インタビュー
「MHF」シーズン5.5インタビュー:頼狩人(ラスタ)やパローネ=キャラバンなど今後の展開を運営プロデューサーの杉浦一徳氏に聞いてきた
このアップデートの目玉は,アップデートタイトルにも含まれる“頼狩人”(ラスタ)で,他プレイヤーキャラクターの分身といえるラスタをクエストに連れて行けるというシステムだ。
MHFでは,ギャラリー大会をはじめ,マイトレプーギーやアイルー広場の冒険屋ネコなど,武器や防具の生産/強化に必要な素材集めを間接的に補助するシステムはあった。ただ,クエストでの大型モンスター狩猟を直接補助する要素はラスタが初となる。これまでとは少々ベクトルの異なる新システムだけに,プレイヤーからも大きな注目を集めていたといえるだろう。
4Gamerではアップデート恒例となっている,MHF運営プロデューサーの杉浦一徳氏へのインタビューだが,今回はシーズン5.0からシーズン5.5にかけての話題を中心に話を聞いてきた。
順調に増加を続けるプレイヤー数
サーバー増設が急務の課題?
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。シーズン5.5が実装されて1週間が経ちましたが,状況はいかがでしょうか?
おかげさまで,同時接続数はこれまでの記録を塗り替えるほど増えています。シーズン5.0から5.5にかけても,安定数で10%ほど上昇しています。このまま増加傾向が続くようであれば,四つめのサーバー増設なども検討しなければならないでしょう。
また,これまではアップデート当日よりもアップデート実装週の週末にログインが集中する傾向が強かったのですが,シーズン5.5のアップデート当日から,ラスタに興味を持ってログインしてくださったお客様が非常に多かったので驚きました。
4Gamer:
確かに,最近はログインしているプレイヤー数が多く感じられます。先日サーバー3で障害が発生してしまいましたが,これも同時接続数増加によるものですか?
杉浦氏:
そうですね。サーバー3でプレイしていらっしゃるお客様にはお詫びするほかないのですが,公式サイトで告知させていただいたとおり,同時接続増加の負荷に耐えきれず,6月17日にサーバー3で機器障害が発生してしまいました。緊急メンテナンスを行ったのですが,サーバーが物理的に故障し,データベースに不具合が発生してしまいました。本来はあってはならないこと,また許されないことですが,さまざまな方法を協議した結果,最終的に巻き戻すしかないという結論に至ったのです。
4Gamer:
補償内容の発表に至るまでの対応は非常にスピーディだったように感じましたが。
杉浦氏:
とにかく早い段階でお客様への報告と対応が必要だと考えました。巻き戻しを決定したあと,メンテナンスを終えるまでの時間を逆算し,残り数時間のうちにお客様へのお知らせや補償内容などを準備したという状況です。
もちろん,すべてのご不満に対処できたとは考えていませんが,お客様にも冷静に受け止めていただくことができたように思います。少し落ち着いた今,あらためて考えるともう少しやりようがあったかなとも思います。こういうトラブルが起きたことは重ねがさね残念でなりません。
4Gamer:
補償として,剛種チケットや超激運の御守り,Nポイントが支給されますよね。中でも剛種チケットの支給については,そのコンセプトから疑問に感じるプレイヤーもいそうですが。
確かに,「剛種への道」クエストをクリアできない人でも剛種チケットを手にする人もいるのではないか,もしそうなら剛種クエストのコンセプトに反するのではないか,というご意見もいただきました。
本来なら,お客様一人一人の状況に合わせて個別対応すべきではあると思いますが,それでは補償実施までにどうしても時間がかかってしまいます。被害に遭ってしまったお客様全員にスピーディに補償を行うため,また補償するからには広範囲のお客様にそれなりに納得していただけるものを差し上げたいという理由で,今回の決定をしました。
補償内容が豪華すぎるというご意見もいただきましたが,我々からすると,それくらい深刻なトラブルであり,今回の補償でも足りないくらいかもしれないと考えています。
4Gamer:
確かに,剛種チケットを入手しても,剛種クエストの難度が下がるわけではないですしね。また,巻き戻しがあった時間帯にプレイしていた人にとっては,もう一度やり直しになるのはやるせない部分がありますね。
杉浦氏:
はい,剛種クエストをはじめ,クエストで得られる報酬素材を補償として直接配布するわけにはいきませんので,ハンターランク100以上の方には剛種チケットを,ハンターランク100未満の方には超激運の御守りを提供させていただく形になりました。Nポイントの提供も同様の判断で,レア素材についてはNポイントとの交換で穴埋めさせていただければという理由です。
4Gamer:
では,プレイヤー数増加についての続きをお聞きします。現在,ダレットとハンゲームの二つのポータルでサービスを提供していますが,プレイヤー数増加の傾向などに違いはありますか?
