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【西川善司】鍵は「磁性流体」にあり? 西川善司,「PS5」のゲームパッドを予想してみる
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印刷2019/12/17 17:00

連載

【西川善司】鍵は「磁性流体」にあり? 西川善司,「PS5」のゲームパッドを予想してみる

西川善司 / グラフィックス技術と大画面と赤い車を愛するジャーナリスト

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(善)後不覚

blog:http://www.z-z-z.jp/blog/


 久々となるボクの連載ですが,今回は,大胆にも次世代のPlayStation「PlayStation 5」(以下,PS5)に付属するゲームパッド(コントローラ)がどのようなものになるのか,予想してみたいと思います。


PS5の新ゲームパッドはハプティック技術とアダプティブトリガーを採用


 2019年の4月から,ソニー・インタラクティブエンタテインメント(以下,SIE)は,PS5に関する情報を小出しにしてきました(関連記事)。
 2019年10月8日にSIEは,それまでは次世代PlayStationと呼ばれていた次期ゲーム機がPS5という名称に決まったことを発表しましたが,その発表文には,PS5で使うゲームパッドに関する情報も書かれていました。発表文をそのまま引用してみましょう。

●コントローラー
  • ハプティック技術搭載
  • L2・R2ボタンに抵抗力を感じさせるアダプティブトリガーを採用

 SIEによる発表と同じタイミングで,アメリカのメディアであるWiredが,公式取材の形で「Exclusive: A Deeper Look at the PlayStation 5」(特報:見えてきたPlayStation 5の姿)という記事を掲載しました。
 この記事では,新ゲームパッドにおけるハプティック技術とアダプティブトリガーについて,インプレッションと簡単な解説が書かれています。

 まず,ハプティック技術については,「かなりきめ細かな振動制御が行えている実感がある」とのこと。また,「ボイスコイルモーターが採用されている」という記述もあります。
Joy-Conが内蔵していたハプティックリアクタ
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 ボイスコイルとは,回転ではなく一次元的な動きをするリニアモーターの一種ですから,このタイプの振動素子で幅広い振動周波数特性を持つものと言えば,アルプスアルパイン(旧アルプス電気)の「ハプティックリアクタ」が挙げられます。ハプティックリアクタは,Nintendo Switch(以下,Switch)のゲームパッド「Joy-Con」における「HD振動」機能に採用された振動素子なので,PS5の新ゲームパッドに採用されたとしても,なんら不思議なことではありません。

 なお,2016年に発表となったHD振動世代のハプティックリアクタは,「2共振タイプ」と呼ばれるもので,出力振動周波数が150〜330Hzでした。それが2018年に発表となった新バージョンになると,振動周波数が100〜570Hzと,ダイナミックレンジが広げられています。

SwitchのHD振動に使われているアルプスアルパインのハプティックリアクタ(左)と,その進化型(右)の展示
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ゲーマー向け入力デバイスにおけるフォースフィードバック技術の採用は20年以上前から続いている。とくにMicrosoftは早くから採用していた。写真は,同社が2000年に国内発売したジョイスティック「SideWinder Force Feedback 2」である
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 一方,アダプティブトリガーについては,Wiredの記事に「トリガーボタンに多段階の反発力を与えるもの」という説明があることから,何らかのフォースフィードバック技術をトリガーボタンに組み込んだようです。
 フォースフィードバック技術を採用したゲーム用入力デバイスは,1990年代初頭から存在しますので,それ自体はありふれたものという印象がありますが,どうしてどうして。DUALSHOCKのようにコンパクトサイズのゲームパッドに従来型のフォースフィードバック機構を入れ込むのは大変だろうな,と思ってしまったのです。


ゲームパッドにフォースフィードバック機能をどう載せるのか


 反力抵抗を生じさせるタイプの入力デバイス向けフォースフィードバック機能は,電動の回転モーターとギアから構成されています。DUALSHOCKサイズだと,搭載できるモーターの出力は限られますし,2つのトリガーボタンに対して独立したフォースフィードバックを生成するとなると,電動モーターとギアのセットを2つ組み込まなければならず,いろいろと大変そうです。
 そんなわけで,一連の報道を見てから「小さなゲームパッドで,場所も取らずにそれなりの反力抵抗が出せるものってなんだろう」と考えていました。

開催20周年を迎えた2019年のCEATEC
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 そんなタイミングで,10月中旬に幕張メッセで行われたデバイス関連展示会の「CEATEC 2019」に足を運んだところ,興味深いものを見つけました。
 CEATECというイベントは,地味ながらも面白い展示が多いので,毎年出かけています。Switchが発売される前に,「HD振動で使っているのはこれか」と気付かせてくれたのもCEATEC 2016でした。

CEATEC 2016のアルプス電気(当時)ブースで披露されていたハプティックリアクタもデモ用デバイス(左)。右はコップから水を垂らす振動を感じさせるデモ。当時,まだ正体が明かされていなかったHD振動は,「これかもな」と確信させるデモだった
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 2日間通ったCEATEC 2019ではいろんな展示を見ましたが,PS5のアダプティブトリガー機能につながるヒントになりそうな展示をしていたのは,これまたアルプスアルパインでした。
 同社のブースでは,HD振動で使われているハプティックリアクタを大型化した新型版のほかに,新開発の「ハプティックコマンダー」なる技術も参考出展していました。

