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デスクトップPC向けGTX 980搭載のMSI製ノートPC「GT72S 6QF-019JP」。日本市場割り当て分最後の1台を,販売開始前に動かしてみた
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印刷2015/12/16 00:00

レビュー

デスクトップPC向けGPU「GTX 980」搭載ノートPC,最後の1台を販売前に検証する

MSI GT72S 6QF Dominator Pro G Dragon Edition
(GT72S 6QF-019JP)

Text by 米田 聡


GT72S 6QF Dominator Pro G Dragon Edition(GT72S 6QF-019JP)
メーカー:MSI
問い合わせ先:MSIサポートページ
BTO標準構成価格:42万9800円(※税込,2015年12月16日現在。レビュー品価格)
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 デスクトップPC向けGPUであるはずの「GeForce GTX 980」(以下,GTX 980)をノートPCに搭載するとNVIDIAが発表したのは,2015年9月22日のことだった。

 その後,11月くらいから搭載ノートPCは国内外で市場に出始めており,国内では,MSIのゲーマー向け製品ブランド「G Series」から10台限定で「GT72S 6QF Dominator Pro G Dragon Edition」(型番:GT72S 6QF-019JP,以下型番表記)が,パソコンショップ アーク限定発売になった(関連記事)。税込のBTO標準構成価格が約51万円という,超高級品であるにもかかわらず,あっという間に完売したのを憶えている。

 つまり,もう買えないノートPCになってしまったのだが,そんな折,MSIの日本法人であるエムエスアイコンピュータージャパンから,10台のうち1台を売らずに取ってあったという連絡があった。「レビュー後,『レビューに使った個体』として販売するということを考えているが,GT72S 6QF-019JPのテストに興味はあるか」とのことで,もちろん断る理由はない。結果,「テスト後に,メンテナンスのうえ,パソコンショップ アークで1台限定販売となる個体」を入手することができた次第だ。

 デスクトップPC向けGTX 980を搭載するという,一昔前の常識では考えられないスペックのノートPC,その実力を3D性能中心に検証してみよう。


GT72SのGTX 980搭載スペシャルモデルとなるGT72S 6QF-019JP


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 GT72シリーズは,17.3インチ液晶パネルを搭載するゲーマー向けノートPCで,4Gamerでも2014年の国内登場時にレビューを行っている。当時のノートPC向け最上位GPU「GeForce GTX 980M」(以下,GTX 980M)を搭載するノートPCだった。
 その後,2015年になると,Skylake世代のCoreプロセッサを搭載し,ノートPC向けG-SYNCに対応するGT72Sシリーズとなったが,今回のGT72S 6QF-019JPは,そのスペシャルモデル(=Dragon Edition)という位置づけになる。

天板は赤(というか朱)塗装されたアルミ板で,龍のイラストがレーザー刻印されている。通電時には目が光るギミック付きだ。またパームレスト部にも龍のイメージイラストが入るが,こちらは赤の焼付塗装のようだ
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本体はとにかく大きいが,「GTX 980を搭載する分,余計に大きい」というわけではない
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 本体サイズは実測約430(W)×295(D)×40〜48(H)mmで,重量は同3.8kg。いずれの値も,GT72シリーズの最初期モデルとほぼ同じなので,事実上,同じ筐体という理解でいいだろう。搭載する17.3インチ液晶パネルがノングレア(非光沢)表面加工のTN方式という点も変わらないが,ノートPC向けG-SYNC対応ということで,垂直リフレッシュレートは75Hz化を果たしている。

TNパネルということで,角度が付くと変色した見栄えになるが,ある程度まではコントラスト感を相応に維持できているため,それほど悲惨な見栄えにはならない。ゲーマー向けノートPCの液晶パネルとしては十分に優秀と述べていいように思う
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 搭載するCPUは,GT72Sシリーズの通常モデルと同じくSkylake世代。具体的には,倍率ロックフリーの「K」型番となる「Core i7-6820HK」(4コア8スレッド,定格クロック2.7GHz,最大クロック3.6GHz,共有L3キャッシュ容量8MB)だ。

専用のACアダプターは定格230Wのものだった
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 本体側のインタフェースは本体背面中央と左右両側面に散る仕様で,背面側はACアダプター接続端子とDisplayPort 1.2,HDMI 2.0,1000BASE-T LAN,USB 3.1 Type-C各1。向かって左側にUSB 3.0×4とサウンド入出力,SDカードリーダー,右側にはUSB 3.0×2とBlu-ray Discドライブが並ぶ。
 USB 3.1 Type-Cは,市販のディスプレイ変換アダプターを使えばDisplayPort端子としても利用できるので,最大3画面出力が可能ということにもなる。どう使うかはユーザー次第だ。

