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[CEDEC 2009]「バイオハザード5」制作で見せたカプコンの超こだわりサウンド制作手法
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印刷2009/09/04 18:44

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[CEDEC 2009]「バイオハザード5」制作で見せたカプコンの超こだわりサウンド制作手法

バイオハザード5
 「バイオハザード」シリーズ/「デビル メイ クライ」シリーズ/「モンスターハンター」シリーズなど,数多くの作品をヒットさせ続けているカプコンのサウンドスタッフによるセッション,「カプコンが考えるサウンド制作方法の提案2 〜バイオハザード5〜」がCEDEC 2009最終日に開催された。
 ここでは,カプコンにおけるサウンド制作環境およびその実際の使用法を実践的に講義したセッションをレポートしよう。なお,セッションで使用した実例素材は,「バイオハザード5」PlayStation 3 / Xbox 360 / PC)だ。講師は,カプコン クリエイティブ制作部サウンド制作室から,サウンドディレクターの岸 智也氏,同じくサウンドディレクターの鉢迫 渉氏,ミキシングエンジニアの瀧本和也氏の3人が務めた。

 前回(2008年)は,カプコンのサウンド制作環境の解説が中心だったため,サウンド制作に直接携わっていない人でも興味深く聴けたセッションであったかもしれない。
 今回は2008年のセッションを前提に,より密度の濃い踏み込んだ内容となった。正直に言って,そのままレポートするとサウンド制作者以外にはほとんど理解不能なレベルという,受講する側にもスキルが求められるものであったため,筆者なりの解説を加えた形でお伝えしていく。

「スプリットスクリーンにおけるマルチリスナー」とは


 まず,サウンドディレクターの岸 智也氏による「スプリットスクリーンにおけるマルチリスナー」からセッションはスタートした。

写真1
バイオハザード5
 しょっぱなから頭に?マークが付きそうな題名だが,スプリットスクリーンとは,「バイオハザード5」におけるマルチプレイモードの一つ,モニター一つで2人協力プレイができる(=異なる2視点からの二つの映像を同時に表示する)画面分割マルチプレイのシステムだ(写真1)。

 セッション中はとくに触れられていなかったが,通常このような環境で単純にサウンドを再生すると,両者の音のバランスが崩れ,なにがなんだかよく分からなくなってしまう。セッションでは,「MT Framework」によるその解決方法が説明された。
 なお,すでにMT Frameworkという名前をご存じの人も多いだろうが,MT Frameworkはグラフィックスのみならず,サウンドを含めさまざまな機能をサポートする,マルチプラットフォーム対応の統合開発ソリューションである。本稿では,そのサウンド部分を取り上げて単にMT Frameworkと呼ぶ。

 さて,同社が誇る自社製サウンド制作ツールであるMT Frameworkは,現在標準でサラウンド再生をサポートしている。5.1chサラウンドシステムの場合,その定位方法(音源が5.1chのどこから鳴るかということ)は,5本のサテライトスピーカーの合計が1.0となるとき0dB(最大出力)となる(写真2)。たとえば写真3のような場所で音源が鳴る場合は,Rスピーカー=0.25,Rsスピーカー=0.75になるわけだ。

バイオハザード5
写真2
バイオハザード5
写真3

 ところが,これがスプリットスクリーンモードになると話がややこしくなる。たとえば写真4のような場合,二人のプレイヤーそれぞれの視点が異なるため,単純に2視点で二つの音を鳴らすと,1+0.8=1.8と,かなり音量オーバーになってしまう(写真5)。もちろん定位が分かりにくくなるし,下手をするとテレビなどのスピーカーを傷めてしまう可能性すらある。

バイオハザード5
写真4
バイオハザード5
写真5

 したがって,スプリットスクリーンでは,単に二つの画面のサラウンドサウンド再生をするだけでは適切ではない,ということになる。分かりにくければ,PCで二つ以上の音声ファイルを同時に,通常聴いているボリュームで,1セットのスピーカーで再生してみてほしい。要はそういう状態になってしまうということである。

写真6
バイオハザード5
 この解決策はいろいろあるのだが,岸氏が解説してくれたカプコンのアプローチは,どちらかというと“やや”プログラム寄りの方法。同社独自の言い回しである「リミッター係数」という係数を導き出し,それを乗算することで,単に音量を1/2にしただけではない,もう少し場面場面に応じたボリューム調整が可能になる,というものだ(写真6)。
 先の例でいうと写真7,8のようになり,リミッター係数は約0.56となる。小さいほうの音はこれを乗算することで,最終的に0.448となる。大きいほうは1.0 x 0.56で0.56だ。

