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ちょっと怖いけどかわいい。やたら氏のボールペン描きの怪物たちと,安息の地を求める少女の物語。「HINO」開発陣インタビュー[BitSummit]
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印刷2026/05/25 12:43

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ちょっと怖いけどかわいい。やたら氏のボールペン描きの怪物たちと,安息の地を求める少女の物語。「HINO」開発陣インタビュー[BitSummit]

 東映ゲームズによるパブリッシングが決まった「HINO」は,イラストレーターのやたら氏が描く,独特な怪物たちが住む暗闇の世界を,少女ヒノと相棒もにもにスケルトンが旅するアクションアドベンチャーだ。

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 開発は,HINO制作のために結成されたUnGloomStudioで,プロデューサー兼アニメーターのAury氏が中心となる。
 現在開催中のBitSummit 2026の会場では,やたら氏とAury氏をはじめ,エンジニアのMenchi氏,さらにパブリッシャ・東映ゲームズの担当者にも話を聞くことができた。

 プロジェクトの始まりから原作との違い,アニメーターとエンジニアがそろって「やばい」と口にするボスデザインの裏側まで,HINOのこれまでをたっぷりお届けする。

左から,Menchi氏,Aury氏,やたら氏
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4Gamer:
 本日はよろしくお願いします。
 まずはそれぞれ,軽く自己紹介をお願いします。

Aury氏:
 UnGloomStudioのプロデューサー兼アニメーターを担当している,Auryと申します。ゲーム業界でエンジニアとして10年以上働いていまして,今回は長く付き合いのあるメンバーを集めてこのスタジオを立ち上げました。
 本業は今もゲームのエンジニアです。

やたら氏:
 今回ゲームのイラストを担当している,やたらと申します。もともとはまったく分野の違うところで会社員をしていたのですが,ゲームのお仕事やイラストのお仕事が増えてきたので,思いきって転身しました。
 今でも慣れないものでして。刺激的で,すごく楽しいです。

Menchi氏:
 エンジニアリング全般を担当している,Menchiです。ゲームのエンジニアリングを10年近くずっとやっていました。
 Auryとは普通に友達でして,今回Auryから「ちょっといいプロジェクトがあるからやってくれないか」と声をかけられて参加しています。

4Gamer:
 UnGloomStudioは現在6名とうかがっていますが,最初から6名だったのでしょうか。

Aury氏:
 スタジオを立ち上げた時点では6名ですね。それ以前に,僕が個人的に活動しているところで,BGM担当の庄子智一,エフェクト担当の稲人の3人で動いていたんです。
 今回,やたら先生のイラストをゲーム化することになって,新規メンバーを集め,6名という体制になりました。


■UnGloomStudioメンバー
Aury氏(個人X):ディレクター/アニメーター
Menchi氏:プログラマ
やたら氏(個人X):デザイナー
稲人氏(個人X):エフェクトデザイナー
庄子智一氏(個人X):音楽デザイナー
くわぽん氏(個人X):サウンドデザイナー

UnGloomStudio ホームページ
https://ungloomstudio.com/about.html


4Gamer:
 Auryさんと,庄子さん,稲人さんの3人は「RaidKids」のときから続いているメンバーということですか。
Aury氏:
 そうです。

4Gamer:
 Auryさんは元々ゲーム業界のエンジニアとのことですが,どの領域のエンジニアだったんですか。

Aury氏:
 クライアントエンジニアです。Unityや,たまに会社のエンジンを使ったC#のプロジェクトをメインにやっていました。

4Gamer:
 なら,本業はアニメーターではないと。

Aury氏:
 ではないですね。ただ,とある大手企業のとあるAAAタイトルで,知り合いから「アニメーションをやってくれないか」と言われたことがありまして。そこで武器アニメーション全般を担当したのが,アニメーションに本格的に触れるきっかけでした。
 期間としては,1年か2年ぐらいです。本業でやったのはそれぐらいで,あとは趣味ですね。

