― レビュー ―
金城武とジャン・レノが,幻魔をバッサリ斬りまくる
鬼武者3 PC
Text by midi
2005年12月19日

 

■ハリウッドも驚愕? 二大スター共演は一見の価値あり

 

襲いかかる幻魔を斬って斬って斬りまくる,爽快なアクションがウリの「鬼武者3 PC」

 「鬼武者3」は,2004年2月にカプコンよりプレイステーション2向けに発売され,大ヒットを記録した時代劇風チャンバラアクションシリーズの正統な第3弾。これをPCに移植したものが,今回紹介する「鬼武者3 PC」だ。
 PS2版が話題を呼んだタイトルだけに,どんなゲームであるのかはある程度ご存じの人も多いだろう。だが,実際に遊んだことがないという人もいるはず。そこで今回は,筆者が実際に遊んでみて,いかに気持ちの良いバッサリ感を味わえたか,詳しく記していこうと思う。

 

 まず注目すべきは,ゲームに出演している俳優陣の存在だろう。同シリーズの第一作には,俳優で大のゲーム好きとしても(一部で)有名な金城武が主役の明智左馬之助(あけちさまのすけ)役で出演していた。  この左馬之助に加えて,なんと本作ではフランス出身のハリウッドスター,ジャン・レノまでもがジャックという役で出演しているのだ。つまり,金城とジャン・レノ,二人の国際派俳優を操ってバッサリしていきながら楽しめるというわけだ。
 この手のゲームで俳優をモデルにしたキャラクターが登場する場合,ともすれば失笑を買ってしまいがちだが(あえて具体例は出さないが……),本作に関してはそれがない。映画を強烈に意識した演出の数々や,モーションキャプチャでキャラの動きを徹底的にリアルにすることで,俳優二人をゲームに違和感なく融け込ませることに成功しているためだ。
 一歩間違えば「お金の使い方を考えようよ……」とプレイヤーに言わせてしまいかねない「俳優起用」というファクターを,細かい作り込みによって昇華させ,逆にゲームをグレードアップへさせることに繋げた手腕は,さすがはカプコンといったところだろう。正直,この二人がゲーム中で動き回る姿を見るためだけでも,本作を買う価値はあると言える。

 

 強烈な個性を持つ俳優二人が出演しているだけでなく,物語のほうもかなり個性的だ。本シリーズでは,一貫して戦国時代の日本がモチーフだったが,本作ではジャン・レノが加わったためか現代のパリまでも巻き込んでいる。
 物語の詳細については過去のニュースにも記載されているので割愛するが,多少強引な物語展開(話のノリとしては,主人公達が災害に巻き込まれる物語,いわゆる“ディザスター・ムービー”に近いかもしれない)が随所に出てくるが,その強引さすらもハリウッド映画っぽさを醸し出す味付けになっているのが憎い。

 

 つまりこの鬼武者3は,配役,物語といった部分でハリウッドの向こうを張った,何とも痛快で爽快でバッサリ感溢れまくりゲームなのである。

 

金城武とジャン・レノの豪華二大共演がゲームで実現。ギャラだけでいくらかかったのか,気になるところだ 金城演じる左馬之助は,“幻魔王”と化した織田信長を倒すべく現代のパリと戦国時代の日本を奔走する ジャン・レノ演じるジャックは,時空の渦に巻き込まれて戦国時代の日本へやってきた特殊部隊の兵士という設定

 

ジャックは愛する息子が待つ現代のパリへ戻る方法を探しつつ,血風舞う日本で戦い続ける サムライ・イン・パリ! この強烈な物語展開には,プレイヤーの常識の概念もバッサリ斬られるだろう 現代のフランスで,携帯電話を使う明智左馬之助。一番最初に携帯電話で喋った日本人か?

 

 

■戦闘で得られる快感こそ,鬼武者シリーズの神髄

 

パリの観光名所が戦いの舞台として登場。凱旋門の展示室で幻魔と戦闘だ。バッサバッサと斬りまくれ

 基本システムは,カプコンの大ヒット作バイオハザードシリーズに近く,3Dで描かれたリアルな空間をラジコンカーのような感覚で主人公を操作していくというもの。カメラワークや操作感覚は「バイオハザード2」あたりに近いだろう。
 ただ,バイオハザードがゾンビとの戦いを極力避けながら進むゲームだったのに対し,本作は敵を倒してナンボ。逃げのバイオと攻めの鬼武者,どちらがいいかは個人の趣味によって変わってくるだろうが,筆者の場合は本作の「気持ち良さ」を評価したい。というのも,絶妙なカメラワークによって常にフィールドに奥行き感が存在し,そこで戦闘を行うことで独特なダイナミズムが生まれているからだ。
 近年,コンシューマゲームでも3D描画によるアクションゲームは多々発売されているが,それらの多くは主人公の視点(もしくは主人公の後方から眺めた斜め俯瞰の三人称視点)が採用されている。
 だが,本作の場合は視点が固定されたフィールド内で,主人公達が動き回って戦闘をする。前述のように,ラジコンカーを操作するような感覚なのだ。そのため,敵や立体的なオブジェクトの陰にキャラクターが入り込んでしまい,とまどっている間に攻撃を受け,ストレスを感じてしまうこともある。が,そのような状況から敵を一掃できたときの爽快感は,かなりのもの。

 