バイオハザード5
写真7
バイオハザード5
写真8

 ここら辺のさじ加減を計算式で導くところは,MT Frameworkがプログラマ主導で論理的に構築していることの一端を垣間見せてくれるようで興味深い。さらに言えば,おそらくすべての効果音に対して,配置してある元々の音量から随時係数を計算して,常に自動で処理しているものだと思われる。

写真9
バイオハザード5
 音量だけではなく,音響処理に関しても抜かりはないようで,臨場感を演出するさい非常に重要な,通常「リバーブ」と呼ばれる残響処理も,スプリットスクリーンモードでは工夫がなされている(写真9)。
 ちょっと駆け足での説明だったので,あくまで筆者の理解だが,1プレイヤー時(つまり1スクリーンモード)は,そのシーンのリバーブ処理がそれぞれのプレイヤー用に用意されている。一方スプリットスクリーンモードでは,どうやら各プレイヤー用のリバーブを引き続き利用するものの座標で区切り,オブジェクト(音源)がその座標に触れているか座標内にある間は,そのリバーブ設定を使用するというもののようだ。

「インタラクティブミックスアプローチ」


写真10
バイオハザード5
 次に同じくサウンドディレクターである鉢迫 渉氏の解説で,「インタラクティブミックスアプローチ」の講義が始まった(写真10)。これまた頭に?マークが付きそうな題名だが,これは簡単にいうと,「何分何秒何フレームでこの音が鳴る」という風に決められていない,リアルタイムに状況が変化するゲーム中の音全般をまとめあげるさいのアプローチ方法,ということである。

 たとえば,ゲーム内において「右に行くと部屋,左に行くと野原」という状況では,プレイヤーはどちらにも行けるし,どちらにも行かずそのまま突っ立っていることもできる。つまり音場処理は「リアルタイム」かつプレイヤーの操作に応じて「インタラクティブ」に変化する。
 ゲームでは当たり前のことだが,映画やアニメなどより伝統的なコンテンツではあり得ない,特有のアプローチである。これをカプコンでは「インタラクティブミックスアプローチ」と呼んでいるようだ。

写真11
バイオハザード5
 まずは「調整に向けての段取り・取り決め」からだ。これは,鉢迫氏が担当する仕事と担当しない仕事(=ほかの人から受け取る作業結果)に始まり,作業を円滑かつ効率的に行うための取り決めまでを説明している(写真11)。「バイオハザード5」のようなビッグタイトルの膨大なインタラクティブミックスを混乱なく効率的に,分担した作業をまとめていく過程をわずかながら味わうことができた。

 筆者が見ていて“カプコン独自”と感じたのは,2008年のセッションで紹介された「リファレンスレベルの設定」だ。ざっくり説明すると,平均音圧レベルを基準値(=リファレンスレベル)にできるだけ近づけるための制作環境とルーチンを用意して,音圧調整を行うというものだ。

 アイデア自体は特別ユニークというわけではなく,古くからあった手法だと記憶しているが,これを現在前面に押し出すメーカーは,筆者が知る限りカプコンだけだ。
 制作のすべてを分かっている数人のエンジニアだけではもはや完結できなくなった現在のゲーム制作において,個々人の能力によって生じるパート毎の品質差をできるだけ吸収して“平均点を落とさない”制作方法だが,ゲーム開発の現状を踏まえた非常に現実的かつ効率的な約束事と言えるだろう。

写真12
バイオハザード5
 次に「音像イメージの表現方法」(写真12)。ここでもかなり実践的な解説がなされたが,かなり専門的なので要点だけに絞って筆者なりにかみ砕いた説明にしてみよう。
 鉢迫氏によれば,音像イメージの表現方法にはいくつかの手法があるとのことで,まずは作業見積もりともいうべき「音像の視覚化」を行う。一口に音源といっても,ダイアログ(台詞)から効果音,BGMまでその種類は多岐にわたるので,これをカテゴリ別に分ける。写真13の上側にあるものほど強く聴かせたい音源となる。
 また,別の角度から見た図が写真14で,プレイヤー属性の音と敵属性の音を対比したチャートになっている。こちらも上側に行くほど音量感は強くなる。視覚化してイメージをつかむことで,音の配置のさい破綻が生じたりだんだん音が大きくなっていったり……ということを防ぐことができるようだ。