4Gamer:
 いろいろ並行してやっていたイメージで。

Aury氏:
 フリーランスなので,かけ持ちです。

4Gamer:
 その武器アニメーションは2Dと3D,どちらでしたか。

Aury氏:
 3Dです。

4Gamer:
 HINOは2Dじゃないですか。違いや難しいところはありますか。

Aury氏:
 3Dのほうはモーションキャプチャ前提のタイトルだったので,撮影した武器モーションのデータをいろいろ調整するという作業でした。
 一方,2Dにはモーションキャプチャがないので,人の動きをベースにできず,完全に想像でしかアニメーションを組めない部分があります。そこはだいぶ違いますね。

4Gamer:
 今回のやたら先生のキャラクターは,かなり奇抜な動きをすると思うのですが,その自由から「ようやく自分が解き放たれたぞ」みたいな感覚はあるんでしょうか。

Aury氏:
 まさしく,まさしくそうです。

4Gamer:
 やたら先生にも聞きたいのですが,これまで,ご自身のイラストにアニメーションをつけてもらう経験はあったんでしょうか。

やたら氏:
 いえ,今まで一度もなくて,今回が初めての経験でした。
 本当に不気味に動かしていただいて。

4Gamer:
 こんな感じで動くだろう,と想像していたとおりでしたか。

やたら氏:
 描くときにパーツを分けながら描くので,ある程度「ここは動いて」という想像はしていたのですが,それは僕の想像だけのことで。
 いざ形になったときは,本当に想像を超えてくる気持ち悪さといいますか,不気味な動きで。これも僕の楽しみになっています。

4Gamer:
 「Aury(の作る動き)キモイなぁ」って感じで。

Aury氏:
 褒め言葉でしかないです(笑)。

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Xに上げていたイラストをゲームにした出発点


4Gamer:
 HINOはもともと,やたら先生がXに上げていた「#怪物の潜む暗闇を探索する女の子の話」のキャラクターが原作とのことですが。


やたら氏:
 そうですね。もともとは,僕がXで公開していたイラストのキャラクターでした。
 今回はそこから設定の一部を変えながら,「ゲームはゲームとして」というかたちで進めています。キャラクターの見た目と一部設定が,今回ゲームに持ち込まれている感じです。

4Gamer:
 そもそも,どういうきっかけでプロジェクトが始まったんですか。

Aury氏:
 僕からのオファーですね。もともと僕がティム・バートン(※)みたいな「ちょっと怖いけどかわいい」ジャンルがすごく好きで,やたら先生のXも常にチェックしていました。

※ティム・バートン:「ビートルジュース」「ナイトメアー・ビフォア・クリスマス」「チャーリーとチョコレート工場」などを手がけた映画監督

 やたら先生のフォロワーの方々が「ゲーム化してほしい」と反応しているのを見たりもしていたので,「もしかしたら裏でゲーム化の話が動いているのかな」と思ったりもしたんですが,一応自分でデモ版を作ってお話をしに行きました。
 手描きでちょっとホラーだけどかわいいみたいなところは,RaidKidsのテイストとも近い部分があって。「そういうのが好きなんです」というところと含めてお話しさせていただきました。

4Gamer:
 デモまで作って行かれたんですね。どんな内容だったんですか。

Aury氏:
 今の試遊できる範囲の最初みたいな。キャラクターが動いて,ライトで照らすと怪物のイラストアニメーションが浮き出てくる,という内容です。「こういう感じでやっていけたら」という話の材料を用意して持っていきました。

やたら氏:
 もともとXにアップしていた過去の怪物のイラストを,すでにアニメーションを組んで動かしてくださっていまして。
 暗闇からこう浮き上がってくるものを見て,一気に「ゲームとしてこう動くんだな」と想像がついたんです。それで「ぜひお願いします」と。

4Gamer:
 単純な疑問なんですが,もとのイラストは1枚絵ですよね? それをどう動かしたんでしょうか。

Aury氏:
 自分でパーツ分けしました。イラストを全部分解して,足りないところは自分で描き足して,アニメーションさせて,という流れです。

4Gamer:
 エンジニアもでき,アニメーションもでき,イラストもできる。

Aury氏:
 RaidKidsのほうはすべて自分でイラストを描いています。

4Gamer:
 強い。
 実際にお話ししてからプロジェクトが始動したのは,いつ頃ですか。

Aury氏:
 2年前の11月くらいだったと思います。実際「ゴー!」となったのは半年後の,2025年の夏くらいですね。最終的なメンバーが集まってスタートするまでは,どちらかというと企画や仕様の話が主でした。

