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【西川善司】ハリウッドのゲームローカライズスタジオを見学してきた話
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印刷2010/08/28 09:17

連載

【西川善司】ハリウッドのゲームローカライズスタジオを見学してきた話

西川善司 / グラフィックス技術と大画面とMAZDA RX-7を愛するジャーナリスト

(善)後不覚

blog:http://www.z-z-z.jp/blog/


 4GamerでSIGGRAPH 2010のレポートをお送りしましたが,そのタイミングで米Technicolor(テクニカラー)ゲーム部門のスタジオを訪れる機会がありました。

Technicolorのゲーム部門は,映画の聖地ハリウッド地区に近いバーバンク市にある。Disney(ディズニー)やWarner Bros. Entertainment(ワーナーブラザーズ)などの本社があるのも実はバーバンク市で,このあたりまで「ハリウッド地区」に含める場合もあったりする
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映画制作のノウハウをゲーム制作に応用


 Technicolorのロゴは,おそらく映画ファンであればあるほど馴染みのあるものだと思います。次に映画を見る機会があったら,エンドロールで,最後の最後のほうを気にしてみてください。かなり高い割合でTechnicolorのロゴを見ることになると思います。

 Technicolorは,白黒だった映画をフルカラー化した企業として名を馳せ,現在までに映画産業と90年以上の深い関わりを持ってきました。映画がフィルムからデジタルデータに置き換わりつつある現在でも,Technicolorは「映画コンテンツと色」にまつわる幅広い事業を手がけています。

 ……と,ちょっと広告くさい言い回しになってしまいましたが,そんなTechnicolorが近年力を入れ始めている新分野が,ゲームなのだそうです。今回お邪魔できたのは,同社のゲームプロダクション&ポストプロダクション部門でした。
 もともとTechnicolorでは映画の多言語化を行うためのサービスを行っていたのですが,そのノウハウをゲーム分野に応用していこうと新設されたのが本セクションとのこと。ハリウッド仕込みのサウンド制作技法やローカライズ技法をゲーム分野に展開しているのだとか。

 ボクが訪れた部署が主に手がけているのは「セリフの翻訳」「声優のキャスティング」「セリフの録音」「効果音の作成」「サウンドのミキシング全般」などだそうです。入り口近くの壁には,このスタジオでサウンド制作を行った著名ゲームタイトルの開発スタッフサイン入りポスターがたくさん飾られていました。

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Technicolorでここでサウンド制作やローカライズを行った作品群の数々。他にもたくさんの写真があったが,日本でも知名度の高いタイトルをピックアップしてみた
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Gears of Warシリーズ関連では“あの武器”までも飾ってあった

 セリフの録音やミキシングが行われるスタジオは,映画制作に使うものと同じクオリティになっているそうです。

 お邪魔したその日は,とある日本の著名ゲーム会社がワールドワイドで展開を予定している新作タイトルのサウンド&セリフ録音が終わった直後だそうで,スタジオは閑散としていたのですが,スタッフがわざわざ,スタジオ機材をすべてブートアップし,録音風景の再現を行ってくれました。

録音スタジオの様子。左奥のTom Hays氏(Director, Audio Services)は1990年代からゲームサウンド制作に携わってきた人物で,MystやWolfensteinシリーズ,最近では「Guitar Hero World Tour」のサウンドを手がけた実績を持つ。中央奥のJulia Bianco氏(Associate Producer)は「Call of Duty 3」「Spider-Man 3」「Silent Hill: Shattered Memories」「Army of 2: 40th Day」のサウンド制作に参加。右手前のDavid Walsh氏(Recording Engineer)は「Mass Effect」「Jackass: The Game」そして北米版「Blue Dragon」の台詞録音を担当した人物だ
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実際にTechnicolorのスタッフさん達が録音風景を再現してくれた。声優がいるブロックとコンソールルームは完全防音なので,指示はすべてマイク経由で行われる
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 スタッフによれば,日本のゲームスタジオで翻訳された英語のセリフには,やや古くさい言い回し表現がよく混じっているそうで,「シェイクスピア劇みたいなのがあるよ」とのこと。そういう場合は,日本側のディレクターに事情を説明して,Technicolorがアドバイスした英訳バージョンも録音するんだそうです。最終的にどちらを使うかはディレクターさんの判断になるそうですけども。

