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  • 角川ゲームス
  • 発売日:2020/09/10
  • 価格:通常版:7128円(税込)
    Limited Edition:1万978円(税込)
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「メタルマックス」シリーズ座談会。原作者・宮岡 寛氏や初代プロデューサー・桝田省治氏ら4名が反主流RPGの成り立ちを語る
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印刷2020/09/05 00:00

インタビュー

「メタルマックス」シリーズ座談会。原作者・宮岡 寛氏や初代プロデューサー・桝田省治氏ら4名が反主流RPGの成り立ちを語る

 角川ゲームスは2020年9月10日,RPG「メタルマックス」シリーズの最新作「メタルマックスゼノ リボーン」PS4 / Switch)をリリースする。
 今回,「メタルマックスゼノ リボーン」の発売と2021年に「メタルマックス」シリーズが30周年を迎えることを記念し,シリーズのキーパーソンによる座談会が行われた。参加したのはシリーズ原作者の“ミヤ王”こと宮岡 寛氏,本作のプロデューサー・河野順太郎氏,ディレクター・友野祐介氏,そして初代「メタルマックス」および「メタルマックス2」のプロデューサーを務めていた桝田省治氏の4名だ。本稿では,「メタルマックス」の歩んだ29年間を振り返った,その座談会の模様をお伝えする。

左から友野祐介氏,桝田省治氏,宮岡 寛氏,河野順太郎
画像(001)「メタルマックス」シリーズ座談会。原作者・宮岡 寛氏や初代プロデューサー・桝田省治氏ら4名が反主流RPGの成り立ちを語る


単なる1企画から社運をかけるプロジェクトになった初代「メタルマックス」


4Gamer:
 1991年5月24日に発売された初代「メタルマックス」の発売から数えて.来年でシリーズが30周年を迎えます。そこで初代「メタルマックス」の思い出や,シリーズを振り返ってのお話を頂ければと思います。

河野順太郎氏(以下,河野氏):
 自分は「METAL MAX Xeno」から制作に携わっているのですが,初代「メタルマックス」の,開発は難航したと聞いています。まずはその辺りと,桝田さんが「メタルマックス」シリーズの制作に関わるようになったきっかけを知りたいですね。

宮岡 寛氏(以下,宮岡氏):
 僕はフリーのゲームデザイナーだったんで,初代「メタルマックス」を作り始めた頃のデーターイーストの詳しい台所事情までは知らないんだけども。
 あの当時,もうすでにデータイーストのビジネスがうまく回らなくなっていたのかな? そのせいか,最初はもっと気楽な感じで制作の話が進んでいたのに,だんだん「社運がかかっているから売れないと困る」という話になってきたんですよ。

河野氏:
 なるほど,それで桝田さんが呼ばれたと。

桝田省治氏(以下,桝田氏):
 いやいや,社運をかけろってデータイーストに言ったのは僕。そもそも,RPGの開発には予算がかかるんだよ。それに今ほどハードルが高くなかったとは言え,オリジナルタイトルはやっぱり売れない。
 当時のデータイーストは,「ヘラクレスの栄光」シリーズが出た年は潤うけれども,それ以外の年は売上が立たないという状況で,そこを埋めるタイトルを欲しがっていたわけ。
 そう考えると,「RPGは予算が大きいけれども,しっかり作れば安定して売れるし,続編も作りやすい。ただしオリジナルタイトルの1作めで採算取れると思うなよ,社運をかけて広告予算もしっかり出すならプロデュースを引き受ける」と社長の福田さん(データイースト 代表取締役 福田哲夫氏)を説得したんだよね。

画像(002)「メタルマックス」シリーズ座談会。原作者・宮岡 寛氏や初代プロデューサー・桝田省治氏ら4名が反主流RPGの成り立ちを語る

友野祐介氏(以下,友野氏):
 当時,桝田さんは広告代理店にクリエイターとして勤めていて,その業務の一環としてゲームのプロデュースをされていたんですよね。ずっとデータイーストの担当だったんですか。

桝田氏:
 そんなことないよ。「メタルマックス」の件でデータイーストに通うことになった。それで「メタルマックス」について,“誰に向けてどう売ったらいいのか”という相談を受けて,「それを後から加わった人間に聞く?」って(笑)。

友野氏:
 その「メタルマックス」のチームのヘッドが,宮岡さんのようなちょっと変わった人物だったわけですけれども,第一印象はどうだったんですか。

桝田氏:
 いや,とくに変わった感じは受けなかったかなあ……。

宮岡氏:
 僕は,桝田さんから強烈な印象を受けたよ。それまで僕はずっと偉い人の補佐みたいな立場だったんだけど,桝田さんも同じような感じだったんだよね。年齢も同じくらいで,タメ口で仕事ができる新しい仲間ができたと思った。それで盛り上がって,初めての打ち合わせで近所の喫茶店に行ってバカ話をしたのを覚えてる。

友野氏:
 初代「メタルマックス」のとき,桝田さんはどこまで企画に関わったんですか。

桝田氏:
 企画に結構穴があって,それを埋めていたね。穴の埋め方には簡単な方法もたくさんあるんだけど,僕は世界観やゲームのノリを踏まえた埋め方を考えていって,レンタルタンクなんかをあとから加えていった。

※レンタルタンク……戦車(クルマ)をレンタルできるシステム。初代「メタルマックス」は,全滅するとその場に乗っていた戦車が放置されるため,復活地点から回収に行く必要がある。戦車が必要な高難度ダンジョンの奥底で全滅すると,生身で回収するのはほぼ不可能で,このレンタルタンクが不可欠だった。

友野氏:
 僕はユーザー体験として,もともとレンタルタンクのあるような世界観なんだと受け止めていました。最初の街であるリオラドの,入ってすぐのところに杭が打ってあるんですよね。当時は何も気にしていなかったけど,今思うとあれはレンタルタンクの伏線だったんだなと。