 一番最初のモックを作り始めたのは,2025年の春前くらいです。流れで作っていたので,明確な分岐点はなくて。

4Gamer:
 では,Menchiさんはいつ頃参加されたのですか。

Menchi氏:
 デモ版が終わって本制作に入りたい,というくらいのタイミングです。Auryから「いざやると自分じゃエンジニアが追いつかないから,専任で入ってくれ」と言われて,デモ版を渡されて「こんな感じです」と。

4Gamer:
 デモの強みがそこでも。参加の時期としてはいつ頃でしょう。

Menchi氏:
 プロジェクトが正式に決まる前です。たぶん2024年の冬くらい。まだスタジオの名前も決まっていなかった頃ですね。

4Gamer:
 最初にデモを見たとき,どんな印象でしたか。

Menchi氏:
 RaidKidsも知っていたので,Auryが作りたいのってこれだよね,という感じでした。そもそもずっと友達ですし,ゲームの好みもお互い知っているので,スムーズでしたね。

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Aury氏:
 逆に,Menchiじゃなきゃ頼めなかったという部分はあります。自分の意図をくみ取ってくれる人なので,ほかの人にはちょっと任せられないなというのはありました。

4Gamer:
 実際の作業分担はどう分けられているんですか。

Aury氏:
 エンジニアリングに関しては,完全にMenchiに任せています。うちのメンバーはみんな,各担当が担当のものしかやらないイメージですね。

4Gamer:
 プログラマー,デザイナー,エフェクト,音楽,サウンドと完全に。

Aury氏:
 ある意味では会社チックなところがあるかもです。

4Gamer:
 メンバーの一覧を見たとき,ポジションがきれいに分かれていたので,スポット的に入ってもらっている人もいるのかと思っていました。足りない人をそろえていったのではなく。

Menchi氏:
 意外と,みんな仲良しで昔からのメンバーみたいな感じでやれていますね。そのほうが僕もやりやすいので。


原作の世界観を継承し,ifの物語を描く


4Gamer:
 HINOは,やたら先生の原作があるわけで。やたら先生から,ゲーム化にあたって,ここはこうしてほしいというオーダーはありましたか。

やたら氏:
 けっこうAuryさんと同じものが好きというか,同じようなジャンルが好きというところで。ティム・バートンの作品も大好きですし。
 僕が化け物とかのデザインを出して,それを動かしていただいたものを返してもらうのですが,足とかが複雑でも,いいものを返してくれるので,満足しています。こっちからこうしてほしい,というのはあまりなくて,いいものが返ってくる恵まれた環境にいます。

4Gamer:
 敵の攻撃の仕方とか,動きとかは,やたら先生からイメージを伝えるのですか。

やたら氏:
 多少でしかないですね。

Aury氏:
 イラストからイメージを得て,勝手に作って,それを見てもらって。もうちょっとこういう攻撃があったらいいですね,とかをやり取りする流れです。なので,最初はある程度こっちで動かしてみて,それを提供したほうがいろんな意見をもらいやすいですね。

4Gamer:
 とりあえずお願いします,がスタートライン。

やたら氏:
 このキャラクターは,こういう動きはしていいですか/したらダメですか,というのも事前にいただいていて。そういったたたき台を出していただいたうえで,そこから僕が何かを言わなくてもすごくいいものが出来上がるとかもあるので。
 むしろ,聞いたあとに僕が考えてなかったアイデアも出たりします。

4Gamer:
 今回の作品は原作とは違うゲームならではのif物語ですが,実際にはどのあたりが違うのでしょうか。

やたら氏:
 シナリオもですし,キャラクターも一部違います。主人公の赤いリボンをつけたヒノと,傍らにいるもにもにスケルトンというゆるキャラのような相棒は基本同じです。
 ただ,序盤に出会う白い帽子をかぶったキャラクターは,Xのイラストでは「帽子先生」という名前で出していたところを,今回のシナリオでは「帽子の男」と,名前と一部設定を変えています。

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Aury氏:
 なんだったら,ヒノももにもにスケルトンもまったく違うんですよ。ベースの性格は一緒なんですけど,求めているものや思想が違う。

