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印刷2015/11/24 22:01

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「Radeon Software」ついに公開。新世代グラフィックスドライバで何が変わるのか,AMDの担当者が語る

 2015年11月24日22:01,AMDのグラフィックス部門であるRadeon Technologies Group(以下,RTG)は,「Catalyst」に代わる新世代グラフィックスドライバ「Radeon Software」のメジャーリリース第1弾となる「Crimson Edition」(クリムゾンエディション)のリリースを発表した。原稿執筆時点だと「具体的に何時何分公開か」までは分からないのだが,日本時間25日の朝までには公開になると思われる。

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 11月2日の記事でお伝えしているとおり,Radeon Softwareは,「Radeon Software (メジャーバージョン名) (マイナーバージョン名としての年.月)」という表記になる。Crimson Editionが2015〜2016年のメジャーバージョン名であることや,その機能概要はすでに公表済みだ。
 そんなRadeon Software Crimson Editionのリリースに合わせ,AMDでソフトウェアマーケティングを統括するSasa Marinkovic(サシャ・マリンコヴィチ)氏と「CatalystMaker」の二つ名で知られるAMD本社のソフトウェア担当・Terry Makedon(テリー・マケドン)氏が来日し,より踏み込んだ内容を明らかにしたので,今回はそのあたりをまとめて紹介してみたい。

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Sasa Marinkovic氏(Global Head of VR & Software Marketing, AMD)
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Terry Makedon氏(Software Strategy Senior Manager, AMD)

AMDのドライバダウンロードページ(英語)



Radeon Software命名の由来と,そのロードマップ


AMDは昨年,Catalystの大型アップデートとして,Catalyst Omegaをリリースしていた
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 Catalystは2014年12月に大規模アップデートが入り,そのとき,「Catalyst Omega」という名称が与えられた。このことを記憶している読者は多いだろう。
 Marinkovic氏は,そんなCatalyst Omegaを引き合いに出しつつ,「Omegaは(ギリシャ文字における)最後の文字だ。これはCatalystの最終バージョンであることを意味していた」と述べている。

 ちなみに昨年,Catalyst Omegaの説明会で4Gamerは「『Omega』(Ω)は最後の文字だ。これは最後のCatalystになるということではないのか」と聞いて,そのときは全力で否定されていたりもする。なのでいきなり「あってたじゃん」という話なのだが,ともあれMarinkovic氏は,Crimson Editionというメジャーバージョン名が2015〜2016年のグラフィックスドライバを指すことと,今後のメジャーバージョンでは別の「赤系」の色が付くことを明らかにしている。
 気になるのは,Radeon Software Crimson Editionという表記が長すぎることだが,この点についてはMakedon氏が「シンプルに『Crimson』と呼んでほしい」と言っていたので,AMDは今後,そういう略称も多用することになるのだろう。

 というわけで本稿でも以下Crimsonと呼ぶが,AMDは,初回となる2015年のリリースとは別に,Crimsonの公式版となるWHQL(Windows Hardware Quality Labs,ウィクル)通過版リリースを,2016年に最大6回リリースする計画があるという。2015年のCatalystは公式最新版が3回しか出ず,とくにCatalyst Omegaのリリース後,「Catalyst 15.7」が登場するまでには7か月も間が空いたりしていたが,Crimsonでは,ざっくり2か月に一度くらいのペースで公式最新版が更新されそうだ。

 なおMarinkovic氏は,別途,ゲームのビッグタイトルに最適化を果たしたものなどを,公式β版として提供するとしている。
 現在のCatalystでも,ゲームに向けた最適化版リリースは多数投入済みだが,英語で「Day-1」あるいは「Launch Day」と呼ばれるゲームの発売日を重視している旨を氏は述べていたので,今後はより,「発売日に最適化版ドライバが出ている」ケースが増えていくのではなかろうか。