畳んだ状態の本体前面(左)と背面(右)。前面側は線状のLEDイルミネーションが埋め込まれているだけで,インタフェースはない。背面には,排気孔に挟まれるような格好で,左から順にMini DisplayPort,USB 3.1 Type-C,HDMI Type A,RJ45,ACアダプター接続端子が並ぶ。なお,LANコントローラや有線・無線ともRivet Networks製,Killerブランドのものだ。ここで説明する話ではないかもしれないが,無線LANはIEEE 802.11ac対応である
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本体左側面は写真左から順にUSB 3.0 Type-A×4,3.5mmミニピン×4。SDカードリーダーという並びだ。3.5mmミニピン端子は左の3系統が3極のライン出力,ライン入力,マイク入力,ヘッドフォン出力。ヘッドフォン出力端子は丸形光デジタルサウンド出力端子と兼用だ。右はUSB 3.0 Type-A×2と光学ドライブのみとなる
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キーボード部を正面から
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致命的な問題は解決しているものの,キーボードは「英語キー配列の筐体に無理やり日本語キーボードを実装している」感が否めない
 搭載するキーボードはSteelSeriesとのコラボレーションによるものである。
 10キーを含むフルキーボードは日本語配列。主要なキーのピッチは19mmを確保しており,ストロークは2mmあるので,打鍵はおおむねしやすい。ただし,[無変換/Space/変換]キーや[¥/Back Space][]/Enter][\/右SHIFT]キーが密接するなど,英語キー配列を無理くり日本語化した弊害もある。
 MSIの名誉のために付記しておくと,同社はこの問題に対して無策だったわけではなく,実際,GT72シリーズの初期モデルにおいて明らかに不自然だった[]/Enter]キーの並びにはメスが入り,致命的な問題は解消している。それでも違和感の残る部分はあるというわけだ。完璧な日本語配列キーボードを用意するのはコストに見合わないということなのだろう。

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 なお,ここまでの写真でも想像がつくと思うが,キーボードはLEDバックライト付き。キーボード部3ブロックとタッチパネルの外周,そして前出の前側側面の計5ブロックに対して,プリインストールの「SteelSeries Engine 3」からそれぞれ色や光り方を割り当てられる。また,SteelSeries Engine 3を使えば,キーアサインの変更や割り当てもソフトウェアレベルで可能だ。
 ただし,残念ながら同時押しへの配慮はほぼないと言ってよく,最悪のケースでは3キーに留まる。

左はLEDイルミネーションを白で統一したところ,右は標準とは異なる5色に設定したところ。正直,白にすると紫がかって色ムラが出るので,お勧めしない。カラフルな設定が無難なようだ
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 ちなみに,キーボードの左には5連のボタンが並んでいるが,これらは上から順に,以下の機能を持っている。

  1. 電源オン
  2. GPU切り替え
  3. 内蔵ファンの回転数を一時的に最大化する「Cooler Boost」の有効/無効切り替え
  4. プリインストールされたゲーム配信ツール「XSplit Gamecaster」の起動
  5. SteelSeries Engine 3の起動

キーボード左側のボタン群
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 2.のGPU切り替えは,NVIDIA独自のスイッチャブルグラフィックス技術「Optimus」に対応しないGT72S 6QF-019JPで,GTX 980と,CPU側の統合型グラフィックス機能「HD Graphics 530」を切り替えるためのものだ。
 「デスクトップPCを搭載するだけに,GPU切り替え機能には大きな意味がある」と思うかもしれないが,GT72S 6QF-019JPには(詳細は後述するが)GPUクロックを落として消費電力を大きく下げるプリセットがあるので,正直,わざわざこのスイッチを使ってGPUを切り替える機会は意外に少ないかもしれない。

Dragon Gaming Center。プリセットを変えられるだけでなく,CPU温度などのモニタリングを行う「System Monitor」や,プリインストールのGeForce ExperienceやSteelSeries Engine 3などを起動する「Utility」,[Fn]+[F4]キーでゲームの実行時に無効化できるキーを設定できる「Instant Play」といった機能が実装されている
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 プリセットの話が出たついでに触れておくと,GT72S 6QF-019JPでは,[Fn]+[F7]キーを押すごとに,CPUやGPUの温度を85℃以下に抑えるようクロック制御を行う「Green」,同様にCPUとGPU温度を89℃以下に抑える「Comfort」,温度上限の制約を外し,そのうえでCPUに対して,メーカー保証の範囲内で最大動作クロックをプラス100MHzする「Performance」の3プリセットを切り替えられるようになっている。上で挙げた「消費電力を大きく下げるプリセット」は,もちろんGreenプリセットのことだ。
 また,この3モードは,プリインストールされているMSIのオリジナルツール「Dragon Gaming Center」からも設定可能。このあたりの仕様は,GT72シリーズで共通のものである。

Afterburnerがプリインストール済み。自己責任を覚悟すれば,徹底的なオーバークロック設定も行える
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 ちなみに,GT72S 6QF-019JPでは,MSI製GPUオーバークロックツールとしてお馴染みの「Afterburner」がプリインストールされている。最新のAfterburnerはバージョン4.2.0だが,プリインストールされているAfterburnerは4.1.1.7625だった。MSIのフォーラムにもアップロードされていないバージョンなので,バージョン4.1.1をGT72S 6QF-09JPへ対応させた特別版ではないかと思われる。
 ただ,確認した限り,最新のバージョン4.2.0も普通に機能していたので,自己責任で最新版を導入してしまってもいいのではないかと思う。

