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東京レトロゲームショウ2015:第31回 「覇邪の封印」の生誕30周年が近いことに気付いたので,勝手に祝う
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印刷2015/12/10 12:00

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東京レトロゲームショウ2015:第31回 「覇邪の封印」の生誕30周年が近いことに気付いたので,勝手に祝う

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今週のテーマ:理不尽さを愛でていくスタイルで遊ぶ

 数あるゲームの中には「ここが面白い」と一言で言えないのに,なぜかずっと心にひっかかってしまうタイトルがある。今週の「東京レトロゲームショウ2015」では,(筆者の中では)そんな稀有なタイトルの一つである,工画堂スタジオが1986年にPC-8801版で発売したRPG,「覇邪の封印」を取り上げよう。

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 本作は,プレイヤーが勇者となって世界の危機を救おうという,設定としてはとくに凝ったところはなく,システムも見ようによってはオーソドックスなスタイルに見えなくもない古き良きRPGだ。舞台は剣と魔法が支配する異世界であり,当時は“異次元ソフト”などと呼ばれていた。
 前述のとおり,本作は工画堂スタジオがまず,1986年にPC-8801で発売。その後,PC-9801,FM-7,X1,MSX,さらにファミリーコンピュータ(以下,ファミコン)やセガ・マークIIIといったコンシューマ機にも移植されている。実に派手な移植っぷりである。

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プロジェクトEGG「覇邪の封印」紹介ページ

(C)KOGADO STUDIO
(C)2009 D4Enterprise Co.,Ltd.


 そんな本作が2016年で生誕30周年を迎えるというのが,今回取りあげた理由の一つ。タイトルを選んでから気付いた,というのはここだけの話だ。
プロジェクトEGGには,覇邪の封印の続編に当たる「アルギースの翼」もある。覇邪の封印もアルギースの翼も全部500円(税抜),つまりワンコインで遊べてしまう。さすが21世紀
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 もう一つの理由は,筆者が覇邪の封印のセガ・マークIII版のプレイヤーであるということ。要は,PC版を一度遊んでみたかったのである。当時ファミコンではなくセガ・マークIIIを買ったことで,いかに異次元のゲーム体験ができたのか,いかに人格形成をミスったのかについても言及したいところだが,長くなるのでそれは日記帳にでも書こう。
 なお,D4エンタープライズが運営する「プロジェクトEGG」では,PC-8801,FM-7,X1,MSXという4プラットフォームの覇邪の封印が揃っているが,今回選んだのはPC-8801版。「せっかくなので最初のタイトルで覇邪ろう」という軽い気持ちで選んだだけで,とくに深い理由はない。

 そんなこんなでさっそく紹介に入るが,本作最大の特徴は,PC版でもコンシューマ機版でも,発売されたすべてのバージョンに布などの素材でできたマップと,主人公を模した小さなフィギュアが付属している点である。驚くほどのことでもない気もするが,これらが単なるオマケではないところがポイント。

プロジェクトEGGでは各タイトルのマニュアルをPDFファイルで確認できるが,マップもPDFでダウンロードできるようになっていた
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 マップはグリッドが切られ,マス目が付けられている。そしてそのマスは,ゲームのフィールドマップと1対1で対応しているのだ。
 実は本作にはゲーム内にワールドマップがなく,このマップの存在がかなり重要となる。PC版とコンシューマ機版では少し事情が異なるのだが,少なくともPC版の冒険開始直後は,この物理マップがほぼ必須。ゲーム内のミニマップだけでは,自分がフィールド上のどこを歩いているのかを把握することすら難しい。

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冒険開始直後の画面。左下がミニマップなのだが,1マス(つまり主人公が立っている場所)しか表示されていない。ちなみにコンシューマ機版は,もう少しミニマップの視界がひらけた状態で始まる
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街で千里の玉遠めがねといったアイテムを購入すると,ミニマップが少しだけ広くなる……のだが,マニュアルをちゃんと読んでいないと,物理マップがあっても「そもそも開始地点はどこや?」となるだろう。筆者がそうなったから書いているわけだが