2015年のCatalystと2016年のCrimsonを比較したもの。公式最新版リリースの数を増やしつつ,β版も適宜投入していくという
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Marinkovic氏によると,Crimsonでは安定性(Stability)を第一にして,その上にユーザー体験(User Experience)と機能(Futures),性能(Performance),電力効率(Efficiency)を強化したという
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 ところで,なぜAMDは,このタイミングでグラフィックスドライバの名称をCatalystからRadeon Softwareに変更したのだろうか。
 Marinkovic氏は「AMDが開発しているソフトウェアは,ドライバだけでなく,ソフトウェア開発キット(SDK)やライブラリ,ツールなど多岐にわたっており,『ミニOS』と呼べる規模になっている」と,まず現状をまとめる。そのうえで,「(RTGの誕生を期に)ソフトウェアをこれまで以上に重視する姿勢を示すため,名称を変えることにした」と述べていた。

 ちなみに,Radeon Softwareという名称は,RTGのトップであるRaja Koduri(ラジャ・コドゥリ)氏が考えたものだそうだ。RTGによるソフトウェア部門の統合後,Koduri氏がハードウェアとソフトウェアの両部門をRTG内で対等の地位に置いたことをMakedon氏は強調していたが,それほどまでにRTGはソフトウェアを重視しており,だからこそ,親しまれていたCatalystの名に別れを告げたというわけである。


シンプルに,使い方が分かりやすくなったRadeon Settings


 一部は11月2日の記事のおさらいとなるが,ここからは,Crimsonと,その設定ソフトウェアである「Radeon Settings」の見どころをチェックしていこう。
 AMDによると,そのアピールポイントは以下の4点だ。

  1. Radeon Settingsの起動時間が従来比で10倍高速化
  2. 12個の新機能もしくは機能拡張
  3. 最大20%の性能向上
  4. 最大1.8倍の省電力性向上

Crimsonの4大アピールポイント
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 順番に見ていきたいと思うが,1.は,Catalystの設定用ソフトウェアである「Catalyst Control Center」(以下,CCC)と比べて,Radeon Settingsの起動時間が10倍(以上)高速化したというものである。
 CCC起動速度の足を引っ張っていたのはおそらく,Microsoftの.NET Frameworkだろう。それに対し,Radeon Settingsのユーザーインタフェースは,C++で開発されているユーザーインタフェースフレームワークである「Qt」ベースへと完全に刷新された。これが,起動高速化の最大要因という理解でいいはずだ。
 ただ,Radeon Settingsは,起動が速いだけに留まらない。新しいディスプレイを接続したときに,ディスプレイに合わせてデスクトップ解像度を変更する「初期化」の速度も,CCC比で3倍に高速化しているという。

ディスプレイの初期化もCatalystに比べると3倍速くなっているそうだ。さすがは赤いドライバである
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Crimsonの新要素。どう見ても13以上ある
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Radeon Settingsのユーザーインタフェース面におけるキーポイント。前出の「起動が10倍速い」こと以外にも,Game Managerや,新しくなったOverDriveなどが見どころとなっている
 2.では,12の新要素を書き出したかったところではあるのだが,Marinkovic氏もMakedon氏も,具体的に何をもって12個なのかは最後まで言及しなかった。実際,数えてみると,軽く12を超えたりもしているので,ここは「たくさんの新要素がある」くらいの理解でよさそうだ。

 というわけで,ここは,4Gamerで独自に入手した公開候補版Radeon Settingsのスクリーンショットを見ながら確認していきたいと思う。
 なお,あくまでも公開候補版を用いてのものなので,最終的に公開されるものとは微妙に異なる可能性がある。その点は注意してほしいとお断りしつつ続けるが,Radeon Settingsのメイン画面は下のとおりだ。CCCがそうだったように,Radeon Settingsも日本語化されている。

