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印刷2023/05/18 19:45

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CMON Japan本格始動。ディレクター健部伸明氏に聞く,今後の展開と製品戦略,そしてゲーム翻訳へのこだわり

 2023年5月13日と14日に開催されたゲームマーケット2023春に,CMONの日本法人にあたるCMON Japanがブースを出展していた。

画像集 No.001のサムネイル画像 / CMON Japan本格始動。ディレクター健部伸明氏に聞く,今後の展開と製品戦略,そしてゲーム翻訳へのこだわり

 CMON Japanが設立され,4Gamerでも記事として取り上げたのが2022年10月のこと(関連記事)。同月に開催されたゲームマーケット2022秋でも,会場に居合わせた同社のディレクター・健部伸明氏へのインタビューを掲載したが,その全貌はこれまで明らかにされてこなかった。

 しかし今回の出展では多くの新作タイトルのお披露目が行われ,さらに「ゾンビサイド2.0」のクラウドファンディングが当日発表されるなど,一気に新情報が飛び出してきた。今回のゲームマーケット開催をもって,いよいよCMON Japanが本格始動したわけだ。
 そんなCMON Japanの健部氏に,会場で再び話を聞けたので,本稿ではそのインタビューをお届けする。新作ラインナップや今後の展開に加え,グローバルに展開するCMONならではの施策,また氏の“ゲーム翻訳”に対する想いを聞いている。ボードゲームファンの読者はぜひご一読いただきたい。

CMON Japanの隣には,健部氏が代表理事を務めるヤポンブランド(リンク先は外部サイト)のブースも設置されていた
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CMON JAPAN 公式サイト



モーツァルトの死後を描く「ラクリモーサ」など,新作盛りだくさんのCMON Japan


4Gamer:
 2022年11月に発表された所信表明(リンク先は外部サイト)から約半年,CMON Japanの製品がいよいよ世に出てきました。これからどんな動きが始まるのか,今日は聞かせていただきたいと思っています。

健部伸明氏
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健部伸明氏(以下,健部氏):
 見てのとおり,盛りだくさんのコンテンツを用意しています。あの所信表明の意図するところは,つまり「感情を揺さぶるような“エモい”ゲームを出したい」ってとこに集約されるんですね。それを実現するために,仕込んでいた企画がやっと見せられる形になりました。それが今回のCMON Japanブースなんです。

4Gamer:
 すでに発表済のものもありますが,今後はどんなスケジュールでタイトルをリリースしていくのでしょうか。

健部氏:
 5月に「カラー・フラッシュ」,6月に「ラクリモーサ」,7月に「ウルヴズ」,8月に「インペリアル・マイナーズ」,9月に「ブック・オブ・タイム」と,順番に毎月発売していく予定です(リンク先は外部サイト)。10月には「ホワイト・キャッスル」が,Essen Spielへの出展と同時に日本含む全世界で発売を目指しています。「ゾンビサイド2.0」は昨日(5月12日)がプレローンチで,正式なクラウドファンディングが23日に開始となります。

「ウルヴズ」
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「ブック・オブ・タイム」
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「ゾンビサイド2.0」
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 CMONの新作ボードゲーム「ゾンビサイド2.0」のクラウドファンディングが,Kickstarterにて2023年5月23日に開始されることが明らかとなった。Kickstarterのページはまだオープンしていないものの,支援者には多数の特典が用意されているとのことなので,楽しみにしておこう。

[2023/05/15 21:32]
4Gamer:
 月イチでの発売は,お財布へのダメージが少なくて,個人的にも助かります(笑)。「ゾンビサイド2.0」のクラウドファンディングのような施策は,ほかにも用意されているのでしょうか。

健部氏:
 本家のCMONはクラウドファンディングが得意な会社なので,そのノウハウを活かした商品展開をしていく予定です。「ゾンビサイド2.0」のような大きなタイトルでは,年に数回のペースでクラウドファンディングが実施できればと思っています。

4Gamer:
 今回お披露目が行われたタイトルの中で,イチオシのタイトルはありますか?

健部氏:
 「ラクリモーサ」ですね。これはもう,テーマがすごくエモいんですよ。パッケージイラストがモーツァルトなんですけど,このゲームは彼が急死してしまった直後から始まります。プレイヤーはモーツァルトの弟子である2人をパトロンとして支援することで,未完だった「レクイエム ニ短調」を完成させていくことになります。

「ラクリモーサ」
画像集 No.008のサムネイル画像 / CMON Japan本格始動。ディレクター健部伸明氏に聞く,今後の展開と製品戦略,そしてゲーム翻訳へのこだわり

4Gamer:
 気になる導入です。プレイヤー自身が弟子というわけじゃないんですね。

健部氏:
 はい。というのも,プレイヤーにはそれ以外にも仕事があるんですよ。それはモーツァルトの伝記を作ることで,彼の妻であるコンスタンツェの執筆を助けるために,モーツァルト本人と長らく付き合いのあったパトロン達は,過去のエピソードを語っていくんですね。
 メインボードの上部がヨーロッパの地図になっているんですが,各都市での思い出を語ることで勝利点が獲得できます。そうして伝記が完成したとき,最も記述の多いプレイヤーが勝者になるんです。

