![]() |
昨今,ゲームにおける“釣り”といえば,RPGや生活シムといったさまざまなジャンルの一要素として実装されている印象が強いだろう。そんななか,釣り一本で世界に挑む「ぼくと釣り日記」とは,果たしてどのような作品なのか。
今回4Gamerは,開発に携わるトイボックスの代表取締役社長の和田康宏氏と,タキオンのデザイン部アートディレクターの松浦 智氏に話を聞いた。
![]() |
「ぼくと釣り日記」で追求したのは,“予測”と“推理”
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。まずお二人の経歴について聞かせていただけますか。
和田康宏氏(以下,和田氏):
「ぼくと釣り日記」の開発を担当したトイボックスの和田です。これまでに「牧場物語」「川のぬし釣り」「なつもん!20世紀の夏休み」といったゲームを手掛けてきました。
松浦 智氏(以下,松浦氏):
釣り部分を制作したタキオンの松浦です。釣りゲームに携わったのはNINTENDO 64で発売された「BASS RUSH」が初めてです。その後は,Wiiの「目指せ!釣りマスター」,ニンテンドー3DSの「Fish Eyes 3D」,スマートフォン向けの「REEL FISHING Pocket 2:Ocean」,Switchの「REEL FISHING シリーズ」「THE バスフィッシング」など,いろいろなハードウェアで釣りゲームを作り続けています。
4Gamer:
まずは開発が始まった経緯から教えてください。
和田氏:
イマジニアさんから「本格的な釣りゲームを作れないか」と相談をいただいたのが,きっかけでした。ミニゲームとして釣りを取り入れているゲームはたくさんありますが,イマジニアさんとしてはもっと本格的な要素を持った釣りゲームを出したいと。そこで,「ぼくと釣り日記」では,釣りそのものを掘り下げていく内容にしました。
![]() |
4Gamer:
おっしゃるとおり,釣りゲームはスローライフ系をはじめ,さまざまなジャンルのタイトルにミニゲームとして実装されるようになっています。本格的な要素を持った釣りゲームを作るためにどう掘り下げていったのでしょうか。
和田氏:
まずは「なぜ釣りは面白いのか」という部分を見つめ直すため,リアルの釣りについて分析していきました。そこで話題に挙がったのが,「釣りって魚が釣れなくても楽しいよね」ということでした。
実際の釣りは,事前にいろいろと準備したり調べたりしますが,どれだけの成果を得られるかは常に不安定です。入れ食いで大漁のときもあれば,1匹も釣れない“ボウズ”のときもある。でも,ボウズのときがつまらないかというとそうではないんです。
松浦氏:
釣りって魚が釣れないのが基本なんですよね。私は20年ほど前にゲームを作るために初めてバスフィッシングを体験したんですが,まあ釣れませんでした(笑)。バスフィッシングは10年間やっても全然釣れない人もいるような世界なので,初心者の私が釣れなかったのも当然ではあるんですが。
4Gamer:
そのときから松浦さんには「釣れなくても面白い」という感覚はあったんですか。
松浦氏:
最初はそうでもなかったんですが,一緒に行った方が私の横で釣り上げた瞬間に一気にテンションが上がって楽しくなったのを覚えています。「魚って本当にいるんだ!」って。
4Gamer:
とはいえ事前に準備をして全然釣れなかったというのは,やはり残念に思えます。それでいて楽しいというのは,素人考えだととても不思議に感じられるのですが。
松浦氏:
釣りの楽しさを一言で言い表すのは難しいのですが,一番面白いのは,予測と推理,それに基づいた事前の準備をはじめとしたトライアンドエラーの部分ではないかと思うんです。
事前の準備や予測に基づいてルアーを揃える。そして,何回投げても釣れないときに,どうしたら喰ってくれるかを推理して,違った色のルアーに交換する……こうした部分が釣りの醍醐味なんです。
そうした推理のうえで魚がヒットすれば,自分の考えが正しかったことが証明されたわけですから,釣り上げられなくても嬉しい。そこからさらに釣り上げられたときの感動はひとしおなんです。
![]() |
4Gamer:
ルアーを投げるたびにPDCAのサイクルが回っていて,そこが釣りの面白さであると。
松浦氏:
はい,釣りと試行錯誤は切っても切れない部分だと思っていて,本格的な釣りゲームとミニゲームの違いもここだと考えています。
ミニゲームの場合は,“何が釣れるか分からないドキドキ”という釣りの一部分を抽出したもので,それは,くじ引きやコレクションの面白さに近いものだと思います。
和田氏:
本格的な釣り要素として「ぼくと釣り日記」には,釣り場に行く前の準備を盛り込んでいます。魚の生態や棲息場所を調べ,どんなエサやルアーを使うか,水中のどの深さまで沈めて,どんな動かし方をするべきかを準備してから実際の釣り場に臨むという内容です。ちゃんと準備と予測と推理をしないと釣れない,というくらい本格的な釣りゲームになっています。
松浦氏:
実際の釣りは,準備や予測を含めて全部が“釣り”であり,狙う魚に応じて,ルアーやエサ,時間帯や天候をしっかり選ぶ必要があります。
たとえば,雨が降っているときに晴れ用のルアーを持って行っても,魚は全然反応してくれません。「ぼくと釣り日記」でもこうした部分を表現しており,場所,時間帯,天候を正しく選んで初めて釣れるんです。
![]() |
魚とのファイトは釣り竿さばきが重要に
4Gamer:
準備や予測に関して,ゲーム的な誘導はあるのでしょうか。
和田氏:
魚についての図鑑があり,居場所や有効なエサが書かれています。物語を進めると図鑑の中身がアンロックされ,載っている魚の数が増えていきます。
そのほか,ゲーム的にアレンジした部分もあります。たとえば天候は,ゲーム後半に手に入る「天気の札」という品で自由に選べるようになります。
![]() |
4Gamer:
釣りゲームといえば,魚がかかったあとのファイトが一つの見せ場ですが,そのあたりはどのようなシステムになっているのでしょう。
松浦氏:
“釣り竿さばきで魚を攻撃する”とでもいうべきシステムになっています。魚が動こうとするのと反対方向に釣り竿を倒して魚を疲れさせ,無抵抗になっている間に糸を巻き取って岸辺にたぐり寄せます。
うまく追い詰めるとゲージが上がり,MAXになると魚が釣り針を外そうとしてジャンプし,ファイトが有利になるんです。
ファイト中の魚は右や左に泳ぎ,ターンしてしまうと溜めたゲージもリセットされ,ジャンプさせることができなくなってしまいますから,相手に合わせた釣り竿さばきも重要です。釣り竿をむやみに倒して魚を引っ張ったり,魚が暴れたりすると糸のテンション(張力)が上がり,限界を超えると糸が切れて魚は逃げてしまいます。魚が逃げないよう,テンションを見ながら釣り竿を操作するわけです。
![]() |
4Gamer:
釣り竿の傾け方が重要なシステムなんですね。
松浦氏:
はい。私がこれまで作ってきたたくさんの釣りゲームでは,“糸をリールで巻き取るとテンションが上がる”“巻き取らないと糸が送られてテンションも下がる”というシステムでした。しかし「ぼくと釣り日記」は“巻き取るのをやめてもテンションが下がらない”ようにしてあります。つまり,テンションも釣り竿で管理するんですよ。
4Gamer:
抵抗する魚 VS 自分というわけですか。
松浦氏:
釣り竿で魚を引っ張るとリスクが増しますが,それだけ早く釣れるようになります。うまくなると釣り竿さばきも激しくなるわけです。
逆に,魚と同じ方向に釣り竿を倒し,テンションの上昇を防ぐ手もありますが,釣れるまでの時間も長くなります。
和田氏:
釣り竿をうまく使えるとちょっとだけ気持ちいい。ここだけを見ると単純ではあるんですが,頑張ればずっとこの気持ちよさが続くし,最後には魚を釣ることができます。また失敗しても,魚の個性が分かって次につなげられます。
今の釣り具は進化しているので,ヒットさせるまでが8割という感じですが,このあたりはゲームとしてのアレンジですね。
4Gamer:
なるほど。釣りゲームは釣れるか釣れないかの0/1であると捉えられがちですが,本作は単にそれだけではないと。
和田氏:
ミニゲームとしての釣りであれば,ウキが沈んだ瞬間にタイミング良くボタンを押せば何でも釣れてしまうようなものでもいいんです。