録音スタジオのコンソール部。ヤマハ製の24チャネルデジタルミキサーが鎮座していた
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 こうした「録音時のワンポイントアドバイス」とは別に,Technicolorでは日本語から他の多言語,他の多言語から日本語への翻訳事業も展開。最近では,日本産タイトルの海外進出が活発化していることもあって,タイトル丸ごと,まとまった量のテキスト翻訳を依頼されるケースも増えており,最近では,あの「Unreal Engine 3」の日本語マニュアルがTechnicolorで制作されたとのことです。

このスタジオで録音された,ゆかりあるゲームキャラクター達。「Do Not Move!」と書かれた張り紙はスタッフのこだわりなのかも?
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このスタジオでサウンド制作された有名タイトルの数々は,50年以上の歴史を持つサウンド関連表彰式典「THE GOLDEN REEL AWARD」にノミネートされ,実際に賞を受けたりしている。左のMark Jasper氏(Supervising Sound Designer&Re-Recording Mixer)は「Uncharted 2」で総計90分にわたるムービーシーンのすべてをミックスした人物だ。なお,右は再びTom Hays氏
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 ゲームの場合は,自社でサウンド制作を行っているところが多いのですが,カットシーン(=ムービーシーン)などでは,映画的な音響演出が求められることも多く,そうしたケースでは,Technicolorの持つ制作技術が活かせることになります。
 森の木々の葉がかすれる音,虫の鳴き声,雑踏音など,通常,ほとんど気に留められない環境音のミックスは,我々が考えている以上に重要で,「どういうシーンでどんな音をミックスすればそのシーンが引き立つのか(あるいは,リアルに感じられるか)」といった部分は,映画のサウンド制作に携わってきた経験がモノを言うとのことでした。

 サウンドのミックスで最も難しく,そしてキモとなるのは,「画面に出ていないものに効果音を当てはめること」だそうです。画面に出ているモノはその動きに合わせて効果音を当てはめればいいので,むしろ楽なんだとか。
 例えば,画面に出ていない背後の環境音で電車の通る音がすれば,画面に電車が見えていなくても線路が近くにあると分かります。これがあるとないとでは,シーンの説得力が違ってくるというわけです。

 画面の外から画面内に走り込んでくるようなキャラクターの足音は,キャラクターが画面に映っていないときからミックスすることになります。この足音をどうフェードインするか,あるいは左右の音像の移動バランス(=パン切り替え)速度によって,キャラクター移動のスピード感が演出されます。
 画面に映っていない部分にどう効果音の当てはめるかは,エンジニアの想像力が試される部分なんでしょうね。

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大きなミックススタジオ。先ほど紹介したMark Jasper氏が,実際に「Uncharted 2」のムービーシーンの事例を題材として効果音のミックスを再現してくれた
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こちらはやや小規模なミックススタジオ。Mark Camperell氏(Sound Editor)は「Ratchet and Clank Future: A Crack in Time」のサウンドを担当した。「Uncharted 2」のミキシングにも参加

 サウンドを新たに創り出す場合は,過去数十年にわたってTechnicolorのエンジニア達が構築してきたサウンドライブラリを元ネタにして加工したり,あるいは,予算次第では大がかりな録音を行うこともあるのだとか。
 実在の銃を取り扱うシューティング系コンバットゲームでは,実際に28丁もの銃火器を撃って録音したそうです。銃撃音は,やたら音量がでかい割に一瞬で減衰してしまうため,意外にも録音は難しいという話でした。

 直近の例として挙がった「Race Driver: GRID」では,Dynopack(※ダイノパック。エンジン駆動系の性能を測定する大型の装置)に固定した実車でアクセルをふかし,そのエンジン音,ターボやインテークの補器類などのサウンドを収録したそうです。まぁ,相当な予算を掛けられるビッグタイトルでないと,ここまでやるのは難しいんでしょうけどね。