マニュアルには「主人公はアルカスの出身である」的なことが書いてある。マップを見ると,左下のあたり「ARKAS」というお城があるのでたぶんそこだな,と。確信はなかったが,物理マップを見ながら北に3歩進むと森に入ったし,南に一歩進むと海におっこちた。だからたぶんここだ,みたいな
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 特定のアイテムをNPCから購入することでミニマップの視界を広げることができるが,それまでは,一歩一歩,物理マップで自らの位置を確認しながらフィールドを移動することになる。フィギュアは,その現在位置を物理マップ上で示しておくために付いている,というわけだ。

 画面に描かれた風景はどのフィールドのどんな種類のマスにいても同じ。当該マスに“何か”があれば,画面の左奥にその“何か”が表示される仕組みとなっている。何かというのは,具体的には建物や敵のことで,その状態でコマンドから「チカヅク」(近付く)を選択すれば,建物に入ったり,敵とエンカウントしたりすることになる。もちろん,敵に近付いたら戦闘だ。

あ! 街だ!
というわけで入る
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あ! 敵だ!
というわけで戦う。無視もできるが,強制エンカウントになる場合も
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 本作の戦闘システムもこれまた独特。
 戦闘画面においてプレイヤーは「接近メニュー」から,「ニゲル」「ハナシカケル」「オドス」「タタカウ」「マジュツヒン」のいずれかを選ぶ。敵は常に単体で登場し,プレイヤーがタタカウを選ぶとキャラクターがその敵に攻撃する(ちょっとしたアニメーションもある)。その攻撃は必ず当たる。ミスはしない。
 こちらが攻撃すると同時に相手からの攻撃を受けるのもポイント。敵の攻撃ももちろん必中だ。こちらのターン→相手のターンという一般的なRPGの戦闘システムではなく「こちらが殴ると相手も殴り返す」(つまりお互い同時にダメージを受ける)という,常にノーガード&クロスカウンターな仕様なのである。

敵が複数出現することはない。1体の敵とHPの続く限り殴り合う
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フィールドは,森,山,砂漠,川,平地,橋,海などのマスがある。最序盤でも,砂漠などのマスにうっかり足を踏み入れると強敵と強制エンカウントしたりしてビックリ
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 これはプレイヤー側の仲間が増えても同じことで,戦うキャラクターを選んで攻撃させると,敵の耐久力(いわゆるHP)が減り,“攻撃したキャラクターの”HPが減る。一騎打ちである。

 一般的なRPGでは,敵の攻撃が仲間のうちの誰を攻撃するのかは分からないことが多い。しかし現実世界で自分が誰かと戦うことを想像すると,自分が敵に殴りかかっているのに,敵が友達に反撃するというのは確かに変だ。そう考えると,本作の戦闘システムは「よりリアルだ」と言えるのかもしれない。テンポも早くて好感触だ。
 ただし,仲間を引き連れていても攻撃を繰り出すキャラクターは常に一人なので,パーティの意義は少し薄めである。

 なお本作の戦闘においてニゲル(逃げる)という行為は100%成功する。逃げるとき,たまに「追撃」を喰らうことがあるものの,同レベル帯の敵ならいわゆるカスダメであり,問題なし。
 一方で,格上の敵が相手だと,この追撃によって即死したりする。そのせいで,序盤から身の丈に合わないエリアへいきなり進行することはできない。このあたり,実にうまくできている気がする。

フィールドではモンスター以外にも出会う。タビビトなど普通の人を倒すと,「チメイド」(知名度)が下がる。このパラメータはストーリー進行にとって重要なので,野蛮な行為は慎みたいところだ
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 ちなみにコンシューマ機版はPC版とは異なり,戦闘はランダムエンカウントで始まる。筆者は今回初めてPC版をプレイしたのだが,PC版とコンシューマ機版はタラバガニとズワイガニぐらいの程度でシステムが異なっており,なんだか恐る恐るプレイすることになった。PC版にチャレンジしようと考えている人は心の準備をしておいたほうがいいだろう。具体的にどう準備すればいいのかは分からないが。

