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「ラブプラス」に見るこの先の人間関係のあり方,そしてARの可能性について,社会学者 鈴木謙介氏がKONAMIの内田明理プロデューサーと語り合う
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印刷2010/09/04 10:00

インタビュー

「ラブプラス」に見るこの先の人間関係のあり方,そしてARの可能性について,社会学者 鈴木謙介氏がKONAMIの内田明理プロデューサーと語り合う

画像集#001のサムネイル/「ラブプラス」に見るこの先の人間関係のあり方,そしてARの可能性について,社会学者 鈴木謙介氏がKONAMIの内田明理プロデューサーと語り合う
 昨年末,(現在,4Gamerで「そこ見るんですか?」を連載中の)社会学者の鈴木謙介氏に,KONAMIの恋愛コミュニケーションゲーム「ラブプラス」を中心としたインタビューを掲載したことがある。
 ここで鈴木氏は,ラブプラスには「乙女ゲームの文脈も盛り込まれている」と語っているのだが,実際のところ,開発側はそれをどこまで意識していたのだろうか?
 そこで,どうせなら直接,ラブプラスおよび「ラブプラス+」のプロデューサーである内田明理氏に,鈴木氏から聞いてもらってしまおう! ということで,先日,このお二人による対談を行った。
 上記の話題はもちろんのこと,ラブプラス企画時のヒントがどこにあったのか,どうやってリアルなコミュニケーションを演出したのか,そしてAR(Argument Reality)のあり方など,さまざまな方向に広がっていった対談の様子を,余すところなく掲載しよう。

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ゲームという非日常から,日常の中のゲームへ


4Gamer:
 今日は社会学者きってのラブプラス好きとして有名な,鈴木謙介さんと,ラブプラスの生みの親である内田明理プロデューサーの対談ということで,よろしくお願いいたします。

鈴木謙介氏(以下,鈴木氏):
 よろしくお願いします。

内田明理氏(以下,内田氏):
 こちらこそ,よろしくお願いします。

4Gamer:
 実は鈴木さんがパーソナリティを務められている,TBSラジオ「文化系トークラジオLife」で,ちょうど2009年の秋以降,鈴木さんが「凛子,凛子」言い出していたんですよね。

鈴木氏:
 言ってましたね(笑)。

4Gamer:
 2009年末には,鈴木さんにラブプラスを中心に語ってもらうインタビューも掲載しまして……次はもう内田さんとの対談をやるしかないと,半年以上温めてきた企画なんです。

内田氏:
 ありがとうございます。

鈴木氏:
 ラブプラスって,社会ときちんと繋がっているゲームだと感じているんですね。ゲームをプレイしている人が,どんな社会に生きているのかが,実はよく分かる作品なんです。
 インタビューのときにも話したんですが,携帯電話向けの乙女ゲームに近い印象を持ちました。ああいう乙女ゲームって,長時間ぶっ続けでプレイして,ヒロインを全員コンプリートするといった男の子的な欲望とは違うベクトルの作り方なんですよね。それこそ,恋人にメールを送るような気持ちで,日常の隙間にちょっとプレイするというのを,日々積み重ねていくという。
 一方,男の子向けのゲームだと,これまではなかなかそういうものがなくて,総プレイ時間が数十時間で容量が数GBみたいな世界が続いていました。
 そろそろそういうのに疲れてきたかな? というタイミングで,ニンテンドーDSというハードウェア性能に限界があるプラットフォームで,ここまでずっと遊んでいられるゲームが登場したというのが,ラブプラスの持つ大きな意味だと思うんです。

画像集#005のサムネイル/「ラブプラス」に見るこの先の人間関係のあり方,そしてARの可能性について,社会学者 鈴木謙介氏がKONAMIの内田明理プロデューサーと語り合う
内田氏:
 なるほど。今,お話をうかがっていて,外側からだとそういう風に見えるんだ,という驚きがありました。
 まず乙女ゲームの感覚,空いた時間に恋人と会う感覚というのは,僕が「ときめきメモリアル Girl's Side」のニンテンドーDS版を作っていたときに,まさに感じたことなんです。
 要は,ニンテンドーDSが国民的なゲーム機になっていったとき,プレイヤーさんのゲームに対する接し方が変わってきた,シフトしてきたという感じがあったんですね。あえて悪い言葉で表現するなら,“暇つぶし”なんですが,いい意味でとらえれば,これは“生活に密着”してきたな,と。

