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「ゲンロン8 ゲームの時代」の刊行を記念し,美術史家の松下哲也氏らがゲームと美術を結びつける視覚論を披露したトークイベントをレポート
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印刷2018/06/21 20:33

イベント

「ゲンロン8 ゲームの時代」の刊行を記念し,美術史家の松下哲也氏らがゲームと美術を結びつける視覚論を披露したトークイベントをレポート

 2018年6月20日,批評誌「ゲンロン8 ゲームの時代」の刊行を記念するトークイベント「黒瀬陽平×さやわか×松下哲也『ゲーム、美術、キャラクター!』」が,東京・ゲンロンカフェにて開催された。本イベントでは,美術史家の松下哲也氏,美術家/美術評論家の黒瀬陽平氏,ライター/物語評論家のさやわか氏がトークを繰り広げた。本稿では,その中からゲームと美術を結びつけた視覚論に関する部分をピックアップしてレポートしよう。

左から黒瀬陽平氏,松下哲也氏,さやわか氏。イベントの前半では,主に美術の専門家である松下氏と黒瀬氏が視覚論を展開し,さやわか氏が聞き手に回った

松下氏が,2003年9月16日からSteamに加入しているコアゲーマーであることも紹介された。なおSteamは同年9月12日にサービスインしている

 黒瀬氏によると,美術史においては,時代ごとに“人々が世界をどう見ているか,何をメタファーに世界を把握しているか”という「視覚」のモードがあり,変遷を重ねてきたという。そして,ルネサンスにおける絵画や20世紀における映画は,人々が世界を把握するためのメタファーとして機能してきたが,現代においてはそれがゲームなのではないか,というのが松下氏と黒瀬氏の見解である。

 そうした視覚表現の変遷の代表例として,松下氏は,まずバロック期の画家であるディエゴ・ベラスケスの作品「ラス・メニーナス」を紹介。この作品は,ベラスケスが国王夫妻の肖像を描いている瞬間を,被写体である国王夫妻の視点から描いたと解釈されている。そのため,作品中には国王夫妻を描いているベラスケス自身も描かれるという,メタ的な作品になっている。こうした手法は当時ほかでは見られなかったため,「ラス・メニーナス」は美術方面ばかりでなく哲学者のミシェル・フーコーからも高く評価された。


 続いて松下氏は,近代のキャラクター造型について紹介した。それによると人を描く際には,優れた人物なら理想的な美しい容姿,逆に劣っていたり邪悪だったりすると猿に近くなるなど,醜悪な容姿になるといった感じが一般的だったとのこと。
 また,近代美術の画家であるヘンリー・フューズリの作品「グイド・カヴァルカンティの亡霊に出会うテオドーレ」は,そうしたキャラクター造型の手法と共に,ストーリー性が加えられ,また視覚面ではメタ的な演劇の手法を盛り込んでいることが紹介された。

 それではゲームにおける視覚表現の変遷はどうかというと,まず松下氏は1970年代中盤に開発されたテキストアドベンチャー「Colossal Cave Adventure」において,「あなたは建物の中に入った」「あなたはランタンを見た」というように,“あなた”を主体とした二人称視点でゲームが進行することを紹介。
 これが1980年にSierra On-Lineからリリースされた「MYSTERY HOUSE」になると,テキストでは同じく“あなた”が主体となっているものの,グラフィカルな表現が加わったことにより,絵的には一人称視点を実現していることや,さらに1980年代中盤の「King's Quest」では2Dマップの上をキャラクターが移動するといった表現になった。

 1990年代になると,「Alone In The Dark」「バイオハザード」といった,3Dグラフィックスを駆使した映画のような視覚表現のゲームが登場した。
 そして1996年の「スーパーマリオ64」では,プレイヤー自身がカメラを操作することになるわけだが,それはゲームの視覚表現において画期的だったと松下氏は言う。すなわち「ゲーム中のキャラクターであるジュゲムがカメラを持っていることにより,二人称の“あなた”というナラティブな表現が発生し,“あなた”はジュゲムが持っているカメラを通じてマリオが見ている世界を見ている」というわけで,こうした多重視点こそがゲーム的な視点であると説明した。

 さらに松下氏と黒瀬氏は,そうしたゲーム的な多重視点を用いた新しい例としてNinja Theoryの「Hellblade: Senua's Sacrifice」を紹介した。本作は,一見すると普通の三人称視点のゲームだが,プレイヤーは主人公の女戦士・セヌアに取り憑いた亡霊という設定なので,実は彼女の背後からゲーム内の世界を見ていることになると黒瀬氏は解説。
 松下氏も「ゲーム冒頭で,『あなたはジュゲム的な存在だ』というようなことを先にセヌアに取り憑いていた霊から説明されることにより話は二人称視点で進むが,セヌアの操作は三人称視点。そのうえ,プレイヤー自身は亡霊なので,ある意味,視点は一人称とも言える」とし,本作が複数の視点を行き来する表現を採用していることを強調した。


 次に松下氏と黒瀬氏は,20世紀の美術家であるマルセル・デュシャンの遺作「1.水の落下、2.照明用ガス、が与えられたとせよ」を紹介した。この作品は,部屋の壁に古ぼけたスペイン扉が設置されているというもの。しかしよく見ると扉には穴が空いており,それをのぞくと,顔の見えない全裸の女性が左手にランプを持って草むらに倒れている姿が見える。そして,その後ろには山並みや湖といった風景が広がっている。
 黒瀬氏によると,この作品は現代美術の視覚のモードの中では最新でこそないものの,未だ色あせていない最高峰に位置するものだという。

 そうしたデュシャンの遺作を意識した視覚的手法を使っているゲームとして,松下氏はGiant Sparrowの「フィンチ家の奇妙な屋敷でおきたこと」を紹介した。本作の内容は,フィンチ家の風変わりな屋敷を舞台に,一族の末裔である主人公・エディスが,先祖達がたどった顛末を追体験するというものである。
 屋敷の部屋は,当初すべて内側からカギが掛けられているのだが,ドアにはのぞき窓があり,それをのぞくと,かつての部屋の持ち主のエピソードがスタート。ゲームが進行すると部屋に入れるようになり,その持ち主の日記を読むなどすると,プレイヤーの視点はエディスから各部屋の持ち主へと移行する。

 黒瀬氏は,デュシャンの遺作について,鑑賞者が積極的に作品に関与しようとすると,その先にさらに作品があると説明。そこには,ゲームがそもそも持っている「視覚をメタ化する」手法を使って,美術のルールを変えようという意識があり,現代ではテクノロジーの発展によって,よりさまざまな実験が可能になっているが,デュシャンはその先駆者だったと語っていた。


 本イベントでは,以上の視覚論にまつわる内容を始め,登壇者3名によるさまざまなゲームタイトルに関するトークなどが披露されたほか,来場者からの質問に答えるコーナーも設けられた。その中で,「ゲンロン8」の内容について寄せられた,「事実誤認ではないか」「用語の使い方がおかしいのではないか」といった批判に対する,黒瀬氏とさやわか氏の評論家としての見解なども示された。その内容は現在,ニコニコ生放送のタイムシフト視聴にて,有料ではあるがチェックできる。興味のある人は,ぜひ自分自身の目と耳で確認してほしい。

「黒瀬陽平×さやわか×松下哲也『ゲーム、美術、キャラクター!』」

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