本体底面。中央の赤いスリットは吸気孔だ。写真向かって右端手前側に見える四角い部分がサブウーファである
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 なお,Dynaudio International製の2.1chスピーカーを搭載するのと,せっかくのサブウーファが本体底面向かって左端に寄っており,ステレオの低音が左寄りに定位してしまう残念な仕様は,従来のGT72シリーズからそのままだ。結局この問題はずっと放置されたままなので,MSIにとって,音は優先度が低いのだと思われる。


GTX 980,そしてNVM Express対応のSSD×2によるRAID 0という内部構成


 MSI製のノートPCは,底面カバーを開けた時点でメーカー保証が切れるという仕様なので,ユーザー側でハードウェア構成をカスタマイズするという行為はお勧めしない。ただ今回は,エムエスアイコンピュータージャパンから特別な許可を得ているので,内部構造もチェックしてみよう。

 というわけで下に示したのが,底面カバーを開けた状態だ。後ほど細かく説明したいと思うが,2基のブロワーファンによって筐体背面側に排気する仕様のクーラーは「Cooler Boost 3」である。
 ブロワーファンは写真奥側がGPU冷却用で,手前側がCPU冷却用。ヒートパイプはCPU上とGPU上のヒートプレートから各3本ずつ,ブロワーファンの部分に取り付けられているヒートシンクに接続されている。また,それとは別に,中央部に1本のヒートパイプが見えるが,これはGPUのグラフィクスメモリの熱拡散プレートと,CPU側のヒートシンクを結んでいる。GPUに比べると発熱が低いCPU側に,グラフィックスメモリの冷却を担当させているということなのだろう。

底面カバーを開けたところ。ヒートパイプはGPUおよびCPUクーラー部に3本ずつあり,それとは別に,グラフィックスメモリとCPUクーラー部をつなぐヒートパイプを通してグラフィックスメモリの熱を処理する仕様にもなっているようだ
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Core i7-6820HK
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 クーラーを外してみると,Cooler Boost 3の構造を把握しやすくなる。下に示した写真は左手前側が本体背面であることを断ってから続けると,写真左側に見えるCPUはマザーボード基板に直付けで,GTX 980は「MXM」(Mobile pci-eXpress Module)と呼ばれるカードモジュールに載った状態で,マザーボード上の接続端子に差さっていた。

クーラーを取り外したところ。写真左側がCPU用の冷却機構,中央がグラフィックスメモリの冷却機構,右側がGPUの冷却機構である。グラフィックスメモリの熱はヒートパイプでCPUとともに処理する仕様だ
画像集#026のサムネイル/デスクトップPC向けGTX 980搭載のMSI製ノートPC「GT72S 6QF-019JP」。日本市場割り当て分最後の1台を,販売開始前に動かしてみた
GTX 980の載ったMXM。MXM規格のモジュールはたいてい長方形っぽい形状をしているので,こういうユニークな基板は印象的だ。これが,NVIDIA側でチューンした結果なのかもしれない。ちなみに電源部は,見る限り4+1フェーズ構成のようである
画像集#027のサムネイル/デスクトップPC向けGTX 980搭載のMSI製ノートPC「GT72S 6QF-019JP」。日本市場割り当て分最後の1台を,販売開始前に動かしてみた 画像集#028のサムネイル/デスクトップPC向けGTX 980搭載のMSI製ノートPC「GT72S 6QF-019JP」。日本市場割り当て分最後の1台を,販売開始前に動かしてみた

ノートPC向けGTX 980。GM204コアの選別品となる
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 GT72S 6QF-019JPにおける最大の特徴となるGTX 980は,ダイの表面に「N16E-GXX-A1」という刻印が入っていた。GTX 980Mだと「N16E-GX-A1」なので,「X」が増えた格好だ。
 GTX 980とGTX 980Mはいずれも第2世代Maxwellアーキテクチャに基づく「GM204」コアをベースとしていること,NVIDIAはGM204の高耐熱品を選別してノートPC向けGTX 980にしていると断言していることからするに,型番が一字違いというのは,さもありなんといったところでもある。

搭載するグラフィックスメモリチップはSamsung Electronics製の7Gbps品
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 組み合わされるグラフィックスメモリはSamsung Electronics製の4Gbit GDDR5「K4G41325FC-HC28」。同社のドキュメントによれば7Gbps品なので,GTX 980のスペックに適合している。MXMの両面に8枚ずつ,合計16枚搭載することで,合計8GBのグラフィックスメモリ容量を実現する仕様だ。
 ちなみに,デスクトップ向けのGTX 980カードの場合,一部にグラフィックスメモリ容量8GB版はあるが,ほとんどは4GB仕様なので,ここはノートPC向けGTX 980の明確なアドバンテージと言うことができるだろう。

