連載 : 奥谷海人のAccess Accepted


奥谷海人のAccess Accepted

2007年8月31日掲載

 ヨーロッパ最大のゲームイベントGames Conventionの終了後の当連載は,日本では余り馴染みのないドイツのゲーム市場やゲーマー達について,「ライプチヒつれづれ」と題し記事を書き続けている。毎年書いているとネタも尽きそうなものなのだが,今年も今年なりにGames Conventionについては思うことが多々あったので紹介しよう。

 

GC 2007〜ライプチヒつれづれ

 

今年もはるばるライプチヒへ

 

GC名物といえば,このカマボコ型の通路に押し寄せてくる開園直後の入場者達の楽しげな顔。各ホールと中央の大ホールをつなぐこの通路は4か所あるが,金曜を過ぎると常にこれくらいの人が往来している

 Games Convention 2007 (以下,GC 2007)は,8月23日から26日までの4日間にわたり,ドイツのライプチヒ市にあるLeipzig Messeで開催された。夏休みの最後を飾る“お祭り”としてドイツ各地や近隣諸国からゲームファン達が集まり,試遊台の前には,大人から子供までが集まり,歩けないほどの人垣が出来上がる。各社のブースで配られるTシャツやポスター欲しさに大きな声援をあげる無邪気な様子は,「これぞファンイベント!」と言うにふさわしい賑やかさだ。
 4Gamer取材班が,ドイツの地方都市ライプチヒに到着したのは8月20日。日本からであれアメリカからであれ,ライプチヒに行くにはフランクフルトやミュンヘンを経由しなければならない。移動の疲れが抜けきらぬまま,日中は取材,夜は不眠不休で執筆するという生活は,30歳半ばを過ぎた身にはこたえるのだが,会期より一足早く現地に入るのは,8月21日から23日までGC 2007の前座として開催されるゲーム開発者会議「GCDC」(Games Convention Developers Conference)の取材を行うため。決して移動の疲れを癒すためではない。

 GC 2007には,一般入場者用の展示ホールのほかに,商談やプレスとのミーティングを行うためのビジネスセンターが存在する。今年は,一般入場者向けのビーチバレーコートなどを屋外に押し出すことで,ビジネスエリアのフロア面積が約3倍に増やされていた。当の屋外では,あいにく晴れが少なかったのだが,Xbox 360のロゴが中央に飾られた観覧車が回り,その中で「Halo 3」のテストプレイができるというような趣向がこらされ,おまけにコンサートホールやキャンプ場まで設けられており,一大イベント会場に仕立て上げられていた。
 このようなファンイベント,そしてビジネスミーティングの機会をうまくミックスさせているのは,さすが中世より「見本市の都市」としての伝統を誇るライプチヒらしい美技である。開発者の中には,「どうしてアメリカでこのようなイベントを開けないのか」などと筆者に話す人もいた。1週間も取材する我々にとっては,規模が大きいとそれだけ疲れることになるのだが,“理想的なゲームイベント”としてのGames Conventionの面白味は,規模の拡大と共に増していたように感じた。

 

 

GC 2007では新作発表も多く,
遊べるゲームもいっぱい

 

 今年のGames Conventionは,Leipzig Messeをフルに活用し,8万平方メートルを超える巨大な「ゲーム空間」を作り上げていた。主催者発表によると,参加企業は2006年より34%アップの503社であり,そのうち85%の企業がビジネスブースを設けて,商談やプレスミーティングを行っていた。北米展開する大企業を中心とした37社で開催されたE3 Summit(E3 Media and Business Summit)と比べると,明らかな規模の大きさを感じることができ,内容も充実していたと思う。
 今年は7月のE3 Summitと9月の東京ゲームショウに,もろに挟まれる形となったが,E3 Summitでの公開が見送られながらもGC 2007で電撃的に公開されたゲームはいくつもある。

 

GC 2007でお披露目されたPC用ゲームソフト10傑

(アルファベット順)

ArmA II

ジャンル:タクティカルシム 開発元:Bohemia Interactive 発売元:未定

アームド・アサルトシリーズ新作で,第1作の拡張パックも同時発表

Borderlands

ジャンル:FPS 開発元:Gearbox Software 発売元:2K Games

自由に仕事を請け負いながら進めるSF系シューティング。武器は50万種類も用意されている

Codename Panzers: Cold War

ジャンル:RTS 開発元:Stormregions 発売元:Electronic Arts

新型エンジンで帰ってきたマニアックなRTS。冷戦下での米ソ激突を描く

Command & Conquer 3 Kane's Wrath

ジャンル:RTS 開発元:Electronic Arts L.A.Studio 発売元:Electronic Arts

前作「C&C 2: Tiberium Sun」の時代に遡り,悪役ケインの物語を追う拡張パック

Far Cry 2

ジャンル:FPS 開発元:Ubi Montreal 発売元:Ubisoft Entertainment

2004年に発売された大人気のFPS続編。今度の舞台は広大なサバンナだ

F.E.A.R.: Perseus Mandate

ジャンル:FPS 開発元:TimeGate Studios 発売元:Vivendi Games

拡張パック第2弾で新勢力が登場する。お馴染みのホラー要素にも磨きがかかる

Mafia II

ジャンル:アクション 開発元:Illusion Softworks 発売元:2K Games

ギャングの成り上がりを描くカルト的人気のアクションゲーム。今回はムービーだけの出展

Prototype

ジャンル:アクション 開発元:Radical Entertainment 発売元:Vivendi Games

自在にミュータント化する主人公がニューヨークで大暴れするド派手なアクションゲーム

Secret Files 2

ジャンル:アドベンチャー 開発元:Fusionsphere Systems 発売元:Deepsilver

人気アドベンチャーゲームの続編。世界大災害の裏に暗躍するカルト教団を追う

The Club

ジャンル:アクション 開発元:Bizarre Creations 発売元:Sega of Europe

あの「Gothem Project Racing」開発チームによる,銃撃ありの「ファイトクラブ」風アクション

 