4Gamer:
 なるほど,エモいですね。

健部氏:
 そうなんです。まずゲームの構造からしてエモくて,伝記を執筆するボード上部が過去,作曲するボード下部が未来を示しているんです。で,それが同時に進行していって,ゲームが終わる第5ピリオドに“現在”にたどり着く。当然,そこには語るべき思い出もなくて,ただ勝利点を示す空白のカードだけが提示されるんです。つまり,すべてが語られた後の沈黙を,この空白が示しているわけです。

4Gamer:
 おお……。

健部氏:
 何も語られないのに,勝利点は入手できる。コンスタンツェとパトロンが,黙して思い出に浸るのみの空白に感じ入るものがあって……思わず泣いてしまいそうになります。

4Gamer:
 そう聞くとナラティブ寄りのゲームのように思えますけど,実際はどうなのでしょうか。

健部氏:
 これがゲーム部分もよくできていまして。基本は手札から2枚のカードを選んで,「上」か「下」のアクションをプレイする「グルームヘイヴン」方式なんですが,5ピリオド=20ターンで必ずゲームが終わります。その中でデッキ構築をしたり,マジョリティ争いをしたりという感じですね。すべての要素が「モーツァルトの死後」というテーマに結びついていて,ゲームとしての纏まりも良い。昨年のEssen Spielで注目を浴びたのも頷ける傑作だと思います。

4Gamer:
 6月の日本語版が楽しみになりました。

健部氏:
 用語についてもプロの音楽家に監修いただいたので,日本語版でも“正しいクラシック用語”になっています。登場する楽曲も検索すれば聴けると思うので,ぜひ合わせて楽しんでほしいですね。

「ラクリモーサ」
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日本のプレイヤーが求める製品を,遊びやすく届けること


4Gamer:
 クラウドファンディングの話に戻りますが,CMON Japanの設立が発表されたとき,これからはCMON主催のクラウドファンディングで,日本語もサポートされるものだと思っていました。ですが実際はそうではなく,依然として海外のみが対象です。これは今後も変わらないのでしょうか。

健部氏:
 先日発表された「Zombicide: White Death」(リンク先は外部サイト)(以下,White Death)の件ですよね。同作の日本語化について,現状ではお話できませんが,CMON Japanはあれにもしっかり関わっています。

4Gamer:
 というと?

健部氏:
 具体的には,日本出身のキャラクターといった日本的な要素の監修です。あまりにもおかしな部分は直しつつ,海外で人気の“間違った日本観”は残す,といった具合です。日本語版の同時展開はできませんでしたが,ノータッチのままということはないので,そこは今後にご期待ください。

4Gamer:
 それを聞いて安心しました。では,今後のクラウドファンディングでは,日本語がサポートされる可能性もあるわけですか。

健部氏:
 原語版と一緒に日本語のプロジェクトを走らせるか,それとも日本語版のプロジェクトを個別に立ち上げるかは状況次第ですね。もちろん一緒にやる可能性もありますが,断言はできません。

4Gamer:
 何か基準があるのでしょうか。

画像集 No.010のサムネイル画像 / CMON Japan本格始動。ディレクター健部伸明氏に聞く,今後の展開と製品戦略,そしてゲーム翻訳へのこだわり
健部氏:
 まず,CMONは各地域に組織があるのですが,ざっくりCMON AsiaとCMON Globalの二つに分かれています。CMON Asiaはタイや中国や日本に支部を持っていて,一方CMON GlobalはAsmodeeと提携しつつ,アメリカやヨーロッパで展開しています。つまり一口にCMONといっても,実体は一つではないんですね。新製品の展開にあたっては,各地域と折衝のうえベストな形式を探すことになるので,常に日本語が乗るというお約束はできません。

4Gamer:
 なるほど。

健部氏:
 それにCMON Japanとしても動かせる人手は限られるので,結果的にタイミングがズレることもあるでしょう。想像してもらえれば分かると思いますが,「White Death」の日本語版を走らせながら,日本語版「ゾンビサイド2.0」のクラウドファンディングを運営して,さらにほかのタイトルの日本語化作業も進めるのは,ちょっと難しい。

4Gamer:
 確かにそうですね。となると,日本語版が遅れるのは必然に思えてきました。

健部氏:
 もちろん体制が整って「タイミング的に日本も行けます」となったら,同時にクラウドファンディングをやることもあるはずです。場合によっては全世界同時リリースが目標の「ホワイト・キャッスル」のような形態を取ることも,あるかもしれない。そこは各地域との折衝と,同期の取り方次第ですね。

4Gamer:
 同時でなくとも,日本語版がリリースされるだけありがたいのも確かですけど。では,これまでに販売された英語版の商品はいかがでしょうか。

健部氏:
 英語オンリーのものはオンラインで日本語ルールPDFを公開する予定です。すでにテキストが翻訳済のものもありますが,キチンとレイアウトを調整しないと読みにくいですからね。一定数の翻訳が完了したらまとめて公開したいと思っています。

