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[インタビュー]ゲーマーよ見てくれ,これがソリティアと競馬の結晶だ! 「ソリティ馬 Ride On!」開発者に聞く誕生秘話
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印刷2023/01/24 15:24

インタビュー

[インタビュー]ゲーマーよ見てくれ,これがソリティアと競馬の結晶だ! 「ソリティ馬 Ride On!」開発者に聞く誕生秘話

 ゲームフリークが贈る「ソリティ馬 Ride On!」が,Apple Arcade向けに2023年1月20日に配信された。

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 本作はトランプゲームの「ソリティア」と,競馬育成ゲームを融合させた「ソリティ馬(ば)」シリーズの最新作で,レースシーンが3D化されるなどさまざまな進化を携えての出走となった。

 今回は配信を記念し,ゲームフリーク「ソリティ馬」ディレクターの田谷正夫氏に話をうかがってきたので,その模様をお届けする。



■「ソリティ馬」とは?
 プレイヤーは新米ジョッキーとなり,さまざまな馬に騎乗しながら,競馬レースでの勝利を目指す。

 主人公は「ソリティア」がウマいこといくと,馬がよく走るという能力(?)を与えられたらしく,レース中に「ソリティア」をプレイしながら勝負に挑んでいく。そうして馬の“折り合いパワー”をため,コース上でのいいポジションを取りつつ,ゴールへと駆け上がるのだ。

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「ソリティ馬 Ride On!」ダウンロードページ



「ソリティ馬」の新たな馬場は,Apple Arcade!


――「ソリティ馬」は2013年7月にニンテンドー3DS用ソフトとして発売されて以来,根強いファンが多く,復活を望む声も多かったかと思います。それが9年ぶりに復活した経緯と,サブスクリプションサービスのApple Arcadeでリリースすることになった理由を聞かせてください。

田谷正夫氏(以下,田谷氏):
 「ソリティ馬 Ride On!」よりも以前,スマートフォン版をリリースしたことがあったのですが,ぶっちゃけますとビジネスとしてあまりうまくいかず,短期間でクローズさせてしまいました。
 そのころはどうにか,ゲームシステムを無料で遊べるフリー・トゥ・プレイ方式に適用させようと思ったのですが,肝心のF2Pに関する経験値や適性が自分にはあまりなかったのも失敗の一因でした。

――スマホ版は2015年12月にサービス終了とのことで。

田谷氏:
 うまくいかなかった悔しさはずっとありましたし,SNSで「ソリティ馬を復活させてほしい」という声をチラホラ見かけるたび,自分としても「新しい形でできないか」という考えが頭の片隅によぎりました。
 ただ,それ以外にも楽しい業務というのはいっぱいございまして,長らく「ソリティ馬」にガッツリ取りかかることができずにいたのですが,日本でサブスクリプション形式でゲームを提供する「Apple Arcade」のニュースを聞くようになり,流れみたいなものを感じたんです。
 アプリ内の課金はいっさいなしで,それほど高くはない定額料金でずっと遊んでもらえるようであれば,3DSの売り切りソフトとして発売していたときと近い感覚で遊んでいただけるかもしれない。そこに可能性を感じて,Apple Arcadeでの再起を目指しはじめました。

――先んじて「ソリティ馬 Ride On!」を遊びましたが,いわゆるスタミナなどを気にせずどんどんレースに挑めるので,Apple Arcadeとの相性のよさは実感できました。ちなみにゲーム内容としては,従来作品から大きく変化している部分はなんでしょうか。

田谷氏:
 レースを3D化したところが一番の変化です。
 オリジナル版では3DS特有の2画面を用いましたが,以前のスマホ版では2画面分の情報を,さらに小さな1画面に落とし込むのに手を焼きました。そのためレースシーンだけは2画面分の情報が必要だとなり,かなり強引だったのですが,3DSで言う上画面を表示するモード,下画面を表示するモードを切り分け,ボタン切り替えで遊ぶ形にしたんです。

――スマホ版は疑似的な2画面形式だったのですね。

田谷氏:
 ですが,「ソリティ馬 Ride On!」ではレースシーンを3D化したことにより,より多くの情報を映し出せるようになりました。
 馬が走っているとコーナーのカーブが見えてきたり,馬と馬の位置関係によって通ろうと思ったところが通れなかったり,ときには進路が塞がれたりします。そうした3D表現ならではのメリットを生かすことで,うまいこと1画面に統一できたのはゲーム的にも大きいです。

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――確かに,おウマさんが囲まれている状況が見ただけで分かりますし,臨場感もありますよね。逆に,シリーズとして継承した部分は?