MXMにはビデオ出力周りの回路がないため,マザーボード側にいろいろ載っている。左の「PS8331B」と記されたチップはParade Electronics製のDisplayPortマルチプレクサで,要はDisplayPort出力を担うチップだ。右は「DLS6340」という刻印のあるチップはIntel製のThunderbolt 3コントローラだ。おそらくはUSB 3.1 Type-Cを担当するものだろう。また,その隣にある「75DP159」は,Texas Instruments製のDisplayPort−HDMI 2.0変換チップである
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THNSN5256GPU7
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 底面カバーを開けると,ストレージおよびメインメモリにも容易にアクセスできる。ストレージは,「SSD+HDDの組み合わせで,SSDをWindowsシステムドライブに割り当てる」という,現在のゲーマー向けノートPCではよくある構成だが,SSDは物理層がPCI Express Gen.3×2レーン接続,論理層にNVM Express Rev.1.1(以下,NVMe)を採用するM.2スロットタイプの東芝製品「THNSN5256GPU7」だ。容量256GBのSSDを2枚,RAID 0構成でシステムアレイにしているわけである。

GT72S 6QF-019JPは,M.2スロットを4基搭載するPCI Expressドーターカードを用意している。THNSN5256GPU7はそこに2枚差さっていた。MSIはこの構成を「Super RAID 4」と呼んでいる
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 RAID 0構成には,Skylake世代からサポートされるようになったPCI Express接続のIntel Rapid Storage Technologyを用いている。PCI Express Gen.3×2レーン接続のNVMeでRAID 0構成ということで,かなりの性能が期待できそうだ。具体的な性能については後段で検証したい。

 メインメモリ容量は,容量8GBのPC4-17000 DDR4 SDRAM SO-DIMMモジュール2枚で計16GB。試用した個体にはSamsung Electronics製のメモリモジュール「M471A1G43DB0-CPB」が差さっていた。

試用した個体が搭載するHDD(左)とメモリモジュール(右)。HDDはTravelstar 7K1000シリーズの容量1TBモデル「HTS721010A9E630」だった
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液晶パネルがフルHD対応のため,今回は高解像環境のテストにDSRを利用


 では,GT72Sの性能を評価していくことにしたい。
 GT72S 6QF-019JPはデスクトップPC向けと同じスペックのGTX 980を搭載するということで,比較対象は当然のことながらGTX 980カード搭載のデスクトップPCだ。CPUは「Core i7-6700K」(4コア8スレッド,定格クロック4GHz,最大クロック4.2GHz,共有L3キャッシュ容量8MB)を組み合わせてあるので,CPU性能は比較対象機のほうがかなり上ということになる。
 GT72S 6QF-019JPの搭載するCore i7-6820HKに近いスペックのデスクトップPC向けCPUには「Core i7-6700T」(4C8T,定格クロック2.8GHz,最大クロック3.6GHz,共有L3キャッシュ容量8MB)があることはあるのだが,入手性は低く,4Gamer編集部内にもない。ならば,2015年12月時点における4Gamerの標準テスト環境にしてしまおうという考えによる。

 なお,これは本稿の序盤でも触れたが,グラフィックスメモリ容量は,GT72S 6QF-019JPが8GBで,入手したGTX 980リファレンスカードが4GBと異なるが,これもやむを得ない。細かいことをいえば,テクスチャ処理の負荷が高いゲームタイトルではグラフィックスメモリ8GB版のほうが有利になるはずだが,今回のテストだとそれほど大きな違いは生じないはずなので,そのままで比較している。

 そのほか2製品の主なスペックはのとおり。テスト開始タイミングの都合で,グラフィックスドライバは「GeForce 359.00 Driver」で統一している。

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 テスト方法は基本的に4Gamerのベンチマークレギュレーション17.0準拠。ただし,都合により,一部変更を加えている。

 まず,「標準設定」およびそれに準ずるテストは省略し,「高負荷設定」とそれに準ずる設定に,テスト条件を絞った。理由は前述のとおり,GT72S 6QF-019JPと比較対象のデスクトップPCとで,今回,CPUのスペックが大きく異なるためだ。CPU性能の違いは,グラフィックス描画負荷が低ければ低いほど顕著に出てしまうため,GTX 980の性能比較を行うなら,高負荷設定系条件のほうがよいであろうというわけである。

 次に,「Crysis 3」は,筆者の環境だと動くには動くのだが,「Fraps」との共存に問題があり,テストの実行中,Frapsの異常終了が多発した。そのため,Crysis 3は省いている。
 また,現実的な話として,もはや「EVOLVE」をプレイしている人は国内にほとんどいないという事情から,今回は本作に代え,レギュレーション18世代で採用予定の「Fallout 4」を追加することにした。

 4Gamerでは先に,Fallout 4を使ってグラフィックスカード28製品の性能を比較しているが(関連記事),レギュレーション確定前ということで,今回は計測方法を若干変えている。
 今回は,「Corvega Assembly Plant」の入口から階段を登ったあたりまでの敵を倒してから,いったん入口まで戻ってセーブ。そのうえで入口からFrapsによる計測をスタートさせて,一定のコースをたどりながら階段を登ったところまで1分間掛けて移動していくという方法をとった。
 これで会敵することがなくなり,フレームレートがとても安定する。ただその代償として,描画負荷はやや低めになるため,先の記事との比較は行えない。この点はあらかじめお断りしておきたいと思う。

