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ゲーム体験を通じて,色鮮やかに感情を呼び起こす。「Sky 星を紡ぐ子どもたち」の特別講義「感情を伝える形と音」をレポート
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印刷2020/02/05 12:00

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ゲーム体験を通じて,色鮮やかに感情を呼び起こす。「Sky 星を紡ぐ子どもたち」の特別講義「感情を伝える形と音」をレポート

画像(076)ゲーム体験を通じて,色鮮やかに感情を呼び起こす。「Sky 星を紡ぐ子どもたち」の特別講義「感情を伝える形と音」をレポート
 2020年1月22日に京都精華大学で,「Sky 星を紡ぐ子どもたち」iOS / Android)や「風ノ旅ビト」PS4 / PC / iOS)などで知られるthatgamecompanyによる特別講義「感情を伝える形と音」が開催された。
 講義を行ったのは同社でリードオーディオデザイナーを務める水谷 立氏と,背景3Dアーティスト&アートマネージャーの吉野令佳氏である。本稿では,その講義内容を紹介しよう。

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ゲームは幅広い感情を呼び起こす可能性に満ちたメディア


 アメリカのカリフォルニア州ロサンゼルスには,著名なエンタテインメント企業がいくつも存在している。観光名所として有名な海側には「リーグ・オブ・レジェンド」のRiot Gamesや「ゴッド・オブ・ウォー」のSIEサンタモニカスタジオがあり,そこから北へ向かい市内を抜け,ハリウッドをさらに北上するとDreamWorksやWalt Disney Animation Studiosのあるグレンデール,バーバンクといった地域へと続く。

 thatgamecompanyは,このロサンゼルス(サンタモニカ)で2006年に産声を上げたデベロッパだ。「Flow」「Flowery」「風ノ旅ビト」に続き,「Sky 星を紡ぐ子どもたち」(以下,Sky)を2019年7月に配信している。

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 同社の開発チームは30人前後で,開発中はデザイナー(日本でいうところのプランナー),アーティスト,エンジニアといったすべてのセクションが混じり合ってアイデアを出し合っている。多くのカナダや北米のスタジオと同様に,thatgamecompanyでも,それぞれの開発者には専門分野を持ちつつも,他職種への理解があることが強く求められるそうだ。

水谷 立氏
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 さて,そんなthatgamecompanyのゲーム制作を語るうえで,最初に水谷氏から“感情”について説明があった。映像エンタテインメントの世界において,例えば映画は呼び起こす感情でジャンル分けされている。笑いならコメディ,緊張ならサスペンスといった具合だ。これはゲームにおいても同様であり,ゲームの仕組み自体が,こういった感情を呼び起こすデザインになっているという。

 しかし現状,多くのゲームは男性をターゲットとしている。ドラマやロマンスといった女性に受け入れられやすいジャンルのゲームは,実はあまり多くないのだ。日本にはノベルゲームというジャンルはあるが,これはゲーム内のストーリーが感情を呼び起こすのであって,ゲームの仕組みがその役割を果たしているわけではない。

 thatgamecompanyは,ゲームというエンタテインメントはもっと幅広い感情を呼び起こし,もっとたくさんの人に楽しんでもらえる多様性のあるメディアだと信じている。それを証明するためには,映画のようにゲームが文化としてより広く認知される必要があると考えている。

 そして,世界により広く認知されるためには,ゲームはプレイヤーの飢えを満たすものであり,プレイヤーを飢えさせてしまうものであってはならない。もちろんビジネスである以上,マネタイズは無視できるものではないが,thatgamecompanyのゲームは,すべての人たちが安心して触れられるメディアであることを目指しているという。

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「ビデオゲームは映画やほかのアートと同じくらい,もしかするともっとさまざまな感情を揺さぶれる可能性があると思っています。それをたくさんの人に気づいてもらえるように,どんな人でも触れられる世界を創造してインタラクティブメディアとしてのボーダーを広げていきたい。そのためには,ゲームは年齢や性別,人種を越えてすべての人にポジティブな感情を促すものでなければなりません」(水谷氏)


