カリフォルニア大学サンタクルーズ校でゲーム学を教える
ジェーン・ピンカード(Jane Pinckard)教授をモデレーターにして行われた,GDC 2012のセッションの一つ
「Back to the Garage: The Return of Indie Development」(ガレージへ戻ろう:インディ開発への回帰)。同セッションには,さまざまな角度から“インディーズゲーム開発のルネッサンス”を主張するクリエイター達が,パネラーとして参加した。参加者は以下のとおりだ。
【参加者】
- ジョーダン・メクナー(Jordan Mechner)氏
「カラテカ」「プリンス・オブ・ペルシャ」の生みの親
- ティム・スウィーニー(Tim Sweeney)氏
Epic Games創設者。Unreal Engineの生みの親
- ジョン・ロメロ(John Romero)氏
「DOOM」「Quake」リードデザイナー
- アダム・サルツマン(Adam Saltsman)氏
iOSアプリ「Canabolt」開発者
- マルクス・ペルソン(Markus Persson)氏
「Minecraft」(PC / Xbox 360)開発者
左から,ジョーダン・メクナー氏(Mechner),ティム・スウィーニー氏(Epic Games),ジョン・ロメロ氏(Loot Drop),アダム・サルツマン氏(Semi Secret),モデレーターを務めるジェーン・ピンカード氏(UCSC),マルクス・ペルソン氏(Mojang)
![画像ギャラリー No.002のサムネイル画像 / [GDC 2012]ゲーム業界はインディ開発の“ルネッサンス期”へ突入か。自由なゲーム開発形態について語られた「ガレージへ戻ろう」セッションレポート](/games/126/G012627/20120309015/TN/002.jpg) |
なんというか,そうそうたるメンバーである。そして,著名なデベロッパである点以外は共通点がないように思えてくる彼らだが,実は皆
インディーズゲーム開発者としての活動も行う開発者なのだ。
ティム・スウィーニー氏
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Microsoftレーベルで発売された「Gears of War」シリーズを手がけた,Epic Gamesのスウィーニー氏が壇上にいる点が不思議に思えるかも知れないが,同社は最近インディーズゲーム開発メーカーのChair Entertainmentと組んで,携帯機向けの「Infinity Blade」シリーズをリリースしている。同作は,少ない予算ながらも同社史上最も高い収益性を持つに至ったことから,今後もこうしたプロジェクトを増やしていくとスウィーニー氏は語る。これまでAAAタイトルで名を馳せてきたEpic Gamesは,こうした時流にうまく乗っており,インディーズゲーム開発者に安価な設定のUnreal Engineを提供するなどの施策を行っている。
マルクス・ペルソン氏
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一方,ピンカード氏から
「なんでアナタたちは就職しないの?」と単刀直入に水を向けられたのは,ペルソン氏とサルツマン氏。彼らのような若い世代が自立できるのは,デジタルディストリビューションの一般化やオンライン決済手段の増加によって,以前より販路が拡大した点によるものが大きいだろう。ペルソン氏は
「1年間のプロジェクトとして企画したMinecraftの開発を続けるには,どうしてもお金が必要だった。そこでβ版の販売を開始したが,もしPayPalのようなシステムのない時代だったら,誰も信用して入金してくれなかっただろう」と語る。
またゲーム業界には十数年のブランクがあるメクナー氏も,そういったインフラが整ったことを受けて
「パブリッシャに頼らずゲームを作ってしまおう」と,数名の仲間と共に
「Karateka」(カラテカ)(
PlayStation 3 /
Xbox 360)の復刻版を開発中の身なのだ。
現在,コンシューマゲーム機向けのAAAタイトルを開発するには40〜100億円はかかると言われ,ここにはさらに流通・広報に必要となる莫大な費用が上乗せされることになる。例えば2010年にElectronic Artsからリリースされた
「Medal of Honor」(
PC /
PlayStation 3 /
Xbox 360)の発売時に,
「300万本売れなければ新作は出さない」と公言されていたのは有名な話(
関連記事)だが,開発費を考えれば仕方のないことだと納得してしまう。ちなみに結局本作はその本数をクリアし,GDC 2012会期中に新作
「Medal of Honor: Warfighter」(
PC /
PlayStation 3 /
Xbox 360)の制作を発表している。
そんなハイリスクハイリターンなAAAタイトルを開発できるのは,世界で10社に満たない大企業の特権だろう。しかしその一方で,MinecraftやInfinity Bladeなど,少ない開発費のタイトルでも大きな収益を見込める環境が整い始めており,インディーズゲーム開発者が伸び伸びとゲームを作れる
「ルネッサンス期」であるともいえるのである。
ジョン・ロメロ氏
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ロメロ氏は
「投資家と組んで100億円というお金を動かした経験もあるが,今は何の制約もプレッシャーもなくゲーム制作を行うことができる。まだ,誰も僕の名を知らなかった80年代のドット絵師の時代に戻ったようで,本当にフレッシュな気分だ」と,今の環境には満足している様子。またサルツマン氏も
「Flashのように,それほどプログラムの知識がなくても商用として成功できるようなゲームを開発できる環境が整っている」と述べる。スウィーニー氏も
「安価で本格的なゲームエンジンを手に入れる手段もあるし」と,ほかのパネラーの意見を肯定しつつ,自身で開発したUnreal Engineをさりげなく売り込んでいた。
開発形態のバリエーションが増えたことで,ゲーム業界の古株から新人までがゲームで糧を得ることができるようになっている。それによって,ゲーム産業の人材プールが,ひいては新しいアイデアの生まれる余地が大きく広がっており,産業としてのゲームが以前より強固なものになりつつあるのは間違いないだろう。Lionhead Studiosを率いて「Fable」シリーズを生み出した
ピーター・モリニュー氏の独立などが大きな話題になっているが(
関連記事),今後もこうしたトレンドは続きそうだ。
年を経るにつれてGDCにおけるプレゼンスが高まってきているインディーズゲーム開発者達。IGF(Independent Game Summit)に出展される作品の質もかなり向上しているように感じる
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