「ぼくと釣り日記」は本格的な釣りゲームを名乗っていますから,魚との駆け引きや,釣りの成功と失敗が必要になるんです。
推理と予測の段階では想像力を刺激するようにし,ヒットしてから釣り上げるまではゲームとしての面白さを詰め込むという形にしています。
4Gamer:
釣りを始める段階からの準備と推理,釣り竿を駆使した魚とのファイト……こうしたバランス取りは最初からうまくいったのでしょうか。
和田氏:
そういうわけでもありません。「釣りを楽しむというのは,前準備や推理をするところだろう」ということで意見は一致しましたが,これをそのままゲームにできるかは分からないという状態からのスタートでした。
プロトタイプの時点では本格的にしすぎてまったく魚が釣れないゲームという状態だったので,α版でかなり釣りやすいようにしました。
ただ,外部の方にプレイしてもらったところ,それでも「全然釣れない」「分からない」というご意見が出たんですよ。そこからもっと難度を調整していったのが現在のものです。
![]() |
4Gamer:
釣り好きの和田さんや松浦さんとしては,かなりゲーム的な誘導を強めたつもりだったにもかかわらず,釣りに慣れていない人にはまだ分かりづらかったと。
和田氏:
はい。たとえばニジマスを釣るにしても,「岩場のあたりにいる」というヒントは出すけれど,具体的にどの岩場であるかは探す必要があります。そして,針を投げ込むスポットが正しかったとしても,レアな魚はなかなかヒットしてくれません。
松浦氏:
必ずヒットするようにすると,作業みたいになって面白くないんですよね。
和田氏:
ただ,諦めなければ必ず釣れますから,そのときの「来た!」という感動を味わってほしいんです。
4Gamer:
ファイトのシステムはスムーズに決まったのでしょうか。
和田氏:
今の形になるまでには松浦さんと侃々諤々やり合いましたね。
最初は魚が暴れるとリールから糸が繰り出されていき,糸のテンションが下がっていく仕組みが入っていましたが,巻いても巻いても魚がこっちに来ないのはゲーム的ではなかったんです。
これに代わって考えついたのが,“魚が泳ぐのと同じ方向に釣り竿を傾け,糸にかかっている力を逃がす”という現在の形式なんです。
松浦氏:
これは何人ものプロ釣り師の方から聞いたお話をもとに作ったシステムで,実際の釣りでも同じことをします。
魚が泳いでいるのと同じ方向に釣り竿を傾けてやれば,魚は嫌がらないので引き寄せることができる。魚が嫌がることをしないよう,ストレスを掛けないようにして釣るのが基本です。逆に,反対方向に傾けると魚は嫌がり,フックを外すためにジャンプするわけです。
![]() |
4Gamer:
釣りのゲームや漫画では“水面から魚が勢いよくジャンプする”という光景がよく描かれますが,あれは嫌がってのことなんですね。
実際には魚が嫌がることをしないようにして釣り上げるけれど,ゲーム的な面白さのためにファイトの仕組みを作っていったと。
松浦氏:
この嫌がる動きをうまくルールに落とし込み,魚があとどれくらいでジャンプするかを表すゲージを付けることで,ゲームとして分かりやすくしたわけです。
ちなみに,現実の釣りでは,釣り竿が水の中に入るくらいまで下げてから糸を巻きますが,それでは動きが地味になるので,ゲームでは再現していません。
4Gamer:
リアルさを追求するなかで,ゲーム的なゲージを入れたというのは思い切った決断ですね。
松浦氏:
開発のかなり後半に私から提案して追加しました。逆に,和田さんは今までの釣りゲームと違った新しいものを作りたいという考えから,ゲージを入れたくない派でしたね。
和田氏:
僕がゲージを嫌がったのは,プレイヤーが魚を見ないでゲージを見てしまうからです。「ぼくと釣り日記」では,仕掛けを投げ込むとき,あえて仕掛けを追うカメラという現実にないものを入れました。釣りゲームではここからカメラが水中に入って魚を映しますが,そこまではしていません。それは魚との駆け引きを演出するためで,ゲージではなく魚を見てほしかったんです。
とはいえ,ゲージがないと状況が分からないのも確かでしたから,テストプレイの意見などを聞き,導入することになりました。
4Gamer:
釣れなかった際,どこが悪かったのかは分かるようになっているのでしょうか。