桝田氏:
 いや,システム的に必要になったから追加したの。だって「ダンジョンの一番深いところに戦車で行って,全滅したら取りに戻れないよ」と宮岡さんに言ったら「リセットすればいいじゃん」って答えが返ってきたんだよ(笑)。

友野氏:
 セーブしてたらどうするんですか。

宮岡氏:
 初めからやり直せばいいじゃん。

友野氏:
 なるほど。これはタメ口きける人が注意しないとダメですね(笑)。

宮岡氏:
 当時の僕は正直テンパってたんだよね。シナリオ書きながらマップも書いてイベント作って,コマンドの画面遷移からバトルまでほぼすべての基本仕様に関わってたし。ゲームを面白くするためのアイデアを出すのはいいんだけど,それを回収するところまで手が回らない。「ここをこうすると,こういうことが起きるけれども,どうしましょう」みたいなことを言われると,「うっ……」ってなる。

 このケースでも,全滅したらその場に戦車が残るよう,僕自身がプログラマーにお願いしていたわけですよ。当時そんなことをやってるRPGはなかったから,あちこちで思わぬ問題が生じて。
 プログラミングする側からすると,だからこんな面倒なことやらない方がいいって言ったのに,みたいな無言の圧力が来るという。

画像(008)「メタルマックス」シリーズ座談会。原作者・宮岡 寛氏や初代プロデューサー・桝田省治氏ら4名が反主流RPGの成り立ちを語る 画像(009)「メタルマックス」シリーズ座談会。原作者・宮岡 寛氏や初代プロデューサー・桝田省治氏ら4名が反主流RPGの成り立ちを語る

友野氏:
 似たようなことは今でも生じてますね。

宮岡氏:
 ともあれ桝田さんは,そのへんの回収をしてくれたと。
 それも,ただありきたりの対応ではなく,まだ出来上がっていない「メタルマックス」と言うゲームの世界観を生かす形で回収してくれた。それがスゴくありがたかった。

河野氏:
 相当なボリュームの作業じゃないですか,それ。

桝田氏:
 そもそも広告代理店のクリエイターに,なぜそれができると思ったのかと。

宮岡氏:
 でも,できたでしょ?

桝田氏:
 うん,そんなに難しくはなかった。

友野氏:
 そのとき「天外魔境」シリーズの仕事は,もう終わっていたんですか。

桝田氏:
 どうだったかな,終わってたと思うけど。

宮岡氏:
 当時,「天外魔境」をやった人だと紹介されたよ。

桝田氏:
 「天外魔境」のときも「何でオレ?」と思いながらやってたんだよね。

友野氏:
 「天外魔境」も「天外魔境II」も,広告代理店から来た人がパッと作ったようなゲームじゃないですよね。「メタルマックス」とは違った王道の一番面白いRPG,PCエンジンにおける「ドラゴンクエスト」みたいな位置付けですし。

桝田氏:
 でも,ポンとできたわけじゃないよ。そこのポジションにはまるものを作ってくれ,と言われたから作っただけで。

友野氏:
 「天外魔境」って,いろいろなところに影響を与えたゲームなんじゃないかと思います。

宮岡氏:
 「メタルマックス」も結構パクられてるよ。いろんな人から影響を受けたという話も聞くし,僕自身も「メタルマックス」から学んだことがいっぱいある。

桝田氏:
 僕としては,アイデアなんだから「パクればいいじゃん」って思ってる。僕もよくパクるし。
 それよりも僕が宮岡さんから得たのは,「ゲームって,これでいいんだ」ということ。

友野氏:
 これでいいって,どういう意味ですか。

桝田氏:
 万人に受けなくてもいいってこと。あれだけたくさんハードが売れているマーケットなら,20人に1人が確実に買ってくれる商品はアリなんだよね。5人に1人が買うかもしれない,買わないかもしれないよりは,20人に1人が確実に買うほうが商売として成立しやすい。

友野氏:
 当時は「ジャングルウォーズ」や「レナス 古代機械の記憶」みたいに,宮岡さんのようなライターがRPGを作ることが多かったですよね。どれも面白かったのに,なぜ「メタルマックス」だけが残ったのか,という疑問が僕の中にあるんですよ。
 初代「メタルマックス」を買った“20人に1人”の1人が僕だったり,今もSNSに「メタルマックス」関連の投稿をする人だったりするわけですけれども,桝田さんがおっしゃったのはその答えなんですかね。

宮岡氏:
 当時は僕の中にも「こんな分かりにくいゲームを出していいのか」という葛藤はあったよ。データイーストの関係者からも「分かりにくい」と指摘されたし。そうなると「今から分かりやすくする?」という話になるんだけど,それはそれで尖った部分に良さがあるゲームなのに,その良さを1つ1つ潰して普通のゲームにしなければならない。
 最後の最後は,桝田さんの言う20人に1人じゃないけれども,分かってくれる人だけに届けばいい,と覚悟を決める必要があった。

友野氏:
 桝田さんには,20人に1人が確実に買うという確信はあったんですか。

桝田氏:
 確信と言うより,そういうポジション取りをしないと生き残れないとは思ってた。そして,そのポジションに行くには何をすべきかを考えた。だから作っている途中を広告として見せたりしたんだよ。だって,画面写真だけじゃ伝わらないから。

友野氏:
 確かに「メタルマックス」シリーズは,当時からメイキングっぽいものを見せてますよね。原画とか,普通見せないのに。

桝田氏:
 「ゲーム中でこのアイテムを使ったらどれだけ面白くなるのか」みたいなことを,毎回広告用に4コマ漫画にしてもらったりもした。これが画面写真を並べるだけだったら,「○○を使う」「××が起きる」で終わってしまう。そこはプレイヤーがどういう気持ちになるかが面白いところなのに。

