ユーモアに溢れた経営シミュレーションとして,いずれもワールドワイドで高い人気を獲得しているTwo Point Studiosのタイトルだが,その同社が2026年に設立10周年を迎えたという。
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さらに6月20日に配信された10周年記念ライブでは,第1作「ツーポイントホスピタル」の集大成にあたる「ツーポイントホスピタル:ハートフルコレクション」(PS5 / Xbox Series X|S / Switch2)が発表。また最新作「ツーポイントミュージアム」では,MINTROCKETの人気作「デイヴ・ザ・ダイバー」とのコラボDLCが登場するなど,話題に事欠かない状況となっている。
そんな10周年を記念し,同社のスタジオディレクター Gary Carr氏とテクニカルディレクター Ben Hymers氏を招いたメディア合同インタビューが開催されたので,本稿ではその模様をお伝えする。
両氏にこの10年間を振り返ってもらうとともに,今後の展開なども聞いているので,ファンはぜひチェックしてほしい。
![]() Gary Carr氏 |
![]() Ben Hymers氏 |
楽しみながら歩んできた,Two Point Studiosの10年
──Two Point Studiosの10周年,おめでとうございます。さっそくですが,現在の気持ちを教えてください。
Ben Hymers氏(以下,Hymers氏):
ここまで来られたことを誇りに思っています。何事も10年続けるのは大変なことですが,浮き沈みの激しいゲーム業界でここまで続けられたのは,極めて大きな成果だと捉えています。
──この10年を振り返って,印象に残っていることを教えてもらえますか。
Hymers氏:
1作目の「ツーポイントホスピタル」をリリースしたあと,Steamの売上データを確認して,ヒットを確信したことですね。わずか数日で開発費用をリクープできて,大変嬉しかったのを覚えています。
それでGaryが,可愛いピンクのリボンで飾られたお祝いのケーキを買ってきたんですけど,そのリボンが何かの拍子にGaryの頭に付いて,その姿のまま感極まって泣きながら,奥さんに電話をかけたんですよ。そのあとそのまま街に出かけたときも,ずっとリボンが付いたままでした(笑)。
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Gary Carr氏(以下,Carr氏):
結局,私はリボンに気づかないままオフィスに戻ってきて,チームの皆から奇妙なものを目の当たりにしたかのような目で見られてしまいました(笑)。それが一番の思い出ですかね。
──「ツーポイント」シリーズは,これまで3作リリースされていて,いずれも高い評価を獲得しています。人気作の続編はファンの期待も高いと思いますが,プレッシャーを感じることはありますか。
Hymers氏:
プレッシャーは,新しいゲームを作るたびに感じています。ゲームの開発中,「誰も遊んでくれなかったらどうしよう」と考えてしまったり,あるいはゲームのブラッシュアップを続ける中で「これで大丈夫だろうか」と自問自答したりすることもあります。
Carr氏:
とくに「ツーポイントミュージアム」は,博物館というテーマ自体がグローバルに訴求できるものなのか,不安がある中で開発を進めたタイトルです。それでもテーマを変えなかったのは,自分たちにとって最大の批評家は己自身という自負があったことと,自らに恒常的なプレッシャーをかけることに意味があると考えたからです。
実のところ,私たちは自分たちのゲームがすべてうまくいくとは考えていません。私たちは50人前後という中小規模のスタジオですので,常に失敗の可能性とプレッシャーのある状態でゲーム開発に打ち込んでいます。
──そうした状況の中,「ツーポイントホスピタル:ハートフルコレクション」がリリースされるとのことですが,この発売経緯を教えていただけますか。
Hymers氏:
「ツーポイントホスピタル:ハートフルコレクション」は,「ツーポイントホスピタル」本編とすべてのDLCを収録したコンシューマ向けのタイトルです。
2018年8月のPC版リリース以降,同作では多数のDLCを発売してきましたが,これらの多くはコンシューマ版に提供することができていませんでした。今よりも小さいチームで突貫工事の開発を行っていた当時の私たちには,コンシューマ版に必要な操作周りの開発や,メモリの最適化などが十分にできなかったからです。
結果として,PC版とコンシューマ版は同じゲームであるはずなのに,あたかも別のプロジェクトとして進行する形となり,差が生まれてしまいました。この差をずっと埋めたいと考えていたのですが……10周年のこの機会に,完全版をリリースすることになったというわけです。
Carr氏:
私たちは小さなインディペンデントスタジオとしてスタートしたので,当時はプラットフォーム展開に制約があったのです。でも今では,コンシューマ機の性能も上がって,すべてのプラットフォームで同じコンテンツを展開できるようになりました。
この10周年の機会に,すべてのファンの皆さんを満足させられる「ツーポイントホスピタル」をご提供できるのではないかと考えています。
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──経営シミュレーションは,一般的に難度が高めでとっつきにくいというイメージがありますが,「ツーポイント」シリーズはシステムが分かりやすく,端々にジョークが盛り込まれていて,とても親しみやすいと感じています。こうした点について,開発上で意識していることはありますか。
Carr氏:
システムはけっこう複雑だと思うのですが……確かにアプローチがしやすくなる施策は意識して取り入れています。例えばおっしゃるようなユーモアやコメディは,遊ぶ人を惹き付ける要素として配置していますし,ゲーム全体の雰囲気もシリアスすぎず,親しみやすいテイストを心掛けています。
その一方で,繰り返しになりますがシステム面は複雑ですので,ハードコアな経営シミュレーションが好きな人も満足できる作りになっています。