敵を倒しておいて入口に戻り(左上),Frapsの計測をスタート,廊下(右上)を巡り階段(左下)を登って,階段途中の部屋巡りなどしながら階段を登り切る(右下)。この順路を1分間かけて移動し平均フレームレートを2回取り,その平均をスコアとした
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 テスト解像度は迷ったが,GT72S 6QF-019JPのパネル解像度が1920×1080ドットであることから,今回は最終的に「Dynamic Super Resolution」(以下,DSR)を使って,パネルのネイティブ解像度とは別に,2715×1527ドットおよび3840×2160ドットのテストを行うことにした。GT72S 6QF-019JPの場合,外部ディスプレイを利用するよりも,本体側の17.3インチ液晶パネルを使ってゲームをプレイする可能性のほうが高いと思われるため,それを踏まえたテスト条件を設定したわけである。

 ただし,「ファイルファンタジーXIV:蒼天のイシュガルド」公式ベンチマーク(以下,FFXIV蒼天のイシュガルド ベンチ)では,GT72S 6QF-019JPで2715×1527ドットにおける計測を正常に行えない――描画領域が画面から大きくはみ出してしまう――問題が出たため,当該解像度でのテストを省略している。
 ちなみに,比較対象のデスクトップPCでは2715×1527ドット解像度でテストできたので,GT72S 6QF-019JPで実行できなかった理由は今のところ不明だ。

 なお,G-SYNCは無効化してテストを実行していることも,ここでお断りしておきたい。
 一方,GT72S 6QF-019JPには3つの動作モードプリセットを持つため,今回はそのすべてでテストを行うことにしている。


「まさにGTX 980」な性能だが,一部のタイトルでスコアの低下も見られる


 まず3Dにおける総合ベンチマークである3DMark(version 1.5.915)を実行して,GT72S 6QF-019JPの傾向をざっくりと捉えてみることにしよう。

 グラフ1は3DMarkの「Graphics Score」をまとめたものだ。Graphics Scoreのスコアは,ほぼGPU性能で決まることになるが,温度によるGPUクロック上限の抑制が入らないPerformanceプリセットで,GT72S 6QF-019JPのスコアは比較対象のデスクトップPCに対して約99%のスコアを得られている。ノートPCに載るGTX 980のポテンシャルは,NVIDIAが謳うとおり,デスクトップPC向けGTX 980と同じという理解でいいだろう。
 面白いのは,Comfortプリセットでも,Performanceプリセットとほぼ同じスコアが得られているところと,GPUおよびCPUの温度を85℃以下に抑えようとするGreenプリセットではデスクトップPC比で31〜35%程度という,極めて低いレベルに留まっていること。Greenプリセットは,非ゲーム用途向けだというのがはっきり分かる。

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 一方,事実上のCPUベンチマークテスト結果となる「Physics Score」だと,GT72S 6QF-019JPのスコアはPerformanceおよびComfortプリセット時にデスクトップPC比で約70%に留まった(グラフ2)。これがCore i7-6820HKとCore i7-6700Kの実力差ということでいいと思う。
 PerformanceとComfortの両プリセットでスコアに違いがないのは,Performanceプリセットにおける「最大クロックの100MHz引き上げ」は,複数のCPUコアに負荷のかかるマルチタスクのテストで,まったく意味がないことを示している。

 なお,Greenプリセット時のスコアは,Performanceプリセット比で83〜85%程度だった。対Core i7-6700Kだと58〜59%程度だ。

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 グラフ3は3DMarkの総合スコアだが,Graphics ScoreとPhysics Scoreの双方を加味したものと考えれば妥当なものであろう。

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 続いてFar Cry 4のテスト結果がグラフ4である。ここで目立つのは,1920×1080ドットにおいて,GT72S 6QF-019JPのPerformanceプリセットが大きくスコアを落としているところだが,2715×1527ドット時に約97%,3840×2160ドット時には約100%のスコアを得られていることからすると,フルHDの描画負荷が低く,CPU性能勝負になってしまったためではないかと考えている。
 GT72S 6QF-019JPは,より高精細な液晶パネルを搭載すべきだったのではなかろうか。

 Comfortプリセットは,Performanceプリセットとほとんど変わらないスコアを記録した。先の3DMarkの結果からしても両プリセット間の違いは小さそうなので,この結果はまず妥当といえそうだ。
 なお,Greenプリセットはお話にならない印象で,FarCry 4のような,グラフィックスがリッチなゲームをプレイする設定とはお世辞にもいえない。

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 今回,EVOLVEの代わりに採用したFallout 4の結果がグラフ5だが,ここではFar Cry 4とは少し異なる傾向が得られている。
 Performanceプリセット時のスコアは,1920×1080ドット時に,対デスクトップPCで約92%。ただ,本来ならばよりGPU性能が“効いて”くる2715×1527ドットと3840×2160ドットでスコア差が開いてしまっているのは解せない。この結果だけで理由を推測するのは難しいが,いずれにせよ,Comfortプリセットのほうがスコアは安定している印象だ。

