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「ゲーム内広告は『Everybody Wins』のビジネス」,業界最大手Double Fusionのアレックス・スッド氏が語るゲーム内広告
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印刷2008/03/28 12:00

インタビュー

「ゲーム内広告は『Everybody Wins』のビジネス」,業界最大手Double Fusionのアレックス・スッド氏が語るゲーム内広告

「SWAT 4」で導入されたゲーム内広告の例。あるNBC系列ドラマの広告だ
画像集#002のサムネイル/「ゲーム内広告は『Everybody Wins』のビジネス」,業界最大手Double Fusionのアレックス・スッド氏が語るゲーム内広告
 次世代の広告媒体として,大きな注目を集めるゲーム内広告市場。2006年にはMicrosoftが,2007年にはGoogleが関連会社の買収に乗り出すなど,激しい動きが見られた海外事情なわけだが,翻って日本でのゲーム内広告に関する認知/具体的な動きは,ほとんど進んでないといっても過言ではない。ゲーム大国と言われる日本。その日本において,なぜゲーム内広告は浸透していかないのだろうか?

 日本の……いや,世界のゲーム内広告を知っているといえば,一社しかあるまい。そんなわけで,ゲーム内広告の最大手Double Fusionの日本支社,ダブルフュージョン・ジャパンの代表取締役アレックス・スッド氏にインタビューを行った次第だ。ダブルフュージョンとは,ゲーム内に広告を配信するソリューションの開発/提供を行っている,ゲーム内広告市場におけるリーディングカンパニーである。日本においても,ゲームポットとの提携が話題になったのは記憶に新しい。最近では,ゲームデベロッパのGearbox Softwareとの契約締結がアナウンスされるなど,海外市場では,着実に手を打っていっている会社でもある。

 ゲーム内広告というビジネスを軸に,グローバルに展開しているダブルフュージョン。彼らの考えるゲーム内広告,彼らから見た日本市場とは,一体どのようなものだろうか。


アレックス・スッド氏:トロント大学卒業。当初はセラミックスを専門に扱う会社の経営に携わる。会社売却後にカリフォルニア州大学へースティング校ロースクールに入学。米国の大手弁護士事務所で多くのメディアやIT企業の弁護士を勤めたあと,ダブルフュージョン社に入社。2007年5月にダブルフュージョン・ジャパンの代表取締役に就任
画像集#004のサムネイル/「ゲーム内広告は『Everybody Wins』のビジネス」,業界最大手Double Fusionのアレックス・スッド氏が語るゲーム内広告
4Gamer:
 本日はよろしくお願いします。
 ダブルフュージョンといえばイスラエルの会社であるイメージが強いのですが,個人的にはイスラエルというと「ICQ」を連想してしまうのです。実はよく知らないのですが,イスラエルはIT関連の産業が盛んだったりするんでしょうか?

アレックス・スッド氏(以下,スッド氏):
 そうですね。日本ではあまり知られていないかもしれないのですが,イスラエルは優秀な技術者を多く排出している国であり,たくさんのTechカンパニー(編注:いわゆるIT企業)が生まれる土壌がある地域です。我々ダブルフュージョンという会社は,おっしゃるとおり元々はイスラエルのゲーマーが中心になって設立した会社でして,2006年にアメリカのカリフォルニアに本拠を移しました。

4Gamer:
 なるほど。ダブルフュージョンは,いわゆる「ゲーム内広告」に特化した会社として認知されているわけですが,ゲーム内広告の市場規模は,現状どの程度なのでしょうか。

スッド氏:
 市場規模という意味ですと,2007年の時点で,全世界で400〜600億円に相当するボリュームだと言われています。もちろんこの数値は,定義の問題などもあって完全に正しい数値というわけではないのですが,会計監査などから見えてくる数値がこのくらいになるという話ですね。2010年にはこれが1000億円前後になる見込みで,今後の急成長が期待されている市場だと言えます。

4Gamer:
 日本を含めたアジア市場は,どのくらい含まれている,もしくは見込まれているのでしょうか?

スッド氏:
 正確な内訳はすぐには出てきませんが,今お話した金額の中に,当然アジア市場も含まれています。アジアには,ゲームというメディアをエンターテインメントとして楽しんでいる多くのプレイヤーがいますし,たくさんのオーディエンス(視聴者/プレイヤー)がいれば,広告というのは必然的に付いてくるものでもあります。莫大な数のオーディエンスがすでに存在するという意味では,アジアは欧米よりも高い成長が見込める市場だとも言えるかと思います。

4Gamer:
 アジア市場というと,やはり中国,日本,韓国辺りが中心になる感じですか?

