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「キネマ51」:最終回の上映作品は「犬ヶ島」&「レディ・プレイヤー1」
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印刷2018/06/02 00:00

連載

「キネマ51」:最終回の上映作品は「犬ヶ島」&「レディ・プレイヤー1」


 グラスホッパー・マニファクチュアの須田剛一氏が支配人を務める架空の映画館,「キネマ51」。この劇場では,新作映画を中心としたさまざまな映像作品が上映される。そんなキネマ51は,第45回となる今回で残念ながら閉館!

 最終上映は豪華2本立てでお届けする。まずは「グランド・ブダペスト・ホテル」「ザ・ロイヤル・テネンバウムズ」で知られる名匠ウェス・アンダーソン監督によるストップモーションアニメーション映画「犬ヶ島」。そしてご存知スティーブン・スピルバーグ監督が究極のVR世界を魅せた! と話題の「レディ・プレイヤー1」。いずれも映画を通して日本への愛がビシビシ伝わってくる作品だ。


小津&黒澤,そして「のらくろ」の影響? な「犬ヶ島」


「犬ヶ島」
全国ロードショー中
配給:20世紀FOX映画
「キネマ51」:最終回の上映作品は「犬ヶ島」&「レディ・プレイヤー1」
大坪:
 長らく続いてきたこの連載も今回で終了です……。「パシフィック・リム:アップライジング」「アベンジャーズ/インフィニティ」「ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル」「ランペイジ 巨獣大乱闘」など強力な作品が並ぶ中,支配人がクロージング作品の一つめに選んだのは,「犬ヶ島」です。

須田:
 みんな大好きウェス・アンダーソン映画ですからね。しかしこのタイトル,映画会社がふざけてつけたのかと思ったら。原題が「Isle of Dogs」でほぼ直訳なんですね(笑)。しかも始まって早々に画面に日本語がバンバン飛び交って,こりゃ本気で日本を舞台にした映画をやるんだなとびっくりしました。

大坪:
 まず世界観や美術に持っていかれますよね。始まってすぐの浮世絵風のイラストや説明の部分から,とにかく映像が強い!

須田:
 近未来という設定ですけど,日本人の思う近未来ではなくて世界観としては昭和初期の日本。小津安二郎や黒澤 明をイメージしたらしいですけど,未来でもなければ過去でもなくて。またネーミングがいいんですよね。舞台の「メガ崎市」とか,縦書きで書くと「メガ」が漢字ぽくて格好いいんですよ。

「キネマ51」:最終回の上映作品は「犬ヶ島」&「レディ・プレイヤー1」

大坪:
 毒ガスが「ワサビガス」だったり,飛行機に乗る主人公がゲタを履いてたり,全編に「インチキ日本感」があるんだけど,絵としてまとまってるんですよね。自分は小津や黒澤ってより「のらくろ」っぽいなと思いました(笑)。犬同士がケンカするときとかも煙が巻き起こって,その中でポカポカポカ! っていう古い漫画描写だし。

須田:
 確かに! ウェス・アンダーソンも,のらくろを読んだのかな(笑)。
 でも映像は本当にすごくて,前に撮ったストップモーションアニメ「ファンタスティック Mr.FOX」も好きだったんですけど,めちゃくちゃスケールアップしてるんですよね。普通のアニメとかも織り交ぜているから,もう犬が人形かどうかも分からなくなるレベル。そんな中でシンメトリーを多用した映像なんか見ると,小津映画を意識した感じはします。

大坪:
 犬が皮膚病にかかってたり,毛の泥まみれな感じなんかもリアルに汚いんですよね(笑)。同じストップモーションアニメでも,この前紹介した「僕の名前はズッキーニ」の何倍の予算がかかってんだろ? と思うくらい,人形はもちろん背景の作り込みやシーン数がハンパない。個人的に不思議なのが,ウェス・アンダーソンがどこまで理解してこの非日常な日本のテイストを作り上げたのか,なんですよね。絶妙なインチキ日本感というか。そのズレの面白さも含めて世界観を作れたのか。

須田:
 この犬ヶ島では野村訓市さんという日本人の方が原案やキャスティングディレクター,さらに声優に名を連ねていて,たぶん彼のチェックもあったと思うんですよね。たぶんスタッフの好きな日本要素をぜんぶ詰め込んで,監督が最終的にまとめたんだと思うんですけど,野村さんもチェックを入れたと思うし。だからこそ「昔話っぽいんだけど近未来」という不思議な統一感があるのかなと。

