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「国際FPD展 Display 2011」に見る立体視や電子ペーパー,タッチスクリーン技術の最先端動向
HDMI対応低遅延アップスケーラ
特徴は,変換が低遅延であることだ。こういった機材との接続ではテレビ側でアップスケールできる場合も多いのだが,さまざまな映像処理が加わる関係で,非常に遅延の大きな映像となることが多く,ゲームには適していない。そこで,高速な変換を行ったあとの信号を入力してやろうというわけだ。一般的なテレビ内での処理に比べて低遅延な変換が実現されているという。
一部のテレビやモードによっては遅延を避けられないこともあるようだが,これを使えば,多くのテレビで,いわゆる「スルーモード」のように遅延をほぼ0フレームにできるという。ゲーム向きでない大型テレビを使っている人は注目しておくといいかもしれない。
iPhone用立体視対応フィルタ
以前紹介したiPhone 4用の立体視用フィルタはレンチキュラーレンズによるものだったのだが,今回はパララックスバリア方式で,非常に薄いのがお分かりだろう。もちろん,取り付けたままiPhoneの操作も可能だ。
フィルタは液晶などによるアクティブなものではなく,固定式のフィルタのようで横画面専用に調整されていた。また,会場で使っていた機材はiPhone 3GS(?)世代のものだったので,iPhone 4では解像度が異なるため別のものが必要になるだろう。
フィルタの取り付けには微調整が必要だそうで,会場で見たときは,立体感はあるのだが,残念ながら絵柄と合っていない凹凸が見えるという感じだった。貼り付け型だとちょっとユーザーレベルでの導入は辛いかもしれない。
昨今はニンテンドー3DSの登場で写真やムービーなど,立体視対応コンテンツをかなり手軽に作成できるようになっているので,このような立体視表示が後付けで実現できる機器というのは面白い試みといえる。
後付けの大型ディスプレイ対応タッチスクリーンシステム
構造上,フレームにある程度の厚さが必要になるため,小型機器には向いていないのだが,大型化は比較的簡単ということで,300インチ程度の電子黒板に対応した実例もあるようだ。すでにNHKの放送内などでも使われているほか,アーケードゲームでは同社の技術を使ったジェスチャー判定機構なども結構使われているという。
ディスプレイに後付けでタッチスクリーンが実現できるということで,ノートPCに取り付けたものも展示されていたのだが,まだ原価が高いので,PC用の後付けタッチパネルというのはコスト面で厳しいようだ。技術的にはとくに問題はない。
ゲームとはあまり関係ないのだが,興味深かったのはショーウィンドウの外から内側に設置されたディスプレイを操作する実装例だ。ショーウィンドウに密着させて大型ディスプレイを配置しておき,外側には反射テープを貼ったフレームとプリズムを貼り付ける。ガラス越しに発光部とセンサーを取り付けて,プリズム経由で走査するので,ガラスに穴を開ける必要がない。数年後にはウィンドウショピングも変わるのではないかと思わせるアイデアだ。
全点同時対応マルチタッチスクリーン
これは,基本的に,ガラステーブルの表面に下部からプロジェクタの映像を投影している機器だと思えばよい。最大の特徴は,表示する全画素に同時対応したマルチタッチが可能な点だ。赤外線式とのことなのでおそらく裏から全画面を走査しているものと思われる。他社でも同様な方式で32点対応などというものは展示されていたのだが,まあ,UIの操作であれば実用上それくらいでも十分以上だと思われる。この技術はその先まで目指している点が興味深い。
例えば,テーブルに指を置くと,たいていのタッチスクリーンでは接触面の中心あたりの座標を返してくるわけだが,この機器の場合,置いた指の接触面すべてのドットが読み取られる。筆圧(?)のタッチもそのまま反映されるので,指でなぞるだけで強弱を付けた線を自在に描画できる(指でなくてもいいのだが)。この性能を生かすにはドローイングツールがいちばん向いている感じではあった。デザイナー用の大型液晶ペンタブレットのように使えるなら需要はありそうな気はする。テーブルに肘や手のひらなどを置いても全点検知されるというのは問題だが,それはパームチェックなどでソフト的に回避できるだろう。
