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印刷2014/10/30 00:00

インタビュー

絶対に“Pay-to-Win”にはしません――「LORD of VERMILION ARENA」のαテスト直後にゲームの方向性からサービス形態まで開発陣に詳しく聞いてみた

 スクウェア・エニックスは2014年10月17日から19日に,新作PC用オンラインゲーム「LORD of VERMILION ARENA」(以下,LoVA)のαテストを実施した。

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 アーケードゲームの同シリーズ最新作「LORD of VERMILION III」(以下,LoV III)の全国大会で電撃発表(関連記事)されて以来,話題を集め続けている本作。4Gamerでも,αテストのプレイレポートを掲載しているが,そちらで唯一の懸念点は「マネタイズ」という要素だけだと述べている。

 このサービス形態を含め,現在でも“未定”とされている点が多い本作について,シリーズプロデューサーでお馴染みの柴 貴正氏,タイトルプロデューサー 和賀 潤氏,ディレクター 黒木 崇氏の3名にインタビューする機会を得た。LoVA開発の経緯から,αテスト後の調整内容,正式サービス後の展開戦略,シリーズ作品との関連性まで,「LoVA」について気になることをいろいろと質問してみたので,本作が気になっている人は,ぜひ最後まで読み進めてほしい。


「LORD of VERMILION ARENA」公式サイト


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市場にライバルが少ない今だからこそのPCゲーム


4Gamer:
 本日は,よろしくお願いします。最初に,皆さんの「LORD of VERMILION ARENA」における役割について,簡単に教えてください。

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柴 貴正氏(以下,柴氏):
 僕はシリーズプロデューサーとして,大枠の部分を埋める仕事をしています。ゲームコンセプトを作ったり,売り出す市場を決めたり,といったことを考える役割ですね。LoVAでは,LoVシリーズとしての監修役も受け持っています。あとは,会社の上の人に怒られたり,怒られたり。あとは,怒られたり……。

一同:
 (笑)

和賀 潤氏:
 僕はコンセプト部分の練り込みや,サービス全体の戦略と計画の策定,実際の運営に関する仕事についてを受け持っています。

黒木 崇氏:
 私の仕事は,2人からいただいたお題をゲームに反映することです。プリプロ(試験的な動作段階)までは,3人で意見交換を行いながら作っていますが,最終的なゲームへの落とし込みは自分の役目になります。

4Gamer:
 分かりました。では,LoVAという企画そのものについて教えてください。そもそも,この企画が始まったキッカケは何だったのでしょうか。

柴氏:
 どこから話そうかな……せっかくなので,最初からお話しましょうか。

4Gamer:
 ぜひお願いします。

柴氏:
 僕は最初,エニックス(現スクウェア・エニックス)に入社して「ディプスファンタジア」などのプロデュースを行っていました。会社が合併してスクウェア・エニックスになった後は,コンシューマゲームの「ドラッグオンドラグーン」「ドラゴンクエスト 少年ヤンガスと不思議のダンジョン」に関わっています。
 「LORD of VERMILION」は,そういった経験を経たあとに制作したタイトルでした。そこでアーケードゲームのお客さんと初めて触れた時に,その熱量に対して「ゲームとしての正しさ」のようなものを感じたんですよ。

4Gamer:
 「正しさ」ですか?

柴氏:
 アーケードゲームのお客さんは,遊びに対してとてもシビアなんです。お金を払い続けなければ遊べないから,面白くなかったらすぐに切り捨てられます。

4Gamer:
 パッケージのゲームと違って,お金を払ってくれるかどうかはゲームの面白さ次第ですね。

柴氏:
 その「面白かったら継続するし,つまらなかったら止める」という姿勢は,嗜好品であるゲームに対する意識として,非常に「正しい」んです。

4Gamer:
 なるほど。ゲームセンターまで遊びに行って,そのうえでお金を払うわけですから,アーケードゲームに対するプレイヤーの目は,かなりシビアになるはずです。