善意のつながりを促すゲームデザイン


 上記のような理想は,実際にthatgamecompanyのゲームデザインにも取り入れられている。他者と一緒に遊ぶゲームはたくさんあるが,そのほとんどは力を競ったり,より力の強い相手を倒したりすることを目的としている。その体験はすごく楽しいものだが,競争や暴力を好まないプレイヤーがその楽しさを求めていない。

 敵と戦うというデザインのゲームでは,人は敵よりも強力な武器を手に入れると,協力しようとしない(必要がない)。このため多くのオンラインゲームでは,一人では倒すことのできない強大な敵と魅力的な報酬を用意する。しかし,こうすると人は敵と報酬に価値を見いだすため,協力する他者を強く意識することはない。

 では,敵を弱くし,報酬の魅力を下げ,相対的に他者への意識の比重を高めてコミュニケーションを促すとどうなるか。武器や力を持っている状態では,それも難しい。なぜなら,武器を持って他者と出会った場合,すでにどちらかがいなくなっていることが多いからだ(傷つけあってしまう)。

 このことから,ポジティブな感情の体験をもたらしたいという理想を追求するためには,ほかのオンラインゲームの開発では誰も試したことのないようなチャレンジが必要になったという。

 「風ノ旅ビト」の開発では,さまざまなチャレンジがなされた。まず,武器,敵,イベント,派手なエフェクトやサウンド,アイテムの選択,そういった他者への意識の妨げになるような要素をほとんど取り除いた。次に,不安感を覚えるような茫漠とした風景にキャラクターを配置し,さらに,ゲーム内で出会う他者の数や頻度を減らして心細い環境を作り上げ,他者とつながりたいという欲求をプレイヤーに自然と抱かせた。こうすることで,誰かと出会ったときに,「あ,やっと人と出会えた……これで安心だ」と感じられるようにした。

「風ノ旅ビト」
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 荒涼とした砂漠の世界と,傷つきやすくちっぽけな自分。その対比によって,世界は恐れを抱く対象として映る。そういった世界で出会う他者だからこそ,つながりたい,理解したい,歩みを共にしたいと強く思うようになる。

 多くのゲームでは,自分は(主人公として)特別な存在である。仮想世界の自分は,現実よりもパワフルで才能に溢れた,無敵の存在であると感じてもらいたいからだ。そういった風潮の中,「風ノ旅ビト」では無力なプレイヤーキャラをデザインしており,それがゲームをつまらなくするかもしれないという迷いはあった。だが,それに挑戦したからこそ,ほかにない新しい体験を提供できたのではないかと水谷氏は語る。

 また,「風ノ旅ビト」の制作にあたって,従来のゲームでは当然のものとして考えられていた仕組みが,つながりを阻害してしまうことがわかった。そしてそういった要素を見つけるたびに,ゲームの仕組みを1から考え直さなければならかったという。下記は,その例だ。

【01】つながりを阻害する有限のリソース
 1つのアイテムを2人以上で取り合った場合,取れなかった人は自分のアイテムが盗まれたと思い,他者に敵意を持ってしまう。これはつながりとは逆方向の感情だ。

 これを改善するために,「風ノ旅ビト」の開発段階で,空高く飛んだプレイヤーの下にアイテムが落ちるようにした。この対応で他者に抱く敵意は消せたが,人の感情はそんな単純なものではなかった。今度は,自分の落としたアイテムが使われたときに,そのアイテムを取る苦労や時間を盗まれた,ただ乗りされたというような気持ちを呼び起こしてしまったそうだ。

 水谷氏は,それは人間として当然の感情であり責められることではない,そういう感情を呼び起こしたゲームに問題があると話した。最終的に,「風ノ旅ビト」ではアイテムをいたるところに配置し,しかも取っても消えないようにした(触れると高く飛べる白い布など)。これによって,相手への敵意を完全に消すことができたという。


【02】物理的な障壁
 実は開発段階の「風ノ旅ビト」では,プレイヤーキャラ同士に接触判定があり,お互いに触れあったり押し合ったりできたそうだ。これは行く手を阻む障害を,プレイヤー同士が持ち上げたり押し上げたりしながら乗り越えていってほしいと思ったから入れたものだった。