スッド氏:
 ええ。あとはインドですね。ただ,フィリピンやシンガポール,ベトナムなどなど,ゲームが盛んに遊ばれている国というのはたくさんありますし,アジアのあらゆる国を市場として捉えていますよ。ダブルフュージョンでは,すでに各国に活動拠点を設けていて,それぞれの地域毎の趣向や傾向といったものを調査しています。まぁこれはアジアに限らず,ロシアやブラジル,あるいは欧州などでも同様ですが。

4Gamer:
 BRICs健在といった感じですね。ゲーム内広告というのは,全世界的にニーズが見込める市場だということですね。

スッド氏:
 我々はそう考えています。


ゲーム内広告のあり方と,それを実現するダブルフュージョンのソリューション



4Gamer:
 日本では,まだまだゲーム内広告というものがメジャーでないせいもあってか,ゲーム内広告とひとことで言っても,“それが一体どういうものか”が,世間ではいま一つ理解されていないように思えます。整理の意味も兼ねてお聞きしたいのですが,現状ゲーム内広告というのは,何種類くらいのパターンが考えられているのでしょうか。

画像集#013のサムネイル/「ゲーム内広告は『Everybody Wins』のビジネス」,業界最大手Double Fusionのアレックス・スッド氏が語るゲーム内広告
スッド氏:
 基本的には,「看板」や「3Dオブジェクト」「ゲーム内ビデオ広告」などといった“ゲーム内に表示するもの”などを中心にやらせて頂いております。また,あるキャラクターの近くに行くと,アーティストの歌が聞こえたりするような“音楽が流れるもの”をはじめ,アイテムやアップグレードボーナス(特定の効果が得られる何か)などなど,弊社の技術を使えば,あらゆるゲーム内広告が可能です。
 当然ながら看板=ゲーム内広告というわけではありませんし,今後どのようなゲーム内広告が出てくるかという「可能性」に関して言えば,それはまだまだ「無制限」だろうと考えています。ゲーム内広告の可能性は,技術面と創造性によってのみ制限されるもので,現時点で杓子定規に決めてしまうものでもありませんからね。

4Gamer:
 ゲーム内広告ならではの例でいえば,特定の食料やポーションなど,ゲーム内のアイテムそのものが広告であったり,レースゲームであれば,登場する車そのものが広告,などもそうですよね。

スッド氏:
 ええ。アイテムやオブジェクトとして登場させるだけがすべてではないと思いますが,そういう“ゲームに溶け込んだ”広告モデルは,ゲーム内広告特有のものではないかと思います。これは,非常にエキサイティングな広告モデルではあるのですが,どういう見せ方がよいか……要するに“広告をゲーム内にどう登場させるべきか”は非常に難しい問題で,ここはノウハウが必要な部分だろうと考えています。

4Gamer:
 ファンタンジー世界の中に車や缶ジュースを出すわけにもいきませんしね。

スッド氏:
 そうですね(笑)。いずれにせよ,そういった“溶け込む”タイプのゲーム内広告は,プレイヤーにとってエキサイティングな物,あるいはなんらかの有益なものであるべきだとは考えています。

4Gamer:
 ただ“可能性は無制限”とはいえ,逆にそれがゲーム内広告の「分かりにくさ」にも繋がっているということはないですか? 例えばWebにおけるバナー広告だとか,テレビにおける15秒,30秒のCM枠であるとか,既存メディアの広告には“分かりやすい広告フォーマット”がありますよね。現状,ゲーム内広告がいまいち浸透していかない背景には,そうした業界統一のフォーマットがない,分かりにくい,というのも大きいのではないかと思うのですが。

スッド氏:
 仰ることはよく分かります。とはいえ,あらゆる表現方法が可能なゲーム内広告というものに,杓子定規な統一フォーマットを設けてしまうというのも,私としては疑問を感じるところです。ただ,先ほども軽く説明させて頂きましたが,我々が実際に営業をするときには,看板,3Dオブジェクト,音楽,動画,アイテム……などというように,いくつかのカテゴリ/スタイルを提示しながら,お客様とお話をさせて頂いています。
 全部を全部我々が,というわけではないのですが,ゆくゆくはこのようなものがスタンダードとして定着していって,それが業界のフォーマットとして認知されていくのではないでしょうか。