杉浦氏:
ダレットとハンゲームそれぞれに特徴があります。ダレットではβテストからもうすぐ2周年という蓄積がありますので,何かしらの理由で休止していた方の復帰率が高いです。ハンゲームは,新規の方の参入率が高く,結果として両方とも順調にプレイヤー数が増加しているといえます。
4Gamer:
全体的には,どんどん上乗せで増加しているんでしょうか? それとも辞めてしまう人の割合よりも,新規プレイヤーの数が増えているんでしょうか?
新規のお客様が増えて,その新規のお客様が30日くらいでは辞めずに,60日/90日と継続してくださっていますし,休止していたお客様も多数復帰していますので,全体的には増加傾向といえます。
シーズン5.0で,ゲームの開始直後に自動的に「狩人キャンプ」に移動させるよう,内容を一部変更しました。MHFは少々難度の高いゲームです。最初にどうしたらいいか分からずに,つまづいてしまう人もいるであろうことからの対応だったのですが,予想した以上に効果があったことも,分析の結果から分かっています。
4Gamer:
なるほど。
杉浦氏:
あとは,有料アイテムの販売を始めたことで,結果的にゲームの難度のハードルが下がったという点は否めません。それをどう捉えられるか,どう評価されるかはお客様次第ですが,ハードルが下がったことによって初心者の方でもプレイしやすく,新規の方が辞めにくい環境が出来上がったといえます。もちろん,これで満足するのではなく,シーズン6.0では初心者の方向けに,チュートリアルのさらなる強化を考えています。
“頼狩人”(ラスタ)はプレイヤーにどう受け止められた?
それではシーズン5.5について,具体的にお聞きします。まずは注目のラスタシステムですが,このタイミングで導入した理由を教えてください。
杉浦氏:
アップデートを重ねていくことで,大型モンスターの種類も増えていきます。そうなると,ターゲットが分散して,狩りたい大型モンスターのクエストで人が集まらない,というマッチングの問題が発生するであろうことは,前々から考えていました。
そこで,ヘルプの意味で企画していたものが,今回のアップデートのタイミングに間に合って実装できる形になったので,実装に至ったということです。
4Gamer:
つまり,マイナス要因になりそうな部分の予防策という意味合いなんですね。
杉浦氏:
はい,きっかけはマイナス要因への対策でした。とくに運営チームとしてはそうなります。しかし,開発チームはそこに必ず何かしらの「遊び」の部分を盛り込むことを考えていますので,その部分も予想以上に喜んでいただけたという実感があります。
MHFではお客様同士のコミュニケーションをより密にする必要があると感じていたので,今,ラスタはそこを補ういい位置に収まったかなと。
4Gamer:
実際,利用率はどのくらいですか?
杉浦氏:
アクティブプレイヤーのおよそ半数以上の方が,ラスタの相互契約を結んでいます。この数字には「お試しラスタ」の分は入っていません。実装してまだ6日間のデータですから,それだけ興味を持っていただけているのは,ありがたいですね。
4Gamer:
具体的な利用方法などは,どんな感じなのでしょう?
