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日本代表2クランが念願の地元開催優勝に挑んだ「Alliance of Valiant Arms International Championship 2013」レポート
会場となったニコファーレには,緊張した雰囲気が漂っていた。理由の一つは,選手たちにかかっているプレッシャーの大きさだ。AICはAVAサービス国が持ち回りで開催している世界大会で,出場クランは即ち各国の代表。自分たちの名誉に加え,自国のAVAプレイヤーたちの期待をも背負っている。とくに自国開催となる日本代表クランに寄せられる夢は大きいのだ。「ぜひ優勝を日本に」。満場の観客から選手たちに願いのバトンが託されているかのようだった。
決勝トーナメントに駒を進めたのは,日本代表「DeToNator」「CoolBoys」,台湾代表「ahq_e-SportsClub」,韓国代表「Astrick-」の計4クラン。
いずれも実力派のクランだが,AVAファンにとってDeToNatorの名前は記憶に新しい所だろう。2012年12月に行われた日本の公式大会「Alliance of Valiant Arms AVARST Season3」において,「護衛」「爆破」の2ルールで同時優勝を飾ったからだ(関連記事)。
今回のAIC2013は爆破ルールでの5VS5マッチ。果たしてDeToNatorが世界一の座までつかみ取るのか,それとも前大会でDeToNatorと死闘を演じたCoolBoysが雪辱を果たすのか。はたまた,AVA強豪国として名高い,台湾のahq_e-SportsClubや韓国のAstrick-が勝利するのか……。
AVAの開発元であるREDDUCKのオ・スンテク代表取締役社長が開会宣言を行い,AIC2013決勝トーナメントがスタートした。
AIC2013運営プロデューサーの井上洋一郎氏(左)と,REDDUCKの代表取締役社長であるオ・スンテク氏 |
決勝トーナメントの組み合わせ表。予選の成績により,山が偏ったトーナメントになっている |
準々決勝は日本代表CoolBoys対韓国代表Astrick-。CoolBoysが勝てば準決勝でDeToNatorと再度の激突となる。Astrick-は直前にメンバー変更を行わなければならなくなってしまい,練習時間が充分取れないという悪条件を克服して勝利。惜しくも敗れたCoolBoysは「DeToNatorにあとを託す」というコメントを残して戦いを終えた。
準決勝は,もうひとつの日本代表であるDeToNatorと,準々決勝で勝利した韓国代表Astrick-の戦い。日本代表としての任を託されたDeToNatorが,優勝候補と目されていたAstrick-に食い下がって,ギリギリのところで勝利。CoolBoysの「日本に栄冠を」という願いに応えた。
そしていよいよ決勝戦。世界一の座を懸けて戦うのは,日本代表のDeToNatorと台湾代表のahq_e-SportsClubだ。どちらも予選を全勝で勝ち上がるという,脂の乗った状態である。
決勝戦ではこれまでよりも過酷なルールとなる。AIC2013では,1つのマップで7ラウンドを先に取れば「1勝」となるのだが,準々決勝と準決勝は3戦2勝制,つまり2つのマップを制すれば勝ち上がることができた。しかし決勝戦は5戦3勝制。勝つためには3つのマップで7ラウンド先取が必要という,かなりの長丁場となる。集中力が勝負のFPSにおいては決して無視できない要素だろう。
運営プロデューサーの井上洋一郎氏がコイントスを行い,第1マップの「HAMMER BLOW」はDeToNatorが先攻となった。
ahq_e-SportsClubは,前日の予選リーグではHAMMER BLOWで圧倒的な強さを発揮していた。EU代表のCrackHeadsを相手に7-0という大差で勝利したのだ。ahq_e-SportsClubがCrackHeads戦の勢いのまま勝つか,それともDeToNatorが日本代表の意地を見せるのかに注目が集まった。
試合は一進一退の展開となったが,中でも目立ったのは,撃ち合いにおけるahq_e-SportsClubの強さだ。残り人数が有利となったDeToNatorが爆弾をしかけるも,ahq_e-SportsClubは相手を全滅させたうえで爆弾を解除。ほかにも,キャットウォークから下にいる相手を撃ったり,相手の背後を突いてダブルキルを決めたりと,予選の強さが伊達ではないことを見せつけた。DeToNatorも追い上げたが,第1マップはahq_e-SportsClubの勝利。
第2マップ「INDIA」も激戦となった。DeToNatorのNicoRob1N選手がトリプルキルを決めれば,次のラウンドでahq_e-SportsClubのTWN_47.ahq選手もトリプルキルをやり返す。国の威信をかけた意地の張り合いだ。しかしahq_e-SportsClubはさらに勢いに乗り,第2マップでも勝利を掴む。
第3マップは「AIRPLANE」。優勝にリーチが掛かったahq_e-SportsClubが気合いを入れれば,DeToNatorもそれに対抗するかのように声を上げる。AIRPLANEは守り側が有利とされるマップのはずだが,試合が進むに従って両クランがヒートアップし,攻め込んでいく展開となった。
後がないDeToNatorがラウンド勝利を重ね,逆転優勝への期待が高まるも,ahq_e-SportsClubは撃ち合いにおいても,展開の早さにおいてもDeToNatorを上回っていた。最後は4ラウンドを連取してahq_e-SportsClubが勝利。世界最強クランの称号を手に入れた。
優勝したahq_e-SportsClubが台湾の旗を広げる姿には,世界大会勝者の貫禄があった。地元開催で満員の観客を味方につけた日本を相手にするというアウェイの環境で,プレッシャーをはねのけ,台湾AVAプレイヤーの期待に応えた。これは日本のプレイヤーも称えていい偉業なのではないだろうか。
ahq_e-SportsClubは,優勝の感想を聞かれ「今後の目標は世界チャンピオンの座を維持すること」と宣言。心はすでにこれからの戦いへと向かっているようだった。
惜しくも2位となったDeToNatorは「台湾代表は強かったが,自分たちの課題も見えた」と,さらなるレベルアップに意欲を見せた。
3位となったAstrick-は「次の大会ではベストメンバーを揃え,必ず勝負を取り返したい」と雪辱を誓っていた。
優勝した台湾代表には,オ・スンテク氏(左端)から1万USドルの賞金とトロフィーが贈られた |
2位の日本代表「DeToNator」にはゲームオン代表取締役社長のイ・サンヨプ氏(左)から8000USドルの賞金と,トロフィーが贈られた |
3位の韓国代表「Astrick-」にはNEOWIZ GAMES代表取締役社長のイ・キテオウォン氏(前列左)から5000USドルとトロフィーが贈られた |
井上氏は「AVAの国際大会を日本で開催するのは夢でした。日本に目標ができたのは喜ばしいこと。日本代表もahq_e-SportsClubのようなスピードを身につけ,世界を目指してチャレンジしてほしいです。また,私達もFPSが日本で広がっていくように頑張りたいです」と大会を締めくくった。
惜しくも日本は優勝できなかったが,敗れてなおDeToNatorはポジティブだった。優勝したahq_e-SportsClubのレベルは高く,ベストメンバーが揃ったときのAstrick-の実力も未知数だ。しかし,研鑽を重ねていくことで,今度こそ日本が世界一になれるかもしれない,そう信じさせてくれる大会だったように感じられた。日本AVAプレイヤーの今後に期待したい。
「Alliance of Valiant Arms」公式サイト
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