「キネマ51」:最終回の上映作品は「犬ヶ島」&「レディ・プレイヤー1」


ストップモーションアニメでしか撮れないおとぎ話


須田:
 ただ一つ納得いかないことがあって……。主人公の小林アタリ役のランキン・こうゆう君,バンクーバー生まれのハーフの男の子で,全編日本語でしゃべってるんですけど,ちょっとたどたどしいんですよね。なんで鈴木 福君なんかを使わなかったのか! 唯一キャスティングで残念だった部分です。

大坪:
 支配人は福君が大好きですからねぇ(笑)。たしかにチョイ役で渡辺 謙や夏木マリ,野田洋次郎(RADWIMPS)なんかを使っているんだから,主人公はもっと日本語をしゃべれる子供でも……あ,監督とコミュニケーション取れる子っていうんで,バイリンガルの子を選んだんじゃないですかね?

須田:
 あー,そうかも! でも本当に声のキャストはすごいですよね。エドワード・ノートンにビル・マーレイ,スカーレット・ヨハンソン,あとチョイ役の犬がハーヴェイ・カイテルだったり,科学者の助手がヨーコ・オノだったりする。

「キネマ51」:最終回の上映作品は「犬ヶ島」&「レディ・プレイヤー1」

大坪:
 ストーリー的には支配人どうでした?

須田:
 ……普通の話ですよね(笑)。勧善懲悪の犬と少年の友情物語,以上! みたいな。シンプルなストーリーをこの世界観で見せるってのが第一だったかな。家族愛でもなければ人間愛でもない,“犬愛”の映画ですよね。

大坪:
 今回みたいな作品を普通に実写でやろうとしたら大変だと思うんですよね。日本人のキャスト選びから始めたらどれだけ時間がかかるか……。でも製作期間4年だから,ストップモーションアニメでもけっこうかかってるな(笑)。ただ,この形だからこそ描けた世界であるのは確実ですよね。

須田:
 ウェス・アンダーソンは,こういうおとぎ話をこのスタイルで撮りたかったんでしょうね。実写キャストでは撮れなかったと思います。実写を撮る監督だからこそ実写で撮れば撮るほど,そこで撮れないものに気付くんだろうし,こういうチャレンジもしたくなるんじゃないかな。

大坪:
 ガチガチのCGアニメと違って,ほどほどのリアリティは欲しい。それだとストップアニメーションがちょうどいい,というのはあるんでしょうね。

「キネマ51」:最終回の上映作品は「犬ヶ島」&「レディ・プレイヤー1」

須田:
 しかもこれでベルリン国際映画祭銀熊賞(監督賞)ですからね。ティム・バートン以来じゃないですか? 実写も撮ってストップモーションアニメもやって賞を取った人。それも製作総指揮とかじゃなくて,ちゃんと監督名義ですからね。ストップモーションアニメって,せっかちな人じゃできなさそうですけど,ウェス・アンダーソンは実写もアニメも同じテンポで撮ってそうな気がします(笑)。

大坪:
 ミスしても「もう一回撮ってみようか〜」ってのんびり言ってそう。

須田:
 こういう唯一無二の映画なんだけど,日本ではUNDERCOVERがTシャツ作ってたり,おしゃれ映画なんですね(笑)。しかも「監督の熱望でイラストは大友克洋」! 普通に犬を書いてますけどね,大友さん(笑)。
 でも既存のウェス・アンダーソン作品ファン向けでもないし,ストップモーションアニメだからって子供向けでもないし,もちろん二次元アニメ好き向けでもない。不思議なおとぎ話です。

「キネマ51」:最終回の上映作品は「犬ヶ島」&「レディ・プレイヤー1」

「犬ヶ島」公式サイト



「レディ・プレイヤー1」にもの申したいこと


大坪:
 さてキネマ51,真のクロージング作品はすでに話題のレディ・プレイヤー1。みんなが好きなアバターになって楽しむ仮想現実の世界「オアシス」が主な舞台で,いわばゲームの中の世界をメインとしたお話です。