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 しかしそこには悲しい現実が待っていた。プレイヤーキャラが相手に触れられるようになると,他者をオブジェクトに押しつけたり崖から落としたりするようになったのだ。ただこれも,プレイヤーを責めてはいけない。新しい世界に降り立つと,人は試そうとする。学習欲から,その世界でのルールを知ろうと思う。これは現実でも仮想空間でも一緒なのだ。

 そこで,「風ノ旅ビト」では接触判定は削除。代わりにプレイヤーキャラが重なりあうことで,空を飛ぶためのエネルギーが回復するようにした。これによってほかのプレイヤーが,自分のリソースとして重要なもの(好ましいもの)になり,より他者と積極的につながるようになったという。

 人のつながりを深めるのは,“喜ぶ”“分かち合う”といった感情なのだが,それらを呼び起こす前に,どうやって人とつながるのかという問題を解決するために,ゲーム側からさまざまなアプローチが必要だったそうだ。


【03】現実世界のアイデンティティ
 現実世界のアイデンティティも他者とのつながりを阻害する要素になり得る。
 例えば名前。実在する有名な人物を揶揄するような名前をつけたプレイヤーがいるとする。それは,他者にとっては自分が見たくない名前を強制的に見せられることにつながる。この体験は,すべてのプレイヤーにとって望ましいのだろうか。「風ノ旅ビト」では,ゲーム内で助け合った他者のラベルを,エンディング後に表示するようにした。「Sky」では,さらにこれを推し進めて,フレンドに自分で名前をつけられるという独創的なシステムを採用した。

 テキストチャットやボイスチャットも,国籍や人種を越えてつながりを生みだしたいという目標をもったときに,マイナスに作用することがある。「Sky」にはテキストチャット機能はあるが,誰にでも使えるわけではない。他者とフレンドになり,かつお互いに承諾して初めて利用可能になる。

 「風ノ旅ビト」でなされた工夫の数々は,「Sky」にも継承された。そうやって,人種や国籍,普段ゲームをやっているかすら問わず,すべての人をターゲットに制作を続けた結果,開発作業に実に7年もの歳月をかけたという。

 「Sky」で揺さぶりたいと思った感情はつながりだけに留まらない。つながりをとおした他者への深い思いやりや,他者と一緒に体験するおどろきやわくわくを与えられることを目指している。“雲の中の王国で目覚めた星の子供として,空から落ちた星々を天に返す”というメインストーリーはあるが,より間口が広くなるように,なじみやすいソーシャルコミュニケーションをふんだんに取り入れた。

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 また,「Sky」ではプレイヤーに心地よく自由に過ごしてもらえるように,「風ノ旅ビト」に比べて鮮やかでバラエティに富んだ世界を用意した。テキストに頼らず環境にストーリーを語らせるという手法は「風ノ旅ビト」から変わらないが,「Sky」では前に進むために,より他者とのつながりが重要になっているという。

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意図を伝えるアート


吉野令佳氏
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 さて,水谷氏がthatgamecompanyのゲームへの取り組みを一通り説明してくれたあとは,背景3Dアーティストの吉野氏が,thatgamecompanyがゲームというメディアをとおしてやりたいことを実現するために,アートがどのように貢献しているかについて話してくれた。

 はじめに,thatgamecompanyでは,プレイヤーたちの心を動かすためにどのようなゲーム体験を作りたいかをチーム全体で考える。同じ体験を作ろうとしていても,どのような手法を取るかは開発者によって異なるからだ。平和を感じる美しい景色,難しいチャレンジを乗り越えたときの達成感,畏怖を感じられる壮大なエリア。そういった,さまざまな角度からアートやゲームデザインに取り組んでいく。

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 そして仮想世界を作るうえで,アーティストとしてこのメディアをどれほど活かせるかを考えることも重要だという。現実世界の感覚やルールを保ちながら,どうやって仮想世界をもっとエキサイティングな世界にできるかを熟考する。

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 例えば海の中の世界,重力の法則が異なる世界,スケールがとても大きな……あるいは小さな世界,現実にあって当然のものがない世界等々。色々なパターンを考えながら,おもしろい世界を作る努力をしている。開発者によってアプローチが異なってくるので,アーティストやデザイナー,全員の長所に合わせて,最も良い成果を引き出せる組み合わせで,ゲーム内のエリアを作っていく。