4Gamer:
 では効果測定の指標についてはいかがですか? Webにおけるバナー広告であれば,インプレッション数があり,クリック数があり,それを軸にしたクリックレートがあり……と,やはり非常に分かりやすいスタンダードな指標があります。

スッド氏:
 ゲーム内広告においても,基本的な考え方は既存の広告となんら変わりません。インプレッション数があって,触った,使ったなどのアクション数があって……という感じですね。

4Gamer:
 ただ,ゲーム内オブジェクトだと,インプレッションにしてもバナーほど明確ではありませんよね。例えば,ある広告の3Dオブジェクトがあったとして,ゲーム内で“それが表示された”と判定するのは,どういった場合になるのでしょうか。遠くにあって小さい表示でしかないのに,広告としては「見た」と判定されたりするのでしょうか?

スッド氏:
 いや,そういったことはありません。我々の開発したシステムでは,ゲーム中で広告がどのように表示されたかという情報を,常時トラッキングできるような仕組みになっています。例えば,画面上に一定の大きさで表示されないとインプレッションには数えないなど,多岐に渡る設定が可能となっています。

4Gamer:
 それは例えば,キャラクターの服の胸のあたりにロゴの広告(正面から見ないと見えない)があった場合,そのキャラクターを後ろから見てもインプレッションはカウントされないが,正面から見た場合はカウントする,というような話ですか?

スッド氏:
 そうです。広告がどのような大きさ,どのような角度でゲーム中の画面に映ったのかを測定して,規定のルールに適合した場合のみカウントする,といったことが可能になっています。また。その広告がアイテムだった場合は,それが何回使われたか,何回触られたかなど,あらゆる面での測定が可能です。

4Gamer:
 結構細かくできるんですね。その「規定のルール」に関してですが,業界として一般的なルール(フォーマット)は存在するんでしょうか? この角度で,この大きさで表示されないと駄目,みたいな。

スッド氏:
 そこはまだこれからというところですね。とはいえ,そうした業界指標というのは,今後市場が成長していくにあたって,非常に重要な部分です。弊社としても,積極的にロビー活動をして,そうした指標の策定に尽力したいと考えています。

4Gamer:
 しかしお話を聞いていると,想像していたよりは色々なことができそうなんですが,ゲーム内広告を導入する場合――つまり御社の広告システムをゲームに組み込む場合――ですが,そのときのゲームデベロッパ側の作業量というのは,どの程度のものになるのでしょうか? なんだか物凄く面倒そうなイメージがあるのですが。

画像集#005のサムネイル/「ゲーム内広告は『Everybody Wins』のビジネス」,業界最大手Double Fusionのアレックス・スッド氏が語るゲーム内広告
スッド氏:
 非常に良い質問をありがとうございます(笑)。
 と言いますのも,我々がシステムを開発する,あるいはゲーム内広告ビジネスを行うにあたって,もっとも心がけているのは,いわゆるシステムインテグレーションをいかに簡単なものにできるかという部分なのです。よって,より簡単にゲーム内広告を導入できるようにするツールの開発も進めておりますし,またゲーム会社に対するサポート活動も積極的に行っています。
 もちろん,ゲームの内容に密接に関わるような広告の場合は,ゲームエンジンへのシステム導入が必要となるため,ゲーム会社への負担というのは発生してしまうわけですが,弊社のシステム自体が「組み込みやすさ」を念頭に開発されたものになります。

4Gamer:
 なるほど。手は打ってあるんですね。ゲーム内広告を組み込むために,両者のエンジニアの膨大な手間暇が必要なのかと思ってしまいました。

スッド氏:
 そこは大丈夫ですよ(笑)。また,これは通常の広告システムとはちょっと離れるのですが,ゲーム会社側にまったく労力が必要ない,いわゆるデベロッパフリーの広告モデル……弊社では「RunTime」と呼んでいるのですが,そういったソリューションも別途開発してあります。この場合は,すべての作業を弊社側で行わせて頂きますので,ゲーム会社側にはまったく負担がありません。

4Gamer:
 それは凄い……。いや,でもさすがに大したことができないような気もするんですが,そのデベロッパフリーのパターンだと,どういった広告の配信が可能なんでしょうか。