画像(005)「メタルマックス」シリーズ座談会。原作者・宮岡 寛氏や初代プロデューサー・桝田省治氏ら4名が反主流RPGの成り立ちを語る 画像(004)「メタルマックス」シリーズ座談会。原作者・宮岡 寛氏や初代プロデューサー・桝田省治氏ら4名が反主流RPGの成り立ちを語る

友野氏:
 「賞金首を倒したけど赤字」みたいなことは,ゲームの中では起こらないんだけど,あの4コマ漫画で“そんなシステムがあるんだ”と印象づけられました。

桝田氏:
 あれもゲーム業界の広告としては割りと新しい試みだったんだけど,ほかの業界では普通なんだよ。洗剤でも石けんでもいいんだけど,「あー,すっきりした」といった部分を見せるでしょ。

河野氏:
 結局,初代「メタルマックス」は桝田さんが加わってから2年くらい経って完成するんですよね。今でも思い出に残っているトラブルはありますか。

宮岡氏:
 いや,もうトラブルだらけだった。なんせメインプログラマー2人が,どちらも新入社員なんだから。社運がかかってるのに(笑)。

友野氏:
 それまでになかった細かいアイデアを,きちんと形にしたプログラマーもすごいですよね。

宮岡氏:
 ファミコンだから処理が重たいんだよね。とくにコマンドを開くときは,ちょっとモサッとした動きになってしまったんだけど,そこは改善できなかった。熱い新人だからこそ実現できた無茶は多かったけど,経験不足も確かにあったと思う。

友野氏:
 僕はむしろそこが好きだったんです。だから「メタルマックス2」では,何もかもが速すぎだと感じました。

宮岡氏:
 「メタルマックス2」のときは,「何もかも速くしろ」がキーワードだったからね。開発初期の頃は,キャラが歩く速度が速すぎて自動販売機の前に止まれなかった(笑)。

河野氏:
 チーム全体で何名くらいいたんですか。

宮岡氏:
 少なかったよね。

桝田氏:
 RPGを作ってるにしては,あの時代でも少ないほうだったかな。

河野氏:
 社運がかかってるのに,チームは小さいわ,プログラムは新人任せだわで(笑)。

宮岡氏:
 社内的には,意地みたいなものがあったんじゃないかな。何で今更外部から桝田さんを企画担当として入れるのかって。

友野氏:
 それで敢えて新人を入れて?

宮岡氏:
 「企画そのもの」が潰れるのは会社的にマズいから,「ほーら,やっぱりダメだったろ」ってことで内製に戻す,みたいなさ。そういう流れというか空気というか。

河野氏:
 そんな経緯を経て初代「メタルマックス」が完成したとき,「これは行ける!」という手応えはあったんでしょうか。

桝田氏:
 データを見ると,明らかにお客さんは付いているんだけど,テレビCMを打ったりして予算を使ってるんで採算が取れないのは分かっていた。でもそれはさっき言ったように,最初から福田さんに伝えていたので怒られはしなかったね。それより,発売が1年遅れたことを怒られた。

友野氏:
 部長が2人,クビになったというのは本当ですか。

桝田氏:
 そうそう。でもデータイースト自体の経営が怪しくなっていたから,良い会社があれば転職する人もいただろうね。

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ノイズに埋もれるのを避けるため,あえて強烈な話を作り出す


友野氏:
 桝田さんは,かなりドライな性格ですよね。しっかりしたゲームを作る人がドライというのは珍しいので,インタビューを読むたびに「この人はイカれてるな」と思ってました。「一生懸命作りました」なんて絶対言わないですよね。

桝田氏:
 うん,言わない。逆に知りたいよね,「仕事なのに何でそんなに頑張るの?」って。

友野氏:
 面白いゲームを作ってるのに,桝田さんも宮岡さんもそんなに真面目に働いてないんですよね。

宮岡氏:
 僕は真面目でしょう?

友野氏:
 いやいや,「メタルマックス2:リローデッド」で最後の指示を仰いだとき,後ろから飲み屋っぽいBGMが聞こえてましたよ(笑)。

桝田氏:
 これを成し遂げたら日本の人口の0.1%が救われる,あるいは日本の交通事故が2割減るみたいな仕事じゃないからね。

友野氏:
 表現はキツいけど,ヒューマニズム溢れる発言ですね。

桝田氏:
 大学卒業のときに広告か僕の専門分野,どちらの世界に進むかの選択をしたんだよ。僕の専門,というか理想のデザインは交通標識。そういう美大生だったから。

友野氏:
 そうなんですね。本当にゲームとは縁遠いところからゲーム業界に来たと。

桝田氏:
 でも僕に言わせると,特定の条件下である情報を伝えようとしたときに,最低限何が必要で,次に必要なデザイン的な要素は何かということは,ゲームの画面内で常に問われている。その意味では,ゲーム作りって標識のデザインから全然遠くないものでしょ。
 ゲームのシナリオにしても,一度読んだり聞いたりしたら,もう1回最初からプレイしないと読めなかったり聞けなかったりする構造のものが多いよね。それもまた標識と同じで,「ここで60km制限を見逃すと事故る」みたいな話になるわけ。

画像(010)「メタルマックス」シリーズ座談会。原作者・宮岡 寛氏や初代プロデューサー・桝田省治氏ら4名が反主流RPGの成り立ちを語る

友野氏:
 そこまでの距離感を持ってゲームを作っている人は,なかなかいないんですよ。宮岡さんはどう思われますか。

宮岡氏:
 最初は,桝田さんのことを理屈の人だと思ってた。そして僕自身は,どちらかと言えば情念の人だと。
 桝田さんは,論理的に穴がある,こういうときにこういう事態が発生する,ここのカバーができていないといったようなことを見つけて塞いでくれる。最初はそういう部分を頼りにしていたんだけど,あるときテキストを書いてもらったら本当にすごくて。これは天才だと思ったね。