鈴木氏:
 確かに。

内田氏:
 例えば,何日も徹夜して何十時間もかけて遊ぶゲームというのは,高度で価値のあるエンターテイメントですが,それは生活の中の一瞬を費やして楽しむという意味で,映画を見たりするのに近いと思うんです。
 一方,携帯電話でゲームを遊んだり,ニンテンドーDSに一つのソフトだけを入れっぱなしにして,長期間遊び続けるというのは,そういったエンターテイメントとは別物だろうという印象を強く持っていました。

鈴木氏: 
 ゲームという非日常から,日常の中のゲームへ,といった感じですね。

内田氏:
 ええ。とくに任天堂さんの「どうぶつの森」であったり,携帯電話の乙女ゲームなんかを見ていると,女性のゲームへの接し方がシフトしてきた……あるいは,新しいお客さんが増えてきたということなんだろうと考えました。そういう意味でも,Girl's SideとニンテンドーDSの相性は非常に良かったですね。
 そしてGirl's SideをニンテンドーDSで遊んでいる女性の反応を見ていると,まさにちょっとした空き時間に恋人へメールを送るような感じに似ていたんです。そして1本のゲームでも長くちょっとずつ楽しむ遊び方を好む方も,とくにライト層には多いな,と。
 でも,ときめきメモリアルって,もともと男性向けのゲームなんですよね。Girl's Sideを作って感じたのは,それまでときめきメモリアルシリーズで楽しんでいた男性も,実は少女漫画を楽しめたり,少しずつ何かを揃えたり集めたりするのが好きだったりと,ある種の女性的な感性を持っている方が多いのではないか,ということにも気付いたんですよ。

鈴木氏:
 確かにそういう節はありますね。

内田氏:
 なので,ラブプラスの企画草案段階から,男性向けでも少しずつ遊ぶゲームというのが通用するんじゃないかと思っていたんです。
 でも,周囲を見てみるとそういうゲームが男性に広く支持された例というのがあまりなくて,これをうまく形にできたらちょっとした快挙かな,と。
 セールス的な面でも,男性向けの恋愛ゲームって,だいたい初動で終わるのが定番なんですよね。それを変えられるのではないか,と思って取り組みました。

鈴木氏:
 発売前の情報だと,「彼女が告白してくれるゲーム」みたいな取り上げ方が主でしたし,そういう方向で注目されていたと思うんですが,本当の魅力はそこではないことが遊んでいるうちに分かってくるんですよね。

内田氏:
 当初,「今度はあなたが攻略されます」というキーワードで打ち出していましたからね。これも実は,社内の企画プレゼンをやるときに考えたものだったんです。
 というのも,社内のプレゼンで“長く遊べる”とか,“恋人になってからが本番”とか,“RTC”(Real Time ClockRTC)システムとかいっても,まったく響かないだろうと思ったんです。どうぶつの森を引き合いに出しても,「客層が違うよね」と言われてしまうのが目に見えてましたし。
 まずは興味を持ってもらおうということで,ときめきメモリアルの絵を使いつつ,「今度は逆です。あなたが攻略されます!」みたいなページを作ったら,ウケたんですよ(笑)。

鈴木氏:
 実際に蓋を開けてみても,「本当に攻略されました!」となって(笑)。

内田氏:
 そうですね。いいリアクションを返してくださるお客さんが,凄く多かったです。
 「攻略される」というのはあくまでイメージで,ときめきメモリアルの場合,プレイヤーが自分の分身を鍛え上げてパラメータを揃えたりしていくのに対し,ラブプラスでは相手があの手この手で髪型を変えたりしてくれますよ……という意味に過ぎなかったんですけど,それ以上のものを感じてくださった方が大勢いらっしゃって。


ラブプラス企画時のヒントは,昭和歌謡の歌詞にあり


画像集#007のサムネイル/「ラブプラス」に見るこの先の人間関係のあり方,そしてARの可能性について,社会学者 鈴木謙介氏がKONAMIの内田明理プロデューサーと語り合う
鈴木氏:
 ラブプラスって,言ってみれば「nintendogs」の彼女版ですよね。

内田氏:
 ああ,簡単に言ってしまうとそうですね。

鈴木氏:
 ただ,nintendogsとの大きな違いは,プレイヤーの対象への入れ込み具合だと思うんです。それが,いわゆる女性のカジュアルユーザーよりも圧倒的に強いという。
 プレイスタイル自体はそんなに変わらないし,何十時間もぶっ通しで遊ぶようなものではないけれど,思い入れという部分では,いわゆる“キャラ萌え”というようなものも含め,もの凄い熱を生み出しているというのを,おそらく多くの人が感じていると思います。
 告白されるまでの過程,されてからのことなど,積み重ねられていくコミュニケーションが巧妙で,率直に言ってツボでした。

