レビュー
3.5G光学センサーの採用で,DeathAdderはどう進化したか
Razer DeathAdder
(Razer DeathAdder 3500)
正確を期すと,Razer USAによる正式名称は,リファイン版も「Razer DeathAdder」のままである。ただ,さすがにそれでは分かりづらいためか,同社の公式サポートサイトは,搭載する「3.5G Infrared Sensor」(3.5G光学センサー)のトラッキング解像度仕様から「3500」の数字を付記し,国内製品名もそれに倣っている。そこで,本稿でも以下,俗称であるDeathAdder 3500のほうで本製品を表記し,旧DeathAdderと区別するが,実際のところ,このリファイン版は,これまでと同様,ゲーマー向けマウスの定番であり続けることができるのだろうか。そのあたりを今回はテストしたいと思う。
右手専用の形状は大きめで,ほどよいフィット感
親指に近いサイドボタンは押しやすい
新旧両DeathAdderの主な仕様をまとめたのが表1だが,ご覧のとおり,少なくとも公称スペックで比較する限り,トラッキング解像度設定以外に違いはない。センサーとケーブルの変更によって,実測重量には多少の違い生じているものの,その程度である。
本体左サイドのカーブがうまく手にフィットして指の力を伝えやすく,一方で,マウスの背が手のひらにぶつかって邪魔に感じられるようなこともないあたりは,さすが定番製品(の筐体そのまま)といったところか。
「つまみ持ち」時における指先の動きの自由度や,持ち上げやすさという点では,旧DeathAdderをブラッシュアップして作られた「Razer Mamba」に分があるとも感じられるが,形状は十分に万人向けといえるだろう。
重いといえば,旧DeathAdderのメインボタンも重かったので,同製品からの乗り換えなら違和感なく適応できるだろう。ただ,ほかのゲーマー向けマウスと比べるとずいぶんとボタンの重さが異なるため,慣れないと操作に支障が出る恐れがある。筆者は「Warsow」や「Quake Live」で,右クリックにジャンプを割り当てているのだが,「急な方向転換を伴うロケットジャンプを行おうとしたときにジャンプできない」といったミスがたまに生じ,少々困ってしまった。
対するサイドボタンは,握ったとき親指の真上に来る配置となっており,親指をいちいちずらさずとも押せるのがうれしい。とくに,手前のサイドボタン真下あたりを親指の関節で支えるような持ち方をすると,前後の押し分けもしやすくなる。
マウスの左サイドを指先で押さえる持ち方の人だと,2個のサイドボタンを押し分けるためには,さすがに指先をマウス本体から離さねばならないが,前後どちらか片方に絞るのであれば,指先を付けたまま押すことも可能と,サイドボタンの使いやすさに関しては,総じて優秀である。
ボタン構成は実にシンプル。ホイールの操作感は悪くなく,上下に回したときの刻みが割とはっきりしていて,これといった不満はない。クリック感もホイールとしては重すぎず軽すぎずといったところ |
2個並んだサイドボタンは,マウス側面の中央〜上辺の中間にあるため,親指で側面を抑えながらクリックできるようになっている。押しやすさは抜群だが,マウスを動かすときの“誤爆”には注意が必要 |
なお,底面のソールは,形状,材質とも,旧DeathAdderと同じ印象。テフロン加工されたソールの滑りは良好だが,エッジが立っているのか,はたまた薄すぎるのか,マウスパッドとの摩擦で,「ジョリジョリ」「ゴリゴリ」といった感触が強く感じられるのが玉に瑕というのも変わっていない。
DPI設定値を選ぶものの,追従性に問題はまずなし
長めのリフトオフディスタンスには慣れが必要か
ここからは,旧DeathAdderからの最も大きな変更点である,センサー周りの評価に入りたいと思うが,その前に,一点注意しておきたいことがある。
DeathAdder 3500,そして旧DeathAdderのセンサーは,ドライバをインストールしたままの状態だと,トラッキング解像度やWindows側のポインタ速度,ゲーム内のセンシティビティ(感度)設定をRazer Mambaや「Razer Boomslang Collector's Edition 2007」「SteelSeries Xai Laser」「Gaming Mouse G500」といったゲーマー向けマウスと完全に揃えても,感度が低くなってしまうのだ。