●「Sky」における象徴的な3つの場所

【01】草原
 草原は,チュートリアル後すぐにプレイするマップだ。つまり,ここはまだ初心者が集まる場所でもある。ゲームの初期段階でプレイヤーを迷わせると,そこで脱落してしまう可能性があるので,このエリアで一番重要なのはシンプルで次のゴールに導けるデザインだった。

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 例えば,このエリアで一番目立つ奥の岩。これはプレイヤーたちに見逃してもらっては困る,ゲームのコアループに関わるクエストのある場所だ。そのほかに数か所ほど目に付くオブジェクトがあるが,それ以上にこの大きな岩を目立たせなくてはならない。そして,次のエリアへの導線をはっきりさせるために,最初に着陸した場所からゴールまで道を描いてプレイヤーを誘導している。

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【02】峡谷
 このエリアは明るく“ハイペース”で,ゲーム内でもっともドキドキ感が高まるエリアだ。「Sky」の世界において,古代文明が一番盛んだった時代が描かれている。また,ここまで来たプレイヤーたちは迷わなくなってくるので,アートの自由度も高まる。宙に浮いている建物や,地球儀,スケートリンク,レースコースなど,さまざまな新しいコンテンツがこのエリアに含まれている。これは,昔の精霊たちの贅沢な暮らしを表しつつプレイヤーにも新しいゲームプレイを提供している。

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【03】書庫
 古代文明の知識が眠っている,古くて静かな図書館のような場所。神秘的な場所だが,草原とは違う意味でやすらかで,峡谷とは違う意味で壮大なアートになるよう制作されている。宇宙に浮いているような,現実と夢の狭間にいるような,ドリーミーな雰囲気を目指したとのこと。

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 このようにいくつものエリアが「Sky」にはあるが,それぞれのエリアが,異なる感情を呼び起こせるように意識してアートが作られている。


●実際にアートはどのように作られているのか

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 吉野氏は,先日まで行われていたシーズナルイベントを例に,アートの制作工程を説明してくれた。
 このシーズナルイベントはクリスマスや,ハヌカ(ユダヤ教のお祭り),新年といった時期と重なっていた。だが,クリスマスのような特定のテーマではなく,“この時期”が人々のどういった感情を呼び起こすのかに着目した。この時期は宗教などとは関係なく,家族を思いやるような温かいイベントが多い。親しい人とディナーテーブルを囲んでぬくもりを感じる。これは文化に関係なく世界中の人に理解される,この時期のイメージだ。そこで,アイテムのデザインなども温かさというテーマを中心に,コンセプトが作られていったという。

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 全体のテーマが決まったので,次はエリアごとのストーリーを考えた。「Sky」のストーリーは,精霊たちにもらえるエモートと関連していなければならない。

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 「Sky」の各エリアは人生のステージを表している。孤島は生まれた時期,草原は幼少期,雨林は思春期……そして最後の書庫は死と向き合ったあとの時期を表している。この季節に出てくる精霊たちは,そのエリアに合わせて年齢感が設定されている。孤島は年下の弟,草原は妹,雨林は年頃の男性,そして書庫はおじいさん。そこでもらえる感情も,エリアのテーマにそって作られているという。

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 エモートやアイテム,新しいエリアも,このイベントに合わせて制作された。この段階でクリエイティブだけでなく,プロダクションからも制限が入ってくる。今のところthatgamecompanyでは,イベントのイントロやフィナーレのシネマティック,シングルプレイヤーのエモート,マルチプレイヤーのエモート,プレイヤーのポーズ,新しい楽器のアニメーション,それらをすべて一人のアニメーターが制作している。そのために作業量と優先順位を調整しなければならない。そこで,作業量が軽めのアニメーションを優先して制作し,そこからバランスをとってプレイヤーに提供している。アニメーションだけでなく,3Dモデルやサウンドなど,ほかの項目についても優先順位をつけて制作される。

 なお,このワークフローはアートに限定したもので,デザインやエンジニア,運営チームも平行して動いている。このため,いつも順調に進むとは限らず,時にはコンセプトまで戻って,いったりきたりすることもある。その往復が少なくなり,すべてのチームが同じ地点にたどり着いたら,そこから最終的なリリースまでに残された期間をクオリティアップに使うという。

