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カタルーニャ州政府や地元の大手ゲーム企業が手を取り合い,官民一体となってインディーゲームのエコシステムを築き上げてきたスペイン・バルセロナ。2026年10月,南欧最大級のゲームイベント「SAGA Barcelona Game Fest 2026」が開催され,日本がゲスト国に選定された。草の根イベントから8年で劇的な進化を遂げた現地のゲームシーンや日本との関係をまとめつつ,イベント運営代表ダニエル・サンティゴサ氏へのインタビューをお届けしよう。
バルセロナで実を結び始めたゲームイベント
複数のイベントが合体する形で,南ヨーロッパ最大級のゲームイベントという立ち位置を明確に示したのが,10月9日から11日までバルセロナの商業施設Fira de Barcelona(モンジュイック展示場)で開催された「SAGA Barcelona Game Fest 2026」だ。昨年開催された「BCN Game Fest 2025」の招待メディアでもあった本誌は,栄えある第1回となるSAGA Barcelona Game Festが日本をゲスト国に選定していたこともあり,その新たな船出を取材する機会を与えられた。
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バルセロナが位置するカタルーニャ州は,ジョアン・ミロやサルバドール・ダリら著名な芸術家を輩出し,サグラダ・ファミリアを筆頭に近代建築の数々でも有名だ。地中海に面した良港を擁し,商業と美食の街として長らく栄えてきた歴史を持つ。州全体では840万人の人口を抱え,そのうち160万人が暮らす州都バルセロナは,世界有数の名門大学であるバルセロナ大学を頂点にして,教育レベルも非常に高い。
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そんな恵まれた環境であるにもかかわらず,バルセロナは長らくゲーム業界では不毛の地に近かった。そこに変化をもたらしたのは,カタルーニャ州およびバルセロナ市が支援し,2014年から12年にわたって活動してきたインキュベーションプログラム「GameBCN」だろう。
GameBCNは,ICEC(Institut Català de les Empreses Culturals / カタルーニャ州政府文化企業局)およびその推進ブランドであるCatalan Artsの手厚い資金的な支援を受けたプログラムだ。バルセロナに拠点を置くGameloft,Social Point,King,Ubisoft,そしてのちにはScopelyといった現地の大手企業に在籍した経歴のあるベテラン開発者たちがメンターとなり,ビジネスモデルやプロダクション,ピッチのノウハウを伝授する。
ビジネスモデル構築やマーケティング,マネタイジング,プロダクション管理などの約60時間のトレーニング/講座,そして36時間のメンタリングを含む研修カリキュラムが用意されている。これらを通じて,パブリッシャや投資家に作品を売り込み,消費者のもとへどうゲームを届けていくかという実務的な指導を,インディー開発者たちに行っていくのだ。
カタルーニャと日本の密接な関係
このプログラムをベースに,マーベラスが日本初のインキュベーションプログラムとして2021年に立ち上げたのが「iGi(iGi indie Game incubator)」だ。その活動実績により,経済産業省が推進するデジタルコンテンツ分野のスタートアップや人材育成を目的とする「創風(SO-FU)」とも連携している。
こうした流れで,カタルーニャ州政府,GameBCN,iGi,経済産業省という異なる組織が,この数年で急激に接近することになったわけだ。
経済産業省の「IP360/創風」とマーベラスの「iGi」が連携! バルセロナで日本のインディーゲーム開発者を世界へ届ける官民連携の最前線
SAGA Barcelona Game Fest 2026の会場にて,マーベラスが手掛ける「iGi」と,経済産業省の「IP360」「創風」が共同ブースを出展していた。なぜスペイン・バルセロナの地で大きな規模で出展しているのか。その背景と官民連携の狙いについてレポートしよう。
一方で,カタルーニャにとって問題だったのが,こうして育成された人材が自分たちの作品を公開するパブリックイベントが,地域になかったことだ。イベントで作りかけのゲームを展示することは,パブリッシャや地元のゲーマー,国内外のメディアに売り込む絶好の機会となる。
当時はゲームジャーナリストだったDaniel Santigosa(ダニエル・サンティゴサ)氏が,地元のインディーゲーム開発者を手助けするために,取材やコミュニティとの連携で培ったネットワークを駆使して設けた発表の場が,2018年に始まった「IndieDevDay」だ。最初は天井のない小さな会場で行われたが,降雨量の少ないバルセロナでありながら,その日は大雨だったため,周囲の建物の軒下にデスクを集め,参加者は濡れながら自分たちのゲームを見せ合っていたという。
そんな手作り感のあった地域イベントがICECの本格的なサポートを受けて,昨年にはBCN Game Festとして大型化。そしてさらなる成長を見越して,市内で最大の商業施設であり,立地条件も良いモンジュイック展示場に移り,今年から「SAGA Barcelona Game Fest」として新たなスタートを切ったのである。
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SAGA Barcelona Game Festには,Devolver DigitalやtinyBuildといったインディーパブリッシャだけでなく,地元の企業であるEntalto Publishingなども出展していた。参加パブリッシャは29社,ゲーム開発スタジオや個人は160組を数え,試遊できたゲームは300本ほどあったという。
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一方で伸びしろはまだまだある。イベント会場の通路が広めだったこともあり,場所によっては人通りが少なく見えることもあった。今後,バルセロナの学生やスタートアップが増え,カタルーニャ州外や国外からの参加者が増えれば,さらに会場のボルテージは上がっていくはず。そんな期待が膨らむゲームイベントだった。
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南欧のgamescomを目指す。イベント運営者にインタビュー
イベントの最終日,運営を取り仕切るダニエル・サンティゴサ氏にインタビューを行った。
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4Gamer:
今年もご招待いただきありがとうございました。昨年も1つの節目でしたが,今年はさらにイベントが大きく広がっている印象です。ここまでの道のりや準備のプロセスはいかがでしたか?
