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[GDC 2021]自然で深みある物語と世界をグラフで構築する手法
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印刷2021/07/21 17:42

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[GDC 2021]自然で深みある物語と世界をグラフで構築する手法

 GDC 2021,2日目のNarrative Summitでは「Connected Worlds: Building Dynamic Storyworlds Using Network Theory(世界を連結する:ネットワーク理論を用いてダイナミックな物語世界を生成する)」と題された講演が行われた。一般的にゲーム技術用語でDynamicと言えば「動的」を意味するが,本講演においては「ダイナミックな」の意味が強い(動的生成にも利用できそうだが)。

 登壇したのはフリーランスのNarrative Designer/Game WriterであるGerben Grave氏だ。最近では「We Were Here Together」,そして2021年にリリース予定の「We Were Here Forever」のシナリオが氏の作品となる。
 なお本講演はグラフ理論(の社会学への適用)に基づいたものであり,講演で使用されたグラフはyEd Graph Editorで作成されている。

画像集#001のサムネイル/[GDC 2021]自然で深みある物語と世界をグラフで構築する手法 画像集#002のサムネイル/[GDC 2021]自然で深みある物語と世界をグラフで構築する手法


物語の世界全体を1枚のグラフにする


 ゲームにおける世界設定は,物語の体験と切り離せない。一貫性があり,かつ多様性を持ったうえで,ゲームが表現したいテーマに沿った世界を構築することは,優れた物語の体験にとって欠かせない。だが,そういう意図をもってデザインされた世界が,本当にそのように機能するかどうかを事前にチェックすることはなかなか難しい。
 そこで本講演ではグラフを用いて世界を設定し,またそうして設定された世界が意図したとおりに機能するかどうかをチェックする技法が紹介された。この技法は,既存の物語世界をグラフに落とし込み,どのような構造になっているか(意図通りに機能するか)を確認するためにも利用できる。

画像集#003のサムネイル/[GDC 2021]自然で深みある物語と世界をグラフで構築する手法

 Grave氏はまず,物語の構成要素を「キャラクター」「場所」「事件」の3つに分類した。そしてそれぞれを,グラフにおけるノードとしてプロットしていくのである。だがその前に,それぞれの要素をノードへと分割するにあたっての注意点がある。

○キャラクター
・物語に変化をもたらす人物をピックアップする
・組織ではなく,個人個人をそれぞれ個別にノード化する
・キャラクターの意図ではなく,属性に注目する

○場所
・物理的な空間
・イベントが起こる空間をピックアップする
・キャラクターに意味が与えられる空間でなくてはならない

○イベント
・新聞記事になるレベルのものをピックアップする
・ほかのイベントに組み込まれる構造になっていても構わない

 基本的には,キャラクターを増やせばドラマが増え,場所を増やせば地図が広がり,イベントを増やせば年表が増えるという構造になる。
 そして,こうして抽出された要素(あるいは設定した要素)を1つのグラフにつなぎ合わせることで,物語世界の構造が一望できるようになる。なお世界を設定する場合,それぞれのノードは最低でも2つ以上のリンクがなくてはならず,Grave氏の経験的には4つ程度のリンクが最も望ましいという。

画像集#004のサムネイル/[GDC 2021]自然で深みある物語と世界をグラフで構築する手法

 また同じ種類のノードは,階層を与えられる。キャラクターであれば社会階級(あるいは単純な力関係)で階層が発生し得るし,場所であれば街全体→街区→家→部屋といった形で階層づけが可能だ。またイベントの場合は因果関係が階層によって設定できる。

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 理屈はともかく実際の例を見てみよう。「The Elder Scrolls V: Skyrim」のリバーウッド村を実際にグラフに起こすと,以下のようになる。

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一部を切り取って整理することも可能
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 あるいはマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)のうち,「だいたい最初のアベンジャーズくらいまで」をグラフにすると,以下のようになる。

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整理するとこんな感じに
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 ぱっと見た感じ,「なんだかすごいけど,これが何の役に立つのか?」という印象もまた受けるのではないだろうか。だがこのグラフをさまざまな指標で分析すると,多くのことが見えてくる。
 例えば「最も多くのノードに接続している人物(=物語における最大のキーパーソン)は誰か」を調べてみると,トニー・スタークが浮かび上がってくる。あるいは「最も重要な意味を持つ場所はどこか」を調べてみると,ニューヨークが浮かび上がってくる。
 この結果は,MCUのファンであれば納得できるものだと思われる。このように,このグラフを用いることで既存の作品の物語世界の構造と傾向をチェックできるというわけだ。