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●より専門的なクリエイティブ手法(3DCG)

 「Sky」ではプレイヤーに対して,スケールがとても大きく感じられるように世界を作っている。それを可能にするにはいくつかのルールがある。「Sky」の世界に存在する精霊やNPCはプレイヤーと比べて大きく作られている。階段やドアなども,現実とは少し異なるスケールでゲーム内に入れて,世界の大きさを表しているという。

 また,「Sky」はモバイルゲームなので,世界を大きく見せつつもファイルサイズを小さくする必要があった。そのために,バーテックスカウント(ポリゴンの頂点数)を低めにしている(これはローポリゴンとは少し異なるという)。そしてアーティストは,最小限のバーテックスで何を表現できるのかに,常にこだわっている。

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 限られたリソースの中で多彩な表現を実現するため,thatgamecompanyではUVテクスチャのテクニックを工夫している。「Sky」では,よく使われているテクスチャのほか,“ランプ”と呼ばれるテクスチャのテクニックを使っている。UVアンラップをしたあとに,バーテックスを引っ張ったり上下に動かしたりすることで,このテクスチャ2つだけで,様々なオブジェクトに適応して,それだけでたくさんのアセットを作れるようにしたそうだ。

 ちなみに,1つのヘアスタイルを作るのに,大体1.5から2時間を要するが,ランプのテクニックを使うことで効率的に着彩ができる。ちゃんとしたUVアンラップがなくても色がついていくように工夫されていると吉野氏は話す。

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意図を伝えるためのサウンド


 thatgamecompanyにおけるアートの役割の紹介を終えると,再び水谷氏が登壇。アート同様に,ゲーム内におけるサウンドの役割について話した。まず,「Sky」のサウンドデザインに求められた要素は,下記の2つだという。

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【01】情報だけではなく「感情」を伝えること
 既存のゲームでは,音楽と効果音で役割を分けることが多い。音楽が感情を揺さぶり,効果音が場所や体力,攻撃があたったかどうかといった情報を伝えるといった具合だ。「Sky」では開発者が届けたい感情を,効果音でも伝えることを求められたという。


【02】人と人のつながりを音で感じさせること
 「Sky」では,ただ場面に合った音を鳴らせばいいというわけではなく,テーマを考えながら制作することを求められた。アートは,ゲームの制作を始める前に仕様書を作成,表現する感情のポジティブ,ネガティブの度合いによって方向性をはっきりと分類していた。同じようにサウンドも,音の素材や質感を感情ごとに分類して,その分類からはずれた使い方をしないよう定義したそうだ。


●具体的なサウンドの制作例

 例えば空を飛ぶ音。空を飛ぶという行為は,「Sky」のプレイヤーにとって唯一の特殊能力である。なので,羽ばたき音や風切り音は,没入感や爽快感を高められるように,飛行速度などをリアルタイムに細かく反映してリアリティを追求している。

 3D空間で空を飛ぶという操作は,ゲームに慣れた人ならばともかく,誰にでもすぐになじめるものではない。なので,操作に失敗して壁にぶつかったり,地面に衝突したりしたときにネガティブな感情を起こさないよう,効果音に気をつけているという。

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 例えば障害物に当たったときは,鐘の音のような短く澄んだ,響いた音を鳴らしている。空中から地面に降りたときも,地上からジャンプして着地したときよりもスムーズでインパクトの弱い,衝撃感の少ない音が鳴るようになっている。

 「失敗した」「痛い」――そういった感情は,「Sky」において空を飛ぶという行為の中で伝えたいものとは真逆だった。リアリティを追求することで,必ずしも目指している体験に近づくわけではないという一例なのだそうだ。

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 “空”関連でもう1つ,雲についてだ。大人になると雲が水蒸気の塊であることを知るが,子供の頃は雲に触れたり食べたりするのが夢だったことが,誰しもあると思う。そこで「Sky」では,キャラクターが雲に触れたときに,音でフィードバックを返してあげたいと思ったそうだ。しかし,それは現実には存在しない音なので,水谷氏は想像するところから始めた。