4Gamer:
 では,ゲーム版のヒノは,そもそもどう目覚めて,何を求めているのでしょうか。

やたら氏:
 どこまで言っていいのやら(笑)。

Aury氏:
 現状ゲーム側で出ているワードとしては,「安息の地を求めている」というのがゲーム版の設定です。
 要するに怪物たちに襲われない場所,自分たちで安心して過ごせる場所を探している,という設定なのですが,原作はまた全然違うんですよ。

4Gamer:
 いま聞いて,原稿どうしようと(笑)。
 デモ版をプレイさせていただいて,「こういうことかな」とすり合わせながら頭で考えていたので。

Aury氏:
 何も参考にならなかったかもしれないですね(笑)。実は最後まで進めると,全然違う雰囲気が見えてくるようになっています。

4Gamer:
 最初に幼稚園で目覚めるという設定も,ヒノと関係があるんですか。

Aury氏:
 関係あります。全部ちゃんと関係しているという作りですね。関係ないものは1つもないぐらいです。

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暗闇世界と,光について


4Gamer:
 このゲームは全体的に暗くて,人間は光のなかでは大丈夫,怪物は光がダメ,というような関係性なんでしょうか。
 あるいは生き残るために光が必要というイメージでしょうか。

Aury氏:
 そのあたりはゲームと原作で全然違うんですよ。

やたら氏:
 ゲームのほうは,主人公が光に触れているあいだは怪物にならない,というところは一緒なんですけれども,周りの怪物の光に対する反応は原作とちょっと違いますね。

4Gamer:
 怪物たちは,光に対して何かリアクションがあるのでしょうか。

Aury氏:
 ゲームでは,光と怪物の密接な関係はそこまで持たせていません。

やたら氏:
 もともとの設定のままでやると,ゲームがすごく難しくなってしまうんです。光を持っていると,そこに怪物がたくさん来るという設定なので,怪物まみれになってしまう。

Aury氏:
 とはいえ,一部はその設定の名残でついていまして。最初の幼稚園に出てくる怪物が襲ってくるシーン。あれも光でちょっとびっくりしているんですが,「なぜ反応するのか」「なぜ反応しないやつがいるのか」は実はちゃんと決まっています。ややこしくて申し訳ないですけど。

4Gamer:
 相手のライトに色のついたものがありますよね。あれにも何か意味があるんですか。

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Aury氏:
 それはゲーム的なところですね。

4Gamer:
 プレイしていて,世界観だけではなく,純粋にゲーム性の部分でもかなりヒリヒリするように作られているなと感じました。
 ストーリー的に「ここは大丈夫だろう」と思える場面でも,本当に「これダメじゃ」というヒリヒリ感があります。あのバランスは誰がどう作っているんですか。

Aury氏:
 ベースは僕のほうである程度の仕様として組んでいるんですが,最終的なバランス調整はエンジニアであるMenchiの意見を聞きながらやっています。「もうちょっとこうしたほうがいい」と調整して,あとはひたすらプレイして調整するという形ですね。

※インタビュー終了後,移動中に少し聞いた話だと,Aury氏らはソウルシリーズが好きで,死にゲーのエッセンスも入っているようだ

4Gamer:
 実際にプレイして調整するのは,主にどなたですか。

Aury氏:
 自分ですね。



 インタビュー終了後,東映ゲームズでHINOの担当をする長島寛晃氏にも少しお話を聞けた。長島氏がHINOと出会ったのは,昨年大阪で開催されたイベントの会場だったという。

 そのときキービジュアルに引かれ,「この美しい絵が動いたらどうなるんだろう」と実際にプレイしたら,すてきに動いていることに驚かされたそうだ。それをきっかけに声をかけ,契約自体は今年3月に締結したばかりだが,実質的に半年ほど並走しているような形だ。

 サポートは,プロモーション周りや,QA,デバッグといった部分で,ゲーム内容については,これだけ仕上がったものに口を出すのは……と基本スタジオの方針を尊重している。
 HINOのターゲット層については,全ジャンル,全年齢層を見据えているという。HINOは,怪物に持ち上げられたり,捕まえられたりするが,殺すという描写や血が出るといった描写はない。
 そのため,幅広い層に届けるための動きもしているところだそうだ。

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