田谷氏:
 ソリティアのルールに,あまり余計なものを混ぜないことです。
 ソリティアをやっているときは,それだけに集中してもらえるよう,プレイの仕組みを複雑にすることなく,それでいてソリティアの楽しさを十分に味わってもらえるようにと工夫しました。

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――そもそものお話なのですが,ソリティアと競馬をかけ合わせるというアイデアはどのようにして生まれたのでしょう。

田谷氏:
 まず,僕は元々競馬ファンでして,中学生ぐらいのころに「ダービースタリオン」にドはまりしていたタイプでした(笑)。
 そしてプログラマーになってからも当時の思い出をなんとなく覚えていて,「今ならダビスタみたいなプログラムを作れる気がする」と思ってやってみたところ,わりと実現できてしまって。その手応えから,僕にも競馬ゲームを作れるんじゃないかという野望を抱いたんです。
 そして競馬に“カードゲームを付け足す”みたいなことを考えて,社内で発表しました。まあ,当時はあまりいい反応ではなかったです(笑)。あのころは現在のように新規IPに注力する流れでもなかったので,あくまで「よかったね」といった所感で終わってしまいました。

――企画の立ち上げにはなかなか結びつかなかったのですね。

田谷氏:
 それがあるとき,iPhoneが一般的になったころですね。僕の同僚の一之瀬(一之瀬剛氏)という,コンポーザーとして「ポケットモンスター」のBGMを長年作っている男がいるんですけど,彼が「このソリティアって面白いよ」とあるアプリを教えてくれて,「田谷くんの競馬ゲームにこれ使えないかね?」ってささやいてきたんですよ。
 そこまで言うならと,僕もどんなもんだろうと当のソリティアアプリを触ってみたら,これまたハマってしまいまして。シンプルな遊びなのに奥深くて,これならもしかしたら僕の競馬ゲームに活用できるかもと思わせてくれました。ちなみに「ソリティ馬」に搭載しているソリティアのルールは,そのアプリとほとんど同じにしています。
 それから一之瀬を誘い,当時はタイトル未定だったものの「競馬ゲームを作りませんか?」と社内に一声かけ,メンバーを募りました。

――天啓ならぬ一之瀬さんのささやき! そこから動き出したと。

田谷氏:
 そのころちょうど,ゲームフリーク内で“ギアプロジェクト”という制度ができたのも大きかったです。
 これは誰かのアイデアに対して,賛同するスタッフが合計3人いれば,「プロトタイプ作りたいです」と社内申請することで業務中に制作していいという制度なんです。これを利用して試行錯誤し,七転八倒しながらも作ったのが初代「ソリティ馬」でした。

――ステキな制度ですね。3DS版の経験者は今回のRide Onもすんなり遊べそうですが,初めて遊ぶ人に向けて意識したことはありますか。

田谷氏:
 チュートリアル中のテキスト量をできるだけ減らし,実際に操作しながらでもなんとなく覚えられる,という作りを心がけたところです。それと文字をたくさん読まなくてもゲームルールが理解できるよう,画面だけで直感的に分かってもらえるUIデザインも追求しました。
 これらに関しては,3DS版のころから「チュートリアルをもっとテンポよく作るべきだった」という反省があってのことです。

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――その一方で,読んで楽しいテキストコンテンツとして,競馬を知らないであろう人たちに向けたTIPSも豊富ですよね。

田谷氏:
 そのあたりは3DS版のころからおなじみの要素で,競馬を知らない人にもゲームをやっているうちに競馬のことを分かってもらえて,「面白そうだな」と思ってもらいたかったからです。ソリティ馬には一貫して,そういった裏テーマみたいなものがありました。
 私も一之瀬も競馬ファンで,「好きだから競馬ゲームを作りたい!」の勢いでここまできたところもありますし。ソリティアが好きとか,かわいい感じだからとか,ゲームフリークの作品だから遊んでみようとか,そういったフックから遊びはじめていただいた方々に,ソリティ馬をとおして競馬に興味を持ってもらえたらなによりです。

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――全体的に親しみやすいビジュアルですし,なによりおウマさんたちがかわいらしいですよね。3Dモデルもこだわりましたか?

