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DIGITAL CONTENT EXPO 2009で見た立体映像デバイスの最先端情報
とりあえず最初に挙げるべきはソニーの「360°メガネなし立体ディスプレイ」だろう。これは,高さ30cmくらいの円柱の内部にカラー立体像を投影するというもの。例えば,人の顔が表示されている場合,正面から見れば,正面顔,横から見れば横顔,後ろに回って見れば後頭部が見える。
詳しい方式については教えてもらえなかったので推測ベースになってしまうのだが,おそらくは2次元にカラーLEDが配置された板を高速回転し,適正な座標で対応するLEDが点灯することにより空間上に映像を表示させるシステムと思われる。
そのあたりの仕組みについては,まだ公開できないとのことだったが,単に立体の色がある部分を点灯させているのではなく,適正な方向からの光しか通さないようにしつつ,その方向に対しての映像に常に切り換えて表示させているものと思われる。例えば,この三匹の犬(?)が並んでいる映像では,向こう側にいる犬の後ろ向きの画像が映っている。手前側にも犬がいて,いわゆる隠面処理がされている。単に光るだけだと絶対に向こう側が透けてしまうはずなのだ。
予想通りなら半透明体にも問題なく対応できそうで,非常に使い勝手のよい立体表示デバイスになりそうだ。
なにしろ新方式の立体表示技術ということで,CGならともかく,実写ベースのデータではオーサリングが無茶苦茶大変だったという。撮影も大変だろうし(話の様子では,360種類のデータで構築しているようだった),まだツールなども揃っていないだろうから,360度方向欠けのないデータを扱うというのは難しいだろう。CGベースでの活用が期待される。静止映像だけでもかなり苦戦していたようだが,理論上は動画も可能ということで,今後オーサリングツールが揃ってくれば立体動画像も実現されることだろう。
用途もまだなにに使えるのか模索中ということだったので,ゲームをプッシュしておいたのだが,大型のものを作ってゲームセンターなどでデモをすれば,かなり興味深い体験ができるだろう。ただ,原理的に背景をつけることが難しそうな気もするので,ゲーム内容には多少制限が出てきそうではある。
その他の3Dデバイス動向
その他の3D表示デバイスは,従来どおりの偏光方式ないし液晶シャッターのメガネ使用タイプと,裸眼立体視ディスプレイ。とくに斬新なものはなかったのだが,液晶シャッターはほとんどが120Hz対応,偏光方式はフィルタ精度がかなりよくなってきている感じだ。どちらもかなり自然な感じで視聴できる。
裸眼立体視方式は,レンチキュラーとパララックスバリアの2方式ともに展示されていた。立ち位置を適正に見つけられれば裸眼方式も悪いものではない。会場内ではニューサイトの8方向パララックスバリア方式がかなり自然な感じだった。原理的に解像度は犠牲になっているはずなのだが,さほど粗は見えない。
一方,解像度(偏光方式)もフレームレート(液晶シャッター)も犠牲にしないというのが,Redroverの製品。2枚の液晶板からの映像を合成したり,2台のプロジェクタの絵を合成したりする方式で高画質を謳っている。映像は非常に綺麗なのだが,コスト的に高くつくのは考えなくても分かるだろう。今後は1台のプロジェクタでこれを実現する腹案があるとかで(想像もつかないのだが),コストダウンが図られるとかなり面白い立ち位置の製品となりそうだ。
今回は,とにかくソニーの立体映像デバイスが要注目である。DIGITAL CONTENT EXPOは10月25日まで開催されているので,東京近郊の人は機会があったらぜひ立ち寄ってみよう。
DEGITAL CONTET EXPO 2009公式サイト
http://www.dcexpo.jp/- この記事のURL: