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印刷2021/12/06 17:40

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[CEDEC+KYUSHU]サイバーコネクトツーがパブリッシング業務に初挑戦。「戦場のフーガ」の開発・販売で浮き彫りになった課題とは

 ゲーム開発者向けカンファレンス「CEDEC+KYUSHU 2021 ONLINE」の2日目となる2021年11月28日,「自社初パブリッシングタイトル『戦場のフーガ』開発に学ぶ短期開発の課題と対策」と題された講演が配信された。

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 「戦場のフーガ」PC / PS5 / PS4 / Xbox Series X / Xbox One / Nintendo Switch)は,サイバーコネクトツーが2021年7月29日にリリースしたタイトルだ。これは同社にとって初となるセルフパブリッシングタイトルで,小規模かつ短期間でのリリースを想定していたのだが,実際には数多くの問題に直面したという。これらの問題に対し,どのように対策をしていったのか。同社の代表取締役を務める松山 洋氏が登壇し,一連の流れを語った。

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 松山氏によると,「戦場のフーガ」のプロジェクトは2016年に立ち上がったという。この頃はゲームビジネスが大きく変化しており,たとえば流通形態に関しては,これまでの主流だったパッケージ販売に対し,ダウンロード販売の勢いが増してきた時期だったそうだ。ダウンロード販売を利用することでワールドワイドな展開が行いやすくなることもあり,同社にとっても新たなビジネスチャンスとして期待していたそうだ。

 しかし,サイバーコネクトツーは開発に特化したデベロッパーであり,これまで販売業務を行ったことがなかった。そこで,上記の流れを見据えて,“自社パブリッシングかつダウンロード専売”のチャレンジを行いたいという意図で,本プロジェクトが発足した。

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 同社が開発会社として手掛けるタイトルは,200〜300人が2〜3年を掛けるような大規模なものがほとんどだったという。しかし,いきなりそこまで大規模なチャレンジはしたくなかったため,最初は10〜20人が1年半程度で開発できるような,比較的コンパクトなゲーム内容を想定していたそうだ。

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【1】開発作業編


 上記の方向性に見合うタイトルの企画コンペを社内で実施したところ,実に100件近くのアイデアが寄せられたという。だが,社員の多くが大規模なタイトルの開発経験しかなかったこともあるのか,アイデアの大半が想定を超える規模のものだったという。
 そこで松山氏が手本として,同社にとって原点のタイトルである「テイルコンチェルト」(発売元:バンダイナムコエンターテインメント)にインスパイアされたアイデアを紹介。最終的にこれがベースとなって,「戦場のフーガ」として作られることになった。

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「戦場のフーガ」は,獣の子供たちが出会った戦車と共に冒険する,サイドビュー形式のRPGである。この戦車には絶対的な兵器“ソウルキャノン”が搭載されているのだが,これを使うたびに子供が1人消失してしまう。子供を犠牲にして戦うジレンマを抱えながら冒険するという,見た目に反したシリアスさを持ったゲーム内容だ
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 松山氏によると,「戦場のフーガ」を開発するにあたり,社内の若手スタッフを育成したいという思惑もあったとのこと。というのも,同社が多く手掛ける大規模ゲームの開発時は,1人のスタッフがゲーム内のごく一部しか担当できないことが往々にしてある。小規模タイトルの開発時は,多くの方面をカバーしなければならないため,そういった経験を積んでほしいと期待していたようだ。

 ところが,当時の同社は受託タイトルの開発作業がピークを迎えており,「戦場のフーガ」にスタッフを割り当てる余力がなかった。また,パートナー企業へのタスク割り振りや,各プラットフォーム向けのデータ容量の最適化など,作業が多岐にわたることもあり,若手スタッフに任せるのは難しかったようだ。

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 結局,プロジェクトの立ち上げから3年が経過した時点で,開発体制を大幅に変更することになる。社内にいるベテランのプロデューサーを「戦場のフーガ」のディレクターに据えるなど,完成させることを最優先にシフトし,その後は開発作業が順調に進み,無事に完成までこぎ着けたそうだ。