CEATEC 2019で披露された新型のハプティックリアクタ(左)。かなり強い振動を作り出せる「Heavy Type」で車載向けの応用を訴求しており,右はカーナビを模したデモ機による展示の様子だ。画面上のボタンを押すとハプティックリアクタがさまざまな触感を再現する
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 ハプティックコマンダーは,ツマミを回すだけの簡単な体験デモでしたが,「完全にロックされた状態」「多段階の機械式ギアを回転させたような反力感」「短い一定間隔ごとに抵抗が強くなるような感覚」を再現できていて,興味深いものでした。

ハプティックコマンダーのデモ環境(左)と,デモ環境のツマミ部分(右)。ただのツマミが,プログラムによる反力抵抗によって異なる感覚を再現できる
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 筆者の興味をそそったのは,ツマミの軸受けにメカニカルなギアは一切使っていないという点でした。担当者の説明によると,反力抵抗感の再現には,磁性流体技術を利用しているとのこと。それを筆者は,稲妻に撃たれたように「ああ,この手があったか!」と思ったのでした。


磁性流体とは?


磁性流体のサンプル。写真は栗本鐵工所が開発した「SoftMRF」である
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 磁性流体(Magnetorheological fluid:MRF,またはMagnetic Fluid:MF)とは,フェライト(酸化鉄セラミック)のような磁性微粒子と,ポリオレフィンのような液状溶媒でできている液状の素材で,磁力によって粘度が変わる特徴を持っています。簡単に言えば,磁力の強弱で粘度を変えられる液状の素材です。
 ちなみに,磁性微粒子における粒子径の違いで,MRFとMRを異なるものと分類することもあるそうで,MFのほうが,MRFよりも粒子径が100倍以上小さいとのことです。
 磁力で粘度を変えられるということは,電磁石を用いて磁力の強さを制御することで粘度を多段階に制御することが可能になります(関連記事1関連記事2)。磁性流体はその特性上,基準状態から数百倍の粘度を出すことも可能で,自動車のサスペンションやクラッチ,ブレーキなどにも応用されています。

 ツマミのデモでは,一般的な車載電源で駆動する電磁石の力で,力を込めて回してもツマミがまったく回らないくらいの反力を実現できていたので,ゲームパッドが内蔵するバッテリー程度の電力でも,ボタンを押す指にそれなりの反力を生み出す用途にはこと足りそうです。
 また,回転モーターとギアの組み合わせで出力する従来方式のフォースフィードバック手法より,圧倒的にレスポンスが速いのもポイントです。磁力を変化させてから粘度が変化するまでの応答速度は,わずか数ミリ秒なので,60fpsのゲームにおける1フレーム未満で,抵抗の強弱を作り出せます。

 アルプスアルパインのブースで,こんな妄想した筆者は,ハプティックコマンダーの展示担当者に,「この磁性流体系の技術って,小さなゲームパッド用の反力・抵抗生成に使えますかね」と質問してみました。すると担当者は,「ああ,できると思いますよ」と即答。あまりにも回答が早かったので「実際にやっているところってあったりします?」とさらに突っ込んで訊いてみたところ,笑いながらはぐらかされてしまいました。


すでにゲームでの応用事例もある磁性流体


釣りVR GIJIESTAのイメージ。釣り竿型コントローラのリール部分に,磁性流体を使ったハプティックデバイスを使っていたという
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 いろいろと調べて見たところ,磁性流体をゲーム向けの入力デバイスに応用した事例がすでにありました。それは,バンダイナムコがVR ZONE SHINJUKUで運用していたVRアクティビティ「釣りVR GIJIESTA」(以下,釣りVR)で使われていた釣り竿型コントローラでした。
 VRでの釣り体験で魚がかかると,プレイヤーは釣り竿に取り付けられているリールのハンドルを回すことになるのですが,かかった魚の動きに合わせてハンドルの回転抵抗が変化します。この回転抵抗を表現するのに磁性流体が使われていました。

 さらに調べて見ると,釣りVRに使われていた磁性流体式フォースフィードバック技術は,栗本鐵工所の「SoftMRF」を応用していることが分かりました。SoftMRFは,まさにVR機器やゲームなどへの応用も想定したハプティックス用途への展開も想定して開発した磁性流体技術だそうですから,なんとなく筆者の予想がだんだん「当たらずとも遠からず」となってきた実感がします。
 はたして,実際はどうなのか,筆者の予想は当たるのかどうか,じっくりと答え合わせができる時を待ちたいと思います(笑)。

■■西川善司■■
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テクニカルジャーナリスト。「ゲーム制作者になるための3Dグラフィックス技術 改訂3版」(※リンクはAmazonアソシエイト,以下同)が12月20日に発売となる西川氏。2009年発売の初版から,2013年発売の増補改訂版を経て,2度目の改訂版となる。専門学校や大学での参考書となっているため,ロングセラーになっているという書籍で,新刊では「トゥーンシェーディング」に関する新章や,「リアルタイムレイトレーシング技術」「DirectX 11.1以降のDirectX」の解説など,100ページ以上の増ページになっているとのこと。改訂3版は電子書籍版も同時発売となるので,興味ある人はぜひご一読を。
 なお,本書の読者プレゼントも予定しているので,週末のWeekly 4Gamerをお見逃しなく。

  • 関連タイトル:

    PS5本体

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