内田氏:
 ありがとうございます。

鈴木氏:
 一部ではラブプラスが離婚の危機を招くなんて都市伝説まがいの話もありましたし。女性がゲームのキャラクターに嫉妬するというのは,クリエイターとしては大勝利だと思うんですよね。
 でもそういう事象を,ちょっと外側から見てみると,ラブプラスに込められているさまざまなコミュニケーションは,一体どこから発想したものなんだろう? というのが,凄く気になるんです。

内田氏:
 僕はよく,歌の歌詞からヒントをもらっているんです。ラブプラスを企画していたときには,奥村チヨさんが歌っていた曲の歌詞ですとか。
 そこで歌われているのって,奥村チヨさんが書いたものではなく,昭和の大作詞家の方々が書いたもの……いわば,おじさんが書いたものなんですよね。そこに込められているのは,ある種,男の夢というか,“こんな風に惚れられてみたい”という願望が,女性の言葉になって歌われているんです。「恋の奴隷」という歌の場合,あなた好みの……。

鈴木氏:
 女になりたい(笑)。

内田氏:
 もう凄いんですよね。悪いときはぶってとか。
 最近,草食系男子だなんだ言われていますが,そういうのって周辺の環境がそうさせているだけであって,男の子……ひょっとしたら女の子もそうなのかもしれないですけど,本来持っている欲望や願望って,本当は普遍的だと思うんですよ。
 自分は自分でいたい。だけど,世界のどこかに自分にぴったりの相手がいるはずだ,みたいな。

鈴木氏:
 ありますね。

画像集#006のサムネイル/「ラブプラス」に見るこの先の人間関係のあり方,そしてARの可能性について,社会学者 鈴木謙介氏がKONAMIの内田明理プロデューサーと語り合う
内田氏:
 男女ともに,心のどこかでそういう相手がいるはずだと思って生きているんですよね。そういう部分を,昭和歌謡はくすぐってきたんです。
 ところが1980年代以降,シュールな歌詞であるとか,自分史的な歌詞がもてはやされるようになって,そちらがメジャーになったんです。その結果,プロの作詞家さん達が練りに練ったセリフやキーワードが,歌に込められるという文化が失われてしまったと思うんですよ。
 でも,そこには絶対にぐっとくるものがありますから,それを現代に持ってきたら,「こんな素敵な女性がいるのか!」ということになるだろうという確信はありました。

鈴木氏:
 まさに寧々さん(笑)。
 でも愛花にしろ凛子にしろ,昭和の女というより現代的な部分もありますよね。

内田氏:
 やはり,人間的なインタフェースの部分,コミュニケーションをとる部分に関しては,それなりに現代っ子にしておかないと不自然になってしまうんですよね。
 でも,二人きりになったときや,恋愛感情が相互に一番いい感じに高まっているときって……ちょっと言いづらいんですけど,僕のつたない経験や人に聞いた話では,多くの女性は昭和の女的ないじられ方をされたがるなぁ,と。
 普段からそういうわけではなくても,二人の瞬間みたいなときに,そういうものを男女双方が求めるものだと思うんです。なので,その部分は昭和のままにして,上物を平成にしたというか,そんな感じですね。

鈴木氏:
 確かに,恋人同士が二人きりになったときって,普遍的にこういうコミュニケーションをするんだろうなっていうのが,自分の経験と照らし合わせてもぴったりはまるんですよね。
 ああ,こういうシチュエーションで同じこと言われたことある! って。

内田氏:
 そのときの恥ずかしさとか。

鈴木氏:
 その一方,ラブプラスの良くできている部分は,自分が社会学者として見てきた若者達の世代の差に,きっちりはまるところなんです。
 今の30代からちょっと上の人達は,高校時代に寧々さんみたいな人と付き合ってきただろうし,もっと下の世代になると「いたいた,凛子みたいなやつ」っていうリアリティを感じるでしょうし。
 寧々さん,愛花,凛子という高校3年生,2年生,1年生が,実は3〜5歳刻みぐらいで「あるある」ってパターンに入ってくる女の子に感じられるんですよね。そして時代の変化と共に変化していったコミュニケーションの要素を,各キャラクターがきっちり受け持っているので,どの世代が遊んでも感情移入できるようになっているな,と。
 つまり,“上物のリアリティ”が決しておろそかになっていないし,その奥に普遍的なコミュニケーションがあるというバランスが,凄く良かったと思うんですよ。