 最初に思いついたのは,石鹸の泡の音だった。そこに,爽快感を加えるために炭酸飲料をコップに注ぐ音,熱いフライパンに食材を置いたときの音を組み合わせた。こういった行為は日常生活と密着していて,誰でも聞いたことがある。さらに,渇きや飢えを満たすポジティブな行動と強く結びついている。これらの音を録音して組み合わせ,雲に触れたときの音が完成すると,音がなかった時と比べて空を飛ぶ満足感が増したという。


●手をつなぐ音

 手をつなぐ音も,水谷氏がこだわったポイントだ。手をつなぐというのは,「Sky」を象徴する機能だった。人と人とのつながりを表す行為だけに留まらず,より多くの人がこのゲームにアクセスできるように,普段ゲームをあまりしない家族や友達の手を引いて,自分の好きな世界を見せてあげたいという想いから導入されている。これはゲームを好きな人たちから,普段遊ばない人たちにも共感の輪が広がっていってほしいという願いが形になったものだった。

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 当初,ディレクターから「手をつなぐ音を鳴らしてください。しかもその音は温かみを感じる音にしてください」というオーダーを受けた水谷氏は悩んだ。そもそも,手をつないだときに,音はほとんどしないからだ。

「温かい音とは何だ?」

 火の音……夏を感じさせる生き物の声……コントラバスやアコーディオンのような,なんとなく温かみを感じるような楽器の音……試行錯誤を重ねていく中でディレクターと話し合いを重ねてたどり着いた音。手をつないで,相手の存在を傍に感じる音。それは心拍音だった。

「気がついてみればすごく単純なことだった」

 心拍音は繰り返し鳴る音なので,それが耳障りにならないように気を使って,手をつないだ状態で静止しているときだけ,聞こえるか聞こえないかくらいのかすかな音として入れた。通常,ゲームに音を乗せるときは,端末やテレビのスピーカーで再生できないような低音は削ることが多い。だが,この心拍音に関してはその低音を残したまま実装しており,その低音が鳴ると,端末がかすかに震えるようになっている。プレイヤーの中には,その振動でこの音に気がついた人もいたそうだ。


●キャラクターの鳴き声

 チャット機能を持たない「風ノ旅ビト」と,チャット機能は仲良くなってからお互いの意志でアンロックされる「Sky」。どちらも,鳴き声はほかのプレイヤーとの重要なコミュニケーションツールだった。しかし「Sky」では,鳴き声はコミュニケーションツールに留まらず,ゲーム中の生き物に語りかけて,助けを得ることができる。その生き物たちは声に反応してキャラクターの体力を回復してくれたり,飛ぶだけでは届かない場所へ運んでくれたりする。攻撃手段を持たないプレイヤーにとっては,旅を続けるうえで助けとなる大切な存在だ。

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 「Sky」のキャラクターはみんな仮面をつけている。そのため,鳴き声の音色も温かみを感じる素焼きの笛の音色のような音にしようというのは早くから決まっていた。しかしそのバリエーション作りは相当に試行錯誤を重ねたという。

 「Sky」の世界で鳴き声のバリエーションを増やすためには,基本的に困っている生き物を助けて,そのお礼に鳴き方を教えてもらうということになっている。そのため開発段階では笛というコンセプトは守りつつも,鳥の声はソプラノリコーダー,マンタならオーボエといったように,なんとなくその生き物をイメージできるような楽器の音を使っていた。

 こうしたデザインは,世界観とのつながりを表すという意味では有効だった。しかし,生き物の特徴を模倣しただけの音色は,そのバリエーションで音色を変えても,キャラクターの差別化の役割は果たせてもコミュニケーションではそれ以上の役割を果たせないことがわかった。

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 そこで,もっと鳴き声自体を,つながりや感情体験といったゲームのコンセプトを支えるもののために使えないかと水谷氏は考えた。そしてたどりついたのが,同じ音色でも抑揚を変えるというアイデアだった。これによって,現実世界と同じように,そのときのプレイヤーの感情(喜びやがっかりなど)を表現するための手段として鳴き声が使えるようになったのだ。

 ゲーム内で動物のアイコンで表現されているのは,プレイヤーがアンロックできる鳴き声のバリエーションだ。鳴き声の種類を集めるほど,多彩な感情をプレイヤー自身が表現できるようになった。