PCゲームでも根強い市場を維持するドイツだからか,PCゲームを中心に紹介するGames for Windowsブースもかなりの賑わいを見せていた。新作はムービーを見るだけでなく,実際に遊べてしまうのもGames Conventionの嬉しいところ

 別のイベントでも紹介されたことがあるため上には入れていないが,リリースされれば大ヒット間違いなしの「Age of Conan: Hyborian Adventure」「Blacksite: Area 51」「Crysis」「FIFA 08」「Team Fortress II」「Spore」「StarCraft II」「Stranglehold」「Universe at War」,そして「Unreal Tournament 3」といったゲームは,一般用展示ホールでプレイできるようになっていたのが,まさに「遊べてナンボ」のGames Conventionらしさである。
 さらに,映像出展だけではあったが,「Assassin's Creed」や「Call of Duty 4」「Fallout 3」などの期待作に加え,ゴス風デートアドベンチャー「Tension」のような,GCになくてはならない色物ゲームもあり,今年はいつになく盛りだくさんだったと思う。もちろん,これらはPCゲームだけの話。コンシューマ機用のゲームやハードの発表も加えると,ドイツやヨーロッパ向けのニュースが中心とはいえ,Games Conventionが回を重ねるごとに,ゲーム関連企業から重要視されてきているのが分かる。

 

 

Games Conventionもついに頭打ちが始まった!?

 

 しかしながら,Games Conventionは順風万帆というわけでもなかったようだ。期間中は何度か激しい雨に祟られたこともあってか,展示面積拡張の甲斐なく,参加者総数は18万5000人。これは,去年と比べて2000人の増加でしかなく,期待されていた20万人の大台突破は叶わなかった。ホールの人ごみを掻き分けて進むような場面に遭遇することが少なく,取材班の中でも「人の混み具合は,体感で去年以下ではないか」と話していた者もいたが,あながち間違いではなかったようだ。

 

人混み,紙ゴミ,コンパニオン,が三種の神器といわれていた(?)Games Conventionだが,カジュアルゲーム勃興により「ファミリー化」が進み,今年はコンパニオン達の希少価値があがっていた

 近隣の市町村を含めて人口50万のライプチヒは,ドイツ全体では12番目の都市だ。主催者であるLeipzig Fairは,一般入場者の60%(11万1000人)はアウトバーンを使えば数時間で会場に来られる半径300km以内に住む人,あとの40%(7万4000人)は車で来やすいチェコ,ポーランド,オーストリアといった国々を中心に,46各国からの参加者で構成されると発表している。ライプチヒは,ロサンゼルスや東京と比べると国際的な知名度は低いが,なんとも国際色豊かなイベントに成長したものである。
 参加者を増やすためには,ゲームショウの範疇に留めないイベントへと成長させていくのも一案だろうが,さすがにライプチヒという場所を考えると,人口的な意味でもすでに頭打ちを迎えているようだ。頼みは国外からの参加者だが,これも「ドイツ語のパンフレットしか配らない」という現状では,大きな伸びは期待できないだろう。

 GC 2007初日の主催者によるオープニングカンファレンスでは,「ライプチヒ以外でもGames Conventionが行われる可能性はあるか」というドイツ人記者達の質問が相次いだ。ライプチヒの会場運営者が企画しているイベントなのだから,ライプチヒ以外でやることなどないだろうと聞いていたのだが,どうやら政府が介入の意思を見せており,ライプチヒだけでなくドイツ国内のさまざまな都市で,持ち回りにさせようという計画が出ているらしい。
 古い街並みに趣があるライプチヒとはいえ,旅好きな筆者でさえ毎年同じ場所に足を運んでいれば好奇心も薄れていくし,ライプチヒ以外のドイツゲーム市場も見てみたい。2005年に,2010年までの日程をすべて発表して,我々取材班を驚愕させたLeipzig Fairだが,さすがに膨らみ切った感もあるGames Conventionを,今後どのような形で進化させていくつもりなのだろうか。今回は,そんな期待と不安の混じる印象が強かったGCであった。

 

 

■■奥谷海人(ライター)■■
本誌海外特派員。本文では「好奇心も薄れていくし,ライプチヒ以外のドイツゲーム市場も見てみたい」などと話している奥谷氏だが,会期中は時差ボケで寝つきが悪かったうえに,新調したスニーカーによる靴擦れで苦しんでいたために,好奇心どころか普通に取材をする気力さえ失っていたという。靴擦れの痛みがひどく,会場から裸足で帰ってきたときには,「渚の少女みたい」と呟き,さらに「……そりゃさすがにないか」とニヤケながら自分につっこみをいれる始末。長距離移動と徹夜続きの原稿執筆で,相当参っていたようだ。


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http://www.4gamer.net/weekly/kaito/139/kaito_139.shtml