね。

Arnie氏:
 今のところ,最初から提供する予定はありませんが,将来的にはやるかもしれません。そうですね,ガールフレンドの写真や母親の顔写真を使うのはどうでしょう?

4Gamer:
 いやー,さすがにそこまではちょっと(笑)。


レーサーの協力があったからこそ

完成したSRW-S1


4Gamer:
 もう発売はされていますが,先ほどから目の前に置かれていて気になっていたので,「SRW-S1」(Simraceway SRW-S1 Steering Wheel)についてお聞きします。

Arnie氏:
 私はこのSRW-S1が大好きなんですよ,何でも聞いてください。

4Gamer:
 ではまず,本製品がワイヤレスではなくワイヤード接続を採用している理由を教えてください。シビアなコントロールが求められるレースゲームではコントローラとのラグが気になるからということでしょうか。

Arnie氏:
 ワイヤードにした理由は3つあり,そのうちの1つはおっしゃるとおり,ラグ対策のためです。ワイヤレスの技術は日々進化しており,どんどん良くなってきてはいますが,レースゲームでは少しのミスがコースアウトにつながってしまいます。SRW-S1を可能な限り性能の高い製品に仕上げるには,ワイヤードにするしかありませんでした。
 2つめの理由は,コントローラに多数のLEDなどが配置されているため,ワイヤレスでバッテリー式にしてしまうと,長時間の使用が難しくなる点も挙げられます。それに,大きなバッテリーを積んで重量が増えてしまうのも,好ましくありません。
 3つめは,頑丈に作りたかったからです。

4Gamer:
 なるほど,確かにワイヤレス化すると重量も増えますからね。そこは長時間のプレイを考慮したというわけですか。ただ,それでもSRW-S1は重い。長時間使うのは,正直かなりつらいです。
 机に固定するスタンドのようなアタッチメントがあれば,ある程度重さは解消さるのではないかと思いますが,スタンドを販売する予定はありませんか。

Arnie氏:
 このくらいの重さがいい運動になるんですよ(笑)……というのはともかく,実のところスタンドは開発中です。コントローラの背面にある3つの穴は,実はスタンドを取り付けるために用意したものなのですが,SRW-S1はソファーに座って友達と遊ぶスタイルも想定した製品なので,ひとまず現状の形で販売しているのです。

4Gamer:
 重量面を考えると,もう少しボタンの数を減らしてもよかったのではないかとも思うのですが。

Arnie氏:
 SRW-S1では,「F1マシンならこれだけボタンがあります!」ということが分かるデザインを再現したかったのです(笑)。
 搭載されているボタンは多いですが,ボタンの重量はそれほど重くはありません。それに,無意味にたくさんボタンがついているわけではなく「Simraceway」上ではすべてが機能するようになっていますし。

4Gamer:
 Simracewayの名が出たので正直に言ってしまいますが,SRW-S1が出るまで,私はSimracewayというタイトルを聞いたことがありませんでした。欧州はともかく,少なくとも,アジア地域ではほとんど話題に上がらないタイトルだと思います。「レースゲームにはほかにも有名IPがあるのに,なぜSimracewayとコラボをしたのか」が気になります。

オンラインレースゲームSimraceway

Arnie氏:
 Simracewayとコラボをしたのは,開発元であるIgnite Game Technologiesが,競技性の高いレースゲームに向くステアリングコントローラを求めていたのが大きいです。彼らが望んでいた製品のイメージと我々の作ろうとしていた製品のアイデアが非常に近く,その時点でお互いが完璧なパートナーとなり得るのではないかと思いました。
 そしてもう1つ,Igniteは実際のインディ500(Indianapolis 500)のレーサー,故Dan Wheldon(ダン・ウェルドン,Daniel Clive Wheldon)氏とのコネクションを持っていたことも,大きな理由として挙げられます。彼にSRW-S1の製作に協力してもらえたのも,Igniteのおかげですね。おかげでSRW-S1は,他社の本格的なステアリングホイールと比較しても,引けを取らない製品として完成させることができたのです。
 Wheldon氏には生前,2ピース構成の本格的なステアリング製品とも比較してもらったのですが,SRW-S1を使った場合,タイムはわずか0.001秒遅れる程度,という結果が出ています。