●プレイヤーキャラクターのヘッドフォン

 「Sky」では,コレクションアイテムの1つに楽器があって,自由に演奏してコミュニケーションをとることができる。当初,ヘッドフォンはこの楽器を演奏しているキャラクター上に表示されるものだった。それから仕様が変更になり,イヤフォンをつけてゲームをプレイしてもらうことを暗黙のうちに推奨するために,イヤフォンを接続しているときにヘッドフォンが表示されるようになった。テキストに頼らないさりげない説明方法として,thatgamecompanyの方向性とも相性が良く,水谷氏はこの表現を個人的には気に入っていたという。

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 ただ,現実世界で,会話をしているにも関わらず目の前の人がずっとヘッドフォンをつけていたらどう思うか。「この人,私の話をちゃんと聞いているのかな」と不安になるはず。豊富なアイテムでキャラクターをカスタマイズするのは楽しい要素だが,身に付けたアイテムのせいで相手に壁を感じさせてしまっては,つながりを深めるという観点と逆行している。

 そのためヘッドフォンは,最終的に外部の音楽アプリを再生しているときに表示されるようになった。外部の音楽を聴いているということは,ゲーム内の音楽を聴いていない可能性がある。目の前で一緒に遊んでいるのだが,自分が体験している要素の一部を,相手は体験していないかもしれない。そのことを,相手に伝えるための機能としてヘッドフォンを使うことにしたという。

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 ヘッドフォンの仕様を変更する代わりに,ゲーム開始時にイヤフォンの使用を推奨するテキストが入った。これは,音の品質を自慢しているようで水谷氏は好きではなかったそうだ。しかし,iPhoneなどでミュートスイッチをオフにしたまま,その存在に気がつかない人たちが多くいることがわかった。実際,βテスト中に「sky」は音のないゲームなのだと思われたことが多々あったという。このテキストを入れたことで,音があることを伝えられ,結果としてユーザーエクスペリエンスを向上させることができたそうだ。


●楽器

 「Sky」で楽器を演奏する際のインタフェースは独自のユニバーサルデザインを目指している。バックグラウンドで鳴っている音楽のキーに合わせてスケールが転調する“移動ド”という形式の上下2オクターブのインタフェース。ダイヤトニックといって,ピアノでいう白鍵だけで構成されており,上下の並びは常に長六度または短六度の関係になっている。この仕様のおかげで,適当にボタンを押していくだけでも常に音楽と調和した演奏を楽しめるのだ。

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 なお,お察しのとおり,“移動ド”の仕組みは既存曲を演奏する際には妨げになる。同じボタンを押しても,バックグラウンドの音楽によって異なる音が出るからだ。水谷氏はそれを避けるために,演奏中のプレイヤーをその場に座り込むようにし,このときにはBGMがフェードアウト,それにあわせて転調もしなくなっていくような仕組みを入れたそうだ。

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 楽器にはもう1つ,他者とのつながりを感じさせる仕組みがある。楽器のインタフェースを開いた状態で楽器を演奏している他者に近づくと,他者が演奏しているボタンのアニメーションが,自分のインタフェース上に表示されるようになっている。これはゲーム中で,お互いに楽器の演奏を教え合うということを期待して入れた機能だ。

 楽器に関しては,当初はピアノのようなインタフェースも検討に上がった。しかし,ピアノのインタフェースは経験者にとっては魅力的だが,そうでない人にとっては自分とは関係がないものだと無意識に受け取られてしまう可能性があった。実際に現実世界で鍵盤に触れたことのない人は少ないと思うが,ピアノの配置は隣り合った2つの鍵盤を同時に押してしまうことで生まれる不協和音や,スケールからはずれた鍵盤を簡単に押せてしまうことによって不穏な響きが生まれてしまう配置でもある。多くの人は,これが原因でピアノは敷居が高いと感じた経験を持っている。

 繰り返すが,「Sky」のコンセプトは誰でも触れるゲームだ。楽器演奏についても,現実世界での経験の有無に関わらず,誰でも適当にボタンを押していくだけで,音楽と調和する美しいハーモニーを奏でることができる。さらには,なんとなく自分が上手に演奏できたなと思えるような体験を目指して,こういったインタフェースを採用するに至った。