Radeon Settingsメイン画面。上にあるタブを選択し,中央ペインで詳細項目を“掘って”いくスタイルになっている。Radeon Settingは「Radeon設定」に訳さなくてもよかったような気はするが……
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 タブの一番左にある「ゲーム」をクリックすると,PCにインストールされたゲームのうち,Radeon Settings側でプロファイルを持っているものの一覧と,「グローバル設定」がタイルとして現れる。グローバル設定は個別の設定が行われていないゲームに対して適用する設定で,リストアップされたタイトルのタイルをクリックすると,ゲームごとのグラフィックス設定や,オーバークロック設定を行える仕様だ。見た目は違うが,「GeForce Driver」の「NVIDIAコントロールパネル」と似たような仕様になったわけである。
 ちなみに,ゲームタイトルはRadeon Softwareによる自動スキャンに加えて手動で実行ファイルを追加することも可能な仕様だ。したがって,Radeon Settingsのプロファイルにないような,国内ローカルタイトルや独立系開発会社のタイトルに対する個別の設定を適用することもできる。

とくに明示されているわけではないのだが,これがGame Manager(ゲームマネージャ)だ。グローバル設定と,インストール済みのタイトルが並ぶ。右上の[追加]アイコンをクリックすると,手動でタイトルを追加することもできる。なお,Game Managerを開くと,メイン画面で上にあったタブが下に移動した
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 グローバル設定と個別ゲームタイトルのそれぞれで設定できる内容は,CCCからそれほど変わってはいない印象だ。ただ,オーバークロック設定である「OverDrive」も一気に設定できるようになったのは,積極的に使うかどうかはともかく,とても分かりやすくなったように思う。

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グローバル設定を選択したところ。項目自体はCCCからあまり変わっていない
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Game Managerの下に移動したOverDrive。ゲームごとにGPUクロックとメモリクロック,消費電力制御,ファン回転数を設定できる

 ゲーム関係の設定がひとところにまとまったのは,大いに歓迎できそうだが,それだけに気になるのは,2013年10月以降,Catalystに付属してきたユーティリティ「Gaming Evolved powered by Raptr」(以下,Gaming Evolved)の存在だ。果たしてその扱いはどうなるのか,Makedon氏に直接聞いてみたが,その答えは,Radeon SettingsとGaming Evolvedは,そもそも機能が異なるというというものだった。

 「Gaming Evolvedはゲーム側の設定を行うツールだ。それに対してRadeon SoftwareのゲームマネージャはGPU側の設定を行うツールで,機能は重なっていない。
 Gaming Evolvedは,グラフィックスの設定に詳しくないゲーマーが簡単にゲームの最適化を行うためのツールだが,Radeon SettingのGame Managerは『より強力にGPUを最適化したい』という,詳しい人向けになっている。今後も,Gaming Evolvedソフトウェアの配布はこれまでどおり継続する」(Makedon氏)

 競合のNVIDIAは,Gaming Evolved相当の機能を自前で「GeForce Experience」として提供している。GeForce ExperienceはNVIDIAのラボで最適化した設定が提供されるのに対して,RapterというコミュニティベースのGaming Evolvedに微妙な印象を抱いているゲーマーは少なくないだろう。
 その点を指摘したところ,Makedon氏は「将来のバージョンで検討したい」と答えてくれた。当面は従来どおりのGaming EvolvedがRadeon Softwareとともに配布されるが,将来的にはGaming Evolved的な機能をRadeon Softwareが実装してくる可能性があるわけだ。


多数の新機能が追加されたRadeon Software〜ライバルを意識した機能にも注目


 機能面については,かれこれ15年にわたってAMDのソフトウェア部門で活躍してきているMakedon氏から説明があった。
 具体的な内容に入る前に押さえておくべきなのは,Radeon Software自体,従来からあるコードに改善,改良,最適化を加えたものだと明言されたことだ。まったくのフルスクラッチなのは,Radeon Settingsのほうだということになる。

 実際,Radeon Settingsでドライババージョンをチェックすると。Catalyst世代からの続きになっていることを確認できた。

参考までに公開候補版のドライババージョンをチェックしたところ。「15.30.1025-151117a-2966」で,直近の公式β版グラフィックスドライバ「Catalyst 15.11.1 Beta」の「15.201.1151.1010-151113a-296469E」と似た表記なのが分かる
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 したがって,Radeon SoftwareでサポートされるGPUおよびAPUは,直近のCatalystでサポートされている製品,具体的にはATI Radeon HD 5000以降ということになる。Radeon Softwareで「Graphics Core Next」アーキテクチャ世代のみのサポートになるのではと心配していた人がいるかもしれないが,もしそうであれば,その心配は無用だ(※)。
 なお,対応OSは64/32bit版Windows 10・8.1・7で,これも最近のCatalystから変わっていない。