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「戦場のフーガ」の戦闘シーンはサイドビューで,敵味方の戦車などは片方向しか写らない。それならば,ということで見えない側は一切描画しないことで,ポリゴン数を大幅に削減できたそうだ
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開発初期のキャラクターには大量のポリゴンが使われていたが,仮にこれを少なくしても,ゲーム内での見た目がほとんど変わらないことが判明。口の処理はデカールに変更するなど,必要最小限のポリゴンで描画されている
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無駄なデータを徹底的に削減したことで,当初は16〜19GBだったデータ容量が,Switch版では4GB弱程度に収まったという。また,ゲームの開始時に読み込んだ後は,ゲームプレイ中にロードが発生しないようになり,快適に遊べるようになっている
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社内テストプレイを適宜実施し,クオリティを高めていく。規模の大小以外を除けば,同社が普段手掛けている大規模とタイトルと同様の体制で開発が進められていった
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【2】パブリッシング編


 これまでのサイバーコネクトツーはおもに開発業務に専念しており,それ以外の販売等はパブリッシャが行っている。そういったなか,「戦場のフーガ」で初めてパブリッシング(販売)業務を行ったところ,思いも寄らぬ難題に多く直面したという。

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 まずは,ローカライズ作業に関して。同社が手掛ける大型タイトルは,「NARUTO−ナルト− ナルティメット」シリーズを筆頭に多言語展開されることが多いのだが,ローカライズ作業を差し引いても売上に大きく貢献できているという。そこで今回の「戦場のフーガ」でも,最初からワールドワイド展開を視野に入れていたそうだ。

 ところがいざローカライズ作業を行ってみると,ローカライズ後に各国で行うレーティング審査で,やたらと手間が掛かってしまったという。それぞれの国で審査が必要になることはある程度予想できたものの,審査を行う手順が大きく異なったり,プラットフォームによってはストア情報に現地語のテキストも入力しないと審査が通らなかったりと,非常にややこしかったそうだ。しかも,この審査はプラットフォーム別に申請をしなければならず,「戦場のフーガ」は対応プラットフォームが多かったこともあり,より大変な作業になってしまった。

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 また,各プラットフォーマーの担当者の対応や連絡方法もさまざまで,コミュニケーションにも苦労したようだ。たとえば,発売前にちょっとした手違いがあり,1つのプラットフォームだけ価格設定が正しく行えていないケースがあったのだが,その際も事前確認などのコミュニケーションが不十分だったという。誰の目から見ても間違っている価格情報が,平然とストアに記載されているのを見た松山氏は唖然としたそうだ。

 そのほかの点も含め,初めての販売業務は「どこが悪いのかが自分でも分からない」状態で,最終的には同社タイトルの販売を担当するパブリッシャに頭を下げて教えてもらったという。松山氏は当初,ワールドワイド向けの販売することに関して「日本語と英語さえあれば,後は何とかなるだろう」と考えていたが,これを大きく改めたそうだ。

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 これらの反省点を踏まえ,自分達にできることを行おうということで,まずは情報伝達のミスや疑問点などを徹底的に潰していったという。各方面のスタッフとのミーティングを毎日実施し,その情報を社内共有することは特に効果があり,現在はほかタイトルの開発チームでも行われているそうだ。

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 プロモーションに関しては,プレスリリースをはじめ,ゲームのプレイ動画やスピンオフ作品である「マンガ動画」などの動画コンテンツ,公式コミカライズの連載など,横軸で楽しめる仕組みを展開している。また,インフルエンサー向けにレビュー用のコードを600本以上送ったそうだが,実際に動画を制作してくれたのは10人程度だったなど,まだまだ課題は多く残っているとのこと。ただ,こういった試行錯誤の結果,ローンチ時点には7言語に対応し,現在の販売地域は約80か国まで拡大するなど,一定の手応えを感じているようだ。

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 「戦場のフーガ」における開発・販売業務を振り返った松山氏は,「サイバーコネクトツーは開発会社として20年続けてきたが,ゲームビジネスの半分しか経験していなかった」と語る。ゲームは開発を終えたら終わりではなく,そこからリリースするまでの間には,まだまだ多くの作業が残っている。それらの業務を一手に引き受けるパブリッシャに対する感謝を述べ,今回の講演を締めくくった。

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