製品というよりはテクノロジーデモ的な意味合いの強いものとは思われるが,とにかく触っていて楽しいので,値段さえ安ければ一家に1台ほしい感じのテーブルである。
もう実用段階? 電子ペーパーの最新動向
電子ペーパーは,電子粉流体という特殊な材質を使って実現されている。容器に入れられた粉流体も見せてもらったが,実際には微細な粉末でも,ほとんど液体のような挙動をする代物だ。ブリヂストンの電子ペーパーでは白と黒の粉流体が使われており,黒は+に,白は−に帯電している。これらを画素ごとに封入して,電気的に白を表に出すか黒を出すかを調整しているイメージだ。現在は16諧調が実現されている。電子ペーパーは,書き込み時には電気を使うものの,画面の表示・保持にはまったく電力を必要としない。タッチパネル対応や,カラー化,フレキシブル化などに対応した製品が展示されていた。
カラー対応は,それぞれの色の粉流体を使っているのかと聞いてみたところ,基本的にはモノクロ2色の粉流体で,カラーフィルタを使っているのだという。つまり,4画素を単位としてカラーフィルタが使われており,その色成分に対応したフィルタのある画素の明度を,モノクロの粉流体で表現している。よって,カラーの場合,解像度はモノクロのものと比べて縦横半分となる。カラーフィルタを透過させる分,画面の明るさ,鮮やかさが落ちるのは残念だが,カラーのほうがモノクロより遥かに用途が広がるだろう。今後の技術革新に期待したいところだ。
電子ペーパーの画面書き換えは,もの凄く高速というわけではないが,手書きの線などがリアルタイムに反映できる程度には高速で,電子ペーパーにメモを手書きで追加するような使い方は可能なレベルに仕上がっている。ほぼ実用段階といえるだろう。これがゲームに使えるかというと,リアルタイムゲームは当分無理そうだ。とりあえず,ゲーム以外の用途でも普及してくると面白そうな技術ではある。
フレキシブル3D液晶?
混在型立体視表示ディスプレイ
ディスプレイ内での平面視と立体視などの混在が新技術ということなのだが,液晶を使ったパララックスバリア方式であれば普通に実現できるので,とくに新規性は感じられない。以前,どこかでウィンドウ内だけ立体視で表示できる機材を見たことがあるような気がするのだが。一応,多視差の映像と無視差(平面視)の映像と二視差(立体映画など)のコンテンツを1画面に混在できるというのがポイントのようだ。
アンチグレア画面の動向
ちょっとローカルな話題なのだが,「グレア液晶はゲームには適さないよね」派への情報ということで,アンチグレア処理などの展示を巡ってみたので業界動向をまとめておこう。
●アンチグレアガラス
フィグラブースで展示されていた,ガラスを酸で表面処理し,ガラスそのものをアンチグレアにしたもの。表面コーティングと比べて耐久性などで優れているという。アンチグレアの度合は3種類用意されていた。タッチパネルにも対応できるとのことで,タブレット製品などでの採用例もあるという。どんな感じなのかは写真のとおり。個人的には,もっと曇らせてよいと思うのだが。
●低反射コーティング
ニデックブースでの低反射コートのデモ。カメラのレンズなどではガラスの反射を抑えるARコート技術などが使われているのだが,それをディスプレイのカバーガラスに使ったものと思ってよい。グレアタイプ,アンチグレアタイプでARコートのものがデモされていた。
家庭用テレビ対応の保護パネル製品がWebで販売されているというのだが,なぜかどれもグレアタイプだった。透過率という意味では,グレア+ARコートが最も優れているということで,それは確かにそうなのだが,視認性という意味ではまったく事情が違うのだが。
ちょっと傾向は違うが,東レ ダウコーニングの展示では,シリコンコーティングで指紋などを付きにくくしたという表面処理のデモもあった。素の状態でスマートフォンを使うとベタベタの指紋で嫌気が差してくる人には朗報である。触ってみた感じでは,……まあ過信してはいけないようだが汚れにくくなるのは歓迎すべきだろう。
Display 2011公式サイト
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