柴氏:
 だからこそ,お客さんと本気で向き合って,ガチの殴り合いをする覚悟がなければアーケードゲームの運営を続けることはできません。僕にとって,そんな“殴り合いの距離感”が本当に楽しいんですよ。その経験から,次の作品を作るときも,お客さんと殴り合える場でゲームを作ろうと考えたわけです。

4Gamer:
 それがPCというプラットフォームだったわけですか。

柴氏:
 はい。母数の多いPCユーザーの中には,アーケードゲームのお客さんと同じ熱量を持ったゲーマーが確実に存在するはずです。ならば,PCという場でも,今まで培ってきた自分の考え方が通用すると考えました。

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和賀氏:
 僕は,もともとオンラインゲームの運営畑で,「ファンタジーアース ゼロ」の運営にサービス初期から2008年まで参加していました。その流れでLoVのPCプロジェクト化をやってみないかと誘われました。そのときに今のお話を聞いて,僕もこの市場に対する同じ思いがあったので,その姿勢に共感しました。そして,LoVAの企画を立ち上げることになったのです。

4Gamer:
 なるほど。とはいえ,現在の国内におけるPCプラットフォームの市場は,必ずしも大きいとは言えない状況にあります。そこに何か,勝算はあるのでしょうか。

柴氏:
 先ほどお話ししたとおり,PCゲーム市場には上質なお客さんがたくさん潜んでいるんですよ。なのに,「マーケットが駄目」というふんわりとした理由で,いま多くのライバルが撤退し始めている。逆に言えば,いまPCゲーム市場にはライバルが少ないということでもあるんです。

4Gamer:
 たしかに,そうとも言えますね。

柴氏:
 その状況で良い作品をリリースできれば,絶対に“刺さる”はずと考えています。だから僕らはいま,良いゲームを作るためにいろいろと頑張っています。今回は,その戦略部分や,僕らが考えていることをお話できればと思っています。

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LoVAを“普通のMOBA”にするつもりはない

国内ユーザー向けのチューニングを徹底


4Gamer:
 では,LoVAのジャンルですが,なぜMOBAになったのでしょうか。

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柴氏:
 僕らが相手として見ている,熱量を持ったプレイヤーさんにゲームを届けるにあたって,より適正なジャンルを探していたとき,和賀から提案をもらったんです。国内ではまだあまり手が付けられていないジャンルで,LoVらしさも出せるので,MOBAはこのプロジェクトに合致するジャンルではないか,と。

4Gamer:
 ただ国内では,「MOBA」というジャンルは,ハードルが高いと思われています。その点において,何かしらの対策は用意していますか?

柴氏:
 おっしゃるとおりです。ですから,僕らはLoVAを“普通のMOBA”にするつもりはありません。日本のお客さんに合わせた,新しい遊びを提供したいと思っています。

4Gamer:
 αテストに参加してみましたが,一般的なMOBAと比較してみたときに,確かにLoVAには特殊な要素が多いように思えます。とくに,国内向けを意識してチューニングした部分があれば教えてください。

和賀氏:
 企画立ち上げ時に,既存MOBAとの差別化と国内サービスを意識したコンセプトを考えました。それが「プレイ時間短縮化」と「デッキビルディング」要素の導入です。さらに,日本ではふんわりしたオンラインコミュニティに属している人が多いので,ソロや野良で遊ぶ人に対しての「間口の広さ」も重視しています。最後に日本受けする「ビジュアル」です。

柴氏:
 まずは,プレイ時間を最大15分まで縮めて,気軽に楽しめるルールを整備しました。ただ,それだけでは遊びが薄くなるだけですから,そこに日本人が好きな「カード」と「デッキビルド」の要素を加えて,ゲームに深みを持たせています。

和賀氏:
 ビルド要素に関しては,内容が濃いほどゲーム性は深まりますが,初めて触る人は覚えるものが多くなると,それが高いハードルになります。ですので,種族をまずは覚えていただき,そのタイプを合わせるとシナジーになるといった,カードゲームならではの記号化された分かりやすさに注力しています。

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4Gamer:
 三人称視点が採用されている理由も,国内のプレイヤーを意識したためなのでしょうか。