 このグラフを自分のゲームシナリオに用いることで,「物語の中心的な存在にしたいと思っているのに,グラフではそうなっていない」「関係が深い2人のキャラクターが生み出す葛藤を描きたいのに,2人が引き起こす事件が物語世界の中心にない」といった問題点を見出し,修正の方向性を見定めることも可能になるのである。


自然で深みある物語世界を作るために


 では,このグラフを用いてゼロから世界を作ろうとする場合,何に気をつければよいのだろうか。

 まず,通常の社会構造は,「全員が平等に全員とリンクしている」ことなどほぼありえず,キャラクター・ノードがいくつかのクラスタを形成し,それぞれのクラスタがリンクする,といった構造になっている。まずはこの点に注意しなくては,現実味のある物語世界は作れない。

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 また,ゲームシナリオは「場所」との関係性が強い(そして往々にしてこの「場所」は,シナリオライターだけが決定できるものではない)。
 したがって,まずは実際のゲームマップを「場所」ノードのリンクとして表現し,そこからキャラクターやイベントのノードを広げていく(あるいは物語の骨子となるキャラクターやイベントのノードをつなげていく)ことで,特定の場所でしかイベントが発生しないといった問題を回避・修正できる。

「Return of the Obra Din」をグラフにしたもの
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実際のマップにあわせて「場所」ノードを配置し直し,グラフを整理したバージョン
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 また,グラフが変化していくことにも注意が必要だ。原則的にこのグラフは,リンクの数が多ければ多いほど,より大きな影響力を持つ(=より大きな権力を持つ)と言える。
 だがリンクの数が少ないキャラクターは,ときにお互いの間でリンクの数を増やし(=団結して),リンクの数が多いキャラクター(=権力者)を打倒すべく動くことがある。

 そしてこの動きが成功した場合,今度は「かつてリンクの数が少なかった人々」のなかに,「リンクの数が多い人」が発生している。新たな権力者の誕生である。
 ちなみにこの「権力の重み」を表現するにあたって,より大きな影響力を持つノードを大きく表示しておくことで,全体の見通しが良くなるという。

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 そのうえで,重要になってくるのは多様性だ。多様性という言葉は近年では注目されることの多いワードのひとつとなっているが,物語を考える場合,「キャラクターから見えている世界が違う」という点での多様性に留意する必要がある。

 例えば社会学には社会規範として異なる6種類を定義する説があるが,この場合,異なる社会規範に属する人々の間では,同じものを見てもそこに感じる価値は大きく変わってくる。
 例えば聖書は,信仰を重視する社会規範集団にとってみると非常に大きな価値を持つ一方,工業を重視する集団にとってみれば,ただの(とてもたくさん作られた)本でしかない。
 あるいは王冠は,地域の支配を重視する集団にとってみれば権力の象徴だが,市場を重視する集団にとってその価値は王冠という金属塊に含まれる金の量に依存する。

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 この「何を重要と感じるか(何を目指すか)」が異なる集団の間では,ノードの結合のされかたも変わってくる。
 再び「Skyrim」の話しに戻るなら,蜂蜜酒の市場を制覇せんとする大商人にとってみると,カルトの信者は「ただのお客様」に過ぎない。そして地域の支配を重視する集団にとってみれば重要な存在である「その地域の領主(ただし貧乏)」は,大商人にしてみれば「客にならない無価値な存在(=リンクがつながらない相手)」となる。
 このように「見えている世界が違う」集団を複数用意することで,物語と世界はより深みをもったものとなるというわけだ。

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 実際に出力されたグラフを見るに,物語と世界を「キャラクター」「場所」「イベント」のグラフで構築するというGrave氏の方法は,かなり有益であるように感じる。明確な弱点を挙げるとすれば,「集団制作において,このグラフをシナリオチーム全員に配布しても,それだけではまず意味をなさない」ことだろう。このグラフはあくまでディレクターないし類似の立場の人が使うべきものだと考えられる。
 一方,この考え方は物語と世界の動的生成においても有益である可能性が高い。そういう点でも,今後の発展に期待したい技術だと言える。

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