 ところで,サウンド制作を担当するエンジニアは音というものに対して常時アンテナを張っているらしく,普段耳にする音でも「この音をああ加工したら何に使えるな」という空想をするんだそうです。実際,チワワの鳴き声のピッチを下げて加工して恐竜の鳴き声を作ったりしたこともあったとか。また困ったときには,自分自身の口で発声した擬音をネタに音作りをすることもあるそうです。ちょっと録音している風景は人に見られたくないですね。
 ちなみに,用いるシンセサイザーは,今はもっぱらPC上のソフトウェアベース(=プロ向けツールのプラグインソフト)が多いらしく,いわゆる鍵盤付きシンセといった,昔ながらのサンプラーはもう使っていないとのことでした。

サウンドエンジニアのパーソナルワーキングスペース。完全な一部屋が与えられているので,自分の口で効果音を作っていても笑われないで済みそうだ。鍵盤はコントローラとしての意味合いが強い。なお,左のChris Pinkston氏(Sound Designer/Engineer)は「Transformers: War for Cybertron」「How To Train Your Dragon」等のサウンド制作を手がけた実績がある。右のLydian Tone氏(Supervising Sound Editor)は「Uncharted」「Shrek the 3rd」「Jak&Daxter」シリーズのサウンド制作を手がけた
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おわりに


Technicolor,アニメーション部門のシニアプロデューサーを務めるMarty Kossoff氏。最近では,ロンドンにある蝋人形博物館「Madame Tussauds」(マダムタッソー)内にある立体視シアター向けにMarvel(マーベル)ヒーローもののコンテンツを手がけたとのこと
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 Technicolorでは,ゲームだけでなく,テレビ,映画,CMをはじめとしたアニメーション作品のプロダクションやポストプロダクションも手がけているそうです。最近ではMPC(Moving Picture Company)という,映画向けのデジタル特殊効果を担当する別会社も設立し,007の新シリーズ,G.I.Joe(G.I.ジョー),Harry Potter(ハリー・ポッター),Watchmen(ウォッチメン)といった大作のCG部分を手掛けて実績を積み上げていたりします。「白黒映画のフルカラー化」企業として立ち上がった企業とは思えないほど,デジタル分野への進出が進んでいるんですねえ。

 最近は,日本のゲーム会社やアニメ製作会社も海外市場を意識したタイトルの開発/制作が多くなってきていますが,それこそ今後,ボクが訪れる直前までスタジオを使っていた国内某社のように,Technicolorを利用する国内デベロッパが増えてくるかもしれません。
 同社プロジェクトコーディネーターのAyumi Logan氏は,「Technicolorは,書類のやりとりや電話応対を日本語で行える数少ないハリウッドスタジオなので,日本のクライアントから重宝されているのでは?」と言ってました。


 ……なんか,今回は,完全な社会科見学モードになってしまいましたが,もともと自分はMIDIとかで音楽制作なんかもやっていた経験があるので,仕事を忘れて,普通に楽しんでしまいました。Technicolorの皆さん,ありがとう!

最後は取材協力して頂いた方達との記念撮影
上段左からMark Camperell氏,Tom Hays氏,Julia Bianco氏,Mark Jasper氏,David Walsh氏,Chris Pinkston氏。中段左からSean Neri氏(Production Assistant。「Ratchet and Clank Future: A Crack in Time」「Red Steel 2」のサウンド制作に参加),Lydian Tone氏,Elizabeth Johnson氏(Sound Editor。「Madagascar 2」「Pac-Man Party」のサウンド制作に参加)。下段左からAyumi Logan氏(Project Coordinator),西川善司(笑)
【西川善司】ハリウッドのゲームローカライズスタジオを見学してきた話

■■西川善司■■
テクニカルジャーナリスト。4Gamerの連載「3Dゲームエクスタシー」をはじめ,オンライン/オフラインのさまざまなメディアに寄稿したり,バカゲーを好んでプレイしたり,大画面にときめいたり,観切れないほどBlu-rayビデオを買ったり,オヤジギャグを炸裂させたりして毎日を過ごしている。
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