4Gamer:
 昨年の事故はとても残念でした。それにしても2ピースモデルに0.001秒というのはすごいですね。
 SRW-S1は,言ってみればステアリングホイールのなかでも変わった製品ですよね。場所を取らない代わりに,台座もペダルもない。本格的で高価な製品と比べてしまうと,さすがに見劣りするだろうというイメージを持っていましたが,それは誤解というわけですか。
 ところで,SRW-S1は基本的にSimracewayで使うことを想定された製品だと思いますが,ほかのタイトル用のプロファイルを公式サイトで配布することはあるのでしょうか。

Arnie氏:
 プロファイルは配布していませんが,製品情報ページのFAQで,「Need for Speed」と「F1 2011」におけるお勧めの設定を公開していますので,よろしければそちらを参考にしてください。SRW-S1はHID(Human Interface Device)に準拠していますから,基本的にはPC用ドライブゲームのすべてで利用できるはずです。
 また,ファームウェアのアップデートを適用すれば,F1 2011のプレイ時にLEDが反応するようにもなっています。


SenseiやKinzuとの差別化を図ったKana


SteelSeries Kana
SteelSeries
4Gamer:
 マウス新製品の話も聞かせてください。製品情報ページによれば,Kanaはスウェーデン語でカナリア,アゼルバイジャン語で血,ハワイ語で英雄といった,さまざまな意味を持つ言葉だとされています。ただ一方で,SteelSeriesのコアゲーマー向けマウスの名称の多くが,日本語から採られてきました。Kanaにも,日本語の意味が含まれているのでしょうか。

Arnie氏:
 「名は体を表す」ではありませんが,我々は,製品名を付けるときに「直接的な名称」を避けるようにしています。マウスにはこれまで日本語の名前を何度か採用してきていますが,これはさまざまな名前のリストを作り,その中から語感の良いものを選んだ結果です。
 そしてKanaが日本語から採られているかといえば,答えはYesです。日本語だと「かな」「カタカナ」などを連想するかと思いますが,これはベーシックかつシンプルなマウスらしい名前ではないでしょうか。

4Gamer:
 ベーシックかつシンプルという意味でのKanaですか。その話を聞くと悪くないですね。
 Kanaのサイズを,KinzuとSenseiとの中間に置いた理由を教えてください。どういった層を狙ったのでしょう。

Arnie氏:
 お客様からいただいた要望の中に「Kinzuは小さすぎるが,Senseiは大きすぎる」というものがあったので,その中間を用意した格好になります。すべてのゲーマーを満足させられるサイズというものは存在しませんから,ほかの製品との差別化を図ったというわけです。サイドボタンの数も同様で,Senseiではサイドボタンが2つ,Kanaは1つ,Kinzuは未搭載と,いろいろなパターンを用意しました。

4Gamer:
 しかし,マウスを購入する時に,サイドボタンがないというだけで選択肢から外されてしまうこともあると思います。サイズによって数を減らしていくと,それだけでユーザーを選ぶことになってしまいませんか。

Arnie氏:
 もちろん,2個以上搭載することは可能です。ただ,マウスのサイズが小さいとボタンを配置するのも難しく,仮に搭載しても押しにくくなってしまいます。サイドボタンを増やすとコストもかかりますから,Kanaだとこのサイズと配置場所がベストではないでしょうか。

