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[CJ2023]中国からハイクオリティなゲームを世界に届ける。SIEのゲーム開発振興プログラム「China Hero Project」ディレクターにインタビュー
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印刷2023/07/29 12:52

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[CJ2023]中国からハイクオリティなゲームを世界に届ける。SIEのゲーム開発振興プログラム「China Hero Project」ディレクターにインタビュー

 中国・上海で2023年7月28日から31日まで開催されているゲームイベント「ChinaJoy 2023」にて,Sony Interactive Entertainment Shanghai(以下,SIE上海)で「China Hero Project」のディレクターを務める包 波(Bao Bo)氏にインタビューを行った。
 China Hero Projectは,中国国内のデベロッパに対してSIEがサポートを行うゲーム開発振興プログラムとして,2016年から続いている施策だ。これまでにさまざまなタイトルが登場しており,日本では,アークシステムワークスが発売したメカアクション「HARDCORE MECHA」もその1つだ。会期前日の7月27日には,第3期の新タイトルとして,3作品が発表されている(関連記事)。
 そんな本施策について,現状や目指すところなどを聞いた。



4Gamer
 本日はお時間をいただき,ありがとうございます。
 先日,第3期タイトルが発表されたChina Hero Projectですが,今回は日本のゲーマー向けに,改めてこの取り組みについてうかがいつつ,その成果や新作についても教えてもらえればと思います。

包 波氏
 分かりました。よろしくお願いします。

4Gamer
 まずは,どのような取り組みかを整理させてください。2016年の発表時は,PlayStationプラットフォーム向けのゲームを開発する中国国内のゲーム企業に対して,各種ミドルウェアのライセンス料を負担し,パートナー企業によるサポートも行うゲーム開発振興プログラムということでした。その立ち位置は今も変わっていませんか。

包 波氏
 基本は変わっていません。ただ,第3期から変わった点もあり,パートナー企業による支援が倍ぐらいに増えました。さらに,PlayStationのスタジオから,アイデアの提供やローカライズの支援,問題解決のための助力などを行うようになり,より密な関係で一緒に開発が進められる取り組みになっています。

4Gamer
 第1期,第2期と比べて,より手厚い支援が受けられるようになったと。

包 波氏
 そうです。これまでの経験から,デベロッパがどのような協力を求めているのかが分かってきましたので,さまざまな支援が可能になったのです。

4Gamer
 先日,第3期タイトルの発表がありましたね。

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 SIE上海は「ChinaJoy 2023」開幕前日の2023年7月27日,「China Hero Project 第3期発表会」を中国・上海で開催した。PS5向けの,とてもインディーデベロッパとは思えないハイレベルな3作が発表されている。

[2023/07/28 12:07]

包 波氏
 第3期は2022年11月に始まっていて,先日の3作品を合わせて,これまで6作品を発表しています。まだ選考中のタイトルもあって,今後,10作品ほどになる想定です。

4Gamer
 一方で,第1期,第2期のタイトルにも,まだ発売されていないものがありますね。例えば,2019年に出展され,同年の東京ゲームショウにも出展された「AI-LIMIT」は,開発中のようですし。

包 波氏
 はい。開発元と協議した結果,作り直した部分もあり,現在は新しいバージョンになっています。
 第1期,第2期の13タイトルのうち,現在6タイトルがまだ発売されていませんが,すべて開発は継続しています。開発に時間がかかると,作り手も時代に合わせて「あれを入れたい」「これを入れたい」とやりたいことが増えていきますから,よりクオリティの高い作品として世に出せるよう,我々も惜しまずサポートを続けています。

4Gamer
 すでに発売されているタイトルの中に,Steamなどでも展開されているタイトルがありますが,PlayStationプラットフォームの開発支援として取り組んでいるSIEとしては,とくにプラットフォームに制限はかけていないのでしょうか。

包 波氏
 制限はありません。SIEパブリッシングタイトルであれば,PCのパブリッシングも担当していますし,そうでないタイトルも,PCで展開したいということならサポートしています。

4Gamer
 PC版をむしろ後押ししているのは,PCゲーマーの多い中国市場らしい施策ですね。
 China Hero Projectの発足当時,中国市場はまだコンシューマゲームがそれほど根づいていなかったかと思います。今はいかがでしょう。

包 波氏
 私は2021年にSIE上海に参加していますので,ここ数年の状況を見た印象になりますが,PlayStationハードウェアの売れ行き,プレイヤー数は,かなり伸びています。会場のPlayStationブースを見れば分かると思いますが,コンシューマ機ゲームの試遊に,多くの人が並んでくれるようになりました。

画像集 No.004のサムネイル画像 / [CJ2023]中国からハイクオリティなゲームを世界に届ける。SIEのゲーム開発振興プログラム「China Hero Project」ディレクターにインタビュー