Hymers氏:
ビジュアル面も,コミカルにしたりユーモアを持たせたりといった工夫をしています。またチュートリアルにも注力していまして,いろんな要素を一度にまとめて見せるのではなく,段階的に出すように心掛けています。
あとはプレイヤーが失敗しても,立ち上がれなくなるほどの大きなダメージを負わないように気をつけていますね。私自身,競合の経営シミュレーションをプレイしているとき,たまに立ち上がれないほどの大ダメージを食らうことがありますから(笑)。
──「ツーポイント」シリーズの今後の展開について,お話しできる範囲で教えていただけますか。
Hymers氏:
まず「ツーポイントミュージアム」のDLCを,続々とリリースしていく予定です。このシリーズのDLCは,単に新ステージを追加するだけでなく,新しい体験を提供し,ゲームプレイ自体を刷新するようなものを目指していますから,今後しばらくは「ツーポイントミュージアム」のエキサイティングな状況が継続すると思いますよ。
Carr氏:
現状,私たちは「ツーポイントミュージアム」に高い期待を抱いており,今後も注力していくつもりです。しかしその一方で,スタジオ内では新しいIPやアイデアにも着手しています。まだ詳しくはお話しできませんが,その1つは“経営”シミュレーションではないかもしれません。とはいえ,シミュレーションゲームの範疇ではありますけど。
Hymers氏:
そうした「やりたいこと」のリストはどんどん長くなっているのですが,新しいことに挑戦するにしても,ツーポイント州を舞台にしたり,あるいはユーモアを入れたりで,既存タイトルと何かしらのつながりは持たせたいと思っています。だからまったく違うジャンル――例えばシューターを作るといったことは今のところ考えていません。
──この度「デイヴ・ザ・ダイバー」とのコラボレーションが実現しましたが,「ツーポイントミュージアム」ではこれまでにも,「Dredge」や「Vampire Survivors」「リベンジ・オブ・ザ・サベージプラネット」「アングリーバード」といった人気IPとのコラボDLCがリリースされています。いったいどうやって実現させているのでしょうか。
Carr氏:
チームメンバーの1人が,いろんなゲームの公式サイトに設置されたお問い合わせフォームを使って,ひたすらコラボの交渉をしているんです。私たちとしてはビジネス上の戦略というよりも,そのメンバーの熱意で実現したものと考えています。
Hymers氏:
「ツーポイントミュージアム」には,「デジバース」という異空間へと通じる亀裂が生じているという設定がありまして,これを介してさまざまなゲームの世界につながることが自然に行えるんですよね。また舞台がいろんなものを展示する博物館というのも功を奏しました。
こうした試みはゲーム業界を活気づけることにもつながりますし,小規模なインディーゲームスタジオとの取り組みは,非常にすばらしい体験でもあります。
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──プレイヤーコミュニティとの関わりでは,どんなことを意識していますか。
Carr氏:
SteamやReddit,Discord,そして各種SNSでコメントを読んだり,寄せられたフィードバックやメッセージに目を通したりするのに多くの時間を取っています。そうしたフィードバックをゲームに反映させるサイクルは,私たちがスタジオを設立した当初から意識して実行していることです。
きっかけは 「ツーポイントホスピタル」を開発している時のことでした。1作目ですから,そもそもコミュニティがない状態で作っていたわけですけど,「なぜ部屋をコピー&ペーストできないんだ」という指摘をいただいて,「確かにそうだな」と考えさせられたんです。
そのときからクローズドな環境ではなく,いろんなフィードバックに耳を傾けて開発を進めるスタイルを確立していきました。
Hymers氏:
寄せられたフィードバックはリスト化して優先順位を決め,開発のToDoリストに追加しています。それらを無料アップデートでゲームに反映していくわけですけど,これにはコミュニティへの感謝の側面もあるのです。
ファンの皆さんの中には,私たちのゲームを数千時間遊んでくださっている人もいますので,そうした皆さんにはアーリービルドをプレイしていただいて,フィードバックをお願いすることもあります。チームのリーダーが,Steamの掲示板でコミュニティの質問や疑問に直接回答することも多々ありますし,そうしたフットワークの軽さも我々中小規模のスタジオの強みだと考えています。
──日本のファンからの反響はいかがですか。「ツーポイントミュージアム」では吹き替えを含め,ローカライズにも力が入っていましたが。
Carr氏:
アジア全体でセールスが伸びていますので,日本のプレイヤーも増えていると思います。
私たちは英国のスタジオですが,ゲームを展開する国や地域ごとに,あたかも現地のスタジオが開発したかのようなクオリティのローカライズを心掛けています。日本では,コンシューマ版のパブリッシングを担当しているセガの協力もあって,それが実現できました。
Hymers氏:
「ツーポイント」シリーズはジョークがたくさん入っていますので,中には翻訳が難しいものもあるのですが,そこはローカライズのスタッフが頑張ってくれました。英国の親父ギャグみたいなものとかね(笑)。そうした努力の結果が,日本のプレイヤー増加につながっているのだと思います。
──最後に,日本の「ツーポイント」シリーズファンに向けてメッセージをお願いできますか。
Hymers氏:
私たちのゲームを遊んでくださることに大変感謝しています。これからの数年間も,ぜひ楽しんでください。
Carr氏:
私たちは,これまでの10年間を非常に楽しんできました。セガとの取り組みもそうですし,日本市場で何がうまくいくのか,試行錯誤を重ねていくプロセスも楽しんでいます。日本の皆さんがどんなゲームを遊びたいのか,私たちのゲームに何を望むのかといったことが知りたいです。ぜひ声を聞かせてください。
──ありがとうございました。
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