スッド氏:
 もちろん,すべてのタイトルで使えるような汎用的なものではないのですが,基本的なパターンの広告を表示させるようなものになります。大抵のタイプのゲームでは,非常に導入しやすいシステムだと自負しております。


日本でゲーム内広告が広がっていくためには


4Gamer:
 ところで御社も,日本のパブリッシャ,デベロッパをいくつか回ったと思うのですが,ゲーム内広告に対する日本企業の反応はどんな印象ですか? ポジティブな箇所,あるいは逆に腰が引けてしまう箇所など,多々あると思いますけど。

スッド氏:
 そうですね。まずポジティブな面からお話しますと,我々のゲーム内広告に対する積極的な姿勢,取り組みについては,非常に「納得」して頂いていると思います。それと,我々のシステムについても,理解ないし納得して頂いていると感じます。先ほどもご説明させて頂いたようなシステムの機能/可能性については,一様にポジティブな反応を頂いております。
 あと,我々のゲームマーケットに関する知識,理解度といったもの,要するにどういうゲーム内広告がより良いかといったノウハウについても,「納得」して頂けているのではないでしょうか。
 
4Gamer:
 なるほど。ただ,それほど「納得」されているにも関わらず,日本ではゲーム内広告というものがいまいち浸透していませんよね。それはなぜだとお考えですか?

スッド氏:
 日本で流行っていないのか? といえば,私はそういうわけでもないと思います。ゲームというのはグローバル展開されるコンテンツですから,例えば,日本のゲーム会社が作った作品がほかの国で展開するときに,その会社と一緒に仕事をさせて頂いたという例もあります。実例があまり表に出てこないだけで,ある程度は日本にも浸透しているのではないでしょうか。もちろん,ゲーム内広告は新しい概念,新しいビジネスですから,より一層認知させていく努力は必要だと思いますが。

4Gamer:
 それではちょっと言い方を変えますが,ゲーム内広告が日本でより一層ポピュラーになっていくためには,何が必要なのでしょうか?

スッド氏:
 人気うんぬんというお話ですと,現状でも徐々に伸びてきているという事実がありますし,個人的には,この流れが今後加速していくだろうという感触も抱いております。ただ,今後の成長に関して一つポイントを挙げるとすれば,やはり「広告主への認知」という部分が大きいだろうとは考えています。要するに,ゲーマーというオーディエンスをターゲットにしたい,と思う広告主を増やしていかなければならない。ゲーマーという市場/ターゲットに対する広告主側の認知度を高めていく必要があるのではないかなと。

4Gamer:
 ああ,それは我々「ゲームメディア」にも通じる部分かもしれませんね。ゲーマー層の属性/行動様式というのは,ゲーム業界以外の産業からはあまり認知されていないといいますか。ゲーム雑誌には,ゲームの広告ばかりが入って,いわゆる“普通の広告”はなかなか入らないという,昔からの課題があります。明確に選別されたターゲットがいるんですけどね。

スッド氏:
 なるほど。その点は確かにゲーム内広告と共通する問題なのかもしれませんね。そもそも,いまやゲーマーと一言でいってみても,その内訳は非常に多様です。子供もいれば社会人もいるし,女性や年配の方でもゲームを遊びます。ゲーマーというのはどういう人達なのか? ゲーム業界内はともかくとして,広告代理店をはじめとした一般社会では,このあたりの知識のキャッチアップがなかなかできていないというのが実情ではないでしょうか。

4Gamer:
 アメリカのGameSpotなどを見ると,いろいろな種類の広告が入っていて,ゲーマー即ち若い男性でお金がある,みたいな認識が広まっているのだなと感じます。日本でもゲーマーが広告ターゲットとしてより認知されていくと,我々ゲームメディアも非常に助かるんですけど(笑)。

スッド氏:
 そこはぜひ協力して取り組んでいきましょう(笑)。
 まぁとはいえ,ゲーマーというターゲット/市場への認知は徐々に広まっていますし,広告代理店の方々も,ゲーマーが“狙うべきターゲット”だと気が付きはじめている……という状況だとは思います。

4Gamer:
 そういえば,2007年の6月にアナウンスされたゲームポットとの提携については,何か進捗はあるのでしょうか? ダブルフュージョンが日本のパブリッシャと大々的に手を組んだというのはおそらくは初めての例なので,業界内で注目している人も少なくないと思うのですが。