柴氏:
 はい。国内では一般的なRTSの視点で展開するゲーム自体が敬遠される傾向にあります。ですから,LoVAではTPS視点を採用しました。

和賀氏:
 「ファイナルファンタジーXIV:新生エオルゼア」に近い操作感にしていますので,3DのMMORPGに慣れている人は操作しやすいと思います。

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黒木氏:
 LoVAは戦略ゲームで,視認するキャラクターも多いですから,全体を見渡せるRTS視点にするかは悩みました。ですが,さまざまな試行錯誤を重ねた結果,最終的にはTPS視点に落ち着きました。

4Gamer:
 「7vs.7」という,MOBAとしては珍しいルールについては,どういった理由から決定されたのですか?

和賀氏:
 先ほど述べた,ソロプレイなどで気軽な対戦を好む層に対して,ゲームの間口を広げるための方針です。気軽にゲームを楽しむためには,1人あたりの責任を減らす必要があります。それを実現するためには,多少でも人数を増やすルールが必要だと考えました。

4Gamer:
 ゲームシステムだけ見ても,本当に多くの独自要素がありますね。自分達の知っているMOBAを基準にLoVAのことを考えるのは,少々難しそうです。

柴氏:
 そうですね……改めて言っておきたいのですが,我々は本作のジャンルを「マルチ対戦アクション」としています。どちらかと言えば,対戦前にビルドすることや画面上のキャラクター数,操作性を考えると,全員が平等な条件かつマップリソースで戦略が楽しめる,MMORPGの対戦として見てもらったほうが,より理解できるかもしれません。

4Gamer:
 ああ,なるほど。言われてみれば,プレイ感覚はそうかもしれません。

和賀氏:
 目指す先は「MOBAの要素をうまく使った新しい対戦ゲーム」と考えています。MOBAに慣れたプレイヤーさんにも新鮮なゲームとして楽しんでもらえるよう,調整をかけていく予定です。

4Gamer:
 お話を聞いていると,LoVAは国内展開を重視されているようですが,海外への展開は視野に入れていますか。たとえばSteamへの対応であるとか,さまざまな方法が考えられると思うのですが。

和賀氏:
 まずは国内での安定したサービスを優先します。ですから,Steamなどでの海外展開を国内での展開と同時に行うことはありません。ただ,日本でのサービスが開始されたあとには海外での展開も考えています。

柴氏:
 この話については,いまの時点でイエス/ノーを言える段階ではありません。とはいえ,スケジュール的には順調に進んでいますので,答えが出るのは遠い未来の話ではないと思います。

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αテストの結果は良好

バランス関連は次回テストで大幅修正


4Gamer:
 続いて,10月17日から19日の3日間に実施されたαテストについても教えてください。その結果と反響はいかがでしたか。

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和賀氏:
 接続数とスケジュールに関しては,順調に事前目標を達成しました。このゲームならではの企画性の確認という,αテストの目的は成功できたと考えています。アンケートは現在集計を行っている途中ですが,コンセプトそのものについては非常に好意的な意見が多く,9割の方から次回のテストも参加したいと回答していただいています。
 ですが,ゲームバランスなど,まだ調整が行き届いていない要素もありますので,今後の課題として調整を続けていきます。次のテストでは,テスターの皆さんにバランス部分も評価していただけるよう,制作を進めていく予定です。

4Gamer:
 具体的な意見としては,どのような内容がありましたか?

黒木氏:
 一番多かったのは「レーン()とプレイヤーにおけるマナの取得バランスが悪い」という意見ですね。αテストのバランスでは,プレイヤーキルを取ったときの取得マナが非常に多かったため,ミニオン戦に目が向かなかったのが要因だと思われます。

※レーン戦,レーニング(laning)とも呼ぶ。あまり危険のないMob「ミニオン」狩りで経験値や所持金を稼ぐ,MOBAにおける序盤の展開を指す

和賀氏:
 集団戦でスキルを打ち合う,いわゆる「ぶっぱゲー」的な状況が生まれたのも,それに要因があると考えています。今後のバランス調整で矯正される部分ですので,この点を懸念されているプレイヤーさんはご安心ください。