※2015年11月25日15:45頃追記
 公開されたRadeon Software Crimson Edition 15.11で,ATI Radeon HD 5000シリーズに代表されるVLIWアーキテクチャのGPUがサポート対象から外れていましたが,この点についてAMDから「リリースノートの説明が正しい」という続報が得られました。本稿は初稿時のまま残しておきますが,正式な対応GPUはGraphics Core Next世代のGPUおよびAPUとなります。

 もう1つ,ユーザーが気になるのは,GPU部門であるRTGが今後もマザーボードのチップセットドライバを提供するのかという点ではないかと思うが,その点も心配無用だそうだ。Makedon氏いわく「RTGの設立後も,チップセットドライバを開発しているチームはRTGのソフトウェア部門に属している。なので,チップセットドライバは,これまでどおり,Radeon Software(の公式版リリース)と一緒に提供していく」とのことである。

 というわけで,前置きが長くなったが,機能面の新要素をチェックしていこう。今回は,AMD独自のディスプレイ同期技術である「FreeSync」と,CrossFire動作時のフレームタイム(描画時間)変動を抑える「Frame Pacing」,ディスプレイのリフレッシュレートや解像度をマニュアルで設定できる「Custom Resolution」,シェーダコードのコンパイル結果をローカルストレージに保存してゲームの起動などを高速化する「Shader Cache」,ゲームへの最適化,そしてレンダリングしたフレームを一時的にためておくキューを最適化して入力遅延を減らす「Flip Queue Size Optimization」周り,省電力周りを,順に紹介してみたい。


FreeSync

 FreeSyncにもたらされる具体的な新要素は下記の3点だ。

  1. DirectX 9タイトルにおけるCrossFire構成の新規サポート
  2. Low Framerate Compensationの新規サポート
  3. HDMI接続ディスプレイにおけるFreeSyncの有効化

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 この中で重要なのは2.と3.で,まずLow Framerate Compensation(以下,LFC)というのは,ゲームのフレームレートがディスプレイが対応できるリフレッシュレートを下回ったときに起きていた不都合をドライバによって解消するというものである。
 誤解を恐れず簡単にまとめるなら,これは,NVIDIAが同社独自のディスプレイ同期技術である「G-SYNC」を実現するためディスプレイ製品に搭載しているハードウェア「G-SYNC Module」で行っている処理を,ドライバレベルで利用可能にするもの。そのため,FreeSync対応のディスプレイと対応GPUと組み合わせているユーザーは,ドライバをRadeon Softwareへアップデートするだけで,LFCによる恩恵を受けられるようになるとのことだ。

LFCの詳細。説明書きによると,LFCの実現にあたっては「ディスプレイの最大リフレッシュレートが最小リフレッシュレートの2.5倍以上」という要件を満たす必要があるようだ。つまりディスプレイが対応できる最小リフレッシュレートが30Hzなら,最大リフレッシュレートが75Hz以上に対応するディスプレイが必要になるということである。また,FreeSyncではVsync有効時にテアリングを抑えられ,無効時だとテアリングは抑えられないが表示は滑らかになるという違いがあるわけだが,この特性は,ゲーム側のフレームレートがディスプレイ側の最小フレームレートを下回った状態でも維持されるようだ
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 3.は,これまでDisplayPortでしか利用できなかったはFreeSyncが,HDMIでも利用できるようになるということで,さらに注目といえるだろう。
 ただし「HDMIのFreeSyncはAMDが有効にしたもので,実際に使うためには,それに対応したHDMI端子を装備するディスプレイが必要になる」(Makedon氏)。なので既存のFreeSync対応ディスプレイのHDMI端子でもFreeSyncを利用できるようになるわけではない。今後,HDMI接続でFreeSyncに対応するディスプレイが登場する可能性がある,くらいに,現時点では理解しておくのが正解である。