ダニエル・サンティゴサ氏(以下,サンティゴサ氏):
バルセロナに来てくれてありがとう。まず発表させていただきたいのは,来場者数が2万1200人になったことです。前年のイベントは1万6000人ですから,大きな飛躍になったと思います。
SAGA Barcelona Game Festを成功させるうえで,私たちにとって最大の挑戦は,このバルセロナの中心部にある広大な会場(モンジュイック展示場)へと移動したことでした。世界中からの注目が集まっているのを感じますし,規模を大きくするのは非常に難しかったです。初日は新しい会場ならではのトラブルもありましたが,全体としてはとてもスムーズに進んだ印象を持っています。
IndieDevDayの時代は,まさに手作りの無料イベントとして開催していましたが,今回はさまざまな要素を統合しました。トーナメントを行う「SAGA」を中心に,歴史的な作品を扱う「Retro Barcelona」などもミックスし,エコシステムに存在するあらゆるジャンルのゲームを集めた学習と体験の場を作ったのです。eスポーツ,インディーゲーム,そして任天堂をはじめとするAAAタイトルの大型ブランド,大会やチャンピオンシップ,アーティスト,ショップなどが一堂に会し,プロ同士が交流できる場(B2B)やパーティー,朝食会なども用意しました。
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4Gamer:
ゲームコミュニティ全体をひとつに集約する場として,非常に重要な役割を果たしていますね。
サンティゴサ氏:
昨年も申し上げましたが,私たちの目標は「南欧における最大の集積地」になることです。スペインやバルセロナが中心となり,国内だけでなく他国のエコシステム全体をここに呼び込み,作品をお披露目できる場にしなければなりません。
今年はSteam上のオンラインフェスティバルも含めて200以上のゲームが出展しています。来場者数2万人の大台を目標にしていましたが,本日ついに達成し,本当に誇らしく思っていますし,「このイベントは存在するべくして存在している」と実感しています。
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4Gamer:
会場を見渡しても,見逃せない素晴らしいゲームがたくさん出展されています。
サンティゴサ氏:
実は私にとって困った問題でもあります(笑)。というのも,私が担当している「IndieDevDay Awards」では,インディー向けに7つの賞,大学や専門学校などのアカデミック向けに3つの賞,計10個の賞しか用意されていないからです。
ノミネート作品を選ぶだけでも,3作や4作では収まらないほど素晴らしいゲームがあるので大変です。現在開発中で,今年から来年にかけてリリースされる予定の注目作が山ほどあります。
たとえば「Wilderings: The Lost Spring」を開発中のHerobeat Studiosのチームもそうで,パブリッシャを見つけたことで知名度も上がり,彼らは今後も多くの賞を獲得していくでしょう。
4Gamer:
開催に至るまで,最も苦労されたことは何でしたか?