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 「Dragon Age: Inquisition」(以下,Inquisition)のテスト結果をまとめたものがグラフ6となる。
 ここでのスコアは,3DMarkのGraphics Scoreを先鋭化させたものといった感じで,GT72S 6QF-019JPのPerformanceおよびComfortプリセットはデスクトップPCのスコアに匹敵し,付け加えるなら2715×1527ドットではデスクトップPCより高いスコアを示してもいる。

 ところで,GT72S 6QF-019JPのPerformance,Comfort両プリセットとデスクトップ版のGTX 980で1920×1080ドット解像度におけるフレームレートが60fps付近に落ち着いていることから,垂直同期が有効になっているのではないかと疑問を感じた人がいるかもしれない。
 しかし,前述のとおり,GT72S 6QF-019JPが搭載する液晶パネルの垂直リフレッシュレートは75Hzで,比較対象のデスクトップPCは垂直リフレッシュレート120Hzの液晶ディスプレイと接続しているので,万が一,筆者が垂直同期を有効にするという初歩的なミスを犯したとしても,60fpsで揃うことはあり得ない。ここで60fps付近にスコアが揃ったのは,たまたま,今回のテスト環境ではそうだったというだけである。

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 グラフ7はFFXIV蒼天のイシュガルド ベンチの結果だが,本ベンチマークはGTX 980にとって“軽い”テストということもあって,CPU性能の影響を受けやすい。果たして,1920×1080ドット設定時にPerformanceプリセットは対デスクトップPC比約92%,Comfortプリセットは同89%というスコアになっている。3840×2160ドットだと,プリセット間のスコア差はほぼ無視できるようになるが,対デスクトップPCでは約93%だ。これは素直にCPU性能差という理解でいいだろう。

 Greenプリセットでも実スコアは4000超えで,平均フレームレートも31.1fps出ているので,いわゆるオンラインゲームであれば,Greenプリセットでも問題なくプレイできそうな気配はある。

※グラフ画像をクリックすると,平均フレームレートベースのグラフを表示します
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 性能検証の最後,「GRID Autosport」のスコアをまとめたのがグラフ8だが,端的に述べて,今回のテストのなかで最も理解しがたいスコアとなってしまっている。デスクトップPCでは1920×1080ドットで平均133.7fpsを叩き出すのに対し,GT72S 6QF-019JPではPerformanceプリセットでも平均95.6fpsに留まってしまったのだ。しかも,描画負荷が高まる2715×1527ドットや3840×2160ドットでは対デスクトップPCで半分ほどのスコアしか出ていない。

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なぜベンチマークのスコアはバラつくのか?


 以上,GT72S 6QF-019JPの3D性能は,ポテンシャルこそデスクトップPC用GTX 980と互角ながら,実フレームレートはタイトルによってかなりバラつく傾向になるということが分かった。
 その理由として真っ先に思い当たるのは,ノートPCという,熱設計上の大きな制約を抱えるプラットフォームだけに,GPU温度や,GPUに対する電流供給能力の制約によって,GPUクロックが抑えられるというものではなかろうか。

 残念ながら,GPUに対する電流供給能力は外部から計測するのが難しいが,GPU温度やGPUクロックならツールを使えば(ある程度は)取得できる。
 そこで今回は「GPU-Z」(version 0.8.6)を用い,GPUクロックとGPU温度を取得して平均値と最大値を比較してみたい。GT72S 6QF-019JPプリインストールのAfterburnerでも同じようなことはできるものの,GPU-ZならログをCSV形式取得できるため,GPU-Zを使うことにした次第だ。
 なお,GPU-Zならクロックの変化も取ることはできる。しかし,正確に「n秒時点がこのシーン」と断言できず,横並びの比較には適さないという理由から,今回は平均および最大クロックを取っているので,この点はご了承を。

 ここでは,GPU負荷が最も高くなるよう,解像度を3840×2160ドットに指定。そのうえで,違和感のないスコアが出たタイトルの代表としてFar Cry 4とFFXIV蒼天のイシュガルド ベンチ,違和感の残るスコアの出たタイトルの代表としてGRID Autosportを取り上げ,そのスコアをまとめてみることにした。その結果がグラフ9〜11だ。

 スコアを見る限り,高いグラフィックス負荷環境下におけるGT72S 6QF-019JPのGPUクロックは十分に上がっているように見える。強いて言うなら,GRID Autosportの最大GPUクロックがやや低めで,しかも平均GPUクロックに近いというのが気になる点だろうか。これは「テストシーケンス実行中にGPUクロックが上がりにくく,また下がりにくい」ことを示している。つまり頭打ちになってしまっているわけだが,ただ,Far Cry 4のPerformanceプリセットでも似たような傾向が出ているので,GRID Autosportだけの問題とはいえないだろう。
 Greenプリセットでは,平均フレームレートの低さに注目したい。とくに低いFFXIV蒼天のイシュガルド ベンチの場合,複数あるテストシークエンス間をつなぐ読み出し時間が長いため,それが平均フレームレートを大きく押し下げているが,それ以外も平均400MHz台なので,「そりゃ遅いよな」といったところである。