DeathAdder 3500――というか,Razerブランドの旧世代マウス――に用意されたこの「Sensitivity」という項目は,Windowsのコントロールパネルに用意された「ポインタの速度」とは別に,マウスの感度を設定するもの。実際に使ってみた筆者の認識だと,一般的なゲーマー向けマウスの場合,
最終的な感度=DPI設定×「ポインタの速度」設定×ゲーム側のセンシ設定
となるところが,DeathAdder 3500の場合,
最終的な感度=DPI設定×「ポインタの速度」設定×「Sensitivity」設定×ゲーム側のセンシ設定
になっている。
この「Sensitivity」値を10にすると,ほかのマウスを1800DPI/CPI設定で動作させたときと同じ感度が得られたので,適切な設定値は10なのだろう。デフォルト値のままにしておくと,感度を揃えたつもりでも,挙動が変わってしまう恐れがあるので,気を付けてほしいと思う。
さて,今回のテスト環境は表2のとおりだ。その下には,テストに当たってのマウス設定と方法をまとめている。
●DeathAdder 3500の基本設定
- ドライババージョン:2.01
- ファームウェバージョン:2.13
- DPI:1800/3500DPI(※一部450/900DPIでも検証)
- ポーリングレート:500Hz
- Sensitivity:10
- Acceleration:オフ
- Windows側設定「マウスのプロパティ」内「ポインタの速度」スライダー:中央
- Windows側設定:「ポインタの精度を高める」:オフ
●テスト方法
- ゲームを起動し,アイテムや壁の端など,目印となる点に照準を合わせる
- マウスパッドの左端にマウスを置く
- 右方向へ30cmほど,思いっきり腕を振って動かす「高速動作」,軽く一振りする感じである程度速く動かす「中速動作」,2秒程度かけてゆっくり動かす「低速動作」の3パターンでマウスを振る
- 振り切ったら,なるべくゆっくり,2.の位置に戻るようマウスを動かす
- 照準が1.の位置に戻れば正常と判断可能。一方,左にズレたらネガティブアクセル,右にズレたら加速が発生すると判定できる
テストに用いたゲームタイトルは「Warsow 0.5」。本テストにおいて,ゲーム内の「Sensitivity」設定は,「180度ターンするのに,マウスを約30cm移動させる必要がある」0.25(3500DPI),0.5(1800DPI)の2種類を用い,読み取り異常の発生を分かりやすくさせている。
そして,テスト結果を示したのが表3,4だ。
ご覧のとおり,3500DPI設定時はほとんどのマウスパッドで問題のない安定感が得られたが,しかし1800DPI設定時は,(ローセンシプレイヤーを想定して)高速で動作させたとき,ポインタが動かなくなる症状が見られた。旧DeathAdderを同じ条件で動かしてもまったく問題なかったので,3.5G光学センサーを搭載するDeathAdder 3500固有のものだと見るべきではなかろうか。
ちなみに,ペイントの座標表示を用いて1ピクセルずつ動かせるか(=スキッピングが発生しないか)を確認してみたところ,いずれの解像度でもスキッピングは見られなかった。OS設定でポインタの速度を上げたりしない限り,ソフトウェアによる補間処理は行われないと見て間違いない。
最後にリフトオフディスタンスだが,最近のゲーマー向けマウスとしてはやや長い部類に入る。慣れてしまえば問題ないことではあるのだが,使い始めてしばらくは,マウスを持ち上げたときに,ポインタが引きずられるような感じがどうしてもつきまとう。
機能を考えるとやや高価も,使い勝手と追従性は魅力
1台め,IE3.0からの乗り換え候補のいずれでもお勧め
難点らしい難点は,6300〜7400円という実勢価格(※2010年1月23日現在)でありながら,最新世代のゲーマー向けマウス製品と比べて,機能面が乏しいところだろうか。ボタン数が少ないほか,トラッキング解像度設定の柔軟性は今ひとつ,しかも設定ソフトウェアの使い勝手は一段落ちるといった部分は,人によっては明らかなマイナスポイントとなり得る。
もっとも,これらは人によって要不要の基準が異なるため,気にならない人はまったくならないだろう。マウスに7000円前後の投資をできる人であれば,購入して後悔することはないはずである。
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