友野氏:
 情念丸出しのテキストを書かれるんですよね。

宮岡氏:
 僕の情念どころじゃない(笑)。イカれた悪役のセリフを書かせたら,たぶん日本一だと思うよ。

友野氏:
 桝田さんのシナリオを読むと,「そこまで酷い話にする必要があるのか?」と思うんですよね。「天外魔境2」のはまぐり姫の話は,ここまで酷くしなくても,もっとうまいことできただろうとか,「メタルマックス」シリーズのバトー博士もそこまで罵倒しなくていいだろうとか。

桝田氏:
 それも僕の中では,交通標識のデザインと同じ。例えば今ここに駐車禁止など何かしらの標識があるとするよね。夕暮れになったり霧が出たりすると,どんどんノイズが入って標識は認識しづらくなっていくから,それを踏まえたデザインを考えなければならない。
 同じように,僕らがゲームの中で出さなければいけない情報は,真っ暗まではいかなくとも霧がかかった状態に置かれることまで想定しておく必要がある。そうしないと,プレイヤーはゲームを止めてしまう。だからシナリオがたまたま目立ってるけど,僕はシステム周りでも相当どぎつく情報を出してる。

友野氏:
 その設定やシステム周りのどぎつさは,僕の中ではシナリオと同じなんです。それで「天外魔境2」は酷い話ばかりなのに,「王道の良い話だった」みたいな感想が多くて,真面目に読んでのるか? と思うこともあって。

桝田氏:
 でもねえ,うちの息子なんて,ゲームのシナリオなんか読まないよ。

友野氏:
 最近はそういう人が多いですよね。宮岡さんもご自身でゲームをプレイするときは,あまりシナリオを読んでいないとか。

宮岡氏:
 僕の中では,漫画と同じなんだと思って自分を納得させてる。漫画も,漫画家や原作者が必死でネームを書くわけだけれども,大半の読者はセリフなんてろくに読んでくれない。
 まあこういうのはすべてのエンタメに等しく降りかかる残酷な現実なんだよね。

画像(021)「メタルマックス」シリーズ座談会。原作者・宮岡 寛氏や初代プロデューサー・桝田省治氏ら4名が反主流RPGの成り立ちを語る


担保しているのは「クリアして楽しい,遊んだだけリターンがある」こと


友野氏:
 開発者側とプレイヤー側の考え,意識の違いは作り手側になってから初めて感じるようになりましたね。思った通りの反響もあれば,「えっ,そんな風にとらえてるの?」ということもあって,悩んだりしています。
 本筋とは関係ないのですが,せっかく桝田さんがいらっしゃるので,そういった「ユーザーとの認識の違い」という観点から「俺の屍を越えてゆけ2」の炎上の件をお聞きしたいです。あのとき,桝田さんはSNS上でプレイヤーとやり取りしていましたよね。あれはやっぱり責任を感じての行動ですか。

桝田氏:
 いや,あのときは何が起こっているのかを把握したかっただけ。

友野氏:
 ゲーム内での夜鳥子にまつわる展開が,桝田さんらしくないと思ったんですよ。今までの桝田さんのゲームとは作り方が違うなと。

画像(011)「メタルマックス」シリーズ座談会。原作者・宮岡 寛氏や初代プロデューサー・桝田省治氏ら4名が反主流RPGの成り立ちを語る

桝田氏:
 いろんな原因があるんだけど,一番大きかったのは「俺の屍を越えてゆけ」の続編を僕よりも作りたがっていた人達が,シリーズが止まっている期間に僕の書いた小説「鬼切り夜鳥子」を読んで,夜鳥子にドハマリしたこと。現場のスタッフ達,とくにシナリオとグラフィックのユニットに夜鳥子が大好きというスタッフが多くて,「夜鳥子を出してください」「この入れ墨,入れましょう」とか熱いリクエストがあって。僕のほうは「へーそうなんだー。新しいキャラを考えなくてすむからラッキー」と。

友野氏:
 桝田さんの独断ではなかったわけですね。

桝田氏:
 僕はキャラクターに思い入れがないからわりと他人の意見を受け入れる。いや,もちろんゲーム内の全要素に対して責任を取るべき立場なんだけどさ。

友野氏:
 そうなんですよね。だから,何で夜鳥子がこんなに前面に出てくるのか分からなかったんです。

桝田氏:
 もう1つは,プロデューサーとしてユーザーに何が求められているか分かっていたけど,必要以上に余計なことまでやってしまったこと。
 絵を綺麗にして,システムを整理して,前作と似てるけど違うシナリオを付ければファンは喜ぶ。あとはネット上でファンの意見を拾い上げる。その辺りが正解だと思ったんだけど,ソニー・コンピュータエンタテインメント(当時)が用意してくれた予算やラインが,結構大きかったんだよね。

友野氏:
 売る責任が生じるレベル?

桝田氏:
 僕自身は,そこまでプレッシャーは感じてなかったけど。ただ,ここまで理想的な環境を用意してくれたなら多少無理しても大丈夫だな,僕が想定していた必要最低限の仕事量で達成できる正解,この辺りが安全な落としどころと思ってたところに “新しいチャレンジ”を入れても何とかなるんじゃないかなと油断しちゃったんだよね。
 それでチャレンジとして入れた要素が,最もコアなファンの琴線に触れて「うちの家族に手を出すな」的な事態になったと。

友野氏:
 それで夜鳥子にまつわる炎上が起きたわけですね。

桝田氏:
 僕としてはサッパリ分からず,「何が起きてるんだろう?」と思って怒っている人達に聞いてみたわけ。そうしたら「何言ってるんですか,あなたは!」と,さらに怒られて。だって分かんないよ,キャラ萌えって何?