サンティゴサ氏:
イベントの成長に伴って規模が大きくなり,制作に関わる人員が非常に増えたことです。多くのスタジオや関係者から問い合わせが殺到し,対応する時間が足りないことが本当に大変でした。
それから,資金面のやりくりも大きな課題です。私たちは大きなショウを作り上げたいと考えていますが,それには当然お金がかかります。カタルーニャ州政府やスペインの公的機関も,私たちが生み出している文化を世界へ発信するために協力してくれています。こうした支援を受けながら,地域で何が作られているかを世界に示すことが私たちのミッションなのです。
一方で,来場者のチケット代や開発者のブース出展料を高くしたくはありません。1人でゲームを作っているようなお金のない個人クリエイターであっても参加でき,彼らの創造性を世界に示すチャンスを提供することが重要だからです。
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4Gamer:
SAGAは,もともとモンジュイック展示場のゲームに関する独占利用権を獲得していたと聞きました。
サンティゴサ氏:
そうです。昨年のイベントは過密化していて,市内で最大のイベント施設であるモンジュイック展示場へ移転することは必須であり,州政府の橋渡しによりSAGA Barcelona Game Festへとパワーアップしたのです。
4Gamer:
SAGA側のミッションの1つは,1000万人を超える話者がいるとされながら,EUからも公式言語として認められていないカタルーニャ語でのコミュニティ育成だったと聞きました。
サンティゴサ氏:
言語に関しては,文化や表現の重要な根幹であり,いずれはスペインに存在する大別して4つの言語で,スペイン国内のプレイヤーすべてが国内産ゲームを遊べるよう願っています。
そのため,会場では英語,カタルーニャ語,スペイン語による言語表記に努めていますし,これまでもSAGAの働きによって,カタルーニャ州で作られるゲームの多くがカタルーニャ語に対応するようになっています。
実際のところ,ゲーム開発においては,まずはSteamなどを通じて世界市場へ向けて英語対応が最優先され,地域言語(カタルーニャ語など)へのローカライズは後回しになりがちです。だからこそ,SAGAや公的機関が協力してインディーゲームのローカライズ費用を支援し,地元の言語でプレイできる環境を整えることが重要なのです。
4Gamer:
今年は日本がゲスト国に選定されましたね。
サンティゴサ氏:
はい,これまでの経緯を考えると当然と言えますし,日本との協力関係を構築していることをうれしく,誇りに思っています。私たちにとって日本は,幼少期に任天堂やセガのゲーム,あるいはマンガに触れたときからの「ルーツ」であり,都市部に暮らす多くの子供たちにとっての“安全な居場所”(Safe Space)でした。JRPGなどのゲーム体験は私たちのノスタルジーや幸福感と強く結びついているんです。
4Gamer:
iGiや創風との密な協力を考えると,日本との関係も深いイベントと言えますね。
サンティゴサ氏:
はい。ですから,第1回のゲストスピーカーとして,松前真奈美さんと東野美紀さんに参加していただいたことは本当に光栄でした。GAMES FROM JAPANブースに展示されていたゲームも素晴らしいものでしたし,任天堂に参加していただけたことも,このイベントの重要性を大きくしてくれたはずです。
それから,「わたしのファミカセ展」(https://culturadigital.blog.gencat.cat/activitat/indie-dev-day-my-famicase-exhibition-2026/)に展示協力していただいたのもありがたかったですね。私の友人が,外国人として初めてデザインに参加したアーティストなのですが,取材していただいたようで非常に喜んでおりましたよ。
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4Gamer:
今回のイベント全体を振り返って,手応えや今後の課題・展望をお聞かせください。
サンティゴサ氏:
私にとって初めての会場でしたので,人の流れをうまくコントロールするための動線配置や,出展者・プロフェッショナルへの情報伝達など,改善すべき点はまだまだあります。将来的には「南欧のgamescom」のような存在を目指し,会場規模のさらなる拡大や,B2BとB2Cエリアの分離,周辺でのパブリッシャ主導のサイドイベント増加などを進めていきたいと考えています。
開発者から「このイベントのおかげでパブリッシャと出会えた」「契約が決まりそうだ」,それから「日本のメディアに取材されたことがきっかけで,ポジティブな話が舞い込んだ(笑)」といった声を聞けると,私たち運営側のあらゆる苦労が報われます。これからも世界中の開発者が集える場所を作っていきます。
4Gamer:
ありがとうございました。イベント後は,しっかりと休暇を取ってくださいね。
著者紹介:奥谷海人
4Gamer海外特派員。サンフランシスコ在住のゲームジャーナリストで,本連載「奥谷海人のAccess Accepted」は,2004年の開始以来,4Gamerで最も長く続く連載記事。欧米ゲーム業界に知り合いも多く,またゲームイベントの取材などを通じて,欧米ゲーム業界の“今”をウォッチし続けている。



