 そしてその戦闘は,成長の快感にも直結している。本作では敵を倒して“魂”を集め,これを消費して武器や防具をレベルアップさせられる。いわゆる成長の要素が採り入れられているわけだが,これも絶妙なバランス取りがなされていて,敵を倒す作業を単調にさせない工夫の一つとして見事に機能している。
 武器はこれまでのシリーズと同じく刀が用意されているほか,ジャン・レノ演じるジャックを操作しているときは鞭や槍での攻撃が可能になっている。こちらは刀よりもリーチが長いかわりに,操作が若干難しい。が,慣れれば鞭で敵を捕縛してから投げ飛ばしたり,画面内の岩などを掴んで投げつけたり,捕縛からキックや銃撃などの連続攻撃を加えられたりと,かなり面白い戦闘が楽しめる。敵をぶん投げて他の敵に当て,一気にすっ飛ばすのは相当な快感だ。
 この快感を味わうべく,何度も戦闘を繰り返していると,魂が集まり,武器や防具のレベルアップへと繋がっていく。レベルが上がった武器により,戦闘時の爽快感はさらに増し……と,そんな素敵なスパイラルが出来上がっているのだ。
 ともあれ,アクションゲームにおいて戦闘それ自体の楽しさは,重要な要素の一つ。本作では,Aランクの爽快感を味わえる,楽しい戦闘が用意されているのだ。

 

主人公の操作はラジコンと感覚的に似ている。上を押すと前進,左右で旋回といった感じだ 左馬之助の右手には,鬼から与えられた鬼の力が宿っている。この能力を使い,幻魔と戦うのだ 左馬之助の武器は刀。キーを連打するだけで連続斬りが出せるので,攻撃自体は難しくはない

 

敵を倒すと,このように色のついた魂が飛び散る。すぐさまこれを吸収し,自分の力へと変えよう 破魔鏡(セーブポイント)では,集めた魂を消費して,武器や防具のレベルを上昇させられる ジャックも左馬之助と同様,右手に鬼の力が宿っている。こちらの使用武器は鞭。中距離からの攻撃が得意だ

 

 

■「バイオハザード」に似て非なる本作の魅力

 

巨大なボスとの戦闘は,相手の攻撃をうまくかわしながら,とにかく斬って斬って斬りまくれ

 本作で,何度か登場する謎解きの要素についても触れておこう。基本システムがバイオハザードに近いものであることは前述のとおりだが,この謎解きの部分も非常にバイオハザードに似たものになっている。
 ヒントらしいものは必要以上に出されず,自分の頭で悩んで想像して,そして解かなければならない。とはいってもバイオハザードよりも難度は低め。あくまで本作はアクションがメインであるため,謎解き要素は抑え気味の印象だ。あくまで,物語に起伏をつけるための隠し味のような位置づけなのだろう。
 隠し味といえば,第三の主人公ともいうべきカラス天狗の阿児(あこ)を忘れてはならない。左馬之助とジャックをさまざまな場面でフォローしてくれる彼女(わりと美少女)は,「いろんな力を持っているんだ」という言葉のとおり,時代を行き来したり,フランス語と日本語の同時通訳が可能だったりと,SFマニアが見たら怒り狂うような何でもアリな一面を持ち合わせているのだ。
 そんな彼女は,物語の中では,時代も生まれた国も異なる二人をくっつけるノリの役目を果たしている。また,ゲームシステム的には,画面内に隠されたアイテムを拾ってきたり,数種類ある羽織を着替えて特殊能力を発揮し,主人公を補助したりもする。サッカーでいうところのリベロのように,ゲームシステムと物語の完成度を底上げするのに,かなり貢献しているキャラなのだ。

 

 ほかにも,アイテムを手に入れるときにパズルゲームが用意されていたり,随所に美麗なムービーが挿入されたりと,大作ゲームらしい“盛りだくさん感”が滲み出ている本作。カプコンの作品にしては,アクションゲーム初心者でもかなりとっつきやすい部類に入ると思う。無論,上級者に対してはカプコンならではのやり込み要素が用意されているので,やりごたえもバッチリだ。
 PC移植にあたっての目玉が,グラフィックスの向上やデュアルコアCPUへの対応ぐらいであるのは少々寂しい気もするが,元々の完成度が高いため,プレイヤーが得られる満足度は保証できる。
 価格はソースネクストドットコム価格で3970円(税込)と,移植タイトルとはいえこのクオリティと比べれば,かなり低い設定。アクションゲーム初心者も上級者も財布からお札をバッサリ抜き取って購入し,幻魔をバッサリ斬って楽しんでみてはいかがだろうか。

 

謎解きの要素も,ゲーム中のところどころで現れる。ヒントが何を意味するのか,頭をひねって答えを導き出そう 鬼の命により主人公達の手助けをするカラス天狗の美少女,阿児。背は小さいが,さまざまな能力を秘めている 阿児はゲーム中,主人公達の周りを飛び回り,届かないアイテムを拾ってくるなど,サポートをしてくれる

 

阿児は青や赤,白などの羽織を装備することで,体力回復,魂の回収時間の短縮などの特殊能力を発揮する パワーアップアイテムを手に入れるには,パズルを解かなければならないことが多い。頭の体操にはもってこい オープニングのCGムービーは,ごらんのとおりの美しさ。ゲームへの期待感を盛り上げてくれる

 

タイトル 鬼武者3 PC
開発元 カプコン 発売元 ソースネクスト
発売日 2005/11/25 価格 3970円(税込)
 
動作環境 【ライトモードでの動作環境】Windows 2000/XP,Pentium III/1GHz以上,メインメモリ256MB以上,DirectX 9.0cに対応したグラフィックスカード(グラフィックスメモリ128MB以上),DirectX 9.0c互換サウンドカード

Character Samanosuke by(C)Fu Long Production,
(C)CAPCOM CO.,LTD.2004,2005 ALL RIGHTS RESERVED.

【この記事へのリンクはこちら】

http://www.4gamer.net/review/oni3/oni3.shtml