須田:
 最近だけでも「ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル」「ランペイジ 巨獣大乱闘」と,ビデオゲームが題材になった作品って増えてるじゃないですか? その集大成みたいな作品ですよね。オアシスを作ったクリエイターであり,その世界の象徴がハリデーで,彼の真相に迫っていく物語です。
 この作品は僕も同じ“ゲームデザイナー”という職業が主題になっていて,ゲーマーがいるからこそ世界を作れているという共存関係の物語でもあったりと,興味深く見ていたんですよね。でも,だからこそ気になる部分が多いんです……。

「レディ・プレイヤー1」
全国ロードショー中 3D/2D/IMAX3DR/4D
ワーナー・ブラザース映画
「キネマ51」:最終回の上映作品は「犬ヶ島」&「レディ・プレイヤー1」

大坪:
 そりゃそうですよね,同業者ならではのツッコミが。

須田:
 例えば,この映画ではハリデーが自分の遺産を渡すために死後現れてプレイヤー達を煽るわけですけど,ゲームデザイナーが自分のゲームの中で“象徴”として自分自身を主張することってあまりないと思うんですよ。僕自身,メディアで名前や顔を出すことはあるけど,それはプロモーションのためであってもちろんゲームの中には登場しません。

大坪:
 オアシスの中でのハリデーは,その世界での神的存在ですよね。自らそのポジションを選んで出てきているように見えます。本人は内向的な感じで,全然そんなタイプには見えないのに(笑)。

須田:
 そうなんですよねー,我々と同じ“現場の人”のにおいなんですよ。神的な立場のゲームデザイナーで自分の名前を積極的に出した人というと,シムシリーズのウィル・ライトに,「ポピュラス」のピーター・モリニュー,あと「シヴィライゼーション」のシド・マイヤーとかその辺だと思うんですよね。現代のクリエイターがそこまで主張するのかな? って。地位も名誉も全部持っているにしても“現場の人”がああいう存在になるのが理解できないんですよ。

大坪:
 ハリデーが好きな映画やガジェット,過去の会議の風景とかまで見られる図書館なんかも出てきますけど,そんなの作る人ってむちゃくちゃ“自分好き”ですよね(笑)。

須田:
 ゲームの中に開発者が自分の名前をこっそり刻む「イースターエッグ」が本作の鍵になるし,その延長で描いてるんだと思うけど,それにしてもあからさますぎないかと。ゲームデザイナーという存在とIT長者みたいな人がちょっと混ざって描かれている気がしますね。そもそもゲームデザイナーはそんなに儲からないから(笑)。

大坪:
 そこがリアルとはかけ離れてると(笑)。

須田:
 あと,ツッコミどころとしては,オアシスって自分がアバターを着て好きなキャラクターになれるわけですけど,ヘッドマウントディスプレイをつけてその世界に入ってますよね。一人称での自分の姿は手ぐらいしか見えないんですよ。アバターゲームは自分が見えてエゴってナンボなんで,三人称視点じゃないとダメですよね。せっかくガンダムになっても,自分が見えないじゃん!

「キネマ51」:最終回の上映作品は「犬ヶ島」&「レディ・プレイヤー1」

大坪:
 それと,オアシスの世界って楽しそう! というのは分かるんですけど,ゲームとして具体的なところはちょっとボヤかしてましたよね。序盤の車のゲームなんかは想像しやすいんですけど。

須田:
 そこも結局,VRって視点が一人称なので,自分が好きなアバターの姿になったとしても鏡を見でもしないと自分の姿を確認できないゲームって,それほど人気が出るとも思えないんですよ(笑)。
 あれなら普通にPCのディスプレイを使って三人称視点で楽しむほうがいいと思う。

大坪:
 VRって「自分のままでこんなことができる!」というのが基本ですよね。自分自身が別キャラに変わっちゃうのとはちょっと違うというか。

須田:
 あと,ハリデーの遺産を見つけるゲームも,トップ5の人達だけがいい思いするわけじゃないですか。それを多くのゲーマーが望むのかな? とも思いました。
 もう一つ言いたいのはやっぱり結末ですよ! ネタバレになるから言えないですけど,そんなきれいごとで終わるのはやめてくれって(笑)。ゲームは1日10時間! って堂々と宣言してほしい。

大坪:
 細かくは言えないですけど「え〜?」とは思いますよね,あのラストは。

須田:
 ビデオゲームを題材にしたからこそ,そのあたりまで丁寧にやってほしかったなというのは,同じ職業の身としては訴えておきたいですね。この映画を見てから「Travis Strikes Again: No More Heroes」の冒頭で,僕が思ったことをトラヴィスに語らせたくなりましたもん(笑)。