和田氏:
分かるようにしてあります。予測や推理の段階でかからなかった場合,キャラクターに話を聞いたり,シナリオや図鑑を読み返してもらえれば大丈夫です。
ヒット後のファイトで釣り上げられなかった際は,“テンションを上げすぎた”とか,“ジャンプした際に針を外すのを防ぐ動作ができていなかった”など,原因も直感的に分かりやすくしています。同じように釣れるにしても「なんだか知らないけど釣れちゃった」では飽きてしまいますから。
松浦氏:
あとは、Joy-Conの機能も活用しています。水底にいる魚を狙う際,ルアーが水底に着いたときなどはJoy-Conが振動するので,ルアーが水底まで潜ったことを身体で感じ取れます。この状態からルアーを“走らせる”ことで水底に潜む獲物を狙えるんです。もちろんヒット時も振動しますし,この挙動も実際の釣りを意識して作っています。
![]() |
シナリオ部分は釣りを学ぶチュートリアルのようなもの
4Gamer:
釣るべき魚はシナリオで誘導があるのでしょうか。
松浦氏:
ゲームの前半では誘導があります。シナリオを進めるために特定の魚を狙う必要があり,釣り具代を稼がなければならない,といった誘導もあります。魚を引き取ってもらうとお金の代わりの「ドングリ」がもらえるので,これを稼いでいくんです。
4Gamer:
釣り具代を稼ぐのはゲーム的ですね。では,同じ魚を繰り返し釣っていく必要が出てきたりもしますか。
松浦氏:
1回釣った魚種であればファイトすることなく,ヒットすると即座に釣れるようになります。ただ,これまでの記録を上回る大きな魚がかかった場合は,改めてファイトが必要になりますね。
4Gamer:
現代的であると同時に,ファイトを楽しむために新しい魚種を狙っていくモチベーションも上がりそうです。実際の釣りでは,狙っていたのとは違った魚が釣れることもあります。「ぼくと釣り日記」でもこうしたことが起こるのでしょうか。
松浦氏:
同じエサを喰う魚が複数種類いる場合,そうしたことも起こります。釣り上げてはみたものの,お目当てとは違って「またお前か!」となることもあるなか,やっと狙っている魚がかかったときの感動を味わってほしいんです。
4Gamer:
登場する魚の生態は,ある程度現実を反映したものになっているのでしょうか。
松浦氏:
実在魚の場合,基本的に現実の生態がベースになっています。図鑑に載っている食性や習性も現実のものです。
4Gamer:
実際に釣りに行く際,こうした知識が役立ったりするのでしょうか。
松浦氏:
ある程度は役に立ちますが,ゲーム的なバランスを考慮して決めた部分もあります。たとえば,ブルーギルという魚はルアーでも何でも食べる悪食で有名ですが,ゲーム内ではブドウ虫を食べる設定になっていたりもしますね。
4Gamer:
何種類くらいの魚が登場するのでしょう。
和田氏:
100種類以上の魚が収録されていますが,クリアまでに釣らなければならない魚は30種類ほどです。シナリオ部分はチュートリアルのようなもので,エンディングまでプレイしていただければ,本作の釣りが理解でき,実際の釣りにも思いを馳せられるくらいの内容となっています。
ただ,全魚種の最大サイズを釣るようなやり込みはそれなりに歯応えがありますね。なかには松浦さんでさえ3日間も釣れないほど高難度の魚もいますよ。
松浦氏:
日本の淡水魚かつルアーで釣れるものとなると,そこまで種類が多くないのも事実です。そのため,日本の特定の地域にしか棲息していない魚や,海外に棲んでいる魚も入れてあります。ただ,海水魚を淡水に登場させたりするようなことはしていません。
4Gamer:
架空の魚も登場するのでしょうか。
松浦氏:
木魚のような姿をした「黙魚」,薄くてペラペラなピラニアの「ピラピラニア」,タイヤと木が組み合わさった「タイヤキ」など,いろいろな架空魚がいますよ。そして,架空魚の棲み家を見つけるにも予測や推理が必要になります。「オナラカマス」という架空魚は泳ぎながらオナラをするので,水面に気体が上がってきます。知識がないとただの泡ですが,図鑑を読めばオナラカマスの棲み家だと予測できるわけです。