Kanaには大きな左サイドボタンが1つだけ搭載されている
SteelSeries

4Gamer:
 これは日本市場の話になりますが,「サイドボタンが2個搭載されているマウス」のニーズは高く,実際に売れてもいます。サイドボタンが少ないものよりは,押しにくくても2つ以上搭載されているものがほしい,という人も確実にいるでしょう。
 小型のマウスの場合,サイドボタンなどを廃した低価格モデルになることが多いですが,小さくてもサイドボタンが2つあるような,プレミアムなマウスを販売する予定はないのでしょうか。

Arnie氏:
 そういったニーズがあることは理解しています。ただ,我々はグローバルな企業として世界中からフィードバックを集め,そこからお客様の要望に応えられるマウスを突き詰めた結果,今のラインナップになっています。一度に,50種類や100種類のマウスを開発できるのであれば,さまざまな需要もカバーできるのかもしれませんが……。

4Gamer:
 そういう意味では,巨大市場である中国でのニーズが日本と似ているという話をよく聞くので,中国市場の動向次第で日本人好みのマウスが出てくる可能性はありそうですね。

Arnie氏:
 その可能性はあります。本当は,いろいろな製品を出したいのですが,すでにSteelSeriesは年間50種類もの製品を発売しています。この時点で非常に多いため,さらに数が増えるとなると品質管理が難しくなってしまうので,そうそう増やすわけにもいきません。どちらかというと,50個の素晴らしい製品を押し出していくような展開をしていきたいですし,そこは難しいところです。


Engineは持続的なアップデートで完成度を高めていく


4Gamer:
 ところで,「Engine」(SteelSeries Engine)のUIはあまりに不親切すぎませんか。Xaiのソフトウェアのほうが,まだ直感的で使いやすかったのではないかと思うのですが。

SteelSeries Engine
SteelSeries

Arnie氏:
 Senseiで初めてリリースしたソフトウェアということもあり,品質の低いものとなってしまいました。ただ,すでにいくつかの問題が浮き彫りになっていまして,これらを早急に改善するため,ソフトウェア制作チームを増強したので,近々アップデートされる予定です。
 アップデート内容には,UIの変更や,動作スピードの改善,メモリ使用量の調整なども含まれています。

4Gamer:
 プロファイル切り替え時の遅さもかなり気になっているのですが,ここは改善されるのでしょうか。

Arnie氏:
 若干速くなるとは思いますが,PC上の情報をマウスに落とし込むので,どうしても遅延は生じてしまいます。とはいえ,今後もアップデートは続けていくので,より良い形に改善されていくはずです。
 ソフトウェアの開発は私達にとって大きなチャレンジですから,テストにも製品そのものと同じぐらい注力しなければなりません。

4Gamer:
 いくらマウスの性能がよかったとしても,ソフトウェアの完成度が低ければ,本来のポテンシャルは発揮されません。そのため,我々メディアやユーザーからの評価も当然よくならないと思いますが,いかがでしょうか。

Arnie氏:
 そこは,可能な限り素早いアップデートを行うことで対応していきます。Sensei発売後,Engineの問題点はいくつか発覚していますが,私達は決してダメなソフトウェアを作ってしまったとは認識していません。MicrosoftがアップデートでWindowsの完成度を高めていったのと同様に,我々もEngineの完成度を高めていければと思います。

4Gamer:
 実際,海外では,Engineはどのように評価されているのでしょう。

Arnie氏:
 多くのお客様から,パワフルにカスタマイズできるツールだという評価をいただいています。もちろんUIに関するフィードバックも受け取っていますが,総じてよい評価を得ています。

4Gamer:
 海外では評価されているんですね。一方で,日本からは厳しい意見も挙がっていますが,これは日本人が基本的に英語が不得意であるためではないかとも考えています。英語表記のうえに直感的でないUIとなると,完全にお手上げとなってしまう人が多く,そのぶん評価も厳しくなりがちですから。
 もしもUIが日本語表記であれば,また違った評価になるのかもしれません。

Arnie氏:
 それはそうかもしれません。今後,日本語への対応やUIの改善を行っていきますので,日本のユーザーにはそのときにまた評価していただければと思います。

