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[TGS2005#25]デュアルコア対応「鬼武者3」の真実
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印刷2005/09/18 00:37

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[TGS2005#25]デュアルコア対応「鬼武者3」の真実

 現在カプコンが開発中の「鬼武者3」のPC版は,「こちら」の記事でお伝えしたように,デュアルコアCPUであるPentium Dに最適化されているという。
 ではこの鬼武者3で,具体的に何が行われているのだろうか? 東京ゲームショウ2005(以下,TGS2005)の会場で,カプコンの編成室 プロデューサー 波多弘幸氏にデュアルコア対応の詳細について話を聞いてみた。


■複数のスレッドが走るPC版鬼武者3
今回話を伺った波多弘幸氏
4Gamer編集部(以下,4Gamer):
 本日はお忙しいところありがとうございます。さて,まず伺いたいのは,プレイステーション2(以下PS2)版と比べて,PC版で何が違うのかなのですが。

波多弘幸氏(以下,波多):
 ゲーム自体はPS2版とまったく同じです。ただ,グラフィックス面では大きく3本の柱を立てて強化を図りました。バンプマップ,光源処理,ブラーが,PS2版と比べると新しい部分になりますね。
 それに合わせて,CPUはデュアルコア最適化ということで,頂点シェーダ(Vertex Shader)の一部をCPUの2コアめに回しています

4Gamer:
 「デュアルコア最適化」と聞いて,実は半信半疑だったのですが,本格的な最適化だったのですね。失礼しました。
 頂点処理の一部をCPU側で……というのは,Intel Graphics Media Accelerator 950(注:Intel 945G Expressのグラフィックス機能)のような,頂点シェーダを持たないチップセット内蔵グラフィックスでも,きちんとした頂点処理をするためですか?

波多:
 そうです。「オンボードグラフィックスで髪の毛1本1本まで処理」が究極の目標です。シェーダの効果で一番分かりやすいのは顔の部分,とくに髪の毛なんですね。もちろん,そこまで持っていくのは大変なんですけど,デュアルコアへの最適化で,なんとか実現したいなと。

4Gamer:
 スレッドは何本くらい走ってるんでしょうか?

波多:
 まだ開発中なので,「未定」が回答になりますね。

4Gamer:
 では質問を変えましょう。例えば,シングルコアとHyper-Threadingテクノロジ,Hyper-Threadingテクノロジとデュアルコアでパフォーマンスに差は出ますか? あるいは,Pentium Extreme Editionならどうですか?

波多:
 すべて差が出ます。

4Gamer:
 となると,スレッドが2本走っていて,片方が頂点シェーダに割り振られているような,単純な構造にはならないというわけですね。

波多:
 PS2用鬼武者3という,非常にいい素材があって,それをただ料理するのではつまらない。そこでいろいろ試行錯誤した結果として,単純な構造にはならなかった,という感じでしょうか。

4Gamer:
 素朴な疑問なのですが,なぜ鬼武者3がデュアルコア最適化タイトルとして選ばれたのでしょう?

さすがに代表作,TGS2005の会場では早くも推奨PCの登場を予告するビラが配布されていた
波多:
 カプコンの代表的なタイトルであり,最もカプコンらしいタイトルである,というのが理由ですね。ウチの開発のトップである稲船(注:稲船敬二氏)が最終的には判断したわけですが。

4Gamer:
 鬼武者3は,PS2版の段階から,マルチスレッドで動作できるような下地があったのですか?

波多:
 いえ,マルチスレッドに関するコードは完全にPC版で一から作っています。

■今まさに行われているデュアルコア最適化
4Gamer:
 これまで「デュアルコアCPUに対応したゲーム(エンジン)ベンチマーク」は,公式には存在しませんでした(編注:未公開のものとしてはFuturemarkの「Mechanoids」などがある)。この点,実際のゲームタイトルにおいて明確なメリットがあるとすれば,それは相当面白いですね。

波多:
 ただ,ベンチマークといっても,これまでの数字だけを比較するものとはちょっと違うんですよ。鬼武者3では,例えばあるオプションを有効にすると見栄えがこう変わるよといった感じで,視覚的に見せていきたいと考えています。

4Gamer:
 確かに,フレームレートと見た目なら,見た目のほうが分かりやすいでしょうね。そこで伺いたいのですが,フレームレートでも見た目でも,グラフィックスチップ側に頂点処理を任せたときと,CPUに振った場合では,どちらが有利なのでしょうか。

波多:
 正直に言うと,ハイエンドのグラフィックスチップに頂点処理を任せてしまえば,CPUがデュアルコアである必要はない場合があります。
 PS2版では「Pre-Computed Radiance Transfer」(事前計算放射輝度伝播)という技術を使っています。これは要するに,光源の影響を事前に計算しておいて,物体に自然な陰影を付けるものなのですが,この演算をDirectX 9.0cベースで行うに当たって,どれだけのものを引き出せるか。

4Gamer:
 どのあたりが目標になりますか?