 最後に装備品にも触れておこう。
 本作の装備品には摩耗度が設定されており,戦闘で敵を攻撃したり,攻撃を受けたりすることで剣や鎧などの装備品が摩耗する。摩耗度がゼロになると(新品になる気がする,というのはさておき)壊れる。壊れるというか,装備品のそのものが消えてなくなる。ああびっくりした。

フィールドで「サクセン」(作戦)→「モチモノヲ ミル」(持ち物を見る)を選んだところ。装備している武器,盾,鎧の能力や摩耗度,アイテムや知名度などをチェックできる
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冒険のお供に加わった鍛冶屋と呪い師。呪い師はいなくてよさそう。解雇したい
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 摩耗は,街のカジヤ(鍛冶屋)で直すことが可能となっており,おそらく序盤はしょっちゅう鍛冶屋のお世話になるはず。
 ただし,鍛冶屋は一定額のお金(高い)を支払えば雇うことが可能で,一度雇ってしまえば,以後,装備品は摩耗しなくなる。本作でプレイヤーが最初に目指すべきことは,まず鍛冶屋を雇うこと。そして前述した「ミニマップの視界を広げるアイテム」を買うことであると心得よう。

 実はプレイヤーのHPも,街にいるマジナイシ(呪い師)に頼んで回復してもらう。呪い師も雇えるので「よし,これでHPは減らなくなるな」と思っていたら,ただ回復アイテム(自腹)を自動で使ってくれるだけだった。そんなバカな。

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 覇邪の封印は,クラシックなグラフィックス,理不尽なキャラクターの死にパターン,現代のオーソドックスなRPGとの微妙なシステムの違い,開発者の茶目っ気が感じられるテキストなどから,「これぞれまさにレトロゲーム」という醍醐味を味わえる作品だ。街やフィールドで遭遇するNPCの話を聞いて,次にプレイヤーが何をするべきかを考えるという楽しみもある。はっきり言って,ちゃんと話を聞いていても「絶対気付かない」と思える謎解き(?)もあり,全体的な難度はかなり高めだ。

 発売当時に遊んでいたらまた話は別だと思うが,今ならそのピーキーに感じる作りすらも愛でることができるはずである。レベル上げやお金稼ぎといった作業がある,BGMはナシ(コンシューマ機版にはある),といった明確なマイナスポイント(筆者はレベル上げは好き)もあるが,日本のRPG史に名を残した名作として,この記念すべき30周年を機に遊んでみても損はないだろう。

多くの街では,まず長老に話を聞きに行くことになるだろう。だいたいは第一声でキフ(寄付)を求めてくるので唖然とするが,見返りに情報をくれる。寄付しなければ一切話をしない,というスタイルにシビれる
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 ちなみに筆者は今でもごくたまにセガ・マークIII版を起動して遊んでいるが,カートリッジのバッテリーがとっくのとうに寿命を迎えているためセーブができない。発売当時,極めてちびっこだった筆者はソフト開封の数日後に布製マップを紛失してゲームを進められなくなったのである。リベンジは,このPC版でなんとかすることになりそうだ。
 なお,本作のMSX版は冒険の続きを遊ぶために長いパスワード(いわゆる“ふっかつのじゅもん”)が必要だったが,プロジェクトEGG版ではクイックセーブ/ロードが可能となっている。「MSX版でリベンジを」などと考えている人にもおすすめだ。

生身で海のマスに入ると,潮に流されて思わぬ場所に辿り付くことも。辿り付いた先の洞窟で強敵と強制エンカウント,逃げようとして追撃を受け即死,というパターンもあります。がんばってね
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