4Gamer:
 海外タイトルでは,日本語版ルールが公開されないことが多いように感じています。CMON Japanでこれが可能なのは,なぜなのでしょうか。

健部氏:
 それは簡単な話ですね。並行輸入業者を介して原語版を買って,公開されている日本語版ルールを参照されてしまうと,日本語版を販売する業者が損をしてしまうんですよ。お客さんが1000人いるとして,うち300人が英語版を輸入した場合,700部しか売れないということになります。
 対してCMONはグローバル企業なので,どこで買おうがCMONの利益になります。CMON Japanの利益が減ったとしても,総体としてはプラスなわけですから問題ないわけです。

4Gamer:
 なるほど。だからカードテキストが重要なタイトルでは日本語のルールブックが公開されていたりするんですね。

健部氏:
 ルールだけ分かっても遊べないものは,輸入版を購入しても仕方ないですからね。

4Gamer:
 先ほどCMON GlobalはAsmodeeと提携しているとの話がありましたが,そのお陰かCMONのタイトルが「ボードゲームアリーナ」(以下,BGA)に収録されるケースが増えたように感じています。CMON Japanではこうしたデジタル化についてどのようにお考えですか。

健部氏:
 そこまで手が回っていない,というのが現状ですね。去年所信表明をして,やっと製品をお披露目するところまでこぎつけた状況なので。やるべきことが山積みになっているので,BGAへの対応も「決めてない」というのが回答になります。

4Gamer:
 将来的にはあるいは,という理解でよいのでしょうか。

健部氏:
 そうですね。お話したとおり,BGAはCMON Globalの管轄なので,本腰を入れるならGlobalと話し合いをすることになります。実は今回のゲームマーケットにもCMON各地域の担当者が来ていて,話し合いはしているんですよ。とはいえ,順番というものがあります。まずは日本のお客さんに,求められている製品をちゃんと届けることを優先したいですね。

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4Gamer:
 CMON製品の日本語版は,これまで複数のパブリッシャから発売されてきました。そうした作品を一覧できる場所があると助かるのですが,そのようなお考えはありますか。

健部氏:
 各社の考え方があるので難しくありますが,我々としてはそこに境目を作る気はありません。今回のブースにも,サニーバードさんやホビージャパンさん,ケンビルさんから出版されたCMON製品が展示されていますし,販売の面で協力しあうのは,CMONはもちろん各パブリッシャやお客さんにとっても有益なことだと思います。なので,追々は実現したいところですね。

4Gamer:
 伺っていると人手が足りていないように感じてしまいますが,CMON Japanとしてスタッフを募集したりといった計画はないのでしょうか。

健部氏:
 もちろん人手は欲しいですが,ボードゲームの翻訳はただ英語ができるというだけでなく,ゲームをよく知っている必要があります。そもそも,元となるルールブックが不親切なことも少なくないですし,CMON Japanではそうしたものも含めて遊びやすいように調整しています。だからハードルはけっこう高いと思いますよ。

4Gamer:
 調整というと,例えばどんなものでしょうか。

健部氏:
 “概念はあるのに用語が定義されていない”ものに適切な名前をつけてテキストを圧縮したり,原語の単語とイメージが合わない用語は,訳語として正しくても修正したりとかですね。

4Gamer:
 それは大変そうですね……。

健部氏:
 ボードゲームの翻訳とはそういうものですし,そうであるべきなんです。そこに織り込まれた文化を含めて正しい形で伝えるためには,実際に遊んでみなくちゃならないし,右から左に訳せばいいというものでもない。これからボードゲームの翻訳者を志す人には,その辺りも含めて,ぜひ頑張ってみてほしいですね。

4Gamer:
 なるほど。……これは純粋な疑問ですが,それでもなおエラッタ(ここではルール表記のミス,およびその正誤表の意)が出るのはなぜなのでしょうか。

健部氏:
 各メーカーとも,エラッタが出ないよう気をつけて校正していると思います。実際,ルールや例外処理が少ないアブストラクト的なゲームであれば,挙動の全検が可能なのでエラーを極限まで減らせるでしょう。しかしルールそのものやカード,キャラクター,シナリオなどが多いストーリー系のゲーム,あるいはインタラクティヴ性が高いタイトルの場合,ゲーム上で起こりうるすべての挙動を事前に完璧に確認するのは,残念ながら人間には不可能です。従ってどうしてもエラーは出てしまう。その場合は,可能な限り迅速にお知らせするよう努めています。

4Gamer:
 公式サイトでのサポートが充実していると,プレイヤーとしてはとても助かります。

健部氏:
 CMON Japanの公式サイトでは,そういった部分も拡充していく予定です。エラッタはもちろんですが,日本語版独自のサマリーを公開することも計画しています。

4Gamer:
 今後の展開に期待しています。本日はありがとうございました。

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