4Gamer
 その背景には,すでに発売されたChina Hero Projectタイトルの影響もあるかもしれませんね。

包 波氏
 実際,「ハードコア・メカ」「ANNO: Mutationem」「フィスト 紅蓮城の闇」など,好評価のタイトルが続出しています。
 また,当初は規模の小さかった開発チームが,一緒にやっていくうちに大きくなっていくのを見ると,China Hero Projectの成果を実感します。例えば,第2期にフィストを開発した頃のTiGamesのメンバーは10人でしたが,第3期タイトルとして「从风行(The Winds Rising)」を制作中の現在,50〜60人規模になっているんです。

4Gamer
 PlayStationプラットフォームの「China Hero」と言えるようなデベロッパが,本当に出てきているわけですね。

包 波氏
 そのとおりです。TiGamesのように,SIE上海と長い付き合いでゲームを作っていける未来のパートナーを増やしていければと思います。
 そして,中国からハイクオリティなゲームを出して,グローバルでチャレンジしたいです。PlayStationのモットーである「すべてはプレイヤーのために」にふさわしいゲームをChina Hero Projectからお届けして,それがGame of the Yearを取れれば最高ですね。

4Gamer
 China Hero Projectから登場する,発売が近いオススメタイトルを教えてください。

包 波氏
 難しいですね(笑)。
 2023年と2024年に,たくさんのタイトルを発売する予定があるんですよ。「EVOTINCTION」「潜阈限界(Exiledge)」,もしかしたら「达巴:水痕之地」「空壳行动(Will-less)」もこの時期に出せるかもしれません。

4Gamer
 第3期のタイトルも,いくつかは早くに触れられそうですね。
 ところで,China Hero Projectのタイトルは,どのような基準で選ばれているのでしょうか。

包 波氏
 応募メーカーに提供してもらうのは,ゲームデザイン,技術デザイン,開発チームがどういった構成か,会社はどういった動き方をしているのかの,4つの資料です。すでに動かせるバージョンがあるなら,もちろんそれもプレイして判断します。プレイできる場合,アート性,物語性,コアのゲームプレイがどういったものか,そして技術の4つをポイントとしています。

4Gamer
 応募タイトルは,どのぐらいあるのでしょう。

包 波氏
 第3期は80タイトルです。ハイクオリティなゲームを出していくため,第3期の選考基準は以前よりも厳しくなっていて,いくつかのタイトルはまだ迷っていますね。

4Gamer
 選考にあたって,包さんは80タイトルをすべて見ていらっしゃいますよね。

包 波氏
 はい,もちろん。

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4Gamer
 China Hero Projectには,フロム・ソフトウェアの影響を受けた,いわゆるソウルライクなものがいくつかありますが,その手のタイトルの応募は多いのでしょうか。

包 波氏
 ソウルライクなタイトルが好きな中国のゲーマーは非常に多いですし,作るのが好きなデベロッパさんも多いです。「ELDEN RING」で最初にプラチナを獲得したのも中国のプレイヤーですし。
 ただ,China Hero Projectの中にソウルライクがいくつかあるのは,応募が多かったというより,クオリティの高い応募作品がたまたまソウルライクだったというのが理由です。SIE上海としては「このジャンルがほしい」と選んでいるわけではないので,重要視しているのはあくまでクオリティ。良いゲームになるかどうかです。

4Gamer
 なるほど。では,応募の多いジャンルはなんでしょうか。中国はアクションゲームの人気が高い印象がありますが。

包 波氏
 確かに,アクションが好まれる傾向にはあると思います。しかし,応募が多いのは,実はRPGで,しかも,その多くはストーリーに注力した作品なんです。最近はとくに,自分たちの表現やアートスタイルで物語を描きたいというデベロッパが増えたように思います。

4Gamer
 なんと。その傾向は,何が理由なのでしょうか。

包 波氏
 はっきりとした確証があるわけではないので,個人的な観点なのですが,「ファイナルファンタジー」シリーズや「原神」などで,物語を重視したゲームに触れた人が増えて,そうした楽しさに慣れてきたのではないかなと。
 また,ハリウッド映画の中国での売り上げが,2022年,2023年とどんどん下がっています。一方で,中国で作られた映画がヒットしていて,その中の多くはナラティブなものです。中国内の環境として,物語を重視したいという欲求が高まっているのかもしれませんね。

4Gamer
 最後に,今後に向けてのChina Hero Projectの意気込みをいただけますか。

包 波氏
 世界中の皆さん,中国の開発者をぜひ信じてください。ハイクオリティなゲームを出せるよう,絶賛開発を続けており,SIE上海としても全力でサポートしています。AAAレベルのゲームをChina Hero Projectからお贈りできればと思いますので,少し時間をください。

4Gamer
 面白いタイトルが日本にもやってくることを期待しています。ありがとうございました。

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