田谷氏:
 基本は3DS版に出ていた馬をそのまま3Dに起こしたんですけど,3Dモデルではいろいろなアングルから馬体を映すことになるので,2Dでは見えていなかった後頭部などもあらためて思案しました。
 そういう細部でもかわいさを出せるよう,納得いくまで描きました。

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――おウマさんの頭のボリューム感,あれいいですよね。

田谷氏:
 あと,実際に3Dでモーションをさせてみると,2Dのときは許されていたデフォルメ感が目についたりもしました。稼働箇所をもっと滑らかにするなどし,そうした不自然さの解決にも注力しました。本作に限らず,2Dのゲームを3D化したときのあるあるでしょうね。
 そのうえで,実際のリアルの競馬ではこのゲームのようなフォルムの馬は走っていないのですが,「実際に走っていても不思議じゃないかな」と感じてもらえるような自然さをイメージしています。

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――ところで,主人公と先生こと「まえかわ調教師」のやり取りが楽しいのですが,なぜ関西弁なのでしょう。関西の厩舎が舞台なんですか?

田谷氏:
 いや,関東です(笑)。背景美術のための写真は,美浦のトレーニング・センターに撮りにいったりしましたし。
 台詞がやたらと関西弁なのは,私の本能的な感覚のせいですね。ああいうコミカルなかけ合いは,関西弁のほうが柔らかい感じがしていいかなと思ったんです。同じ意味合いでも,標準語だとヘコむと言いますか,厳しい感じが出てしまいそうなところ,関西弁だと「あかんがな!」みたいな雰囲気で伝えられるので,受け取る側もヘコまないで済むかなと。

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――なるほど,確かに口調のおかげで必要以上にヘコまずに済んだ気もします。これらのテキストも田谷さんが考えているのでしょうか。

田谷氏:
 そうですね。テキストはすべて私が書いています。

――軽快なテンポで,たまにクスッと笑える“田谷ワールド”も魅力に思えました(笑)。とはいえ,できればレースに勝ってまえかわ先生に褒めてもらいたいのですが,初心者向けのアドバイスはありますか。

田谷氏:
 うーんと,そうですねえ。ソリティアは時間制限があるからこそ面白いという所感がありますが,「焦らずにじっくり考えてください」と言っておきます。あと,本シリーズのGIレースはとても難しいのですが,諦めずに挑戦してみてください。
 GIに勝つというのはものすごいことで,大変なことなのだと分かってもらいたいがための作りなんですが。おそらく,競馬好きにしかピンとこないかもしれませんので……。

――実際,ちょっと難しいですね……(笑)。競馬をあまり知らない人だと,いきなり高難度に感じてしまう可能性はあるかもと。

田谷氏:
 GIって,勝てば賞金1億円がもらえちゃったりする世界なんです。1万頭の馬がいて,そのうちの1頭が勝てるかどうかみたいな世界。それをポンポン勝てたら,競馬ファンからしたら変な話ですから!
 と言いつつ,スマホ版もGIをすごく難しい設定にしていて,「これ勝てないじゃん」とやめてしまう方々がいらっしゃったくらいなので,さすがに本作ではマイルドにしていますが,それでもですね……(笑)。

――何回かGIで勝てましたが,出走馬が強くて油断できませんよね。

田谷氏:
 はい,そのバランスは今回も保とうという判断でした。
 GIはリアルでも大変なレースだから,ゲームでも難しい。そういう心構えを持って挑戦してもらえるとうれしく思います。

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――ときに,GIに合わせてレースのサポートアイテムを温存できればと思ったのですが,“みこま商店”でアイテムを買っても自動で使用されてしまいます。これがルールの原則でしょうか?