ただ,架空魚=強いというわけではありませんし,現実に存在する方法で釣ります。架空魚だからといって,電気ショックや爆弾を使ってしまうと,釣りじゃなくなってしまいますから。
![]() |
4Gamer:
釣り上げた魚はどうするのでしょう。料理して食べるのでしょうか。
松浦氏:
料理の要素はありませんが,釣った魚の大きさを記録できるほか,「魚拓」と「水槽モード」というコレクション要素を用意しています。特に水槽モードは見ているだけでも癒されますよ。
日本人だからこそ作れる和の雰囲気を追求した世界設定
4Gamer:
ここからは,制作について聞ければと思います。世界設定が和的なものになっているのはなぜでしょう。
和田氏:
世界中の方に遊んでいただきたいからですね。僕らが世界に向けて自信をもって出せるのは和の世界です。資料を見て海外の世界を作ったとしても,海外の方にはどこかちぐはぐなものになってしまうでしょう。そして,イラストレーターのまつやまいぐささんと一緒にお仕事をするなかで,絵本のネタとしてあやかしのアイデアがあり,これを釣りゲームとミックスすることで,ほかにないような世界が作れるんじゃないかと思ったんです。
松浦氏:
釣り場に日本らしい四季の要素が取り入れられていて,桜吹雪や紅葉などを楽しむこともできますよ。
4Gamer:
日本人が作るからこその和の雰囲気が出ているわけですね。
和田氏:
時代設定的には大正くらいです。釣り竿も普通の釣りゲームなら金属がピカピカ光る最新モデルを作るんでしょうけれど,「ぼくと釣り日記」では釣り竿が竹,リールは木になっています。ルアーもほかのゲームではSF的なデザインのものがあるなか,手作り感を出したものにしました。ただ,釣り具の名前や釣り竿を動かす実在テクニックに関しては,分かりやすさを優先して現在の名前を使っています。
![]() |
4Gamer:
風景がモノクロの状態から始まり,主人公の活躍で色を取り戻していくという設定も面白いと感じられました。
和田氏:
「モノクロにしよう」と言ったとき,松浦さんがビックリされていましたね(笑)。
松浦氏:
和田さんからは「とにかく背景は空気感が大事だ」というお話があったので,蝶が飛んでいたり,木の葉が落ちたりと,とにかく背景の情報量を多くすることに注力しました。特にSwitch2では奇麗になっていますので,注目してみてください。
![]() |
4Gamer:
個人的には,釣りゲームのシナリオはなかなか難しいのではないかと感じています。釣り自体が静かなものなので,どうしても大会的なものになってしまう。「ぼくと釣り日記」ではどういったシナリオの楽しさがあるのでしょう。
和田氏:
アドベンチャー的に仲間が増え,先に進んでいく感じを楽しんでいただけます。たとえば魚拓にしても,黒い羽根を持つ「ハネグロくん」というあやかしがいて,彼が仲間になると能力で魚拓を取ってくれるという感じになっています。
水槽モードも魚を実際に水槽に入れるのではなく,九尾の狐の「たまも」というあやかしの能力になっていますね。
4Gamer:
先ほど,エンディングを迎えたあとにも70種以上の魚が釣れるというお話がありました。この時点で何を釣るべきかの誘導はあるのでしょうか。
松浦氏:
どの魚を釣ってもいいので,図鑑を見て決めてもいいし,今日の天気で決めてもいい……と,スローライフ的な感じで釣りを楽しんでいただけます。
4Gamer:
スローライフというと,釣り以外にも着替えやハウジングがあるのでしょうか。
和田氏:
そういうわけではありません。ゲームだと「スローライフ」という言葉が強くて,畑を作ったり,家具を置いたりと日々の暮らしがそのまま楽しめるゲームという意味に捉えられてしまいます。
僕自身がそうしたゲームの代表作である「牧場物語」を作っていたから,余計に誤解を与えてしまいそうなところがありました。
4Gamer:
「ぼくと釣り日記」はストイックな釣りのゲームであるわけですね。逆に,そうした「スローライフゲーム」的な部分を用意しなかったのはなぜでしょう。
和田氏:
「スローライフゲーム」的な暮らしを入れてしまうと,結局ほかのゲームと変わらないと思ったからです。