波多:
 すべての明暗を事前に計算しておいて,例えば金城武が横を向いた瞬間に,ボヤけた感じも含め,顔の明暗をすべて描き切れるなら,もちろんそれが理想です。一応,デュアルコアCPUとハイエンドグラフィックスカードを持っている人のためのオプション設定は考えていますよ。ただ,それを突き詰めると,一部の人しか楽しめなくなってしまう。
 鬼武者3には(プリレンダーの)ムービーが比較的多く,ユーザーがプレイしない部分でストーリーが進行していきます。こういったゲームの流れの中で,プレイアブルな部分の描画を,ムービーの描画に近づけていく。まずはここを優先したいなと。完成までの向こう1か月が勝負ですね。

4Gamer.net:
 まさに最後の詰めの段階と。

波多:
 TGS2005のATI Technologiesブースでプレイアブル展示しているデモでも,バンプマップは有効になっています。金城武の身に着けている鎧の凹凸感は,PS2版よりも向上していますよ。ただ,ブラーとか光源処理とか,デュアルコアへの最適化によってもたらされる部分に関しては,「今やっています」といったところです。

4Gamer:
 デュアルコアCPU利用時に意味のある描画オプションは,自動で有効/無効が切り替わるのですか? それともユーザーが任意に設定できるようになったりします?

波多:
 そのあたりは慎重に詰めていきたいところです。
 もともとPS2版を作るときに,RAWデータ(編注:圧縮前の,いわゆる「元画像」)は相当高い解像度で用意しています。なので,基本的にはPS2版を高解像度にした感じで作っておいて,デュアルコア用オプションを有効にしたときだけ,RAWデータに近い品質に持っていくことになると思います。鬼武者3は"作品"ではなく"商品"ですから,できる限り多くの人がプレイできる必要がある。トンガリ過ぎてはいけないのです。

4Gamer:
 それで,Pentium III/1GHzクラスのCPUを搭載する環境なら動作する,「ライトモード」が用意されていると。

波多:
 ライトモードでは,Pentium III/1GHz未満のCPUとチップセット内蔵グラフィックスで動作するのが目標です。ただ,いろいろと難しい問題もありまして,ひょっとするとライトモードのターゲットは若干上がってしまうかもしれません。最近のPCの進化は非常に早いですから,ある程度は,下のクラスを切る可能性があります。

4Gamer.net:
 仮にそうなってしまうと少々残念ですが,それはそれで,開発陣からすると経験値になりますよね。

波多:
 カプコンとしては今後,いろいろなコンテンツをPC化しようと考えていますが,今回初めてIntelのデュアルコア用ツールやNVIDIAのツールを使って開発したことは,貴重な経験になるでしょう。
 これまでユーザーのPC環境は,スペックの差が大きかった。ですが,(デュアルコアCPUによって,グラフィックスカードの差異がある程度吸収されれば)今後その差は縮まる。そのときにこの経験が生きて,「カプコンのゲームはコンシューマで凄い,PCだともっと凄い」ということになればいいですね。

■今後は64ビット対応を視野に
4Gamer:
 そういえば,ベンチマークモードはあるのですか? 単純なフレームレートだけではなく,例えば画面いっぱいに金城武の顔があって,シングルスレッドとマルチスレッドをワンクリックで切り替えながら,こんなに違うよ,とか言えるようなものがあったりすると,分かりやすいかなと思うのですが。

波多:
 面白いと思いますが,今回は実装していません。次回作以降の課題にしたいですね。

4Gamer:
 デュアルコアCPU用のいいベンチマークソフトが手に入るかと思ったんですが(笑)。次回作を楽しみにしています。ところで,デュアルコアCPUというと,AMDにもAthlon 64 X2があります。こちらでの動作検証はされているのですか?

波多:
 ウチはAMDの技術的サポートも受けていますから,当然しっかりと動作検証を行っています。AMD64には対応していませんが。
 ……個人的には64ビット化したかったんですけどね。

4Gamer:
 64ビット化していた場合に期待できたものというのは何ですか?

波多:
 それは次回のタイトルが出てきたときに話します(笑)。

4Gamer:
 海外展開を含め,Intelとの"次の話"はあるのでしょうか。

波多:
 否定はしません。近いうちに何かあると思いますよ。


 インタビュー終了後,軽く雑談となったのだが,そこで波多氏は「Xbox 360」や「プレイステーション3」がリビングではなく"ルーム"(個人の部屋)に入るという見通しを示した。リビングに入るのはリビング用PCで,リビングで楽しめるエンターテインメント作品を中心に,PCゲームにはむしろチャンスが到来するとのこと。インタビュー中,PCゲームに対する積極的なコメントが印象的だったが,そこには確固たる信念があったというわけだ。

 いずれにせよ,鬼武者3の登場で,"ゲームに向いたCPU"の概念は大きく変わる可能性がある。実際に発売されるPC用ゲームとしては,おそらく世界初のデュアルコアCPU完全最適化済みタイトルとなる鬼武者3が,最終的にどういった形で世に出てくるのか。今後の展開を注意深く見守っていきたいと思う。(佐々山薫郁)

  • 関連タイトル:

    鬼武者3 PC

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