当初の意図のとおりに利用していただいている印象を受けます。我々としては,いわゆるペットを育成するだけのようなシステムにはしたくなかったんです。そこに人と人との交わりを持たせたかったので,あえて「自分を育てるには他の人の力が必要」というシステムにしています。
救援契約(助ける)側がどういう装備にしたほうが役に立つか聞いたり,逆に同行契約(助けてもらう)側がリクエストを出したりといった,コミュニケーションを取ってほしいですね。
ハンターランクが高い方に向けては,下位の防具の組み合わせをあらためて考えるという楽しみ方があると思います。また,ラスタが面白い武器や防具を装備していれば,そこで一つ話題にできるでしょう。
4Gamer:
確かに武器や防具は,プレイヤーキャラクター自身が使うものであれば性能重視の傾向がありますが,ラスタではそれほどではないというか,個人的には見た目重視のプレイヤーが多いように感じました。まだ始まったばかりだからなのかもしれませんが。
杉浦氏:
新コンテンツについては,実装から1か月くらい使い込んでいただいてから,お客様から冷静に分析したご意見をいただく傾向にあります。ラスタも,ある程度時間が経ってからいろいろとご要望をいただくと予想しています。次回以降のアップデートで,反映できるものは反映させたいと思います。
4Gamer:
すでに要望が来ているものはありますか?
杉浦氏:
ラスタが寝ているモンスターを起こしてしまうので,改善してほしいというご意見をいただいています。こちらはすでに対応策の検討に入っています。
ラスタですが,同行契約と救援契約の仕組みであったり,ギルド貢献ポイントの入手条件であったりと,オンラインマニュアルを読んでから実際にプレイしても,全般的にその仕組みが分かりにくいと感じてしまいました。
杉浦氏:
開発スタッフのこだわりとして,「ラスタはハンターそのものである」という設定があるんです。オンラインマニュアルでは,ビジネス的な文章で説明しなければならないのであのような表現になっているのですが,お客様から特設サイトやオンラインマニュアルが分かりにくいというご指摘も受けていますので,そこを改善していきます。
4Gamer:
そういう裏設定があるから分かりづらくなってしまったんですか。ラスタの仕組みでいうと,同行契約ができるのは一人だけで,救援契約が三人までというのは,どういった理由なのでしょうか。
杉浦氏:
いくつかの理由がありますが,契約を一対一ではなく一対三の形にしたのは,単純に一対一だと契約できなくてあぶれてしまう方が出てくることを懸念したという理由が大きいです。また,最初なのでデータベースにかかる負荷を検証するという意味合いを含めて,様子を見ている部分があります。
お客様の約半数にご利用していただいているわけですから,あくまで単純計算ではありますが,クエスト中のハンターは今までの1.5倍程度に増えます。それだけサーバーに負荷がかかることになるので,同行契約は一人に限定させていただきました。順調な稼動が確認できれば契約数も増やせるでしょうし,もっと凝った仕様を組み込むこともできます。
4Gamer:
なるほど。契約ラスタはプレイヤーキャラクターの装備を呼び出すから,アクティブプレイヤーの数が増えるのと同様にサーバーの負荷が高くなるんですね。
ラスタでいえば,武器種制限クエストやアイテム持込制限クエストなど,ラスタを連れて行けないものもありますよね。一人用クエスト以外にも制限を設けたのはどのような理由からですか?
杉浦氏:
主にクエストのバランス面ですね。とくにお客様から苦情が来ていることもないので,その点はご理解いただけていると感じています。
4Gamer:
ラスタが装備できる武器は現在のところ片手剣/大剣/弓の3種類ですが,どのような理由で選ばれたんでしょうか。
MHFとしての基本となる武器,「片手剣」を装備したラスタから見ていただきたいというところを手始めに,「大剣」で近接武器の拡張,「弓」で飛び道具というハンターらしさをラスタに実装するべく,開発チームがこだわったためです。
シーズン6.0では全武器種が開放されますし,「ギルド貢献ポイント」の新たな使い道も準備しています。また,今は下位クエストレベルの武器/防具しか開放していませんが,今後は十分戦力になりうるレベルまで開放する予定です。
4Gamer:
ラスタは全般に予想以上に動きが細かい,芸が細かいという印象を受けました。
杉浦氏:
シーズン6.0では,さらにラスタをアップデートする予定ですが,現段階でもなかなか凝った動きをしてくれます。ハンター二人,ラスタ二人の組み合わせでクエストに行って,ラスタだけに狩りを任せてみたのですが,片方がモンスターを麻痺させて,もう片方が大剣で溜め切りをしたりします。
4Gamer:
それはすごいですね。AIプログラムを組んだ開発スタッフは相当大変だったんじゃないですか?
