海外ゲーム新作ガイド 2010

　2005年に発表されて以来，何度かの潜伏期間を経て，すでに5年以上も開発が続けられているのが，Max Payneシリーズの開発で知られるRemedy Entertainmentの「Alan Wake」である。 　ファンは随分とヤキモキしているはずだが，ようやく今年の夏までにはリリースされそうな気配になってきた。
　Alan Wakeは，2年ものあいだ不眠症に悩まされ続けている主人公アラン・ウェイクが，妻とともに田舎の湖畔に移り住むというところから始まる。平穏な生活を送れるかと思いきや，妻が突然失踪，やがては自分の夢に出てくることが現実化していき，アランは暗闇や睡魔との闘いを強いられていくのである。Alan Wakeは，プレイヤーが比較的自由に行動できるオープンワールドなゲームであるが，メインストーリーは，ゲームの中でいくつもに区切られたエピソード形式になっており，ドラマチックに展開していくように考慮されている。日が落ちて暗闇が訪れると，光を苦手とする魔の存在が次々と湧き出してくるため，プレイヤーは懐中電灯ほか，光を発する車のヘッドライトや灯台まで利用して，魔の存在と戦わなければならないのだ。

　「Epic Mickey」は，「Ultima Underworld」や「Deus Ex」などを手掛けた名プロデューサーとして知られる，Warren Spector氏のシークレットプロジェクトとして長らく開発されてきた作品だ。もともとマルチプラットフォームのゲームとして開発されていたが，Wiiのリモートコントローラに合わせたゲームを練り込んでいくうちに，Wii専用タイトルへ変貌したという経緯がある。
　Epic Mickeyのストーリーは，ディズニーアニメに選ばれずボツになったキャラクターを集めて，テーマパークを作ろうとしたソーサラーの世界を舞台に，1930年代から60年代にかけてコミック化されていたミッキーの敵The Blotの野望を砕くために，ミッキーが活躍するという内容だ。ミッキーマウスがディズニーのシンボルになる20年代後半まで，同社カートゥーンの人気キャラだった“オスワルド”がミッキーの義兄弟として登場し，二人が誤解や嫉妬を乗り越えていくというサブプロットも用意されているなど，ディズニーマニア必見のゲームである。
　ミッキーの武器となるのはマジカルなペンで，橋がないところにペン（Wiiリモコン）で橋を描いて渡ったり，時計を書いて時間を調節したりしながらゲームを進めていくという，ユニークなゲーム性も気になるところだ。

　2005年にPlayStation 2向けに発売され，大ヒットを飛ばした「God of War」。人気シリーズ最新作となる「God of War III」が，2010年3月の発売に向け，いよいよ開発終盤にさしかかっている。 　シリーズの持ち味である息もつかせぬアクションはそのままに，PlayStation 3の美しいグラフィックスをフルに生かしたアクションゲームである本作。スパルタの英雄クレイトスが，自分を裏切った神々に対して復讐するというストーリーはシリーズを通してのものだ。今作ではついに最終決戦の時を迎え，ゼウス，ポセイドン，ハデス，ヘルメス，そしてアポロンといったオリンポスの神々を相手に剣を振るい，神々への復讐に決着がつくことになるという。 　ゲームのキモとなる戦闘はさらにパワーアップしており，新しい武器やアクション，巨大なクリーチャーやボスとの戦いなど，さらに壮絶なアクションが楽しめそうだ。

　2010年のXbox 360向けタイトルの中で高い人気を獲得するタイトルになるのは間違いない「Halo Reach」は，人気FPSシリーズの最新作にして，2001年発売の第1作「Halo: Combat Evolved」のプロローグとしての位置づけになっている。時代設定は，地球軍（United Nations Space Command）とエイリアン種族Covenantとの戦争が激しさを増していた2552年。7億人の地球人が住む惑星Reachまでが攻略されるなど，Covenantの勢力が序々に地球軍を圧倒していくなか，プレイヤーは地球軍のエリート部隊Spartansに属するThe Noble Teamを率いるリーダーとして戦っていくのだ。
　これまでのシリーズとは異なり，かなりダークな雰囲気のアートが特徴的だが，ゲームエンジンは「Halo: ODST」のものを強化したバージョンとなる。これまでHaloシリーズの開発を手掛けてきたBungie Softwareは，この作品を最後にシリーズとは袂を分かつことが発表されており，その分だけ多くのファンの興味を引きつけているようだ。
　ゲーム内容に関しては詳しく発表されていないものの，The Noble Teamのメンバーはプレイヤーが操る主人公を含めて6人。一画面に40体ほどの敵を表示できるとあって，激しいコンバットとなるのが予想される。戦闘ヘリFalconなど，新型車両の追加があることも知らされている。