Frame Pacing

 これまでFrame PacingはDirectX 9世代のタイトルでは機能しなかったが,Radeon Software世代では機能するようになるという。

DirectX 9世代の代表的なタイトルである「The Elder Scrolls V: Skyrim」で,Frame Pacingが機能するようになったことを示すスライド,DirectX 9タイトルでも,CrossFire動作時のフレームタイム安定を期待できるようになる
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Custom Resolution

 ついに,「EDID」(Extended Display ID,ディスプレイの仕様情報などをPCに伝えるための識別子)でPC側に通知されない表示モードをユーザーが設定できるようになる。分かりやすく言い換えると,Radeonでもディスプレイのリフレッシュレートや解像度をマニュアルで設定できるようになるのだ。
 たとえば,リフレッシュレート60Hzのディスプレイでも機種によっては70Hz前後まで対応できてしまうことがあるが,そんな高いリフレッシュレートをマニュアルで指定できるので,使い方によってはゲーマーにとっても嬉しい機能といえる。

 Custom Resolutionは,メイン画面の「ディスプレイ」タブから,右上の[追加設定]アイコンをクリックすることにより設定できる。面白いのは,これをクリックすると思いっきりCCCのユーザーインタフェースが立ち上がってくることだ。しかも,CCCらしく(?),起動には数秒かかる。

ディスプレイ関係の設定,いくつかは,「Radeon追加設定」という名の,CCCそのものなウインドウにまとまっている。オーバースキャン領域の設定も必要であるなど,かなりマニア向けで,下手をするとディスプレイに何も表示されなくなったりするので,設定はくれぐれも自己責任でお願いしたい
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 「Custom Resolutionは,(ワークステーション向けGPUである)FireProで提供してきた機能だが,Radeonでもマニアがレジストリを編集していたのは知っている。それほどまでに望まれている機能なら,Radeon用に提供しても差し支えないだろうということで,今回追加した」と,Makedon氏は,導入の経緯を語っていた。
 ちなみに,ディスプレイ設定だけCCCになってしまっているのは,単純に実装が間に合っていないためだそうだ。Makedon氏は「将来のバージョンで,Custom ResolutionもRadeon Settingsに統合する」と断言していたので,今回の仕様は,初期バージョンにのみ残るCCCの残滓といったところだろうか。


Shader Cache

 Radeon Softwareでは,従来比で最大20%の性能向上もアピールポイントだが,それを実現するための要素として注目したいのがShader Cacheだ。
 これはNVIDIAが「GeForce 337.88 Driver」で実装した同名の機能とほぼ同じで,簡単にいうと,「シェーダコードをコンパイルした結果」をPCのローカルストレージに保存しておき,次回のゲームアプリケーション起動時からはコンパイルを省略するものである。これにより,ゲームの起動時間を短縮したり,シェーダコードの読み出しを高速化し,画面のカク付きや表示遅延を抑えたりといった効果を期待できるようになる。

ライバルが先行していたShader CacheをRadeon Softwareも実装。「Star Wars: Battlefront」では起動が33%速くなり,また「The Witcher 3: Wild Hunt」ではカク付きや表示遅延の発生率が低下したという
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ゲームへの最適化

 上で触れた「最大20%の性能向上」は,DirectX 12へのさらなる最適化によってもたらされる。
 また,それ以外のゲームタイトルに向けた最適化も継続しており,Crimsonの第1弾では,とくに4K解像度環境におけるフレームレートが向上しているとのことだ。

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「Fable Legends」のDirectX 12ベンチマークで,最大20%のスコア向上を実現したという
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Fable Legendsや「Call of Duty: Black Ops III」などで4K解像度におけるベンチマークスコアが向上したとされる


Flip Queue Size Optimization

 これも,ライバルを意識したものだ。NVIDIAは「GeForce GTX 950」で,「Maximum Pre-rendered frames」(レンダリング前最大フレーム数)を減らすことにより,DirectXの描画パイプラインにおいて生じる最大3フレームの入力遅延を低減する機能を提供しているが(関連記事),それを,Radeon Softwareで可能にしてきたわけである。
 「Radeon Softwareでは,マウスやキーボードのレイテンシが,最小では1フレームにまで低減できている」(Makedon氏)とのことだ。