イマジニアさんからお話をいただいた際,最初に思いついたのが「グランツーリスモ」のようなリアル系釣りゲームでしたが,実現には時間やお金が不足していたのも事実です。
ここで自分が勝負するとしたら,釣りというものを狭いけれど深く掘り下げて突き詰め,みなさんへのフックとして魅力的に見えるような世界設定や雰囲気を作っていくことだと判断しました。
![]() |
4Gamer:
「牧場物語」の和田さんですから,“釣り要素もあるスローライフゲーム”としたほうが商業的に有利なような気がしますが,そうでないあたり,釣りに向き合う姿勢の真摯さ,削ぎ落とす勇気のようなものを感じました。
和田氏:
今回はお手伝いですから,勇気というよりは,「釣りゲームを今の世の中に問いたい」というイマジニアさんの意向を尊重させていただいたということですね。
削ぎ落とさないと特徴が出てこない。釣り以外の要素を付け加えるほど,このゲームを選ばなくても良くなってしまう。似たものが存在しないことが,「ぼくと釣り日記」の存在価値の一つだと思います。
4Gamer:
長くゲームに携わってこられた和田さんだからこその決断ですね。松浦さんが魚のグラフィックスを作るうえで,苦労された点はありますか。
松浦氏:
これまで私が携わったタイトルでは写真をベースにモデルを作っていましたが,「ぼくと釣り日記」ではゼロから手書きで作成しています。写真ベースだと妙にリアルすぎて少し生々しくなり,いかにも「写真から作りました」感が出てしまうのですが,手書きで描くことによりリアリティよりも魚本来の美しさを強調しました。なので,絵画的な美しさについては自信がありますね。架空魚についてはまつやまいぐささんの手描きイラストから作っています。
あとは魚のモーションについても,これまでは手付けで作っていましたが,新しい仕組みを取り入れました。体の長い魚だと関節の数も多くなり、動きがどうしても硬くなってしまうため,「スプリングボーン」という仕組みを取り入れ、滑らかなモーションを作れるようにしました。スケジュールの都合上,一部の魚にしか使えませんでしたが,すべての魚をこの手法で作り直したいくらいですよ(笑)。
4Gamer:
タキオンは釣りゲームを多く手掛けられていますが,やはりノウハウの蓄積は大きいのでしょうか。
松浦氏:
毎回魚の動きのシステムなどをゼロから作っていたのでは,開発費も時間もかかります。しかし,これまでの蓄積があれば,何倍も早く多くの魚の動きを作れるわけです。今回の「ぼくと釣り日記」にしても,蓄積がなければ,この期間と費用では作れなかったと思います。
4Gamer:
ノウハウの蓄積によって生み出された魚の動きにも注目してプレイしたいですね。さて,まだまだ「ぼくと釣り日記」や釣りに関するお話を聞きたいですが,お時間のようです。最後に,読者にメッセージをお願いできますか。
和田氏:
「ぼくと釣り日記」は,ほかの釣りゲームやミニゲームの釣りとはまったく違った新鮮な体験ができるゲームです。松浦さんに頑張っていただいたシステムはもちろん,和の世界設定やキャラクター,ストーリーが相乗効果を発揮している作品なので,ぜひ楽しんでください。
松浦氏:
私もたくさんの釣りゲームを作ってきましたが,推理からファイトまでをバランスよく取り入れたのはこのゲームが初めてです。ここまでストイックに釣り一本で勝負している釣りゲームもあまりないと思いますね。「ぼくと釣り日記」を通じて,実際の釣りの面白さを一部分でも体験していただき,釣りを好きになっていただければ嬉しいです。
4Gamer:
ありがとうございました。
![]() |


















![画像ギャラリー No.002のサムネイル画像 / [インタビュー]「ぼくと釣り日記」は,“釣れなくても楽しい”を目指して作られた。面白さのカギは現実の釣りさながらの“予測”と“推理”](/games/022/G102242/20260928022/TN/002.jpg)
![画像ギャラリー No.001のサムネイル画像 / [インタビュー]「ぼくと釣り日記」は,“釣れなくても楽しい”を目指して作られた。面白さのカギは現実の釣りさながらの“予測”と“推理”](/games/022/G102242/20260928022/TN/001.jpg)