4Gamer:
 ちなみに,私が感じた点なのですが,いわゆるレーニングの時間がほとんどありませんでした。これに関しては,仕様として考えて良いのでしょうか。

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黒木氏:
 今回は先ほどお話しした問題点による理由が大きく影響していると思いますが,そもそもLoVAでは,レーニングの時間を短縮することで,ゲーム全体の対戦時間を短くしています。そして,事前にデッキを構築すること自体が,レーニングに代わる要素になると考えています。αテストの段階ではその点が体感できない(カードの枚数が少ない)ので,レーニング要素が弱いというふうに見えてしまうのは,おっしゃるとおりでしょう。

4Gamer:
 使い魔の数が増えれば,どの組み合わせで出撃するか,じっくりと考えたくなりますね。

柴氏:
 それに,αテストにおける7vs.7のチューニングは,αテスト期間の3日間で使い魔1体1体のコンセプトが明確に遊べるように,大味な調整になっていますので。

4Gamer:
 なるほど。αテストですから,ゲームバランスの話はまだこれからですよね。

柴氏:
 そうですね。むしろ,ゲームバランスを語れるほど遊んでもらえたのは,本当に嬉しかったです。

黒木氏:
 お披露目的なαテストではなく,技術的/企画的な試験としてのαテストでしたから,3日間でログインができない,ラグでゲームにならないなど,(環境が)ちゃんと動かないことも考えられました。

4Gamer:
 実際は快適でしたね。というか,3日めにはもうデッキの試行錯誤が行われていましたし。

黒木氏:
 ええ。あまりに皆さんがうまいので,社内で驚いていました。

4Gamer:
 ちなみに今回のテストは,サーバー負荷テストでもあったと思いますが,その意味でのテスト結果はいかがでしたか。

黒木氏:
 結果を見る限りは良好です。まだ少し,各種処理状況にも余裕がありそうでした。

4Gamer:
 余裕があるところは,ほかに回せるといった感じなのでしょうか。

黒木氏:
 そうですね。もともとほかのプレイヤーの視界を共有するシステムは残す予定で,壁越しにキャラクターが透けて見えるシステムについては負荷の大きさから諦めるつもりでした。ですが,現状の結果から見る限りでは,こうした要素も今後の状況を見つつ,取捨選択できるかもしれません。

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Pay-to-Win要素は「絶対に導入しません」

基本プレイ無料&カードは個別購入可能に


4Gamer:
 では,まだ早いかもしれませんが,正式サービスに関しても教えてください。やはり気になるのは,サービス形態を含めた課金要素になると思います。

和賀氏:
 まず,最初に公言しておきますが,LoVAでは「Pay-to-Win()」要素は導入しません。それは,LoVAの企画立ち上げ時に決めていた合言葉の一つです。

※Free-to-Playを謳いながら実際は「お金を注ぎ込まないと勝てない/攻略できない」バランスのゲームに対して使われる皮肉的な言葉

4Gamer:
 ということは,キャラクターの強さに直結するような,アイテム販売は行わないと。

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和賀氏:
 はい。サービス形態は基本プレイ無料となり,基本的に強さに直結するものは,ゲーム内の対戦を通して手に入れられるポイントで,すべて購入できます。有料要素は,このポイントを貯める時間を短縮したり,アバターを購入したりなど,ゲーム上の強さとは無関係な部分で導入します。

4Gamer:
 なるほど,それはプレイヤーにとって嬉しい報せですね。

和賀氏:
 このサービス形態は,競技性の高い対戦ゲームとして本気で展開することを考えた場合,これしかないだろうと最初から決定していました。ですが,「基本プレイ無料」という情報だけがプレイヤー間で先走ってしまうのを避けるため,情報を伏せていました。