杉浦氏:
実は,弓を使うとクリティカル距離を正確に保ったりと,開発中のラスタはもっと優秀だったんですよ。でも,そこまで常に正確な操作をできるハンターはそうそういませんから(笑)。
4Gamer:
確かに便利といえば便利ですけど,自分よりラスタのほうがうまかったりしたらへこみますね。
武器/防具開放の話でいうと,今後ラスタの装備に制限をつけたりすることは予定していますか? たとえば,下位のプレイヤーに強力なラスタが同行すると,それこそプレイヤーが何もしなくてもクエストをクリアできてしまうとか,楽しみを損なう部分も出るのではないかと思いますが。
杉浦氏:
ある程度の制限を設けることは考えていますが,やり過ぎてしまうと面白くありません。たとえば,制限を設けたために変種クエストではまったく役に立たないとなっては,ラスタを使う/育てるモチベーションが落ちてしまうでしょう。当面は制限を設けずに,様子を見ることになると思います。
古龍剛種は今後も順次実装予定
報酬素材見直しは一通り出揃ってから?
ラオシャンロン |
シェンガオレン |
シーズン5.5で,ラオシャンロンとシェンガオレンの剛種が実装されると同時に,剛種クエストの配信枠が増えましたね。
杉浦氏:
はい。7月1日〜7月8日の週のみ4枠ですが,これはサーバー3障害の補償のための緊急措置です。それ以降は基本的に3枠固定になります。
4Gamer:
エクストラクエストは2枠のままですか?
杉浦氏:
こちらは当面2枠のままです。2009年末までに剛種モンスターも増えますから,枠を増やすことも検討していますが,通常のクエストで配信するかエクストラクエストで配信するかはまだ未定です。
4Gamer:
プレイヤーが気になるのは今後登場する古龍の剛種ですが,もう予定は決まっているのですか?
杉浦氏:
はい,一通り決まっています。これは順次発表していきます。
先日,オオナズチの報酬素材変更が行われましたが,前回のインタビューでもお聞きした古龍剛種全体の素材見直しは,一通り出揃ってからになりそうですか?
杉浦氏:
そうですね。バランスを取るには,それが一番いいと思います。ラオシャンロンの剛種クエストはちょっと報酬が豪華過ぎると感じる部分もあるのですが,あらかじめ配信頻度を少し控えめにするということであの形になっています。
4Gamer:
その一方で,同時に配信されたシェンガオレンの剛種クエストは,素材という意味でも人気という意味でも少し寂しく感じますね。
杉浦氏:
そもそもシェンガオレンは古龍ではないので,設定上しかたない部分があります。ただ,皆さんにプレイしていただけないと意味がないですから,シーズン6.0で報酬などの修正を考えています。
4Gamer:
今のところ,「砦蟹討伐の証」で作る剛種武器が欲しい人にしか需要がない感じなのが残念ですね。
剛種武器でいえば,一つにつき討伐の証が20〜30枚必要になりますよね。基本的に1回のクエストで1枚しか入手できないわけですが,難度が高い代わりに複数枚手に入る可能性がある,というようなクエストを用意する予定はありますか?
杉浦氏:
お客様全体からすると,そういったハイリスク・ハイリターンのクエストより,1枚ずつでも確実に手に入る安定重視の傾向が強いようです。また開発からすると,バランス面も考慮しなければならないので,難しい面もあると思います。
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