 ただし,より高度な演奏をしたい人にとってこのインタフェースは妨げになっているという側面もある。今後,より幅広い遊び方ができるように,まだまだ実現したいアイデアがたくさんあると水谷氏は語った。


thatgamecompanyの願い


 これまで紹介してきたように,thatgamecompanyのゲーム作りは「他者とのつながり」「ポジティブな感情の体験」という大切な2つのコンセプトに基づいている。アートやサウンドといったゲームの一部分でも,それは変わらない。それどころか,作品に関わるすべての人が,今自分が行っていることがコンセプトをきちんと反映しているか,そのことを問いかけながら作業しているとのこと。

画像(001)ゲーム体験を通じて,色鮮やかに感情を呼び起こす。「Sky 星を紡ぐ子どもたち」の特別講義「感情を伝える形と音」をレポート

 リリース以降,世界中で「Sky」の交流の輪は広がり続けている。サーバーも世界共通なので,全世界のプレイヤーといつでも出会うことができる。ジェスチャーとサウンドによる交流がメインだから,驚くほど簡単に世界中のプレイヤーと友達になり,一緒に遊べる。政治の世界では摩擦のある国のプレイヤー同士でも,深い友情が毎日育まれている。人種,性別,年齢を超えて,一緒にプレイできるゲーム――thatgamecompanyの願いは,確かに世界に届きつつある。

画像(077)ゲーム体験を通じて,色鮮やかに感情を呼び起こす。「Sky 星を紡ぐ子どもたち」の特別講義「感情を伝える形と音」をレポート

 「Sky」の世界は常にカラフルで,平和で,安全というだけではない。不安や恐怖を感じさせることもある。だがそれは,プレイヤーを嫌な気持ちにさせたいわけではない。世界の大きさに対して,自分の小ささを認識することで,協力して困難を乗り越えることを促し,それによって絆を深めてほしいという意図が込められている。

 自分自身が完璧な存在ではない,無敵ではない――それを認めることは,その中で他者に対して自分が何ができるのかを考えさせる。それは自分自身を振り返り,自分がどういう人間であるのかを知り,自分が他者にとってどういった人間になれるのかを考えることにつながってくる。

画像(080)ゲーム体験を通じて,色鮮やかに感情を呼び起こす。「Sky 星を紡ぐ子どもたち」の特別講義「感情を伝える形と音」をレポート

「人々をつなげて,多様な感情を揺さぶる。それがthatgamecompanyのポリシーです」

 そのポリシーの先に,ゲームという体験をとおして,自分という人間の価値に気づいてもらえたら,その手助けができたら――水谷氏や吉野氏は常にそう願っているそうだ。

 最後に,水谷氏はthatgamecompanyに寄せられた1通の手紙を読み,講演を締めくくった。

 Sky開発チームの皆さん,私は67歳になるお婆ちゃんです。私はこれまでテレビゲームで遊んだことはありませんでした。マリオでさえです。ゲームの中でどうやって歩くのか,ジャンプするのか,空を飛ぶのかわからないままとにかくSkyを始めてみることにしたのです。

 今日,ゲームの中でできたお友達が,私を最終ステージまで連れていってくれました。それはとても難しく,ご想像のとおり私は上手く操作することができませんでした。それで30分かけて,元いた安全な場所へ引き返すことにしました。その道すがら,私はずっと泣いていました。友達に手を引かれて安全な場所へ戻りながら,このゲームは私がどういう人間なのか教えてくれたことに気がついたからです。

 私は自分で思っていたよりも,ずっと人を愛することが好きで,孤独でいることを恐れる人間だったのです。この年になった私に,お友達を作る勇気をくれてありがとう。この年になった私に,また新たに人を愛することができるのだと気がつかせてくれてありがとう。

 追伸:孫と一緒にSkyをプレイできるように新しいタブレットをプレゼントしようと思っています

画像(081)ゲーム体験を通じて,色鮮やかに感情を呼び起こす。「Sky 星を紡ぐ子どもたち」の特別講義「感情を伝える形と音」をレポート

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