Flip Queue Size Optimizationの概要。キューを最適化してキーボードやマウスの遅延を,従来3フレームだったところ,最小1フレーム(リフレッシュレート60Hzとして約16.67ms)に抑えたという
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省電力関係

 省電力関係で目を引くのは,「Frame Rate Target Control」(以下,FRTC)機能の追加である。
 これは,ライバルのNVIDIAが「GeForce GTX 680」以降のGPUにおいて利用できるようにしている機能「Frame Rate Target」とほぼ同じもので,ゲームのフレームレート上限を設定することにより,GPUの消費電力を抑えることが可能になる。

FRTCはゲームのフレームレート上限を設定することで電力消費を抑えるもので,MOBAのような描画負荷の低いタイトルをハイエンドGPU搭載環境でプレイするようなとき,とくに大きな効果が得られる。Radeon Settingsで,ゲームごとのグラフィックス設定ができるようになったからこそ生きる機能といえそうだ
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 残念ながら,今回テストに用いたPCではFRTCの項目が表れなかった。対応GPUに制限があるのか,入手したバージョンのRadeon Settingsで未実装なのかは何ともいえないが,Crimsonの第1弾リリースでサポートされているのであれば,いずれ別のシステムを導入したとき,試すことができるはずだ。

 なお,Makedon氏によると,FRTC以外の部分でもGPUの省電力化は実現できているという。いわく「ラボの研究者が,GPUのパワープロファイルを丹念に調べあげ,GPUの利用効率を見直した。その結果として,GPUの消費電力をより抑えられるようになった」とのことである。


Radeon伝統,動画の再生品質向上系も強化


 Radeon Softwareでは動画再生関連にも手が入っている。ゲーム用途以外の機能強化として,以下,ざっくりとまとめておこう。

Radeon Settingsのビデオ関連設定
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Virtual Super Resolution

 Catalyst OmegaでAMDは,ゲームのレンダリングをディスプレイの実解像度以上の解像度で行い,それを縮小表示することで画質を上げる機能,「Virtual Super Resolution」(以下,VSR)を実装した(関連記事)。Radeon Softwareでは,そのVSRをデスクトップでも利用できるよう拡張しているのが特徴だ。

 「デスクトップ版VSR」は,画質向上ではなく,表示する情報量を増やす目的の機能となっており,たとえば,1920×1080ドット解像度の液晶ディスプレイに,2560×1440ドットのデスクトップを表示したりすることが可能なようである。
 なお,デスクトップのVSRにはWindows 10の機能を活用していることから,Windows 10限定の機能となる。

VSRを拡張。従来はゲーマー向け機能だったが,今回の拡張によって,非ゲーム用途で利便性を引き上げる機能としても利用できるようになった
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Carrizoにおける動画再生品質の強化

 APUでは動画再生においてRadeonシリーズの持つ機能の一部が利用できないが,Radeon Softwareでは,CarrizoベースのノートPC向けAPUである「AMD FX 8800P」「A10-8700P」において,いくつかの動画再生に関する機能が有効化されたそうだ。
 これにより,ビデオの倍速補間再生用ソフトウェア「Smooth Video Project」(以下,SVP)から,動画再生のスムーズ化や残像低減を図る機能と,動画をシャープ化するディティールエンハンスメント機能が利用可能になるとのこと。日本でSVPを使っているのは一部のマニアに限られると思うが,そういうマニアには重要なアップデートといえる。

第6世代のAPUでは,これまで利用できなかった動画再生のスムーズ化とディティールエンハンスメント機能が有効になった
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Directional Scaling

 1920×1080ドットの映像を3840×2160ドット解像度の液晶ディスプレイへ表示するときのアップスケーリング(=拡大)品質を向上させるべく,「Directional Scaling」(ダイレクショナルスケーリング)機能が追加された。「3Dにおけるアンチエイリアシング機能のようなもの」(Makedon氏)で,アップスケーリングに伴うジャギーなどを抑えることができるそうだ。

