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海外ゲーム新作ガイド 2010

2010年は,ストラテジー/シミュレーションゲームのファンにとって嬉しい一年になりそうだ。2月にリリースされる「Napoleon: Total War」を皮切りに,人気シリーズの最新作が次々に登場し,扱うジャンルも歴史からファンタジー,SF,そしてミリタリーと多士済々。わずか1年では,とても遊びきれないような状態になりそうだ。
もっとも,期待できる大作はあるにしても,ストラテジージャンルにそれほど厚みがあるわけではないという印象も強い。かつて熱心にPC向けのストラテジー/シミュレーションを開発していた,Firaxis GamesやLionhead Studiosなどが新作を発表していないこともあり,紹介した一連のタイトルがリリースされたあとの新作が見えてこないことには,多少の不安を覚える。
いくつかの流れがあるCommand & Conquerシリーズのうち,「タイベリアン・サガ」と呼ばれるシリーズの最終章になりそうなのが,「Command & Conquer 4: Tiberium Twilight」だ。
同シリーズは,実際の俳優を使ったムービーでストーリーを進めていくという,今となっては独特といえるシステムが採用されているが,15年にもおよぶシリーズで,唯一皆勤賞を取れそうなのが悪役のケイン。本作では,このケインを主人公とし,タイベリウムに覆われて絶滅寸前の人類の姿を真正面から描くのである。
Tiberium Twilightは,2007年の前作「Command & Conquer 3: Tiberium Wars」でエイリアン種族のScrinを破ってから15年後の世界で,貴重な資源であると同時に猛毒でもあるタイベリウムが地球上のいたるところに繁茂し,あと6年で人類は死滅すると予測されている。
超古代のデータベース「Tactius」を再び獲得したケインは,敵であるGDI軍に自ら乗り込み,タイベリウムを抑えるための停戦を提案する。果たしてケインの本心は?
第4次タイベリウム戦争を描く本作には,プレイアブルな勢力ではないようだが,「Scrin」と「The Forgotten」,そしてミュータント系のファクションが復活するという。登場するユニットは総計約90種で,ハーベスターによる資源の採取が簡略化されるなど,システムの変更もいくつかあるようだ。
「Galactic Civilizations」の開発など,いぶし銀のようなストラテジーの販売で知られるStardock Entertainmentの,久々のオリジナルストラテジーが「Elemental: War of Magic」である。
ストラテジーゲームの中でも,俗に「4X」と呼ばれるジャンル,つまり,ゲーム世界を探検(eXplore)し,自分の勢力の領域を拡張(eXpand)させ,資源の確保や施設の建設,外交といった活動(eXploit)をしつつ,ライバルを破壊(eXterminate)するという,Stardockお得意の濃密なゲーム性は,このElemental: War of Magicにも十分に活かされているようだ。
本作で舞台となるのは,魔法やモンスターに溢れたファンタジーな世界。プレイヤーはとある王国の代表者であり,同時に世界で唯一,魔法の力を引き出せる存在として,ヒーローや兵士のリクルート,ダンジョンの探検,技術の研究開発や町や砦の建設,さらには交易や外交,征服を行なっていくのである。
主人公は実際のユニットとして存在しており,レベルアップはもちろん,新たなスペルの習得なども行えるようになっている。勝利条件がいくつか用意されていて,戦争の勝利だけでなく,世界最高のスペルを会得したり,最後までミッションをこなし終えたりすることでもクリアになるという。
スケールの大きなRTSとして高い人気を誇る,Total Warシリーズ最新作が「Napoleon: Total War」だ。本作は,ナポレオンという短くも激しい生涯を送ったヨーロッパ近世のカリスマ戦略家を中心とし,彼の事跡を追う形でゲームを進めていくという,これまでとはかなり異なる趣向になっている。もともと,前作「Empire: Total War」の拡張パックとなる予定だった本作だが,こうした新しいゲームシステムを採用したため,独立したゲームとしてリリースされることになったとのこと。
Napoleon: Total Warでは,1778年からのフランス国内での地位を上げていく動きから始まり,1796年から始まる北イタリアの戦い,1798年の北アフリカの戦い,そして1805年から始まるヨーロッパ制覇,さらに1815年のワーテルローの決戦という五つのキャンペーンがプレイできる。
一つのターンは,従来作の半年から2週間へと短くなっているものの,キャンペーンも短くまとめられており,史実のナポレオン同様,手早く効率的に周辺国を攻略していく必要があるのだ。
Generalユニットに味方の士気を上げるエリア効果が設定されたため,最前線で奮闘することが要求される。このほか,砲煙などの効果やAIの能力,海戦など,従来作からの変更点も多いようだ。
「R.U.S.E.」は,現在あまり一般的ではない「タッチスクリーン入力」が使える,斬新すぎるRTSだ。残念ながら多くの人にとって,タッチスクリーンパネルのディスプレイやテレビは高嶺の花。やがて入手するその日まで,キーボード&マウス,ゲームパッドでゲームを楽しむことにしよう。なにしろ本作は,第二次世界大戦をテーマにした普通のRTSとしても,十分に面白そうな一本だからだ。