バイオハザード5
写真13
バイオハザード5
写真14

 ちなみに,筆者はサウンドデザイナーの端くれであるが,ここまできっちりしたイメージを構築して作業に取りかかるプロジェクトには残念ながらお目にかかったことがない。制作チームの熱意が感じられる。

写真15
バイオハザード5
 続けては「立体的な音像表現」。これは簡単にいうと,各音源が距離により変化するのを(近ければ音量は大きくなり,遠ければ小さくなるのは当然だが,音源によって近づき方,遠ざかり方を変えるわけだ),ボリュームカーブを用意して,遠いときにメインになる音と近くにくるとメインになる音,もしくはそのコンビネーション(音源が遠いときと近いときで音を切り替えるなど)をコントロールするという手法だ(写真15)。
 別段新しい手法ではないが,MT Frameworkが音源ごとにボリュームカーブを持てるという細やかさには正直脱帽する。これを一つ一つ調整していくのは確かに専任のサウンド担当者でないと不可能であろうし,非常に忍耐のいる仕事だと思う。会社によってはこの手の作業は一切行わず,音の聞こえ方が破綻している作品も多いが,カプコンではそういうことがないようにサウンド担当者が気を配っていることが分かる。

写真16
バイオハザード5
 次に「大気の存在表現」について。これまた頭に?マークが付く題名だが,前述の残響処理(リバーブ処理)の詳細のことである。ここでは距離によるリバーブ処理の変化で空気感を変化させる技法について解説していた(写真16)。
 ちなみに残響は自然の残響(ホール/室内など)がさまざまで,音に関わる人以外には非常に複雑に聞こえるが,演算により擬似的に作りだされる人工的なリバーブは,主にドライ音(リバーブのない“生”の音)+初期反射音(部屋の壁などにぶつかって反射する音)+残響音の三つで構成され,通常初期反射音と残響音を併せて「リバーブ」と呼ぶ。また,ドライ音に対して「ウェット音」(処理されてリバーブがかかった音だからウェット)とも呼ばれる。

写真17
バイオハザード5
 「バイオハザード5」では,リバーブの中でも初期反射音を通常予測されるより強め(大きめ)の音量にすることで,部屋の空気感や大きな室内で音が遅れて返ってくる感じを演出しているとのことだ。
 このリバーブ音に対しても別個に距離に応じて変換するボリュームカーブが用意されており,カプコンサウンドチームのこだわりぶりがよくわかる。
 写真17の例では,20mまでは遠くなるにしたがってウェット音が逆に強くなり,20m以降急激に減衰するカーブ形状となっている。現実に自然界でこのような音になることはあまりないが,演出上効果的だと判断したということなのだろう。

写真18
バイオハザード5
 「臨場感の表現」というアジェンダもあった。こちらは,迫力のある音で演出したい音源(銃声や大型ボスなど)の残響は「クワッド」つまりL/R/Ls/Rsの4チャンネルを使用する,というアイデアだ(写真18)。
 平たく言うと,サラウンドリバーブを使用したStereo-to-Surroundの一種なのだが,定番な分だけ効果は大きい。あえて迫力を出したい音源をメインに「クワッド」にするところがむしろアイデアだと思う。

写真19
バイオハザード5
 そして「シームレス感」。これは後述の「カットシーン」(尺=長さや演出が常に同じコンテンツ),つまり映画やアニメと同じ手法で作られたインタラクティブ性のない通常の映像コンテンツとインタラクティブパートの切り替わりを,スムースで違和感のないものにするための工夫である(写真19)。
 ちなみにほとんどのゲームでは,インタラクティブパートとカットシーンの切り替えがスムースであることはなく,カットシーンだけがいい音になってしまったり,なんだかちぐはぐになってしまっていたりする。
 これを解消するため,「バイオハザード5」ではまずカットシーンとの距離感を合わせることから始めたそうだ。さらに前述のリファレンスレベルを合わせることで,かなりスムースな切り替えが可能になったとのこと。もちろん自社スタジオでのすりあわせ(微調整)も怠っていない。


写真20
バイオハザード5
 「BGMとの共存」もゲーム制作において常に重要なテーマだ。詳細は写真20のスライドを見てもらうとして,「必要以上にBGMを鳴らさない」「BGMのオン/オフで緩急をつける」というのは近年のゲームに見られる映画的手法で,これを行うことでずっとBGMが鳴りっぱなしの作品よりずっとメリハリ(緩急)がつくのが特徴だ。とくに「バイオハザード5」のような“緊張と解放”が醍醐味のゲームではよりそれが顕著になるだろう。