スッド氏:
 詳しいお話はできないのですけれど,ゲームポットさんとの提携は,我々としても非常に良い提携だと考えていますし,我々のソリューションを提供している「Level-R」にも非常に期待しております。

画像集#009のサムネイル/「ゲーム内広告は『Everybody Wins』のビジネス」,業界最大手Double Fusionのアレックス・スッド氏が語るゲーム内広告 画像集#011のサムネイル/「ゲーム内広告は『Everybody Wins』のビジネス」,業界最大手Double Fusionのアレックス・スッド氏が語るゲーム内広告

4Gamer:
 軽くかわされた感じですね(笑)。
 ところでゲーム内広告というと,やはり今後はオンラインゲームでの展開が大きな軸になると思うのですが,日本のオンラインゲーム市場についてはどう見ているのでしょうか? 正直な話,日本のオンラインゲーム市場の規模では,広告が成り立つほどのオーディエンス(プレイヤー)がいないのではないか,という懸念もあるのですが。

スッド氏:
 ダイナミックに広告の入れ替えが出来るメディアという面をとってみても,ゲーム内広告の主軸はオンラインゲームになるだろうと思います。実際,コンソールのパッケージゲームでもゲーム内広告は存在していたわけですが,いろいろな理由からまだ一定規模のマーケットに留まっているのは事実です。ただ,今後はコンソールやモバイルなど,さまざまなプラットフォームでゲーム内広告が活用されることが期待されますし,今後伸びていく可能性に関しては楽観的に考えております。コンソールゲームでも,ゲーム内広告(広告がオンラインで入れ替えできるタイプ)が徐々に浸透していくといいですね。
 それと日本のオンラインゲーム市場に関してですが,オーディエンスがいないということはないと思いますが,先ほどの話どおり,広告主に対しての啓蒙活動はまだまだ必要だろうと思います。

4Gamer:
 分かりました。それでは,最後に読者に向けて……と言おうと思いましたが,あなたの場合は明らかに業界人に向けて,ですね(笑)。業界の人に向けて,何かメッセージをお願いします。

画像集#007のサムネイル/「ゲーム内広告は『Everybody Wins』のビジネス」,業界最大手Double Fusionのアレックス・スッド氏が語るゲーム内広告
スッド氏:
 え,そういうのもあるのか!
 (しばし腕組みして悩んだあと)ゲーム内広告のビジネスというのは,重要な広告ターゲットであるゲーマーと広告主の間に,より良いコネクションを構築するビジネスだと我々は考えています。ゲーム内広告によって,広告主は先進的なゲーマーに効果的に接触できるようになりますし,ゲーマーの皆さんは,素晴らしい製品の存在を知ったり,あるいは無料のゲーム,より素晴らしいゲーム体験が可能になります。さらに言えば,ゲーム会社にとっては広告料が見込めるわけですから,ゲーム内広告とは,関係するすべての人々に利益がある「Everybody Wins」のビジネスモデルだと言えるのではないでしょうか。皆さんとともにゲーム内広告市場を盛り上げていければと思います。

4Gamer:
 本日はありがとうございました。



 テレビや雑誌の例を挙げるまでもなく,人々が常日頃接触する「メディア」に広告を同居させるというビジネス手法は,古典的であるが確立されたモデルである。ゲームが一過性のブームなどではなく,人々が“日常的に遊ぶ”メディアとして認知されつつある今,ゲーム内広告というビジネスが立ち上がってきたのは,ある意味では非常に自然な成り行きだと言えるだろう。
 ただ,テレビや雑誌と大きく異なるのは,ゲームにおける広告のあり方が「やたらに複雑だ」という一点に尽きるかもしれない。ゲーム内広告における業界フォーマットの必要性というのは,それこそ2005年辺りからすでに叫ばれていたわけだが,その辺りの事情に関しては,あまり進展がなさそうで,そこは大きな問題点かもしれない。

 とはいえ,テレビ業界の発展において,広告を前提にした無料視聴モデルが欠かせなかったように,今後,ゲーム産業においても,広告の重要度が高まる可能性は十分にある。映像コンテンツが,お金を払って見るという映画的なビジネスモデルから,広告前提のテレビ的なビジネスモデルに変化していったように,ゲーム内広告が,ゲームビジネスのあり方自体を変えてしまうことだってあり得るのである。

 現状では,足踏み状態が続くゲーム内広告市場。しかしながら,依然として大きな可能性を秘めていることだけは確かなようである。
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