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 テスト中の平均および最大温度をまとめたものがグラフ12〜14で,ここでGPU温度が90℃を超えたのはFFXIV蒼天のイシュガルド ベンチにおけるPerformanceプリセットのみだ。
 さらに,Comfortプリセットでも,FFXIV蒼天のイシュガルド ベンチのみ最大88℃を記録していることに注目したい。FFXIV蒼天のイシュガルド ベンチでは,シーンごとに負荷が変動しながら,10分近くデモシークエンスが続くので,それに冷却システム側の追従がやや遅れ気味となり,結果,GPU温度が高くなっているのかもしれない。
 また,Greenプリセットに関していえば,その仕様上,GPU温度は85℃以下になるはずだが,実際には70℃台に留まっていた。動作クロックも引き下げて,積極的に低消費電力&低発熱に振っているのだろう。

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 比較対象となるデスクトップ版GTX 980は,GPUクロックのバラツキや変動が少なく,GPU温度は80℃以下になるよう制御されている印象だ。その点でも,GT72S 6QF-019JPは明らかに異なる制御法に基づいていることが読み取れるが,しかし依然として,GRID Autosportにおける不審なスコアの原因は分からない。

 GPUの制御を行うファームウェアがデスクトップとノートPCで異なる以上,もしかするとファームウェア側が抱える何らかの理由で,特定のタイトルにおいてスコアが伸びないという可能性が最も高そうだが,原稿執筆時点でGT72S 6QF-019JPのBIOS(やVBIOS)の更新は入っていないので,それも比較することはできない。引っ張ったうえで申し訳ないが,GRID Autosportに関しては正直に「謎である」と言うしかないようだ。

 さて,GT72S 6QF-019JPのGPU温度はCooler Boost 3によって抑えられていることが分かったが,Performanceプリセットだと,どのゲームアプリケーションを起動したとしても,20分程度でファン回転数は最大に達する。
 ただ,その動作音は,意外と耳に付かない。筐体の大きさに余裕があることを生かし,耳ざわりな風切り音などといった高周波帯を抑えてあるのだろう。もちろん,うるさくないとは言わないが,我慢できないレベルではない。参考までに,ファン回転数が最大に達した状態で,キーボード面の手前側からさらに手前側へ0.3m離れたところへコルグ製のポータブルレコーダー「MR-2」を置き,録音したデータを掲載しておこう。

SOUND PLAYER:このブラウザは未対応です。PCをご利用ください。
※再生できない場合は,Waveファイルをダウンロードのうえ,手元のメディアプレイヤーで再生してみてください。

 GTX 980を搭載することから,筐体の温度も気になるところだ。そこで,チノー製サーモグラフ「TP-U0260ET」 を使って筐体の温度分布を調べてみることにした。
 ここでは,室温22℃の環境で3DMarkのFire Strike Ultraを30分間連続実行し,その直後を真上からサーモグラフで撮影した。その結果となるサーモグラムが下の画像だ。ちょっと分かりにくいが,下の青色との境界部分が本体手前の縁に当たる。また仕様上,計測結果は左右反転されるため,サムネイルは左右反転を行っている。

※サーモグラム画像をクリックすると,TP-U0260ETの仕様上正しいサーモグラム(=左右反転を元に戻したもの)を表示します
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 三角形のマークがある部分は,最高温度を記録した部分で,具体的にはキーボードの奥側のスピーカー部分の左側に寄った位置である。スコアは43.3℃だ。ちょうどCPUのあるあたりという理解でいいだろう。
 GPUは右側であるにもかかわらず,そこが最高温度でないというのが興味深いところだが,ここでは,PC本体の外,向かって右側に,本体の横に置いたマウスを計測したかのような緑色の領域が広がっているのが分かると思う。この部分はざっくり30℃超なのだが,要するに,GPUクーラー(のブロワーファン)が机を温めて,結果,温度の高い部分が広がっているのだ。言い換えると,GPUを冷却するためブロワーファンが頑張っているから,GPUが最高温度を計測しなかったということになる。

 最高温度を記録したのが指で直接触れるような場所ではないのが救いだが,キーボード奥側の数字キーの列の中央を中心に40度を超える領域が広がっているのも確かだ。ことによると,夏場にキーボードを触るのは,ひょっとすると多少つらいかもしれない。

 ログの取得が可能なワットチェッカー「Watts up? PRO」を使って,各タイトル実行時のピーク消費電力と,ディスプレイを消灯しない設定にして30分放置した直後(以下,アイドル時)の消費電力もチェックしておこう。
 ここでGT72S 6QF-019JPは,フル充電にして「充電していない状況」に置いている。なので,内蔵バッテリーの影響は抑えられているはずだが,バッテリーパックを取り外せないという仕様上,影響を受けないとは言い切れないので,その点だけは留意してほしい。

 結果はグラフ15のとおりだ。本稿の冒頭でも紹介したとおり,付属のACアダプターは定格230W仕様となっているが,結果もPerformanceプリセットおよびComfortプリセットでおおむね230Wに収まるという,妥当なスコアになっている。PerformanceとComfortの両プリセットで消費電力の違いはほぼないと言ってよく,「消費電力の低減を目当てにComfortプリセットを選ぶ」のは,あまり意味のある選択ではないということになる。