一同:
 (笑)。

友野氏:
 小説を書いたときもそんな感じだったんですか? 「キャラクターって何だろう?」みたいに。

桝田氏:
 そうそう。あの小説は1巻の2章くらいまで別の作家が書いていて,編集者と僕がその内容を評価していたから,出版社が発売予告まで出していたんだよね。でもそのあと事情によりその作家が続きを書けなくなって,仕方ないから僕が「小説の書き方」みたいな本を2冊読んで続きを書いたものなの。

一同:
 (爆笑)。

4Gamer:
 そうなると,桝田さんはゲームを作るにあたってキャラ萌えは想定していないわけですか。

桝田氏:
 想定しないってことはないけど,キャラ萌えというのは僕の中では不確定要素なんです。良い方に働けばそれなりにプラスになるだろうし,マイナスになったときでもそんなに酷いことにならないくらいには配慮している。でも,キャラ萌えに頼ると外したときに目も当てられないことになるから。

画像(015)「メタルマックス」シリーズ座談会。原作者・宮岡 寛氏や初代プロデューサー・桝田省治氏ら4名が反主流RPGの成り立ちを語る

友野氏:
 逆に,最低限担保していることは何ですか。

桝田氏:
 クリアして楽しいこと。やっただけのリターンがあること。

友野氏:
 実のところ,僕が初代「メタルマックス」と「メタルマックス2」を20年30年とプレイし続けられるのは,きちんと終わるゲームだからなんですよ。ほかのゲームだと,面白いけど今でも最後まで続けられるものは少ない。それはおっしゃたように,桝田さんのシナリオに対する思想がシンプルだからなんですかね。

桝田氏:
 そう言えば初代「メタルマックス」には,すぐエンディングが始まるコマンド()があったよね。あれ,いつ頃入れたんだっけ?

※ハンターになると言って父親から勘当された主人公だが,家にいる父親に話しかけ「家にもどる」というコマンドを選ぶと,平凡な人生を送るという「フェイク・エンディング」が流れた

宮岡氏:
 あれは結構な反対を食らったんだよね。

桝田氏:
 僕は反対した記憶ないよ。

宮岡氏:
 桝田さんは何も言わなかったかな。わりと初期の頃からアイデアがあって,僕の中では主人公が尊い身分ではないことの証明として,絶対やらなければならないことの1つだった。なのに周りには反対意見が多くて,結局多数決を取ることになったんだよね。結果,「そこまで言うなら,やってみれば」という意見が増えて,実現したの。

友野氏:
 初代「メタルマックス」は変なアイデアが多い半面,王道的に親切な作りなのは「ドラゴンクエスト」で培われたものなんでしょうか。

宮岡氏:
 なんせ,ほかに知らないからさ。当時は「ドラゴンクエスト」しか作ったことがなかったからね。僕自身RPGのコアプレイヤーで,あの当時の世界中のRPGのほとんどはプレイしていたので,企画・設計上これはやっていい,これはダメというのを自分の体験として掴んでた。あるとき,知人が初めてRPGを作ったというので,テストプレイをしたら最初に宝箱を開けると毒かなんかで死んじゃって。作る方は軽い冗談のつもりでも,ゲームではそれ,冗談じゃ済まないんだよね。
 ゲームを遊ぶってのは映画やTVと違って,ユーザーが主体的に動かなきゃならない。宝箱は見てれば勝手に開いたりしないから,自分の手で開ける。その行動に対する結果は,たとえ宝箱1箱でも,ユーザーにとってすごく重大なんだよね,ゲームでは。
 当時は言わば「ゲーム黎明期の終わり」ぐらいの時代で,ノウハウみたいなものはまだほとんど蓄積されてなかった。

画像(013)「メタルマックス」シリーズ座談会。原作者・宮岡 寛氏や初代プロデューサー・桝田省治氏ら4名が反主流RPGの成り立ちを語る

桝田氏:
 そう言えば僕が開発に関わった「桃太郎伝説」では,誰も戦闘の仕様を考えてなくて,間に合わないから僕が仕様を書くことになった。ちなみにそれが僕のファミコン初体験なんだけど,そのときは3日で「ドラゴンクエスト」をパクろうと思って。

友野氏:
 それはまた図々しい(笑)。

桝田氏:
 「ドラゴンクエスト」と「ドラゴンクエストII」をずっとプレイして,パラメータが変わるたびにダメージの量や魔法の成功率を書き出して,「こういう計算式を使っているに違いない」というものを1週間くらいかけて作ったんだよね。
 のちにメタルマックスで宮岡さんに会って答え合わせをする機会があったんだけど,全然違っていて。「ドラゴンクエスト」の数字のばらつきは,単にファミコンの性能が悪かっただけだった(笑)。「この絶妙なばらつきは,どんな乱数表を使っているんだろう」とか前向きに考えながら計算してたのに。

友野氏:
 ああ,乱数はハードによってクセがありますからね。

4Gamer:
 そういったハードのクセに悩まされたことはありますか。

桝田氏:
 クセに困ったことはないけど,制約に関してはよく聞くよ。1回でどれだけのデータ量を読み込めるか,スピードがどれくらい出るか,とか。

宮岡氏:
 あとは色数。ファミコンは本当に制約がキツかったんで,あの頃からゲームを作っていると必ずハードのスペックを確かめるようになる。「本当に16色出るの?」とか。

友野氏:
 今でも「どこにどれだけ処理を持てるの?」とかチェックしますよ。

宮岡氏:
 ファミコンからスーパーファミコンになって少し制約がなくなったけど,そうすると今度は回転や拡大縮小を使うのに別の制約がかかる。

友野氏:
 今のほうが作りやすい部分もあるのかもしれない・・・?

宮岡氏:
 う〜ん。ただ制約があるからこそ,出てくるアイデアもある。色が使えないなら何で見せるのかという話になるのであって,制約がなくなると突飛なアイデアを出す必要がなくなるんだからね。

画像(012)「メタルマックス」シリーズ座談会。原作者・宮岡 寛氏や初代プロデューサー・桝田省治氏ら4名が反主流RPGの成り立ちを語る


「伝説のご新規様」を獲得するために,伝えるべきシリーズの魅力とは?