現在発表されているところでは,プレイヤーはアメリカ軍の指揮官として第二次世界大戦期の北アフリカやイタリア,ドイツなどの激戦地を戦い抜いていく。また,マルチプレイではアメリカ軍のほかに,イギリス,ドイツ,イタリア,フランス,そしてロシアの6か国の部隊を率いて参戦できる。正式に導入されるかどうか不明だが,日本軍が登場するという報道も行われていた。
ゲームの基本はシンプルで,手持ちのユニットを前に進め,ところどころにある町を占領することで資金の経路を確保していく。英語のruseには「たくらみ」や「策略」という意味があるが,本作でも戦闘だけでなく「待ち伏せ」や「オトリ」「スパイによる攪乱」といった行動が勝負に大きな影響を与えることになる。陸,海,空を合わせて200種ほどのユニットが利用できるとのことだ。
前作「StarCraft」は,発売から12年という歳月を経てなお,いまだに各国で盛んに遊ばれる“超”長寿ゲーム。その待望の続編として,Blizzard Entertainmentが開発中なのが「Starcraft II: Wings of Liberty」だ。これまで何度か行われたイベントの状況を見る限り,前作に優るとも劣らない大ヒットを飛ばしそうな気配が濃厚に感じられる。
ちなみに,Starcraft IIは三部作としてリリースされる予定になっており,StarCraft II: Wings of Libertyはその第一弾となる。
Starcraft II三部作は,26世紀の銀河を舞台に,未来の地球人であるTerran,狂暴で昆虫のような種族Zerg,そして超能力を持ったProtossという三つの勢力の抗争を描いていくもの。第一弾のWings of Libertyでは拡張パック「Starcraft: Brood War」で崩壊したTerranのグループの一つ,Dominionが復活しており,プレイヤーキャラクターとなるJim Raynorは,Dominionの反乱分子として彼らから追われる身である。
前作(および拡張パック)とは異なり,シングルプレイ用キャンペーンではミッションを比較的自由に選択できるようだ。もちろん,前作でも注目された美しいカットシーンも多数用意されていて,物語がドラマチックに展開していくのは間違いない。
もちろん,3勢力によるマルチプレイモードも用意されており,Blizzardのゲームサービス「Battle.net」も本作のリリースに合わせて一新される予定。追加マップを購入できたりする「StarCraft II Marketplace」と名づけられた新サービスも実装されるという。
1997年にリリースされるや,コアゲーマーを中心としてカルト的な人気を獲得した伝説の名作「Total Annihilation」。その“精神的な後継作”といわれるのが,Gas Powered Gamesの「Supreme Commander 2」だ。
前作「Supreme Commander」の25年後の世界が描かれること以外,ストーリーについてデベロッパは完全黙秘を貫いており,内容はほとんど明らかにされていない。とはいえ,前作同様,Earth EmpireとCybran Nation ,そして Aeon Illuminateの3勢力による戦いが中心になるのは間違いなさそうだ。
シングルプレイモードで用意されているのは,18種類の“オペレーション”。ミッションではなくオペレーションと呼ばれているのは,それが,ほかのゲームでは見られないほど広大な地域を舞台に,長期におよぶ作戦になるからだ。カットシーンを多用した重厚なストーリー展開も楽しみだが, Valveのデジタル配信システムである「Steam」のオンラインゲームサポート機能を利用したマルチプレイモードの存在も気になるところ。
プレイヤーにとっての基地となるのが,ACUと呼ばれる巨大ロボットで,この潰し合いがゲームの焦点になるのも前作同様。技術を開発することでACUのカスタマイズが可能になったり,勝ち抜いていくことでユニットの能力が上昇したりといったSupreme Commanderらしさを残しつつ,ビギナーでもプレイしやすいゲームに進化したという印象である。
18〜19世紀の帝国主義時代を,緻密な考証と膨大なデータによって追求したParadox Interactiveのストラテジー,「Victoria: An Empire Under the Sun」の続編となる「Victoria 2」が,2010年内にはリリースされそうだ。
本作は,200を超える世界中の国や地域から一つを選び,フェルディナント1世がオーストリア皇帝となった1835年から,第二次世界大戦前夜の1935年まで,自国の繁栄を目標にプレイしていくというもの。
50種類以上の交易品や,10種類を超える政治体制など,細かなシミュレーションで知られるVictoriaシリーズは,“濃い”ストラテジーを送り出すことで知られるParadox Interactiveのタイトルの中でも,濃さにかけてはトップクラス。ファンサービスだと思うのだが,「もし(本作で)利益が出たら,髪の毛をすべて剃り上げた写真を公開する」と,同社の社長が宣言しているほどマニアックな作品になっているようだ。
詳細についてはまだ公開されておらず,職人や官僚といった要素が加わるとか,国家の影響度や識字率の追加といった細かい発表が,公式フォーラムで行なわれている程度である。
2009年末にリリースされた「Hearts of Iron III」のゲームエンジンを利用しているようで,Victoria 2のセーブデータをエクスポートして,第二次世界大戦期を描くHearts of Iron IIIで遊び始めるという仕様も考慮されている。
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