内田氏:
 ああ,なるほど。ありがとうございます。


容量的限界を逆手にとって,コミュニケーションを演出


画像集#008のサムネイル/「ラブプラス」に見るこの先の人間関係のあり方,そしてARの可能性について,社会学者 鈴木謙介氏がKONAMIの内田明理プロデューサーと語り合う
鈴木氏:
 ニンテンドーDS用のゲームの不満点って,容量不足に起因するものが多いと思うんです。でも,ラブプラスの場合,コミュニケーションがパターン化,ルーチン化せず,コミュニケーションを重ねるうちに関係性が深まるように感じられるのも優れたところですよね。
 実際には,確実にルーチン化してしまうんですけど,ルーチンのコミュニケーションを重ねているうちに,「そういえば,普通に彼女と付き合っていてもルーチンになるしなぁ」という風に見えてきてしまうのが……恐ろしい!(笑)

内田氏:
 そこに気付いていただけたのは,嬉しいですね。
 容量の限界というのは当然ありますから,ルーチン化は避けられないんですよ。でも,そう見えないようにしなければならないというのが,課題としてあったんです。
 例えば多くのゲームの場合,A→B→Cという段取りを踏めばXという結果が出てくるのが決まっていますよね。でもそこをばらして,段取りを踏めば必ずXが出てくるようにはしない,という方法を考えました。つまり,この間と同じようにA→B→Cと段取りを踏んだのに,なんで今回はXにならないんだ? と思わせたかったんです。
 そのために,数値を全部見えなくして,機嫌やムードといったパラメータをたくさん用意して,揺らぎを持たせました。

鈴木氏:
 法則性がありそうなんだけど,考えてみてもよく分からないんですよね。

内田氏:
 「こうやれば,出るはずだ。あれ,出ない? あ,今度は出た。なんでさっきはダメだったんだろう? ちょっと前にとった行動が原因なのかな?」みたいな段階を経て,「あ,こういう風に優しく言ってあげれば大丈夫なのか」と思えることがあると,コミュニケーションにアナログっぽさが出るんですよ。
 でもこういうのって,普通の恋愛関係の中でもみんな手探りをしているわけですよね。あの一言が悪かったのかなとか,そういえばこの間もこれを言ったら機嫌が悪くなったよな,とか。それに近いやりとりを発生させるために,“自分の思い通りにならないけど,思い通りになることもある不思議”みたいなものをうまく演出できたのかなと。

鈴木氏:
 そこが凄いんですよね。
 多くの恋愛シミュレーションゲームの場合,パラメータを理解したうえで,それに対していかに合理的な答えを出していくかという攻略になりがちなんですよ。敵が出てくるタイミングを覚えて,合理的に体を動かすというのと同じで。
 これまでコミュニケーションをテーマの一つにしてきたゲームは,容量を増やして人間の記憶力や反射神経で追いつかないものにさえすれば,合理的な理解では追いつかないものになっていって,リアルなコミュニケーションを再現できるだろう,という方向性だったと思うんです。

内田氏:
 そうかもしれません。

鈴木氏:
 ところが,コミュニケーションの本質はそうではないんですよね。
 社会学には“再帰性”(Reflexivity)という言葉があります。簡単に言うと,相手の行動に対して,自分の中で“あれは何なんだろう?”と考え,自分の見られ方や行動を調整するのがコミュニケーションの基本であるというものです。
 昭和歌謡的な男女関係の理想が,“俺がこうするんだから,お前がこうするのは当たり前だろう?”という風に,相手の行動を期待したとおりに動かすことだったとしても,現実には期待通りに行動してくれるかどうかは分からないわけです。分からないから,ランダムに返ってくる相手の反応を自分の中で処理して,「これはなぜなんだろう?」ということを考えて,行動していかなければなりません。
 本来,これがコミュニケーションの基本的な形ですし,人間が自由に振る舞う社会では,当たり前にやらなければいけないことなんですよね。でも,大容量化を進めたコミュニケーションゲームでは,そういった視点が欠けていましたし,もっというと,日本人の社会にも欠けていると思うんです。

内田氏:
 う〜ん,なるほど。確かに思い当たる節はありますね。

画像集#009のサムネイル/「ラブプラス」に見るこの先の人間関係のあり方,そしてARの可能性について,社会学者 鈴木謙介氏がKONAMIの内田明理プロデューサーと語り合う
鈴木氏:
 1956年に出版されたエーリッヒ・フロムという心理学者の著書に,「愛するということ」というものがあります。そこでフロムは,「“愛するということ”というようなタイトルで書かれている本のほとんどは,どうやったら好きになってもらえるか,つまり“愛される技術”についてしか書いてない。自分の“好き”という気持ちを確認したり,相手に伝えたりする技術についての本は,いっさいない」と述べています。確かにそうなんですね。
 昭和的な,「こいつ俺の思い通りにならない,生意気だ!」というのではなく,相手が思い通りの反応をしてくれなかったとき,「俺,何か間違えたかな?」って反省してやり方を変えていくのが人間のコミュニケーションなんです。そうやって微調整して相手に接していかなければ,コミュニケーションは成り立ちません。
 でも,そういう技術や,ひょっとしたらそれを学ぶ機会が日本の社会には欠けているのかもしれない。