友野氏:
 「メタルマックスゼノ リボーン」ではフル3Dグラフィックスに挑戦して,それにすごく苦労したんですけれど,何か違和感はありますか。例えば初代「メタルマックス」は戦車の乗り降りも楽しかったんですが,3Dになったらそれを感じられないと思われると残念なので。

桝田氏:
 乗り降り自体が面白ければいいんじゃない。

友野氏:
 毎回だと苦痛になってくる可能性もあったんで,この時は乗り降り描写を入れる,この時は入れない,などの塩梅が結構大変でしたね。

桝田氏:
 3Dは表現が分かりやすくなるんだけど,だから楽しくなるとか面白くなるとは限らないからね。映画だって1時間の間に3年分の話を描いているものもあれば,30分の話をしているものもある。前者は省略している部分が多いわけだけど,それはなくてもいいからだし,わざわざ描いても面白くないからだよ。僕自身は,戦車の乗り降りが面白いかどうかを問われたら,面白くないと答えると思う。

友野氏:
 たまにだと面白く感じるんですけどね。
 あと,ぜひ桝田さんに教えてほしいんですが,「メタルマックス」はシリーズを重ねるごとに売上が下がってるんですよ。「メタルマックス3」は良かったんだけど,「メタルマックス2:リローデッド」は本当に酷くて。あれはどうすれば良かったんでしょうね?

画像(003)「メタルマックス」シリーズ座談会。原作者・宮岡 寛氏や初代プロデューサー・桝田省治氏ら4名が反主流RPGの成り立ちを語る

桝田氏:
 単純に認知度が足りないんじゃないの。僕は「メタルマックス」シリーズの広告全般が,「メタルマックス」を応援している人達に合わせているように感じる。それじゃ売れないよ。

友野氏:
 今,僕は「メタルマックスゼノ リボーン」の売上が不安なんで,「メタルマックス」シリーズがいかに素晴らしいかという動画をYouTubeに投稿しているんです。自分でもそれはどうかと思うのですが,やれることがないからやっている。ほかに何かやるべきことって,あるんですかね?

桝田氏:
 そういうのは「メタルマックス」シリーズの面白さがもっと多くの人に伝わってからでいいんじゃないの。

友野氏:
 それは,「新規のプレイヤーを集めないと!」ということですよね。今,ファンのSNSの間では新規層のことを「伝説のご新規様」なんて呼んでいて,新規層がまさに伝説化している。僕らも,メタルマックスというものが当たり前になりすぎていて,メタルマックスを知らない人に,どこを推していいのかわからないってのは,ありますね。

桝田氏:
 そもそもプレイヤーキャラクターが戦車と人間に分かれているとどうして面白いのか,を皆が理解できてないんじゃないの。あまりにぶっ飛びすぎてると,理解が追いつかないからね。

友野氏:
 実は動画を観てくれるのは,いつもSNSで声をかけてくれる往年の「メタルマックス」シリーズファンだけなんですよ。40代や50代。最近やっと10代の視聴者を見つけたんですが,まさに伝説の10代ですよね。そんな感じでシリーズを知らない人に「メタルマックス」を届ける方法が分からない。「メタルマックス2:リローデッド」のときも,同世代で「メタルマックス2」が好きだと言っていた知り合いが,「そんなの出てたんだ」という感じでした。何で我々は,こんなにクローズドなサークルから出られないのか,この閉塞感は何なんでしょう。

桝田氏:
 いろんな考え方があると思うよ。基本に戻って「メタルマックス」シリーズの面白さを伝えてもいいし,ホラー映画のように世界人口の3%くらいいるホラーファンに確実に届けるのも戦略だし。むしろ「メタルマックス」シリーズは後者じゃないの。ホラー映画とサメ映画はすごいからね。ゾンビやサメが出てくればファンが確実に観るから。

河野氏:
 世界人口の3%とは言わなくとも0.5%を狙えれば。

桝田氏:
 ホラー映画やサメ映画を作る人達は,買ってくれる人あるいは喜んでくれる人のチャンネルがどこにあるのかについて,とんでもないノウハウを持っているからね。

河野氏:
 そういったジャンル映画は,ジャンルの王道を守りつつ,作っている側の遊び心が見えると楽しいんですよね。
 ところで桝田さんにとって,初代「メタルマックス」の開発は面白かったですか。

画像(014)「メタルマックス」シリーズ座談会。原作者・宮岡 寛氏や初代プロデューサー・桝田省治氏ら4名が反主流RPGの成り立ちを語る

桝田氏:
 面白かったと思うよ。仕事として面白かったかどうかは微妙だけど。並行してほかのゲームも作ってたけど,それらには行き着くべき答えがあって,それに対する手段がいくつかあり,僕自身が一番いい手段を選んで提案するというものだった。あるいは,偉い人からとんでもないリクエストがあったときに,どうやってゲームに落とし込めば一番伝わるかを考えていた。つまり目標が見えていたんだけど,宮岡さんには「え,今それ言う?」みたいな不確定要素があちこちにあったんだよね。

宮岡氏:
 それはスリルがあったってこと?

桝田氏:
 「あれ,僕ら味方だよね? 同じ側にいるんだよね?」っていう感覚(笑)。

友野氏:
 あの宮岡さんに後ろから撃たれるような感覚,何なんでしょうね(笑)。良かれと思ってやってるのか,よく分からない。

宮岡氏:
 もちろん良かれと思ってやってるよ。

桝田氏:
 そういう意味では刺激があった。

4Gamer:
 桝田さんは,初代「メタルマックス」を作っていたとき,30年も続くシリーズになると考えていましたか。

桝田氏:
 そこは何も考えてなかった。ただ,僕はよく耐用年数という言葉を使うんだけど,「天外魔境II」で設定したのが耐用年数5年くらい。つまり5年間は,PCエンジンで「天外魔境II」を超えるものは絶対出ないところまで頑張ろうと。その意味では,「メタルマックス」はユニークな部分を持っているので,耐用年数は長くなると思っていた。それが受けるかどうかはともかくとして。

友野氏:
 「メタルマックス」シリーズのユニークなところって,どこなんでしょうね?