4Gamer:
 まあ,たしかにその情報だけだと,「札束で殴り合うゲームだろ?」と,あらぬ形で広まる可能性もありそうです。

和賀氏:
 できるだけこういった機会で,僕らがどんなマネタイズを計画しているのか,具体的に皆さんにお伝えしたいと思っていました。

4Gamer:
 分かりました。であれば,もう一つ気になるのは,使い魔カードの入手方法です。正式サービス時には,150種類が実装されるとのことですが。

和賀氏:
 使い魔カードも,対戦を繰り返すことで貯まるポイントを消費して購入できます。有料で代替できますが,基本的にはゲーム内ポイントで完結させられます。

4Gamer:
 カード入手は,やはりランダムパック,つまり“ガチャ”になるのでしょうか。

和賀氏:
 いえ。αテストで気づかれた方もいそうですが,そもそもカードにレアリティがありません。

4Gamer:
 そういえば,そうでした。

和賀氏:
 LoVAではすべてのカードは,“個別に指定して購入できる”ようにしてあります。それこそ150種類の使い魔をすべて集めようと思わなければ,ゲーム内のポイントだけで十分にデッキが組めます。

4Gamer:
 おお,個別購入はかなり嬉しいですね。ランダム排出だとばかり思っていましたから。

和賀氏:
 カードパックの要素は,ゲームの強さに影響しない排出バランスと,必要のないカードを再利用する方法があるのであれば,何が出るか分からないワクワク感という面白味がありますので検討もしました。
 ですが,LoVAでは種族を揃えるほどロール(役割)の性能が増すので,チームビルドで明確なロールを決めるときに,デッキを組みづらくなったりと,ランダム性による影響は大きく出てしまいます。そうなれば,結局「Pay-to-Win」になりますから,それを廃する方針を決めた以上は,個別購入が一番適していると考えました。

柴氏:
 この仕組みが……それはもう儲からないんですよ(笑)。でも,それが一番ゲームとして良いのならば,「それが良い」んです。

4Gamer:
 かなり思い切った感がありますが……。ちなみに販売形態は,カード単品での購入だけなのでしょうか。たとえば完成されたデッキの販売であるとか,異なる購入方法は用意されていますか。

和賀氏:
 もちろん,個別以外の販売形態も考えています。トッププレイヤーが使用したデッキのセット販売だったり環境に応じたさまざまな形態を想定しています。また,サービス開始後には期間限定で切り替わる無料使い魔も用意し,資産が多くない間も,いろいろなカードを試せる機会を作る予定です。

4Gamer:
 分かりました。それにしても,正直なところサービス形態については,かなり驚きの回答です。ただ,有料要素がこれだけであれば,そもそも運営が回らないと思うのですが。

和賀氏:
 売上は開発力やサービスに直結しますので,重要視しなければいけないところです。先に話したとおり,ゲーム上の強さは課金額に関係なく,時間をお金で買うポリシーであったり,強さと無関係な嗜好性で有料要素を充実させたりしています。具体的には,武器の見た目を含めたアバターのファッションや勝利ポーズ,声といった,キャラクターとしての個性を出す部分ですね。ゲームアナウンスなども変えられる予定です。
 このあたりは,僕がファンタジーアース ゼロを運営していたときのノウハウを,このゲームに合った形で最大限に生かしていきます。

柴氏:
 「League of Legends」(以下,LoL)に近い課金モデルに,プレイヤーのアバター要素をプラスしたものをイメージしてください。対戦ゲームとしての公平性を維持しつつ,ビジネスとして成立させるために,この形に落ち着きました。

和賀氏:
 何より長期的に楽しんでもらうことを第一に考えていますから,このゲーム性で「Pay-to-Winにはしない」という方針は必須と考えています。

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黒木氏:
 もうシステムは作りましたから,いまさら変えられませんし。もし使い魔はガチャとか言われたら,僕はディレクターを降りますよ(笑)。

一同:
 (笑)

4Gamer:
 いや,そこまでの覚悟を見せてもらえると,LoVAに対する本気度が伝わってきますね。

柴氏:
 PCのマーケットに参入するならば,お客さんとは本気で殴り合わなければダメですから。殴り合いの相手がそれ(Pay-to-Winの拒否)を望んでいるならば,僕らはその場を作るしかありません。
 
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