![画像ギャラリー No.007のサムネイル画像 / [インタビュー]「ぼくと釣り日記」は,“釣れなくても楽しい”を目指して作られた。面白さのカギは現実の釣りさながらの“予測”と“推理”](/games/022/G102242/20260928022/TN/007.jpg)
![画像ギャラリー No.004のサムネイル画像 / [インタビュー]「ぼくと釣り日記」は,“釣れなくても楽しい”を目指して作られた。面白さのカギは現実の釣りさながらの“予測”と“推理”](/games/022/G102242/20260928022/TN/004.jpg)
![画像ギャラリー No.005のサムネイル画像 / [インタビュー]「ぼくと釣り日記」は,“釣れなくても楽しい”を目指して作られた。面白さのカギは現実の釣りさながらの“予測”と“推理”](/games/022/G102242/20260928022/TN/005.jpg)
![画像ギャラリー No.017のサムネイル画像 / [インタビュー]「ぼくと釣り日記」は,“釣れなくても楽しい”を目指して作られた。面白さのカギは現実の釣りさながらの“予測”と“推理”](/games/022/G102242/20260928022/TN/017.jpg)
![画像ギャラリー No.006のサムネイル画像 / [インタビュー]「ぼくと釣り日記」は,“釣れなくても楽しい”を目指して作られた。面白さのカギは現実の釣りさながらの“予測”と“推理”](/games/022/G102242/20260928022/TN/006.jpg)
![画像ギャラリー No.015のサムネイル画像 / [インタビュー]「ぼくと釣り日記」は,“釣れなくても楽しい”を目指して作られた。面白さのカギは現実の釣りさながらの“予測”と“推理”](/games/022/G102242/20260928022/TN/015.jpg)
![画像ギャラリー No.014のサムネイル画像 / [インタビュー]「ぼくと釣り日記」は,“釣れなくても楽しい”を目指して作られた。面白さのカギは現実の釣りさながらの“予測”と“推理”](/games/022/G102242/20260928022/TN/014.jpg)
![画像ギャラリー No.012のサムネイル画像 / [インタビュー]「ぼくと釣り日記」は,“釣れなくても楽しい”を目指して作られた。面白さのカギは現実の釣りさながらの“予測”と“推理”](/games/022/G102242/20260928022/TN/012.jpg)
![画像ギャラリー No.009のサムネイル画像 / [インタビュー]「ぼくと釣り日記」は,“釣れなくても楽しい”を目指して作られた。面白さのカギは現実の釣りさながらの“予測”と“推理”](/games/022/G102242/20260928022/TN/009.jpg)
![画像ギャラリー No.016のサムネイル画像 / [インタビュー]「ぼくと釣り日記」は,“釣れなくても楽しい”を目指して作られた。面白さのカギは現実の釣りさながらの“予測”と“推理”](/games/022/G102242/20260928022/TN/016.jpg)
![画像ギャラリー No.010のサムネイル画像 / [インタビュー]「ぼくと釣り日記」は,“釣れなくても楽しい”を目指して作られた。面白さのカギは現実の釣りさながらの“予測”と“推理”](/games/022/G102242/20260928022/TN/010.jpg)
![画像ギャラリー No.011のサムネイル画像 / [インタビュー]「ぼくと釣り日記」は,“釣れなくても楽しい”を目指して作られた。面白さのカギは現実の釣りさながらの“予測”と“推理”](/games/022/G102242/20260928022/TN/011.jpg)
![画像ギャラリー No.008のサムネイル画像 / [インタビュー]「ぼくと釣り日記」は,“釣れなくても楽しい”を目指して作られた。面白さのカギは現実の釣りさながらの“予測”と“推理”](/games/022/G102242/20260928022/TN/008.jpg)