桝田氏:
 そりゃ戦車に乗るところでしょ。戦車と人間でパラメータが違うから。独自の世界観なんて言っても,なかなか伝わらない。

画像(022)「メタルマックス」シリーズ座談会。原作者・宮岡 寛氏や初代プロデューサー・桝田省治氏ら4名が反主流RPGの成り立ちを語る

友野氏:
 「メタルマックス」シリーズに似た世界観のゲームはもう,たくさんありますからね。

河野氏:
 ゲームに限らず,映画なんかにも多い。

桝田氏:
 そういや「メタルマックス」もそうだけど,昔僕が作ったゲームが最近になっていろいろ復活してるんだよね。今見てもそんなに破綻してないし,意外と丁寧な仕事をしてたんだなって思う(笑)。

宮岡氏:
 繰り返しだけど,刺激的だったのは確かですよ。プログラマーが若かったし,スタッフもほとんど同世代だったから。ほかの現場だと偉い人の指示に従うことが多いんだけど,「メタルマックス」は桝田さんと僕が一番偉いくらいの感じだったからね。そこでゲームを作りたくてたまらないプログラマーが,必死になって形にしてくれたわけだから。

桝田氏:
 面白かったよね。

宮岡氏:
 偉大なおじ様たちが行かないところに,どうやって行くかに頭を使った。

4Gamer:
 「メタルマックスゼノ リボーン」では,犬のポチが復活して往年のファンに好評ですけれども。ポチは「メタルマックス2」から登場しているんですよね。

桝田氏:
 犬自体は初代「メタルマックス」からいたよね?

宮岡氏:
 敵だけど。バイオニック・ポチ。

4Gamer:
 ポチに思い入れは……。

桝田氏:
 ないよ。

一同:
 (爆笑)。

桝田氏:
 さっきの話に戻るけど,ポチを出すっていうことは「メタルマックス」シリーズファンへのサービスなわけで,そこで終わってるんだよね。ほかに可能性はなかったのかと思う。
 例えばだけどマーケティングの観点からすれば,犬より猫だよ。犬と猫では市場規模が全然違う。「メタルマックス」だから犬を出すって人は,「メタルマックス」が好きすぎて客観的になれていないんじゃないかな。ちゃんと犬と猫の市場規模くらいは検討しないと。

画像(016)「メタルマックス」シリーズ座談会。原作者・宮岡 寛氏や初代プロデューサー・桝田省治氏ら4名が反主流RPGの成り立ちを語る

友野氏:
 確かに僕は,客観的には見れられていないですね。
 「メタルマックス」シリーズのファンとして見たときに,前作の「METAL MAX Xeno」で僕自身の中に積もった不満を直すのが今回のミッションだと思っていたんです。でも,今の桝田さんの指摘で気づかされました。新規のプレイヤーにどうやって注目してもらうか,何も考えてなかったなと。「なるほど」と思ったからには,やれることがあればやっておきたいですね。

河野氏:
 戦車と人間でパラメータが違うことは,分かっているようで忘れてたことだよね。

桝田氏:
 パラメータが違うってことは,コマンドも違う。コマンドが違うってことは,できることが違うんだよ。

河野氏:
 つまり遊びが違う。

桝田氏:
 コマンドには,ゲームデザイナーの主張が一番分かりやすく表れる。次がパラメータ。「こういうゲームとして作ろうと思っています」という主張が一番出る。

宮岡氏:
 ダメージの計算式もそう。堀井さん(ゲームデザイナーの堀井雄二氏)から初期「ドラゴンクエスト」シリーズの計算式を教わったとき,なぜ守備力を半分にするのか聞いたら,答えは「殴れば必ず当たってほしいから」。つまり,少なくとも初期の「ドラゴンクエスト」は「魔法使うより殴るほうが確実なRPG」ってテイストであることが,もうその時点で決まってたんだよね。

桝田氏:
 だから「メタルマックスゼノ リボーン」も,「竜退治はもう飽きた!」じゃないと思うよ。そこじゃない。

宮岡氏:
 そう言えば,あのキャッチコピーはどこから思いついたの?

桝田氏:
 主流のRPGへのカウンターとして一番強いものを考えて……。

宮岡氏:
 理詰めで? 突然降りてきたとかではなく?

桝田氏:
 宮岡さんは「シナリオ様が降りてくる」とかよく言うけど,僕にはその感覚はないよ。達成できそうな条件を吟味したうえで最後の2つ3つまで絞り込んで,そこからだよ,勘に頼るのは。カウンターでそこに当てるところまでは僕が考えて,キャッチコピー自体はコピーライターが考えた。何案かあった中から,選んだと思う。


「メタルマックスゼノ リボーン2」には桝田氏も復帰?


河野氏:
 実は「メタルマックス」30周年を迎えるにあたり,今回のイメージカラーには初代「メタルマックス」のパッケージの黄色と黒をお借りしたんですよ。

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桝田氏:
 あれなんて,まさに交通標識だよね。

宮岡氏:
 今だから分かる裏話。

桝田氏:
 当時の店頭はメチャクチャだったんだよね。ピンク,青,黄色,緑……みたいな感じで色が溢れていて。そんな中,パッと目に入ってくるのはこれだと。

宮岡氏:
 あのパッケージデザインを見たときは,徹底してるなと思ったね。

桝田氏:
 過酷な環境で生き残るための情報だよね。

河野氏:
 初代「メタルマックス」の売上は予想どおりだったんですか。

桝田氏:
 いや,もう少し売れると思ってたし,発売が遅れなければ,実際,もうちょっと売れてたと思う。ファミコンの最後の頃に発売されたからね。市場はすでにスーパーファミコン一色で。