マウス底面に搭載された液晶パネル。ここで確認できるCPIと,Engine側で設定したCPIにズレが生じる不具合があるというのは,レビューでお伝えしたとおり
SteelSeries
4Gamer:
 UIの改善自体は早めに行ってもらえると嬉しいです。たとえばSenseiでは,Engine側で設定できる値と,マウス底面の液晶パネルで確認できる値が異なっていましたが,これは誰の目にもおかしいことです。こういった点で,評価を損なっている部分はあると思います。

Arnie氏:
 表記の違いは,ファームウェア制作班とエンジン制作班の間で確認漏れがあったことが原因ではないかと思います。先ほどもお話したとおり,現在はチームの人数を増員してソフトウェア開発に力を入れておりますので,今後はそういった,“目に見える”問題は少なくなっていくはずです。

4Gamer:
 今後のアップデートに期待しています。
 ちなみに,Engineは今後のSteelSeries製品で使用する共通のツールということですが,どこまでがサポートされるのでしょうか。キーボードやマウスがサポートされるのは分かりますが,SRW-S1やIonといった製品がどうなるかは気になるのですが。

Arnie氏:
 これから発売されるSteelSeriesの製品すべてに対応していく予定です。時間はかかってしまいますが,できるだけ多くの製品に対応させます。

4Gamer:
 Sensei以前にリリースされたものについてはどうでしょうか。

Arnie氏:
 いえ,古い製品のサポートは難しいです。Xaiがボーダーラインになるでしょう。

4Gamer:
 Ikariなどの過去製品への対応はないということですね。
 これから発売される製品についても,今回,何かお話いただくわけにはいきませんか? そろそろキーボードの新作も見てみたい気はしているのですが。

Arnie氏:
 まさに今,新しいキーボードの開発を進めているところです。ただ,まだお話することができないので,続報を楽しみにしていてください。

4Gamer:
 ヘッドセットはどうでしょう? 最近は対応機種を増やす方向でラインナップを強化していますが,上位モデルにあまり動きが見られません。

Arnie氏:
 もちろん,色々な製品プランが動いていますよ。

4Gamer:
 つまり,そちらも続報が出るまでは待ってくれということですね……。

Arnie氏:
 ええ,「Stay tuned!(引き続き弊社製品にご注目を)」でお願いします。

4Gamer:
 残念ですが,了解です。最後に,個人的に気になっていることを聞いておきたいのですが,現在,SteelSeriesが総合格闘技であるUFCの選手をサポートしているのはなぜでしょう。ゲームではなく,総合格闘技に手を伸ばしているのを不思議に思っていたのですが。

Arnie氏:
 端的に言えば彼らが非常に大きなブランドを持っているからになりますが,UFCはゲームも発売されているので,親和性がないとは思っていません。私たちはほかにも,(北米のスノーボードメーカーである)Burton Snowboardsとスノーボードのイベントを行っており,ジャンルの垣根を超えて,さまざまなブランドと協力しています。ゲーマー向けデバイスはもちろん,そういったコラボレーションもこれからどんどん情報を出していくので,ご期待ください。

4Gamer:
 ありがとうございました。


 今回は発売済みの製品,これから発売する製品に関わらず,あれやこれやと聞いてみた。正直なことを言ってしまうと,製品の品質管理やSteelSeries Engineの完成度がイマイチなのは事実であり,回答にも若干の納得いかない部分はあるのだが,ともあれ,SteelSeriesが「ただ売れるから方向転換し,Razerの後追いをしている」というわけではなく,昔と同じようにコアゲーマー向けの製品を展開していく意志を持っていることは,伝えられたのではないかと思っている。

 現在発表されているIonやFluxだけでなく,新たなキーボード,ヘッドセットの企画も動いているようなので,それらが本当に「コアゲーマーに向けた製品」たり得るものなのか,ひとまずは製品の登場を待ちたいところだ。

SteelSeries日本語公式サイト

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