田谷氏:
 そうですね。好きなタイミングで使えるアイテムは,ログインボーナスなどで配ったアイテムなどに限定しています。

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――そのぶん,使うも集めるも貴重に感じると。毎日プレイするモチベーションにもつながるわけですね。そして少し気が早いのですが,今後のアップデートの構想などもあればお聞かせください。

田谷氏:
 現時点で「こういう機能を追加します」というお話はできませんが,プレイヤーの皆さまの反応を見つつ,より遊びやすく,魅力的なコンテンツを追加していければと思っています。

――プレイヤーの盛り上がりで,さらなる新作につながったりも?

田谷氏:
 そうですね,本作がどれだけ受け入れられるか次第ですが,可能性はゼロじゃないと個人的に思っています。
 新しいものを作りたいという思いは,ゲームフリークの開発者全員が持っている熱意ですが,まずは本作をしっかりと遊んでもらい,どういう施策なら皆さんに喜んでもらえるかを検討していきます。

――ソリティ馬ファンや,思わずハマッてしまうであろう新規プレイヤーのためにも,今後の展望に期待しております。

田谷氏:
 今後とも「ソリティ馬 Ride On!」をよろしくお願いいたします!


恐るべき中毒性!
「ソリティ馬 Ride On!」をプレイして


 インタビューに臨むために,先駆けて「ソリティ馬 Ride On!」をプレイしてみたのだが,起動後……気付けば3時間が過ぎていた
 このゲーム,軽い気持ちで遊びはじめても「もう1レース……」「馬が3歳になるまで……」と,つい出走し続けてしまうのだ。

 時間制限のあるソリティアの緊張感はすぐに病みつきになり,勝てばまたその充足感を味わいたくなるし,勝てなければ「次こそは!」となってしまう。ジョッキーというより,ソリティ馬ジャンキーである。

 それにおウマさんはレースに出ると経験値を得てレベルアップしたり,スキルを閃いたりするので,どう育つかを見届けたくなる。

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 本作におけるソリティアのルールは,場に置かれたトランプに対して,山札から引いたカードの数字が上でも下でもつながりさえすればOK

 マークも関係なく,例えば「ダイヤの10」なら「ハートの9」でも「クローバーのJ(ジャック)」でも取ることができ,取った「10」が場のほかのカードとつながるようならプレイを継続,つながらないなら山札のカードを1枚引いて仕切り直し。そうして山札もしくは制限時間が切れるまでに,場のカードをすべて取れればクリアだ。

 基本的に連続してカードが取りやすくなっているアルゴリズムのようで,つながるときは5枚も10枚も一気にコンボがつながる。操作もタップするだけでパパパッと取れるのが小気味いい。

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 GIなどのハードなレースではソリティアだけでなく,おウマさんの位置取りも超重要だ。本作では,特定区間ごとのソリティアのプレイ結果と,レース中の位置取り操作とが勝敗を分けていく。

 そのため,最後の直線での走りに影響する“気合”をためやすい位置をキープしたいが,引き換えにソリティアの難度が上昇したりする。

 だが,高難度のソリティアでカードを1枚も残さずに取りきるパーフェクトを達成すると,スペシャルな状態“人馬一体”が発動し,周囲の馬を蹴散らして進めるようになる。これまた痛快な瞬間だ。

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 そんなこんなでふと時計を見ると……5時間が経とうとしていた。

 最初のおウマさんが競走馬を引退し,牧場でのんびり過ごしていたところ,2頭目の引退おウマさんが合流する。さらにカップリングが成立すると“ジュニア”が爆誕。新たな競馬人生がスタートする。

 これまで数々の苦難をともにしてきた愛馬たちのジュニアとあり,能力も引き継いでいるとあれば,この子に乗らない選択肢などない。どれだけプレイヤーを画面にクギ付けにするつもりなんだこのゲームは。

毎回「この子なら,GI最多勝いけるのでは……!」と親馬鹿になってしまう。仕方ないのだ
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ジュニアの血統を見ると,パパ・ママである愛馬たちの名前もちゃんと載る。うれしい……
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 「ソリティ馬 Ride On!」は,ソリティアの面白さと,競走馬育成の楽しさを,ゆるりとした雰囲気でいつまでも味わえるゲームだ。

 正直,競馬と同様“ほどほどに”付き合うのが難しいくらいにリプレイ性の高いゲームとなっているが,Apple Arcadeで気軽に遊べるとあって,この魅力をあなたにもぜひとも知ってほしい。

「ソリティ馬 Ride On!」ダウンロードページ

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