友野氏:
 面白いゲームなのに,あまり振るわなかったという印象ですね。

宮岡氏:
 新ハードが出た直後って,どうしても旧ハードに関する情報は意図的にミュートされちゃうからね。当時は初心会という問屋さんの組織がゲームの流通ルートを握ってて,任天堂の意向がそのまま販売本数に反映されるような状況だったし。
 ただその初心会が高く評価してくれたおかげで,「メタルマックス2」は結構売れたわけだけど。

桝田氏:
 任天堂と言えば,「死体を焼いちゃいけません」(笑)。

宮岡氏:
 あれ,「メタルマックス2」のマスター提出後だったっけ? 任天堂からクレームが入って,それまで黒焦げだった死体が急遽天ぷらみたいなデザインになったという。まったく突然のクレームで時間もなくて,修正が本当に大変だった。

河野氏:
 初代「メタルマックス」で,やり残したことはありますか。

桝田氏:
 やり残しはないよ。続編を出すなら,どの方向に持っていけば売れるかというプランはいくつかあったけど,やり残しはない。ただ,最後にバグは残ってたんだよね。そういうのは直さないといけないものだけど,やり残しとは違うよね。

宮岡氏:
 シリーズの伝統で,オーバーフロー系のバグはいつも出る。途中キャンセル系も。あれってやっぱプログラマーのクセなんだろうか?

桝田氏:
 取れそうで取れない宝箱とかもね(笑)。

友野氏:
 「メタルマックス ゼノ リボーン2」でもデザインを継承させてもらっているモンスターたちですが,山本貴嗣さんのデザインは,桝田さんもチェックしていたんですか。ずいぶんとイカレた姿のものが多いですけど。

画像(019)「メタルマックス」シリーズ座談会。原作者・宮岡 寛氏や初代プロデューサー・桝田省治氏ら4名が反主流RPGの成り立ちを語る

桝田氏:
 いや,実はあんまり。ほかのRPGには出ないタイプのモンスターだから,面白いと思って見ていたけど。ただ,あのデザインを前面に出せばある程度は売れる要素に持っていけるとは考えていたかな。

友野氏:
 前作の「METAL MAX Xeno」ではキャラクターデザインにライトノベルなどで活躍しているイラストレーターさんを起用していたんです。今回は,シリーズの雰囲気を取り戻そうと思って,緒賀岳志さんにお願いしたりしているんですけれど,それは幅広い層に訴えるというのとは,違う考え方なんですよね。

河野氏:
 まあ今回は仕切り直しだからね。でも拡大も考えなくちゃいけなかったんだろうな。

桝田氏:
 今後「メタルマックス」シリーズはどうなっていくの?

友野氏:
 「メタルマックス ゼノ リボーン2」の開発がスタートしました。

桝田氏:
 それはまたリメイクなの?

友野氏:
 新作です! ビジュアルのフル3D化だけでなく,これまでのシステムを根本から作り直しましょうというのが,今回の「メタルマックス ゼノ リボーン」で,新作はその新システムを使って作る続編になります。

宮岡氏:
 うまく行けば2021年に新作が完成して,30周年だからイベントもやって,桝田さんにも来てもらおう!みたいな話があるんですけどね。「メタルマックスゼノ リボーン」の発売が延びたので厳しいですが。

画像(020)「メタルマックス」シリーズ座談会。原作者・宮岡 寛氏や初代プロデューサー・桝田省治氏ら4名が反主流RPGの成り立ちを語る

友野氏:
 最後に桝田さんにお願いしたいんですが,新作のテキストを書いてくれませんか? 以前もお願いしたかったけど,ギャラが高すぎてダメだったと聞いたんですが。

桝田氏:
 嘘だよ(笑)。僕は,「メタルマックス」でギャラなんかもらったことないんだから。

友野氏:
 SNSには,また桝田さんにテキストを書いてほしいという声があるんですよ。

桝田氏:
 でも,皆が求めるようなテキストを書けるかどうかは,また別の話だよね。

友野氏:
 僕自身,良くも悪くも1ファンとして書いてほしいですね。

桝田氏:
 なんか誤解してる人が多いけど,複雑なシステムに合わせて最少量のテキストですませようとすると,喋り方がおかしいキャラのほうが都合がいい。それだけのことなんだよ。それに,自分で作ったものをコピーするのって難しいんだよね。

宮岡氏:
 そうそう,これが意外と,難しい。

友野氏:
 宮岡さんは別に自分をコピーしようとしてないでしょ?

宮岡氏:
 最近,友野君がYouTubeに初代「メタルマックス」リメイク版のプレイ動画を投稿しているんだけど,それを観て「そういや結構頑張って仕様を作ったよな」と思ったんだよね。「こんなこと,やらなくていいのに」ってことを山ほどやってると感じたよ(笑)。

友野氏:
 実はその動画のコメントにも,桝田さんの参加を望む声があるんですよ。

桝田氏:
 わかった,いいよ,やる。そのとき,僕の手が空いてたらだけど。でも今度の「桃鉄」(※1)は,桃鉄史上おそらく最高傑作だから売れちゃうだろうし,正月明けにはNHK Eテレで「ログ・ホライズン」のアニメ第3シーズン(※2)も始まっちゃうし……宣伝はこれくらいでいいかな。まあ忙しくても時間は作るか買うかすればいい。

※1. 11月19日発売予定のNintendo Switch「桃太郎電鉄 〜昭和 平成 令和も定番!〜」のこと
※2. 2021年1月NHK Eテレで放送予定の「ログ・ホライズン 円卓崩壊」のこと

4Gamer:
 期待の高まる展開になったところで,ちょうどお時間がきたようです。皆さん,本日は長い時間ありがとうございました。

※座談会収録日:2020年8月12日

「メタルマックスゼノ リボーン」公式サイト

  • 関連タイトル:

    メタルマックスゼノ リボーン

  • 関連タイトル:

    メタルマックスゼノ リボーン

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