 一方,性能を犠牲にしていることもあって,Greenプリセットの消費電力はPerformance&Comfortプリセット比でざっくり半分程度まで下がっている。アイドル時の消費電力すら下がるので,ゲームをプレイしていないときは積極的に選択したい動作モードプリセットといえるだろう。

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 ちなみに,Green選択時であっても,一般的なWindows用途であれば,もたつきを感じることはなく,これが,記事の序盤で「(GPU切り替えスイッチを)使ってGPUを切り替える機会は意外に少ない」とした根拠でもある。GTX 980を無効化するのに,いちいちOSを再起動するくらいなら,Greenプリセットにしてしまったほうが簡便だというわけである。


Super RAID 4の実力も簡単にチェック


 最後になるが,GT72S 6QF-019JPのSuper RAID 4が持つ実力も簡単に確認しておきたい。
 PCI Express Gen.3接続のNVM Express対応SSDによるRAID 0なので,間違いなく高速だと思うが,比較用として適切なSSDを用意できなかったので,ここでは単体性能のみを「CrystalDiskMark」(Version 5.1.0)をで計測することにした。テスト設定は標準の「スレッド数1,テストサイズ1GiB」ながら,テスト回数は9回に変更し,スコアのブレを抑えようと試みている。

CrystalDiskMark実行結果
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 結果は,右に示したとおりだ。東芝のTHNSN5256GPU7が持つカタログスペックだと逐次読み出し性能は最大2400MB/sなので,むしろ4GB/s近いスコアが出ていないことを訝しがる人がいるかもしれないが,本稿の序盤で示した写真を見る限り,GT72S 6QF-019JPでは2基のSSDモジュールを2レーンでマザーボードと接続しているように見えるので,これが理由ということになるだろう。PCI Express Gen.3接続とはいえ,2レーンだと,実効帯域幅は片方向2GB/s,双方向4GB/s。これがボトルネックとなって,RAID 0で2742MB/sということになったのだと思われる。

 いずれにせよ,Super RAID 4の公称速度は3300MB/sなので,それにまずまず迫るスコアは出ているといえるだろう。少なくとも,Serial ATA接続では不可能としか言いようのない,非常に高い逐次読み出し性能を実現している。


「GTX 980を搭載すること」の価値を見出せるなら買い。最後の1台は本時刻よりアークで受注開始


製品ボックス
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 以上,国内初のGTX 980搭載ノートPCであるGT72S 6QF-019JPを,性能メインで細かく見てきた。CPUのスペックといった分かりやすいものだけでなく,最後まで理由が分からなかったものなど,さまざまな要因により,ノートPCに搭載されたGTX 980は,必ずしもデスクトップPC用GTX 980カードと同じ3D性能を発揮できるとは限らないではないというのが,厳しい見方をしたときの現実だ。

 一方で,そのポテンシャルがデスクトップPC級なのも,否定しがたい事実である。3DMarkやInquisition,高解像度条件におけるFar Cry 4やFFXIV蒼天のイシュガルド ベンチでGT72S 6QF-019JPが示したテスト結果は,本機が間違いなく「持ち運べるGTX 980搭載PC」であることを,これでもかと証明できている。
 また,GTX 980を搭載することで,Oculus VRの「Rift」やHTCの「Vive」といった,2016年に発売予定の仮想現実(以下,VR)対応ヘッドマウントディスプレイが示すハードウェア要件をクリアしていることもポイントが高い。「ノートPCでVRをどうするか」というテーマについて,エンドユーザーはRiftやViveの最終製品版が登場したときに考えればいいかもしれないが,VRアプリケーションの開発者にとってはそうも言っていられないわけで,現在のところ日本で唯一のVR対応ノートPCであるという観点においても,GT72S 6QF-019JPには大きな価値があるといえるだろう。

画像集#056のサムネイル/デスクトップPC向けGTX 980搭載のMSI製ノートPC「GT72S 6QF-019JP」。日本市場割り当て分最後の1台を,販売開始前に動かしてみた

パソコンショップ アークの注文ページ。ここに「販売終了」の表記が出たら,レビュー品はもう売れてしまったということになる
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 そんなGT72S 6QF-019JPは,国内にわずか10台しか存在しないため,いま筆者のもとにあるこれが,販売されていないものとしては最後の1台だ。「レビュー使用品」として,通常55万9800円(税込)のBTO標準構成価格が42万9800円(税込)と大きく値引きされ,もちろん保証付きでの販売となるので,最後の1台をなんとしてでも手に入れたいという人は,ぜひ下のリンク先から注文してほしいと思う。
 なお,原稿執筆完了時点である2015年12月15日現在,機材はまだ筆者の手元にある。これからパソコンショップ アークへ送ると,納期は最短でも1週間くらいかかるはずなので,この点はご了承を。

GT72S 6QF-019JP,レビュー使用品をパソコンショップ アークで購入する

MSIのGT72S 6QF-019JP製品情報ページ

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