内田氏:
 欠けていますね。

鈴木氏:
 そんな中,ラブプラスというゲームは,“凄く好きなのに応えてくれない,じゃあどうしよう?”“自分が悪いような気がする”という自分の中で起きる反応が,現実の社会でコミュニケーションをするときと同じものとして感じられるんですよ。
 だからこそ,本気ではまってしまった人が続出したんだと思います。

内田氏:
 ゲームの場合,うまくいかないと自分が間違っているはずだって,ロジカルに考えるしかないんですよね。必ず正解があって,自分がそれにたどりついていないだけだと考えざるをえない。
 でも,人間関係だと素直になれなくて,「あいつが間違っているんだ」という具合に意地を張ってしまうこともありますよね。

鈴木氏:
 そんなとき,人間相手なら逆ギレもできるんですけど。

内田氏:
 ゲーム相手だと,逆ギレしたところで先に進まないですからね。人間関係も,逆ギレしたら先に進まなくなるかもしれないですけど(笑)。
 ……確かに,ゲームだからとりあえず正解があるはずだと考えると,うまくいかないときに自分が間違っていると考るしかないですね。だから,歩み寄ってみようという素直な気持ちになれるのかもしれません。

鈴木氏:
 本来,それが“社交術”というものなんですよね。日本の社会は伝統的にそれが欠けているんです。相手のことが分からない状態で,手探りでコミュニケーションを重ねていくのは,ときに傷つくこともあってつらいものなんですが。
 だから,昭和的なフォーマットだったり平成的なフォーマット……例えば,ギャルってこんな感じだよね,清純派ってこうだよね,みたいなテンプレートに他人を当てはめて,そのテンプレートの中で相手を理解して,その枠の中だけでコミュニケーションをするということになりがちです。
 でも人間を相手にするときには,そこから先に進んで,相手のことをちゃんと考えられるようにならなきゃいけないんですが,口で言うほど簡単なことではないんですよね。常に自分が間違っているかもしれないし,同じように相手も間違っているかもしれない……それこそ「寧々さん,誤解だよ!」みたいな(笑)。

画像集#010のサムネイル/「ラブプラス」に見るこの先の人間関係のあり方,そしてARの可能性について,社会学者 鈴木謙介氏がKONAMIの内田明理プロデューサーと語り合う
内田氏:
 大いにありますね(笑)。
 ラブプラスって,有限なデータの中でやっているものなので,人間が実際にコミュニケーションするのと比べたら,どうしてもスカスカなんです。ただ,その隙間……というか,行間を使うことは重要だと思っています。
 Girl's Sideでもそうだったんですが,キャラクターの心情を100%伝えようとしても,書ききれないんですよね。なんとか詰め込もうとすると,ただひたすらペラペラ話しかけてくるだけになってしまいますし。そうなるとゲームシステム的にも都合が悪くなりかねません。
 そこで,セリフの中から説明的な要素を思い切って省いていって,抽象的にしたんです。

鈴木氏:
 かなり抽象的なものが多いですよね。

内田氏:
 人間の脳って,テンプレートに当てはめられないことが苦手だから,なんとか知っているテンプレートに当てはめようとするんですよね。抽象的なセリフで埋めていくと,プレイヤーさんがその人なりのテンプレートに当てはめて,納得しようとしてくれるんです。結果,さまざまな解釈が生まれてくると。これは,人間の脳の癖を使ったやり方なんですけど。
 例えば,ラブプラスに出てくる会話が,機械的なロジックなどいっさいなくて,100%ランダムに出てくるものだったとしても,プレイヤーさんはきっと,その中から一生懸命ロジックを見つけ出そうとしてくれると思うんです。

鈴木氏:
 そうですね,その点でいえば物語がないのも重要だと思います。
 物語があると,例えば女の子が押し黙っている状態は,ゲームに慣れている人ほど,物語が次の展開に進む伏線だと判断しちゃいますからね。でも,物語がないと,こちらが話しかけても寧々さんが黙り込んでいたら,「あれ? 俺,何かやっちゃったっけ?」となってしまいます。

内田氏:
 ロジカルな考え方ができなくなっちゃうんですよね。

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