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特定非営利活動法人 北米教育eスポーツ連盟 日本本部が8月に発足へ。NPO法人化による活動ビジョンが語られた,設立発表会をレポート
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NPO法人化することで,更に活動の規模を大きくしていく
「NASEF(北米教育eスポーツ連盟)」は,eスポーツを教育手段として扱う北米のNPO団体。eスポーツの啓蒙や選手育成を目的とはしていないため,いわゆるeスポーツ団体とはスタンスを異にしている。その日本本部がNASEF JAPANである。
2020年11月に任意団体として設立され,教育現場との連携や調査研究,eスポーツを教育に活かす教育プログラムの提供などを行っている。4Gamerでも,講演のレポート(関連記事)やeスポーツ大会の結果(関連記事)を掲載しているため,名前を聞いたことがある人も多いだろう。
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そのNASEF JAPANは,東京都に対しNPO化に向けた申請を行っている。会長の松原昭博氏によると,NPO法人としての北米教育eスポーツ連盟 日本本部は,8月設立を目指しているという。
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松原氏は,NASEF JAPANの理念について「子どもたちがいる(興味・関心がある)ところに大人が出向く」と語る。ここで“子どもたちがいる”場所とはゲームのことだ。松原氏は,内閣府が行った「令和3年度青少年のインターネット利用環境実態調査」を引用。高校生全体の約80%(約240万人)が何らかのオンラインゲームをプレイしており,これだけ関心を持たれているものに「フタをする」のは現実的ではないと語る。ゲームを教育機会として活用し,テクノロジーへのリテラシー,英語,コミュニケーション能力の向上とキャリア教育につなげていくのがNASEF JAPANの基本理念だという。
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そんなNASEF JAPANが,なぜNPO法人にならなければならないのか。その理由として松原氏は,NASEF JAPANに法人格がないことによる活動の限界が存在したからからであり,もっと広範な活動をするためにNPO法人にするのだと語る。
NASEF JAPANは任意団体として設立され,既にアメリカ大使館・領事館と連携したeスポーツ国際教育サミットを開催,茨城県と連携協定を締結するといった活動を行ってきた。任意団体は法人格を持たない。法人格がないと,団体名義での契約ができなかったり,公的機関との事業連携や補助金・助成金の申請で不利になることがある。NASEF JAPANの活動の中でも「今のNASEF JAPANの(法人格を持たない)ステータスでは難しい」と感じられることもあったという。
しかし,NPO法人化すれば,法人格を持つことができ,これらの問題がクリアになる。社会的な信頼が高まり,公的機関からさらなる信任を得ることができる。また,より多くの賛同者が参加し,賛同者が運営に参加することによって,NPO法人としての中立性も担保できるようになるという。
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松原氏は,NPO法人化してからの活動について,高校と連携を深めていき,教育現場で使えるeスポーツ部の運営マニュアルや配信技術の教材提供を考えており,アメリカとの緊密な連携も可能になっていくだろうと語った。
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eスポーツの教育活用という明確なスタンスを持つNASEF JAPAN。カリフォルニア大学アーバイン校の情報学教授であるコンスタンス・スタインクーラー博士によれば,eスポーツを取り入れることにより,社会的感情の学習と人間関係に関する議論が活発になる。それにより,学校での活動にあまり関与していなかった生徒がeスポーツをきっかけに学校への帰属意識が高まる,リーダーシップを発揮する……といった結果が出ているという(関連記事)。NPO法人化することにより,より広範な活動が可能となるNASEF JAPANの今後に注目したい。
「NASEF JAPAN」公式サイト
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