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「Oculus Rift」の最終製品版「CV1」体験レポート。新ジャンル「VRストーリーテリング」で,Oculusはプレゼンスの最大化を目指す
![]() ハリウッドの中心地にあるLoews Hollywood Hotel(ロウズ ハリウッド ホテル)にて開催中のOculus Connect 2。CEOのBrendan Iribe(ブランドン・イリベ)氏や,CTOのJohn Carmack(ジョン・カーマック)氏らが登壇する基調講演は日本時間の9月25日2:00時から4時間にわたり,TwitchのOculus VR専用チャネルで生配信される予定だ |
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開催中の第2回では,現地時間の9月24日に行われる基調講演に先駆けて,Riftの最終製品版こと「CV1」(開発コードネーム)と,同機を使った新たな映像デモが披露されたので,本稿ではその模様をお伝えしよう。
なお,4Gamerでは,9月20日に閉幕した東京ゲームショウ2015のタイミングで,Riftの専用コントローラたる入力デバイス「Touch」の体験レポートを掲載済みなので,そちらも合わせてチェックしてもらえれば幸いだ。
あらためてCV1をシゲシゲと眺めてみる
CV1自体は6月の時点で発表済みだが,今回のイベントでは実際にCV1を手に取って見ることができたので,まずはその特徴をおさらい気味に紹介してみたい。
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CV1とCrescent Bayとを比べた場合の大きな違いは,本体上面と側面,底面に配置される赤外線LEDを覆う部分が,布製になっている点だ。スピーカーグリルに使われるネット(サランネット)のような,ツルりとした感触の布が,本体の外部にぴっちりと張られた状態になっている。
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![]() 後頭部をサポートする三角形の部分も布で覆われている |
![]() CV1の右底面(画像では向かって左)にあるのが,IPDを調整するためのスライダー。機械式のため破損する可能性もあるが,今のところ「これ以外の実装方法が見つかっていない」(Oculus VR)という |
瞳孔間距離とは左右の目の間の距離のことだが,この距離を適切に調節しないと,頭と“被りモノ”のサイズ差以上に,その快適さに大きな影響をおよぼすという。そのため,左右のレンズを機械的に近づけたり離したりできる機構を設けることによって,目の前で映像をしっかり捉えられるようにしているというわけである。
![]() Riftを覆う布を外せば,内部のコンポーネントが丸見えになる。落下時の衝撃に弱そうな点が気がかりだが,Crescent Bayと比べるとはるかに軽量化されており,装着時の快適さは大きく向上した |
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インタラクティブ要素ナシの新デモ映像「Henry」でプレゼンスを体感
Oculus Connect 2では,東京ゲームショウ2015でも公開されていた「Toy Box」のデモを体験できるようになっていたが,体験コーナーには,さらに新しいデモが用意されていた。それが,10分ほどのVRムービー「Henry」だ。
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Henryを制作したのは,Oculus VRの内部開発部門であるOculus Story Studios。Pixar Animation Studios(以下,Pixar)のクリエイティブディレクターとしてショートアニメ「The Blue Umbrella」を陣頭指揮した経験もあるSaschka Unseld(サシュカ・ウンセルド)氏や,PixarでテクニカルディレクターだったMaxwell Planck(マックスウェル・プランク)氏らに率いられる,Oculus VRの新スタジオだ。
ゲームや3Dアニメ映画とは一線を画した,新しいジャンルの映像「VR Story Telling」(VRストーリーテリング)を専門に制作するため,2015年1月に発足したのだという。
さて,Henryは,人懐っこいハリネズミの主人公・ヘンリーを主人公にした子供向けの短編アニメーションである。ヘンリーは自分の愛情を示すため森の住人達にハグしようとするが,そのたびにお腹のハリが相手を傷付けてしまうため,なかなか友達を作ることができない。自分の誕生会を開くものの誰も祝ってくれる友達はおらず,バースデーケーキの前に並んだアニマルバルーン達のダンスを夢想し始める……という内容になっている。
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Oculus VRの幹部や,欧米で活躍するVRコンテンツのデザイナーは,「プレゼンス」(存在感/実在感)という言葉を標語のように利用する。
これは,仮想空間内に存在するオブジェクト(≒物体)が,あたかも実際にそこにあるかのように思わせる,仮想空間内での存在感のことだが,実のところこのプレゼンスは,(HMDを装着したことによって)耳の回りがむず痒くなったとか,映像のピントが少しズレていて気になるといった,身体レベルでの違和感や,テクスチャの粗さなどに代表される映像内のさまざまな要因によって,いともたやすく破壊されてしまう。
![]() VRストーリーテリングを体感できるHenryは,「Unreal Engine 4」で制作されている。インタラクティブ性は基本的になく,さらにボイスもないのだが,VRコンテンツの要(かなめ)となるプレゼンスが実現されている |
VR系コンテンツの宿命として,これ以上うまく説明するのが非常に困難なのが本当に申し訳ないのだが,「そこそこ長いデモだったな。5分くらいか」と思ったら,実際にはその倍,10分にもおよぶ映像だったと聞いて驚いたほど,筆者はHenryの世界に没入していた,と書けば,そのすごさの一端は感じてもらえるのではなかろうか。
Henryは,2016年第1四半期,CV1の出荷に合わせて,体験できるようになる見込みである。
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![]() オンラインでつながったホログラフの係員と共に体験できるToy Boxを,1人で黙々と楽しんでいたOculus VRのスタッフ |
「Rift」公式情報ページ(英語)
「Oculus Connect 2」公式情報ページ(英語)
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