「キネマ51」:最終回の上映作品は「犬ヶ島」&「レディ・プレイヤー1」


スピルバーグにならないと作れない世界


須田:
 などといろいろ文句は言いましたけど(笑),“ガンダム対メカゴジラ”という最高の立ち回りをハイパークオリティで見せてくれたのは本当にありがたいですね。「東映まんがまつり」をハリウッドで作ったみたいな。

大坪:
 「AKIRA」の金田バイクといい,日本ネタが不思議なくらい良い扱いですよね。今の映画界,どこも中国でヒットするために中国要素を入れようと頑張っているところに,こんな日本文化をリスペクトしてくれる映画はなかなかないですよ!

須田:
 ねえ! いろんなキャラが本当の意味で世界デビューできて,スピルバーグに「ありがとう」と言いたいです。あと「俺はガンダムで行く」も森崎ウィンさん自身が日本語の訳を任されて,「ガンダム行きまーす!」はファンに失礼だなと言葉を変えた話とか,メカゴジラもポスターにしか使われてない生頼範義さんバージョンを初めて映像化したとか,マニアをくすぐるエピソードもいっぱいあって。

大坪:
 ネット評を見ていると「え,そんなキャラいたんだ!」というのがいっぱいですもんね。しかも原作だと東映版「スパイダーマン」のロボット・レオパルドンとかウルトラマンも出てくるみたいで。原作者が日本好きなのもあるんでしょうけど,もっとアメリカのキャラクターも出してあげて良かったんじゃ? という気はしました。

「キネマ51」:最終回の上映作品は「犬ヶ島」&「レディ・プレイヤー1」

須田:
 アメコミ系だとマーベルは出なかったけどDCは出てましたね。あとゲーム系だと「HALO」とか「Gears of War」なんかも,もっと目立ってもいい気がします。ただ,そもそもアメリカには巨大メカが少ないから戦闘シーンじゃ映えないんですよね。アイアン・ジャイアントのポジションも原作ではウルトラマンだったらしいし。
 あと敵のアイロックが骸骨型の銃を使っていて,僕らが作った「シャドウ・オブ・ザ・ダムド」にも骸骨銃は出てくるんで,「ウチのかな?」って思ったんですけど,よく見たら違いました。

大坪:
 無断で使ってたらえらいことですよ(笑)。でもそういう銃一丁とか服だけとか,かなり細かいレベルで元ネタがあるみたいですね。

須田:
 あと,ぼく的にはヒロインがJOY DIVISIONのTシャツを着ていて,ディスコシーンで「BLUE MONDAY」がかかったり,最後のシーンでおばちゃんがNEW ORDERの「Technique」のTシャツを着ていたりして,その辺はツボでしたね〜。

大坪:
 いきなりVAN HALENの「JUMP」で始まったりと,音楽は80年代尽くしでそこも個人的にはアガりました! とくにそういうのがはやっているとかの説明こそなかったですが,キャラクターの元ネタも80年代感が強いので,それに合わせたのかもしれないですね。

須田:
 あらためてレディ・プレイヤー1は,みんなが想像していたこういう世界を,映像として形にしてくれたっていうのが大きいですよ。みんなやりたいと思うけど,スピルバーグにならないとできないんだなと……。
 ただ最近,ゲームネタの映画が増えてきている背景には,ビデオゲームが一般化,大衆化して,その影響でゲーマー出身でものを作る人が増えたというのもあるかもしれないですね。

大坪:
 原作というだけではなくて,映画を作るときの発想の出発点がゲームだという人は増えているでしょうね。子供のころに触れたエンターテイメントの原体験として,当たり前にゲームがある世代が増えましたから。

須田:
 僕の世代だと映画が先にあって,そこからゲームを作る部分が大きかったんだけど,もうその逆が起きてるんですよね。この連載は,その映画に似たゲームを読者にレコメンドするのがテーマだったんですけど,その境界線がなくなってしまった。だからこそこうして幕を下ろすってことで……こじつけですけど(笑)。
 今ってもう本当に境目がなくて,何のジャンルでも面白いほうが勝ちって世界ですから,既存のゲームも映画も越えるものを作っていきたいですね!

「キネマ51」:最終回の上映作品は「犬ヶ島」&「レディ・プレイヤー1」

「レディ・プレイヤー1」公式サイト

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