　「Heavy Rain」は，驚くほど緻密なキャラクターの表情アニメーションを駆使した技術デモ，「The Casting」が2006年に公開されて以来，大きな話題になってきたアドベンチャーゲームである。現場に折り紙を残していく連続殺人犯に関わる四人の男女を主人公にしており，プレイヤーは，犯人に子供を誘拐された建築家Ethan，その事件を追うジャーナリストのMadison，FBI捜査官Norman，ベテラン探偵のScottというキャラクターを操作して，この犯人を追っていくのである。
　Heavy Rainでは，銃で撃たれた傷や後遺症がそのあとのゲームにも影響するなど，ゲームの進め方自体が複雑なパズルとして機能している。プレイヤーの選択によってはメインキャラクターが死んでしまうことさえあるが，その場合でもそのままゲームは進行していき，最悪の場合は全員が死んで連続殺人犯の勝利という形でゲームは終わる。リプレイバリューが非常に高いゲームなのである。
　コンバットシステムもユニークで，イベント発生中に画面上に現れるボタン記号を押すクイックタイムイベント方式を採用。会話は，その心理状況によって歪み具合が異なる文字で書かれた選択肢を，会話中に素早く選んでいくというスタイルとなる。

　「Milo and Kate」は，センサー付きカメラ「Project Natal」が発表された2009年5月に，そのデモとして公開されたプロジェクトである。Xbox 360で今年一番のビッグニュースになると思われるProject Natalにおいて，Microsoftが推し進める「コントローラー・フリー・イニシアティブ」（コントローラの必要ないゲームプレイ）に乗っ取ったプログラムで，Kateという実在の女の子とゲーム内に映るMiloというキャラクターが，表情や全身の動き，そしてそれから作り出される感情そのものを読み取り合いながら，会話を進めていくというものであった。
　実際に，Milo and Kateデモと同じものが製品化されるのかどうかについて，Microsoftからの正式発表はない。「Project Natal」と共に「Fable III」の開発も進めているLionhead Studiosを含め，現在世界のゲーム企業の多くがProject Natal向けのゲームを制作，もしくは企画しているといわれている。このMilo and Kateは，そんな新世代ゲームのシンボル的な存在として受け止めてもらえば良いだろう。ただ，このMilo and Kateのようなソフトが，どんどんProject Natal向けにリリースされることになれば，現在ほとんどコアゲーマー向けとなっているXbox 360のニーズが，新しい層に拡大していくものと思われる。

　2004年にリリースされた「Red Dead Revolver」の続編となる「Red Dead Redemption」は，ちょうど20世紀に入った1900年ごろの大西部時代をモチーフにした，Rockstarお得意のオープンワールド型アクションアドベンチャーだ。 　主人公John Marstonが，仲間の行方を追ってメキシコやシエラ山系を旅するというストーリーだが，主人公をどのようなキャラクターに作り上げていくのかはプレイヤー次第。懸賞金のかかったお尋ね者を生け捕りにしたり，地図を手に入れてトレジャーハントに手を染めたり，果ては強盗に加担して町のシェリフを殺害してしまったりということを，文明とは切り離されたようなアメリカ南西部の砂漠地帯を舞台に，プレイヤーの思うがままに楽しめるわけだ。
　プレイヤー自身が罪を犯してお尋ね者になってしまった場合，自分の首に懸賞金が懸けられ，NPCから付け狙われることになる。それを回避するためには，地元のシェリフに賄賂を送ったり，良い行いをして政府から恩赦の手紙を受け取ったりといった手を打つ必要がある。山中ではグリズリーやオオカミなどの野生動物に襲われることもあり，なかなか息のつけない大自然を満喫できそうだ。