4K解像度へのアップスケーリング品質を向上させるDirectional Scalingがサポートされた
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適応型Dynamic Contrast

 動画再生時のコントラストを改善するDynamic Contrast(ダイナミックコントラスト)のアルゴリズムを改善し,動画内容に応じたコントラストが得られるようになっているという。Makedon氏によると,表示されている映像のエリアごとの輝度を動的に判断して,適切なコントラストに調節する仕組みを実装したようだ。

Dynamic Contrastのアルゴリズムが適応型となった。再生する動画に応じた適切なコントラストが得られるように改善を図ったとはMakedon氏の弁
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ドライバアンインストールユーティリティ

ドライバのアンインストールユーティリティが公開になった。これは,ヘビーユーザーであればあるほど嬉しいだろう
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 AMDのドライバソフトウェアを,ゴミを残すことなく完全にアンインストールできるユーティリティ「Clean Uninstall Utility」を,AMDが新たに提供する。
 ユーザーは体験的に知っていると思うが,ドライバのアンインストールを行うと,レジストリなどにゴミが残ったりして,それがグラフィックスカード換装時にトラブルの温床となるケースがあった。それを回避するためにはサードパーティ製のアンインストールソフトを使うというのが,ヘビーユーザーの“常識”だったわけだが,その状況が変わることになるわけだ。

 なお,Clean Uninstall Utilityは,下に示したリンクボタンの先から入手できるようになっている。

AMDのClean Uninstall Utilityダウンロードページ(英語)



LinuxにおけるOpenGL性能の向上

Linux版Radeon SoftwareではOpenGL性能が向上しているという
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 LinuxにおけるOpenGL性能の向上もトピックの1つだ。ただし,Makedon氏は「Linuxに対してRadeon Settingsの新しいユーザーインタフェースを提供する予定はない」とも付け加えている。
 前述のとおり,Radeon SettingsはQtベースだが,Qtはマルチプラットフォームのユーザーインタフェースライブラリなので,原理的にはLinuxにも対応できるはずだが,残念ながら,「LinuxでRadeonを使っているユーザーは,全体の0.5%だ。需要が少ない」(同氏)ため,出す予定はないとのことだった。


AMDの本気が試されるRadeon Software


 以上,新要素だらけということもあって,だいぶ長々とした説明になってしまったが,Radeon Softwareの概要をお伝えしてみた。

Radeon Softwareでは品質テストの項目が大幅に増え,安定性の向上に大きく寄与しているという
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 本稿の序盤でも紹介したとおり,RTGはこれまで以上にソフトウェアの開発に力を入れることを宣言している。Marinkovic氏によれば,すでにRadeon Softwareでは開発体制の強化が実現しており,たとえば品質テスト工程が拡充されているとのことだ。
 品質テスト工程の拡充は,Catalyst Omegaでもアピールされていたが,Radeon Softwareでは,Catalyst Omegaに対して,自動テストの項目数を2倍に,マニュアルテストの項目を1.25倍に増やしているという。さらに,テストを行うシステム構成のバリエーションも15%増加させ,安定性はより高いレベルに達したとのことだった。

OpenCL 2.0オプション機能のサポートや,AMD製GPUプロファイラ「CodeX」のアップデートもアナウンスされている。また,12月には開発者向けの大きな発表も予定しているという
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 また,Radeon Softwareに併せて開発者向けのアップデートも行われており,ソフトウェア開発チームとしてRadeon Softwareのエコシステムを充実させていきたいとも,Marinkovic氏は力を込めて語っている。

 RTGの誕生によってハードウェア部門とソフトウェア部門が対等な関係で付き合えるようになった効果が今後現れてくるかどうかは,今後のRadeon Softwareが明らかにしてくれるだろう。RadeonユーザーはぜひRadeon Softwareをインストールして試し,何か気づいたことがあれば(英語で)フィードバックを送ってみてほしい。

AMDのドライバダウンロードページ(英語)

AMDの問題レポートページ(英語)

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