写真21
バイオハザード5
 「調整フロー」とは,いったん組み込んだ音を,ときにはより自然に,ときにはより効果的に聴かせるため,随所で行う微調整をうまくワークフロー化したもの。関係者には面白いのだが,一から説明するのも冗長なので割愛する。ここでは氏が最後に見せた「調整の際心がけたこと」というスライドだけ取り上げておこう。
 写真21のスライドだが,読者が見ると当たり前のことのように感じるかもしれない。しかし,インタラクティブパートの効果音やボイス,BGMの総数(=音源の総数)はおそらくゲーム全体で数万に上ると思われる。
 それを各シーンごと,微に入り細に入り「一期一会」の信念(鉢迫氏は「1チャンス」という言い方をしていた)で完遂するのである。じつに大変な仕事だと思う。
 もちろんシステムが自動制御してくれる部分もあるのだが,プレイヤーが不自然に感じない音,“すごい”と感じる音というのは,けっきょくのところ自動制御以外の部分の努力が非常に大きいのだ(筆者は以前効果音の制作/配置/調整などもやったことがあるので比較的理解しやすかった)。この多大な苦労とそれを少しでも軽減するための工夫,さらによく聴かせるための努力に素直に敬意を払いたい。

「バイオハザード5」カットシーンミキシング


バイオハザード5
写真22
バイオハザード5
写真23
 3人目の講師はミキシングエンジニアの瀧本和也氏である。こちらは前述の「カットシーン」,つまりインタラクティブではない,映画やアニメと同じくいわゆる“決め打ち”のデモパートの話が中心となった(写真22)。

 まずは今回の制作スタイルについて。定番となる米digidesignの音楽制作システム(DAW,Digital Audio Workstation)の「Pro Tools|HD」とそのコントローラ「Icon」を使用している。ユニークなのは,「バイオハザード5」では映画制作の本場ハリウッドに“近い”スタイルで制作を行っている点であろう。
 すなわち,2セットの「Pro Tools」を2名のエンジニアが役割分担しながら同時にファイナルミックス(ダイアログ=台詞/効果音/BGMの三つをミックスしていく最終ミックスのこと)していくというスタイルを取っている(写真23)。
 瀧本氏も述べていたのだが,通常ハリウッドのスタイルは,3セット(3チェーンともいう)のコンソールに3名のエンジニアで同時にファイナルミックスを行うのが定石だ。しかし,エンジニアが2名であるという点とスタジオのサイズの問題から,このような変則的なスタイルになったという。

 また,「バイオハザード5」のミキシングコンセプトだが,作品の舞台となる“アフリカの砂漠”のイメージを大切にし,ダイアログ(台詞)やフォーリー(人間が動いた時の衣擦れや歩く音)で世界観を演出していく方向性だったという。
 アフリカの砂漠というと,多くの人の頭の中には“乾いた空気”や“灼熱の太陽”が浮かぶだろう。これを映像だけでなく,音でも表現しようという試みである。また衣擦れや足音は,効果的に使えば非常に作品のリアリティを増す。どちらも作品の方向性を「感覚的に」演出する非常に重要な要素であろう。

写真24
バイオハザード5
 ファイナルミックスだけでなく,「バイオハザード5」では音楽自体の制作も非常にリッチだ。104名編成のオーケストラによる一発録りをハリウッドのニューマンスコアリングステージで敢行。レコーディングエンジニアも現地の著名な凄腕スタッフを起用するなど,非常に力が入っている(写真24)。
 この録音品質が非常に高かったため,プリプロダクション時(いわゆる「デモ状態の曲」)には使用されていたシンセサイザは一部を残してほぼ不要になったという。瀧本氏いわく「音像はやや後ろに引っ込んだが,低域の迫力が増し,高域のきらびやかさが増した」とのこと。
 ちなみに解説すると,音像がやや後ろに引っ込んだのは部屋のリバーブ成分がたっぷりあるので,前述の話でいうとウェット音が多いから。低域の迫力はハリウッドで「Thunder Drums」などと呼ばれている,クラシックでは使わない楽器も含めた大人数編成のパーカッション部隊が担っていると思われる。高域はブラス(トランペットなど)の演奏/録音がよいからくぐもった印象にならず,前に出てくる音なのであろう。

昨年題材となった「ロスト プラネット エクストリーム コンディション」同様,世界的な人気作である「バイオハザード」シリーズの5作目も,サウンド制作者がブランドに安住することなく不断の努力を続けていることが分かるセッションであった。他社の開発者にとっては実践的で意義深いものであったと思う。

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