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次第に身近になりつつある立体視の最新動向を探る「立体EXPO 2010」開催
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数年前までは特殊な産業用くらいしかなかった立体視表示デバイスだが,昨今では民生用の普及が進んできている。まあ,世間一般的にも今年は立体視対応テレビの本格普及が期待されつつも,夏頃にはすでに息切れしてたっぽい感じもしないではないのだが,ここでの展示は産業用が主体となっている。
会場内の展示物の表示方式を見ると,NVIDIA 3D Visionを使っているところ以外は液晶シャッター方式はほぼ皆無。裸眼立体視と偏光グラス方式が大半だ。民生用の多くが液晶シャッター方式を使っていることとは対照的な動きである。産業用はデジタルサイネージなどの多人数での立体視にフォーカスしつつあるので,多視点の裸眼立体視をはじめとしたものが主流になっているようだ。不特定多数を対象とした場合,液晶シャッター方式のメガネを配布するのは難しい場合も多い。そういう意味ではメガネなしで見られるものが最良だが,裸眼立体視は可視聴視野角の制限などがまだまだ厳しい。使い捨てできるほど安価で,角度制限の少ない偏光メガネ方式というのも有力な技術ではあるのだ。
今回展示されている内容の大半は,すでにお馴染みの技術なのだが,それでも,民生用機器では見られないようなものも多いので,少し解説を加えつつ簡単に紹介しておこう。
![]() ビクター製偏光フィルタ方式の46インチ液晶ディスプレイ |
![]() 東芝製裸眼立体視液晶ディスプレイ。これは左右±20度の視野角を持つ |
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●多視差変換
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普通に考えると立体視にはそれで十分なわけだが,多くの人がいろんな方向から立体視できるディスプレイでは,それだけだと映像が足りない。いろんな角度で見ている人に,それぞれ右目,左目用の映像を届けられるのが「多視差」映像である。多くの人が一度に楽しめる立体映像を作るには,CGでいろんな視点の映像を作り出すか,多数のカメラを同時に使って,多視差の映像を利用するのが一般的だ。CGはともかく,カメラをたくさん使うというのは非常に困難であり,出力デバイスに特化した映像になってしまう。そこで,2視差の立体映像を多視差の映像に変換してしまおうという視差変換技術が注目されるわけだ。
会場では,旭エレクトロニクスとニューサイト・ジャパンがそれに関連した展示を行っていた。旭エレクトロニクスがソフトウェアによる変換,ニューサイトがリアルタイム視差変換セットトップボックスを展示していた。それぞれ,多視差に対応したディスプレイによるデモを行っていた。ディスプレイの前を右から左に回り込んでみると,映像も回り込まれたように変化する。多視差とはいえ,無段階ではないので完全にスムーズなわけではないのだが,単に飛び出すだけでない立体映像を確認できる。
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●床面投射型立体表示
一般的なデモだと,壁などをスクリーンにして映し出すデモが多いのだが,三洋電機の立体視対応プロジェクタによるデモが2か所で行われていた。これは床面やテーブルなどに対して投影を行えるプロジェクタで,写真を見てお分かりのとおり,非常に浅い角度からの投影が可能になっている。とくにソリッドレイ研究所の展示ではテーブルの上をクモが歩き回ったり,三洋電機のデモでは床面で地球が回ったりと,なかなかインパクトが大きいデモが行われていた。
テーブル面や床面を使った立体表示というのも,新しい方向かもしれない。
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●立体視度計測システム
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とはいえ,このあたりは個人差が非常に大きいのでなかなか難しいとのこと。
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●2D-3D変換
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今回,ZALMANから参考出品として,この機能を内蔵した立体視対応ディスプレイが展示されていた。立体視の方式は,偏光フィルタ+偏光メガネ式だ。
2D-3D変換にはZALMANの自社開発による技術が使われており,ソースを問わず2D-3D変換可能とのこと。ゲーマー向け立体視対応ディスプレイも発売しているZALMANが,2D-3D変換を内蔵してきたことはなかなか興味深い。
●立体視用フィルタ
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フィルタを載せていると,タッチスクリーンがまったく使えないので,なにもできなくなるのが欠点か。
![]() ノートPC画面の一部にフィルタを重ねているところ |
![]() 元画像。これにフィルタを重ねると,多視差画像の一つが切り出されて左右の目に別々に届く |
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立体EXPO 2010公式サイト
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